【華宴】皐月のお花見
マスター名:機月
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: 普通
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2010/05/29 19:12



■オープニング本文

 開拓者ギルドにやってきた若旦那といった風体の男は、探す相手がいたことに満足すると機嫌良さそうな声を掛ける。
「あ、いたいた。西渦さん、ちょっと珍しいお花見でもどうかな?」
 書面から顔を上げた西渦(iz0072)は、あらお久しぶり、と親しげに挨拶を返しはするが、その表情は少々訝しむ風。
「わざわざギルドに来たって事は、厄介事込みって事かしら?」
「やだなぁ、ここに来るのは西渦さんに会える確率が一番高いんだからですよ。‥‥まあ、少々準備が必要なのは否めませんが」
 苦笑しながらも否定せず、調(iz0121)という名の青年は向かいに腰を下ろす。若いながらも隊商を取り仕切る手腕は、その人の良さそうな笑顔から想像するのは難しい。それでも飛空船に航路まで所持する一国一城の主であるというから、世の中分からない。
「楽しいことに労力は惜しまないけど、依頼となったら話は別よ?」
 冗談めかして続きを促す西渦に、調は分かってますよと笑みを深くしながら話し始める。

「知り合いからね、この時期に桜の花見が出来るところがないかって聞かれたのが始まりです。何でもしばらく体調を崩していたらしく、この時期まで屋敷の外にすら出られなかったという方がいるそうで」
 お互いお茶を啜りながら話を続ける調と西渦。西渦の表情から微かな疑問を感じとったのか、いえ、今年だけでは無かったらしいのですよ、と軽く言いつつ話を先へ進める調。
「それで色々話を集めてみたのですが、丁度今頃、理穴で開花を迎えるところがあるというのが分かったんです。ただ、霊験あらたかな場所らしくて、ですね」
 煎餅をぱりんと割りながら、西渦が茶々を入れる。
「前人未到の山奥だとか?」
「いえ、山奥は確かですが、一応麓に小さいながらも村はあります。そうではなくて、山中で火を使えないのだそうで」
 疑問符を浮かべる西渦に、頷きながらも真面目な表情を崩さず調は続ける。
「周辺の方が言うには、山に火を持ち込むと地震やら土砂崩れやら色々起こると言うのです。何でも、そのお山が火を怖がるとかなんとか。焚き火は勿論、提灯とかの明かりもご法度だそうです」
 ふむ、と西渦は思案を始める。体が弱い人が暖を取れないとなると、ちょっと心配よね、と呟く西渦に、そうなんですと頷く調。
「分かったわ、その辺り含めて依頼にしましょう。‥‥あ、必要なものは用意してくれるのよね?」
 当然といった感じで聞く西渦に苦笑しながらも。
「はい、必要であれば料理でもお菓子でも」
 勿論です、と頷く調の様子に満足すると、早速書類の作成に入る西渦であった。


■参加者一覧
万木・朱璃(ia0029
23歳・女・巫
華御院 鬨(ia0351
22歳・男・志
水津(ia2177
17歳・女・ジ
斉藤晃(ia3071
40歳・男・サ
瀬崎 静乃(ia4468
15歳・女・陰
夏 麗華(ia9430
27歳・女・泰
花三札・猪乃介(ib2291
15歳・男・騎
花三札・野鹿(ib2292
23歳・女・志


