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■オープニング本文 ●絶望の村 「逃げろ‥‥皆、早く逃げろー!」 それは一人の悲鳴から始まった。 まだ日が登らず白み始めたばかりの時間帯。只ならぬ叫び声に住人達が一様に扉や窓から外の様子を伺う。 そこには倒れ付した男の姿。何人かの住人が急ぎその男を助け起こす。 「お前、確か隣村の‥‥って、おい! 血塗れじゃないか。一体どうしたんだ!?」 「む、群。黒い、奴ら‥‥が」 男はそれだけ言うと事切れた。よく見れば男の体は傷だらけで、特に何か杭のようなもので深々と貫かれた腹の傷穴は明らかな致命傷だった。 不穏な空気が村人達の間に漂う。ただ事ではないことは分かる。しかし、それならば何をすればいいのか? 答えを出せる者は誰一人としていなかった。 村人達は選択を誤った。 もし、あの男が最後までちゃんと説明していたならば。 もし、この村に聡明な人物がいて危機に気づいていたならば。 もし、すぐさま着の身着のままでひたすらに逃げ出していたならば。 もしかしたら彼らは助かったかもしれない。 そう、もしかしたら‥‥だ。 数刻後、奴らが大地を踏み鳴らしながら現れた。 ●緊急依頼 武天のとある開拓者ギルド。そこに偶然居合わせた開拓者達が緊急招集されていた。 「き、緊急事態です。心して聞いてください!」 係員の女性は張り詰めた雰囲気を隠さず、隠すことが出来ずその依頼内容を告げる。 今から二日ほど前に一つの村が壊滅した。そして、さらに昨日の早朝にその近隣の村が襲われ、滅ぼされた。 その襲撃犯は生存者の話によると牙を生やした猛獣が複数。しかし、それが何なのかは分からなかったと言う。 さらに詳しく聞くと、どうやらその体は暗闇で覆われておりその全貌を確認する事はできなかったという。 「ごめんなさい、これ以上詳しい事は分かっていません。恐らくアヤカシだと思われるのですが‥‥」 済まなそうに俯く女性。しかし、咎める者は誰もいない。 全く情報のない討伐依頼だってざらにあるのだ。これだけの情報があれば少なくともその脅威度はしっかりと伝わっている。 そしてその通常では在り得ないほどの襲撃頻度と凶暴性に、すぐさま手を打たなくてはさらなる犠牲が出てしまうのは容易く想像できた。 「危険な依頼になります。皆様、どうぞお気をつけください」 係員の女性の言葉を受け、開拓者達はすぐさま行動を開始した。 |
■参加者一覧
柊沢 霞澄(ia0067)
17歳・女・巫
風雅 哲心(ia0135)
22歳・男・魔
静雪 蒼(ia0219)
13歳・女・巫
佐久間 一(ia0503)
22歳・男・志
静雪・奏(ia1042)
20歳・男・泰
悪来 ユガ(ia1076)
25歳・女・サ
向井・智(ia1140)
16歳・女・サ
伊集院 玄眞(ia3303)
75歳・男・志 |
■リプレイ本文 ●開拓者達 「アヤカシは必ず倒して見せます。安心してください」 金髪碧眼の青年、佐久間 一(ia0503)はトンッと自分の胸に拳を当てて力強く答えた。一人の老人――村長が代表としてお願いしますと頭を下げる。彼らにはもう開拓者を頼るしかないのだ。 その責任を強く感じた一はまたその手を強く握り締めた。 「いいかお前等。絶対に家からでるんじゃねぇぞ?」 悪来 ユガ(ia1076)は泣きじゃくる子供達の頭に手を置いてぐしゃぐしゃと乱暴に撫で回しつつそう言い聞かせた。 