■リプレイ本文

●飛空船着陸
 夜中に滑空艇で飛空船に乗り込んだ一行は、件の麓の村に着いて初めて他の乗客と顔を合わせた。
「凄い人数‥‥ 今回の依頼人、よっぽどお大尽なの」
 瀬崎 静乃(ia4468)が朝になって部屋を出れば、船内には人が溢れていた。確かに船倉で見た荷はかなりの量だったと納得しつつも、皆の騒がしさを感じさせない立ち振る舞いを目にすれば、厳しい躾と主への心遣いに思わず感心してしまう。
「どうする? 挨拶は一旦降りて、落ち着いてからにするか?」
 付いてきた花三札・猪乃介(ib2291)が辺りを見回しながら問えば、丁度扉から出て来た調と視線が合った。
「ああ、これは静乃さんに猪乃介君。良かった、将虎さんを紹介いたしますよ」
 手で招く調に従った部屋に入った二人は、思わずぽかんとしてしまう。そこに居たのは、想像していたような厳しい老人などではなく。
「こんなに年の近い方が? ‥‥うれしい」
 ふんわりと笑みを浮かべるのは、透けるような雰囲気を持つ同年代の少女だった。

「全くかなわん。あんな所で大人しく寝るんは無理や」
 飛空船から下りた斉藤晃(ia3071)は、朝日が眩しいのうと目を細める。だがその口調に険は無く、のんびりした欠伸が続く。
「無理ありまへんなぁ。お酒を嗜まれる方が、あないな宝の山を前にしはりましたら」
 艶やかな衣を着こなした華御院 鬨(ia0351)が、上品に笑いを堪えながら指摘する。山と積まれた荷と言っても、宴の準備と言えば防寒具の他はほぼ食材。乾き物に珍味も多ければ、天儀酒は幾つもの銘酒が樽で持ち込まれていた。
「うむ、中々良い酒だった。これで月でも見れたら最高だったが」
 そういう花三札・野鹿(ib2292)も満足そうに頷いている。夜分遅くに調が申し出た形で始められた前夜祭は、主賓に差し障りがあっては大事と船倉にてひっそりと行われたのだが。傍らに眠る弟に膝を貸しながらの宴は野鹿にとって格別だったようである。

「では皆さんはこちらの水場をお使いください」
 食材と石材を積んだ荷車と一緒に、調理担当は村の民家へ案内された。
「これだけ質と量の揃った素材たち。うん、腕の見せ所ね」
 万木・朱璃(ia0029)は自分も氷を足した桶を下ろしながら、早速下拵えに入る。
「あら‥‥ 珍しい形の唐辛子」
 夏 麗華(ia9430)がザルに盛られた数種類の唐辛子に手を伸ばしたところで、外から少々騒がしい物音が響いてきた。

「ですから、この子は鬼火玉と言いまして‥‥」
「やっぱり火なんじゃないのかい、駄目だよ駄目駄目!」
 数人の村人に詰め寄られる水津(ia2177)は、その背後にぴたりとくっついている鬼火玉を庇いながら何とか説得を試みていた。最初はおっかなびっくり声を掛けてきた村人だったが、山への立ち入りを考えていると知ると碌に話も聞こうともせずにその前に立ち塞がる。
「これはケモノとはいえ、すみかは石鏡の湖。悪さはしないどころか、神様なら歓迎してくださるんじゃないかしら?」
 それを見かねた西渦が仲介に入る。それにほら、見た目はこれでも物が燃えたりはしないんですよ、とその頭を撫でてみせれば、しぶしぶながらも村人は引き下がる。そのまま二人と一匹は民家に入るまで、村人に向けてにこやかな笑みを浮かべ続けていたが。
(「明かりみたいなものって聞いていたけど‥‥」)
 ぼそりと呟く西渦は、だが心配そうな水津とぷよちゃんには強がって見せ。民家の中に入るまでは何事もなかったかのようにしてみせるのだった。

●入山準備
 到着時に小雨がぱらついていたために、一時は入山すら危ぶまれもしたが。姫の強い要望もあれば、土地の者も昼前には上がるだろうとのこと。調理担当がその腕を振るう間に、護衛担当は雨が上がるのを待って先行することとなった。
「桜を見ながら、春と初夏の味覚を楽しめる。うむ、素晴らしい依頼だな」
 野鹿はこの辺りで採れたという蕨やたらの芽、竹の子といった山菜と、調が朱藩から取り寄せたという立派な鰹を吟味しながら、これから作る角煮の出来を思い描いては顔を緩めている。その隣では、朱璃が油を満たした鍋の前で天麩羅の準備中。麗華は釜の掛かった竈を気にしながら、お握りのための海苔や具材の仕込み中だろうか。
「水津様。この人参とか、少し分けていただいても‥‥」
「ふふふ‥‥ あなたの思惑はくじかせていただきますですよ、山の神様‥‥」
 背中を向けていても、若干不穏な笑顔を浮かべていると想像するに難くない水津は、それでも麗華の掛けた声には気付いたらしい。朋友のぷよちゃんと一緒に向かっていた土鍋や石材から顔を上げて振り返る。
「あ、いえ。これ、細切りにしておけばよろしいでしょうか?」
 水津の顔に少々疲労を見つけた麗華は、言いかけた質問を一旦取り下げ改めて問う。不思議そうにはい、と返す水津に丁寧に礼を言うと、早速器用に皮むき作業に入っていった。

「こんな時期に花見ができるとは、何とも不思議なもんどすなぁ」
 雨は上がっても少々肌寒く、見上げる木々には葉もまだ少ない。確かに一ヶ月ほど時間が戻ったような山道を眺めて鬨は独り言つ。
「懐炉の具合も悪うないしの。‥‥ま、早いとこゆっくり、花を愛でながら杯を傾けたいところじゃのう」
 二人がそれぞれ担いだ荷物は陣幕を立てるためのもの。大きさだけではなく重さも相応にあるのだが、普段通りよろめきもせずに歩を進める。鬨はお付きの人々に目を丸くされていたが、晃は晃で更に長柄の得物まで携える。それで軽々と足元の藪を突いたり、頭上の木の枝を避けてみたり。大雑把に見えて、細心の注意を払いつつ斥候に務めていた。
「春先の山っていうたら、もっと危ないもんかと思っとったけどなぁ」
 これまで遭遇したのは丸々と太った野うさぎが二匹、遠目に猪の子供らしきものが数匹。どちらもこちらに気付く様子すら見せず、遠ざかっていった。
「猟師もあまり立ち入ってないということやろか?」
 神域ゆうて、村の人も遠慮してはるんやろか、と鬨もあまり納得してはいないようだがそう返す。
 と、晃が立ち止まってハルバードを構える先に、ふと現れる大きな何かが立ち塞がる。
(「く、熊っ?!」)
 こちらも腰の刀に手を掛ける鬨であったが、目配せする晃と共にすぐに気が抜けた顔を合わせる。対する獣は明らかに寝ぼけている様子で、そのまま欠伸をしては辺りを眺めるのみ。
(「‥‥どうする?」)
 とりあえずぶっ飛ばしておくか、と投げやりな身振りで晃は問うが、鬨も困ったように首を傾ける。だが二人が僅かに考え込んだ間にべろりと自分の手を舐めた熊は、のそりと踵を返すと道を外れて斜面を登り始める。そしてそのまま、すぐそばに口を開けていた洞窟の中に入り込んでいってしまった。
「‥‥熊避けの鈴かなんか、出してもらおか?」
「いえ、ここは静かにやり過ごした方がよろしおす」
 でも後続を待って直接事情を話した方が良さそうどすな、と鬨が顎に手をあて考え込めば。
「なら、わしは先に進んでおこか。一休みにはちいっとばかし、これを飲むんにも早いからのぉ」
 上機嫌に瓢箪を揺らして見せ、上げ掛けた笑い声を飲み込むと。晃は頼むで、と小さく一声掛けると先へと進んでいった。

●宴に先立ち
 居住まいを正した静乃を先頭に、準備を終えた一行は山に入る。付き従うのは、槍を構えた物見の者が十名ほどに姫に付く女官が十名ほど、調が招いたという楽や絵を嗜む者が数名。そして調に西渦、開拓者の一行である。大所帯ではあるが開拓者一行を除く皆は顔見知りということもあってか、物々しい雰囲気は薄い。静かだが張り詰めている訳ではなく、綻び始めた山の息吹を感じるに相応しい雰囲気の中、一行は広場を目指す。