頷く子供達に良い返事だとその手を放し背中を向けて歩きだす。そして誰も見えぬ場所で凶悪な笑みを浮かべた。 「それではそろそろ行こうか。この村から犠牲者を出すわけにはいかんからな」 注意喚起を終え村の入り口にて声をかける伊集院 玄眞(ia3303)。今回集められた開拓者の中で最年長者だ。 玄眞はその白髭を撫でつつこれからの戦いを思う。村の外に広がる森は不気味な静けさを保ち続けていた。 ザクリッと鋤が地面に突き刺さる。風雅 哲心(ia0135)はその黒髪を掻き上げ、額に浮かぶ汗を拭った。 「これでこっちは完成だな」 哲心の目の前には深さ半間ほどの穴が掘られていた。落とし穴――開拓者達が仕掛けることに決定した罠である。とり餅や膠、油なども使用を掛け合ってみたのだが今回は緊急依頼ということもあって手続きの時間もなく残念ながら却下されていた。 「全部で三つですね。急造ながら結構なんとかなりましたね」 向井・智(ia1140)はそれぞれの罠の位置を手帳に記しつつ、写しを書き終えるとそれぞれを仲間達へと渡していく。 自分達の仕掛けた罠に掛かるというのも普通ではないだろうが、戦闘中となればまた違ってくる。しっかり頭に刻むため、また思い出すためにも有効な手段だろう。 「奏兄ぃとご一緒できてうち、ごっつぅ嬉しいわぁ〜」 罠の位置を記した紙片をじっと見てそれを頭に叩き込んでいる静雪・奏(ia1042)に、おっとりとした口調の静雪 蒼(ia0219)がその小さな体を跳ねさせ抱きついた。 奏は少し驚いたが抱きついてきたのが蒼だと気づくとそれを軽く受け止め、蒼の瑠璃色の髪を優しく撫でる。 「ああ、ボクもだよ。けどあまり危ない事はしないようにね?」 兄として、その小さな妹が傷つくことを望まぬのは至極当然のことだろう。今回に至ってはかなり凶暴なアヤカシとの報告もある。 ただ、そんな奏の心配を余所に蒼は朗らかに笑うばかり。しっかり守らないとな‥‥奏はその宣誓として蒼の青白磁の額に軽く口付けを落とした。 と、その時だった。柊沢 霞澄(ia0067)が不意に森のほうへと振り返る。そして何かを察するとゆっくりと精霊の小刀を抜き、構えた。 「どうやら‥‥いらっしゃったようですね。」 霞澄の言葉通り、先ほどまで静まり返っていた深い森から不吉な音が鳴り響いてくる。少しずつ、ゆっくりと‥‥。 林と岩の隙間から伺える森の入り口。そこに集う不吉な闇。それが一杯にまで膨れ上がったかと思うと、弾けた。 人の身を上回る体躯、異常なまでに研ぎ澄まされ突き出された牙、揺れ動く暗闇。 その闇の中に赤い光が灯り開拓者達を捕らえる。そして、吼える。獲物を見つけた歓喜の咆哮を。 ――プギャアアアアアァァァ!! 大地を踏み鳴らしながら、ソレは開拓者達に襲い掛かった。 ●猛獣を迎え撃て その姿を捉えた開拓者達はすぐさま行動を開始する。 林と岩の地帯を抜け出してくるまでにはまだ時間は掛かる。余裕を持って開拓者達は迎撃体制を取ることが出来た。 しかし、それは相手にとっても同じこと。一匹の声を聞いた別の猛獣達は導かれるように次々にその深き森から飛び出してくる。 猛獣達は確実に開拓者達を標的としてまっすぐにこちらに突撃してきている。 一は手にした弓を限界まで引き絞り、先頭の一頭に狙いを絞りつつ待つ。罠の目の前に来るまで只管に待つ、待つ、待つ‥‥。 「――疾ッ!」 気合と共に放たれた矢は地のギリギリを走り、猛獣の前右脚を貫いた。