「大丈夫かい、姫様?」
「ええ、快適ですわ‥‥」
 猪乃介の背に乗る将虎が、背負子越しに軽やかに答える。二人とも若干の照れがあるせいか少々顔が赤いが、顔の向きは全く逆でお互い見えていない。それでも楽しげな様子に少々複雑なのは、二人に雨避け兼日除けの大きな傘を差す野鹿であった。自分が姫を背負うと言ったはずが「俺が傘差すんじゃ、鹿姉ぇが濡れちゃうじゃないか」の一言を噛み締めているうちに何時の間にやらこんな事態。山道の途中で難儀だろうと背を貸した弟を誇らしく思う反面、目の前で会って間もない少女と親しくされては姉としての立場(?)が無い。
(「そりゃ、玉の輿は魅力的だが‥‥ いやいや、そんなの早すぎる、いや断固として許せん!」)
 何やらぐるぐる考え込む野鹿を不思議そうに見ていたが、水津は我に返って朋友が運ぶ厚手の土鍋たちに注意を戻す。料理用に懐炉用、その他幾つかの用途に応じて準備を済ませた焼石の数々は、二時間と多くの練力を費やした大仕事の成果である。
(「この辺りでもう一度火を入れられると完璧なのですが‥‥ いえ、いけません。そのための人事は麓で全て尽くしてきました!」)
 斉藤さんのハリセンは痛いし、何より料理・お八つのお預けは別の意味で痛すぎる。一緒に積まれた鍋から零れる香りにお腹が鳴らないように気を引き締めつつ、静乃が集める冷めた懐炉を受け取っては新たな石を詰め直して返す、焼石の管理に精を出す水津であった。

 そうして何度かの休憩を挟みつつ広場を目指す一行が、不思議なほど道中に桜の木を見つけられずに不安に思っていた矢先のこと。何やら凄まじい音と共に一陣の風が吹き抜ければ、少し遅れてゆっくりと舞う、花吹雪の出迎えを受けた。
「うっわ、びっくりした! でもちゃんと咲いてみるみたいで安心‥‥」
 それでも進み続けた猪乃介は、山道を登りきって開けた場所に出たところで足を止め絶句する。舞う花びらに静かに笑い声を上げていた将虎が、それに気付いて不思議そうに声を掛ける。
「どうか、しました‥‥?」
 その問いの途中で、猪乃介が静かにその体の向きを変えれば。背負子に乗る姫の目の前一面に、薄い薄い、純白に近い薄紅の花が咲き乱れ、そして風が吹く度に花びらを散らす風景が広がっていた。
 桜はその全ての木が満開を迎えており、幾ら風が吹きぬけようとも、その美しい装いを変える事無く佇んでいるように見える。そんなことは在り得ないと、もう幾日もすれば花は全て散ってしまうと分かっていても。全力で今を咲き誇る桜に、迷いや諦めといったモノは微塵も見えない。
 しばらく茫然とそれを見続けていた将虎は、そのまま手を合わせて静かに祈りを捧げ始める。その瞳から零れる涙には誰もが気付かぬ振りをし、その厳かな雰囲気の中、皆しばしそのまま佇んだ。

●そして宴もたけなわに
 広場には強い風と日差しを和らげるよう、既に鬨と晃によって陣幕が張られていた。その中には真っ赤な毛氈と、座りやすいようにと用意された敷物や小型の椅子が幾つか並ぶ。最も見晴らしの良い場所には祭壇が設けられていたが、儀式が済めば脇に避けていただくことになっている。まずは山の神様に感謝の祝詞を捧げることになっており、その裏では宴の準備が進められていた。