ぐらりと揺れる猛獣だが転倒まではしない。だが、その体躯は忽然として皆の視界から消失した。 落とし穴、姿勢を崩した猛獣は開拓者達が偽装した罠を踏み抜き落ちたのだ。さらにもう一匹が罠に掛かり穴の中へと姿を消す。 抜けてくるのは三匹。押さえ込むべく前衛六人の開拓者達が立ちはだかる。 「これ以上先へ行かせるわけにはいかんのだよ」 右から駆け抜けようとする猛獣の前にゆらりとその姿を晒した玄眞が手にした刀を閃かせる。朗々たる身のこなし、刃が猪突するその牙と打ち合わされた瞬間に真横へと振り払う。 猛獣が突然の横への圧力に体を傾けたところで、さらに玄眞は横を過ぎ去ろうとする猛獣の後ろ足を蹴り上げた。今度こそ完全に体の制御を失い大地に叩き付けられる猛獣。 体に纏う黒き闇を蠢かせながらまた起き上がろうとする猛獣に玄眞はその刀を今一度構えた。 左の一匹にはユガが向かう。そして全速で襲い掛かる猛獣に真っ向から迎え撃った。 黒きモヤは気がかりであるが見ただけでそれは分からない。ならば、見極めるためにも直接的に合い立つのみ。 「大層な牙があろうと、がら空きなんだよぉっ!」 槍を一直線に猛獣の眉間へと突き刺す。ゾブリッという生々しい手応えと、圧倒的な破壊の重圧がユガの両腕に襲い掛かった。 ユガの体が後ろへと押し込まれていく。踏みしめたブーツが大地を削りつつ土埃を巻き上げる。 「援護します!」 衝撃。智が振るう戦斧がユガとぶつかり合っていた猛獣の体を弾き飛ばした。 本当なら智もまた別の猛獣と対峙していたはずだが、その相手はまだ落とし穴の中。だからこそ出来た援護だった。 鼻息を荒くさせ、赤い瞳を輝かせる猛獣。今度はその標的を智に狙いを定める。 巨体の突撃に智は身構え、さらに迸る練力が体を活性化させ筋力増幅させる。 「盾、根性――ッ!」 塵風巻き上げる戦斧と闇の猛獣の牙が激突した。 そして中央の一匹には哲心と奏が二人で相手取る。 奏はその腕に練力を廻らせ周囲の空気を圧縮する。そして猛獣を射程に捕らえたところでソレを放った。 ただ一直線に向かってくる猛獣はソレを回避することも出来ず、防壁にぶち当たったかのように大きく仰け反り転倒した。 その隙を突いて哲心が駆け、起き上がろうとするその前脚を下段から振り上げるようにして斬り裂く。 猛獣は痛みからか声を上げつつ暴れだし、跳ねるその巨体に哲心は連撃を諦め一足で跳び退る。 「あの闇、厄介だね。常に覆われてるから攻撃が通ってるのかも判別し辛い」 確かにその前脚に刃を奔らせたはずだが、全く問題ないかのように立ち上がる猛獣を見据えて奏が呟く。 「それなら、その黒い何かごとやるしかないな」 通常の攻撃ではあの闇を吹き飛ばすのは難しいだろう。ならばと哲心は切り札を一枚使う。 哲心の言葉に精霊達が応えた。その周囲を乱舞する精霊達は光の粒子へと変換され哲心の刀に宿っていく。 青白い刃と化したその刀を一度振るい、哲心は猛獣へと肉薄する。 吼える猛獣はその顎門を限界まで開き喰らいつこうとする。だが奏はそれを許さないと猛獣の横合いに回りこみ、その胴体に振り上げた手甲をめり込ませる。 一瞬動きが鈍る猛獣に、哲心は光が迸る刀を叩きつけた。 ――グギャアアアアァ!? 同時に上がる悲鳴。波立ち暴れだす黒き暗黒。効いている――そう確信した哲心は返す刃を猛獣の左頬に突き刺すと、気合と共にその刃を胴体へと向けて振り抜いた。 光の刀は猛獣の纏う闇ごとその体を奔り、どす黒い何かをその傷口から飛び散らせた。 「ぐっ! しま‥‥何だこのベトベトした液体は!」 黒い何かに対しては警戒していた哲心だったが至近距離で飛び散るそれを回避することは叶わなかった。 しかし、特に何かがあるわけでもなくその黒い液体はシュウシュウと音を立てて蒸発していく。 「‥‥これは、猪か?」 奏が今の一撃で斃された猛獣を観察し呟く。その亡骸は黒い体液を垂れ流しつつ、途端に異臭が周囲に漂い始めた。 そして黒い闇が取り払われると、そこには半ば白骨しかけた獣の骸が現れたのだった。 前衛の皆が戦っている中で後衛の霞澄と蒼の二人は、この猛獣が何たる存在なのか見極めようと力を行使する。 「あの黒いもんがアヤカシってことで間違いあらへんようやなぁ」 一度下がってきた前衛の秦と哲心を癒しの力で傷を塞ぎつつ蒼は思考する。 今までの戦いを見ていた限りでは刀や槍などの物理的攻撃より術による知覚攻撃が有効ということが見て取れる。 それならば、あの黒いものを引き剥がせれば‥‥そう読んだ霞澄はその破邪の銀の瞳で猛獣を、いやその表面に巣食うアヤカシを捕らえる。両手で握りしめた小刀をアヤカシに向けて突き刺すよう構えた。 ビシリと、一匹の猛獣の動きが止められた。空間を歪める巫女の神技、それが猛獣を取り巻く黒い闇を捻じり上げていく。 「今です。その黒いアヤカシを斬って下さい!」 「任せなっ。そら、消し飛べぇっ!!」 霞澄の声に応えたのはユガだ。大地を蹴り、飛び上がったユガがその長槍を天へと掲げ、落下する勢いと共にその破壊の一撃を持って黒きアヤカシと、そして猛獣の体を叩き潰した。 バラバラと散らばるアヤカシの黒い何かと猛獣の腐れた肉片。その中でユガは一丁上がりだと満足げに笑みを浮かべた。 「こっちも終わったぞ」 と、声を掛け歩み寄ってくる玄眞。その手には燃え盛る赤き刀。それを一度振るいその炎を掻き消した。 その背中では今まさに炎に焼かれる猛獣の体が崩れ落ちてゆくところだった。 ●黒い脈動 先に抜けてきた三匹を討ち、残るは落とし穴へと落とした二匹だけ。 それぞれが余力を残し、数の上でもこちらが有利。開拓者達は若干の余裕を持ちつつ今まさに落とし穴から這い出てくる猛獣を見据える。 再び姿を現した猛獣二匹が強い敵意の視線を開拓者達へと向ける。今、雌雄を決する――そう思った時だった。 ――ブ‥‥ギュアアアァァァ!? 突然猛獣の一匹がその体を震わせ、悲鳴を上げつつ苦しみだしたのだ。 「一体何が‥‥って――えっ?」 怪訝に思いつつも警戒を緩めないように、そう思った智だったが。次の猛獣達の行動に呆気に取られてしまった。それは智だけでなく他の皆も一緒だった。 苦しんでいた猛獣がもう一匹の仲間に突然喰らいついたのだ。同時に上がる猛獣の悲鳴。まさかの仲間を攻撃? 飢餓が極限に達しての共食いか? そう思考している間に二匹の猛獣は互いを喰らい合い、そして‥‥。 「おいおい、何の冗談だこれは?」 哲心が皆の気持ちを代弁した台詞を口にする。彼らの目の前には、さっきまで確かに形を取っていた二匹の猛獣が一つとなったナニかがいた。八本の脚の内二本は背中から生え、二つの頭が折り重なり、肥大化したその体には大小の鋭い牙が無数に生えている。 まるで二つの粘土作品をぶつけ合い練り合わせて作ったかのような気色の悪い物体。それはもはや、猛獣どころか生き物とさえ言えない得体の知れない異形なアヤカシへと変異していた。 そして、その猛獣だったものはその見た目からはあり得ないほどの速度で、飛び上がった。 