「これでええか?」
 晃が即席に石で組んだ竈風の風除けに、朱璃は麓で作ってきた豚汁と生姜汁の鍋を設置して水津を呼ぶ。
「うん、丁度良い感じね。ありがとう、晃さん。あ、水津さん! こっちに焼石、お願いね」
 一際厳重に包まれた厚手の壷を火箸で器用に掴む水津は、静かにその中身を鍋に落とす。真っ赤に焼けていた石がちゅんという音を立てて飛び込めば、汁物はすぐに立ち上らせる湯気を増す。
「うん、これなら熱々がいただけそうね。あとは鮎の天麩羅、ちりめんじゃこのお握り‥‥」
 それはこっちどす、と鬨が声を掛ける。既に大きさを聞いて用意した風除けに、まな板程度の焼石を設置すれば立派な焼き台が出来上がる。あとはここで温めて、と準備万端整ったところで、見計らったかのように調が水場に顔を出す。
「そうそう、本職の方がいるじゃないですか!」
 一つ頼まれてくれませんか、との問いに不思議そうな顔を向ける一行であったが。快諾を聞けば、では早速と連れ立って出て行く調たちであった。

 笛と鈴のしめやかな楽が響く中、最後は二人となった神楽舞の群舞が終わる。しばらく穏やかな楽に合わせて宴が始まれば、続いて激しく鳴らされる鼓と共に剣舞が始まった。冴え渡る白刃の煌きは、最後に白梅の香を残して幕を閉じる。
「無理を言ってすみません。さ、これは素晴らしい舞に対するお礼とのことです」
 衣装を調えて戻ってきた鬨へ、瓶子を抱えた調が挨拶に来る。
「これは‥‥ 蜂蜜どすか?」
 渡された杯に注がれたものは、薄い黄金色の液体。口いっぱいに広がる思い掛けなく濃厚な甘みは、上品ながらも懐かしい味。
「はい、蜂蜜を水で溶いたものと聞いています。この土地の神様に捧げるものとのことですが、奉納演舞の礼に是非と姫から」
 非常に軽い飲み口に、すっと杯を乾してから首を傾げる鬨。
「これ、結構な量の酒精が入っているようどすが‥‥」
 え? と聞き返す調は、いえ、私は飲んでいませんので詳しくはと口ごもりつつ。思わずそっと、先に勧めた二人の巫女の方を見やった調は、何やら苦笑を浮かべながらそそくさとそちらに向かって行ってしまった。

 一見人参のみに見える金平や、どういうことか真っ赤な出汁巻きは、数種類あった唐辛子を混ぜて使ったことにより激しく当たり外れがあったらしい。平然と食べる麗華と一口で悶絶する猪乃介を横目に、危険そうなそれらは見るに留め。ひたすら食事を堪能しつくした静乃は、毛布に包まる将虎が一人でいるところを見つけると、湯飲みを持って隣に座る。
「はい。身体、温まるから‥‥ あ、焼石には気をつけるの」
 小さめの焼石をいれた湯飲みは、飲むにも暖を取るにも丁度良い。その小さな幸せを愛おしむように、将虎はほっこりとした笑みを浮かべる。
「‥‥良い宴ですね」
 周りを見渡し姫は呟く。酒を嗜む者、静かに楽に耳を傾ける者。何やら絡んでいる者もいるようだが、相手をする調がにこやかに対していれば、明るい笑いも絶えない様子。その様子を更に絵師が面白おかしく描き上げてみるものだから、西渦などはそれをネタに調をからかっていたりする。
「また来年も‥‥」
 え、と聞き返した静乃には最後まで聞こえていたが。何でもありません、と静かに微笑む姫にそれ以上追求せず。
「‥‥あの絵、見せてもらいに行こうなの」
 唐突に立ち上がって手を差し伸べる静乃に、びっくりした姫だったが。はい、とはにかみながら返事をすると、その手を取って賑やかな宴に混じっていった。