「っ! 皆さん散ってください!!」 一の声に全員が瞬時にその場から飛び退る。直後に落下するアヤカシ。凄まじい衝撃が大地を揺るがし、開拓者達の体勢を一瞬だが崩す。 そして、その時運悪く狙われたのは霞澄だ。突進する体躯。踏み出される度に響く大地。歪に並ぶ四つの目の全てが彼女をその赤い瞳に映し出す。 瞬間、空間が赤く煌いた。アヤカシの目前で炎が上がり、一瞬その姿を失ったアヤカシの動きが鈍る。その隙に飛び出した蒼が霞澄を庇う様にその前に立ち塞がった。 その炎の正体は蒼の施した術式だ。ただ火種を起こすだけの目晦まし程度の効果しかない。ただ、その簡易ゆえに即時発動できる。もしこれが通常の攻勢術式であったなら恐らく間に合わなかっただろう。 「安心しておくてやす。柊沢はんはうちが守りますぇ」 少しだけ振り向いた蒼はにっこりと微笑みを浮かべた。怒りの咆哮をあげるアヤカシがその全身の牙を振るい鳴らし、突き上げた。 衝撃を覚悟し思わず身構え目を閉じる蒼、しかしその衝撃は訪れず。ただ、ふと気づくと彼女の目の前には見覚えのある誰かの後姿があった。 その体からは開拓者特有の練力とは違う、何か特別な力が漲っている。それは気力という人としての想い。許さない、成し遂げるという絶対の意志が力へと昇華されているのだ。 「蒼を、妹を‥‥傷つけさせる訳にはいかない!!」 秦は気合と共にその身体能力を限界まで引き出し己の数倍はあるその巨躯のアヤカシを、弾き飛ばした。 しかし、そこに代償がないわけではない。気力を使い果たした秦の視界は段々と暗黒に沈んでいく。 「やるねぇ。それじゃ、後は任せなぁ!」 崩れ落ちた奏を蒼が抱きとめるのを見てユガはニヤリと笑みを浮かべるとアヤカシに肉薄する。振るう一閃により削り飛ばされる闇の欠片。それは一撃では微々たる量だが幾重にも重ねれば大穴をも穿つ。 さらに哲心の精霊を纏いし刀、一と玄眞による火炎が闇であろうとするその体を焼き尽くしていく。 あっという間にその闇を暴かれ、腐れて捩れた骸の体を晒すソレに、最後の一撃が振り下ろされる。 智の超重量の大斧の一撃が闇のアヤカシを消し飛ばし、猛獣をも木っ端微塵に砕け散らせた。 大地にめり込んだ斧を引き抜き肩に掛けた智は皆に振り向いてニカッと朗らかに笑った。 「成敗っ!」 その明るく満足げな声により、今回の緊急依頼は幕を閉じたのだった。 ●帰路 開拓者達は村に猛獣を倒したと報告を終え、街へと戻る。 「奏兄ぃ、もうあんな無理したらあかんよぉ?」 奏はふらつく体を蒼に支えられながら歩き、まだ自分の至らなさを実感していた。それはまた蒼も同じであろう。 「ふむ、このあと一杯どうかね?」 その隣では成人組みが昼間から酒盛りの話だ。玄眞の誘いに哲心やユガは非常に乗り気。そして逃げようとした一が今ユガに捕まった。 「獣に憑依‥‥いえ、寄生でしょうか。ああいうアヤカシもいるのですね」 霞澄はこの度の相手を想い返す。かなり特異だとは思うがこちらの想像で計れないからこそのアヤカシ。それを再認識させられていた。 「まあ、何はともあれ誰も大きな怪我することなく依頼は達成ですね」 一の言葉に一同が頷き笑った。今一つの村を救ったのだ。それに僅かながらでも充足感を得るのは至極当たり前のことだろう。 そして彼らはこれからもまたこうして戦い続けていくのだろう。それが開拓者であり、彼らの存在意義なのだから。 ただ今だけは。仲間と笑いあえる一時の安らぎを‥‥。 |