鳴つ霊殲滅作戦
マスター名:機月
シナリオ形態: ショート
危険
難易度: やや難
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2010/04/29 23:09



■オープニング本文

 −−泰国は回上、とある茶店。
 いつもなら上機嫌で飲茶をぱくついているはずの西渦(iz0072)が、珍しく難しい顔をして資料を見比べていた。探し回って漸く見つけたのだろう、息を切らせた男は安心した表情を一瞬浮かべたが。すぐにそれを隠すと、仏頂面を作って西渦の前に立つ。
「良いのですか、こんなところに居て。回上のお偉いさんから、すぐに事情説明の催促が来るのでは?」
 少々恨めしげな男の言葉に、溜め息一つ吐いて返す西渦。
「説明は一回で済ませたいから、ここで結果を受け取ったら行くわよ」

 事の発端は、街の近くで発見されたアヤカシの討伐依頼。西渦が回上を拠点に準備を進めていたのだが、その最中に別の一団が攻略に向かったのだと言う。犯行は川を挟んで北側にある、大典の街の有力者の仕業。余程自信があったのか、討伐隊出発と同時にその旨を伝える使者まで送ってきたのだから始末が悪い。そして使者の話から戦力不足と判断した西渦は救助隊を送り出したのだが、今度はそれが回上のお偉いさんには不服ということらしい。
(「犬猿の仲だって言ったって、張り合うような事じゃないでしょうに‥‥」)

 いつもと違う、少々疲れた様子の言葉に思わず目を丸くした男は、西渦にじろりと睨みつけられてしまう。だがその口から文句が飛び出す前に、土偶の錫箕が慌しく店内に飛び込んで来た。
「伝令でござる! 大典の討伐隊一行、壊滅でござるよ!」
 目を白黒するしかない男と違い、西渦はそのまま静かに土偶を問い質す。
「で? 被害は最小に抑えられたんでしょうね?」
 謂れの無い圧力は筋違いと判断したのか、錫箕は気にしない風に胸を張って、勿論でござると答える。
「皆、一命は取り留めたでござる。半分が重態、残る半分が重傷というところですな」
 うむ、あれは痛そうでござった、と頷く錫箕をそのままに、なら良いのと別の思案を始める西渦。
(「問題は数なのよね‥‥ でもある程度は持参してくる事を期待するしかないかな?」)
 ま、ここで考えていてもしょうがないか、と振り切るように立ち上がると。
「さてと。面倒な説明と一緒に必要経費をもぎ取ってきますか!」
 少々西渦の様子を心配していた男と土偶だったが。一転して見せた西渦の人の悪そうな笑顔を見ては、顔を見合わせて苦笑いするしかなかったとか。


■参加者一覧
恵皇(ia0150
25歳・男・泰
鷲尾天斗(ia0371
25歳・男・砂
鴇ノ宮 風葉(ia0799
18歳・女・魔
輝夜(ia1150
15歳・女・サ
剣桜花(ia1851
18歳・女・泰
 鈴 (ia2835
13歳・男・志
深凪 悠里(ia5376
19歳・男・シ
ブラッディ・D(ia6200
20歳・女・泰


■リプレイ本文

●戦端
 青竹を切り倒す硬い音と、それらが他を巻き込み倒れこむ音。次第にその騒々しさを増しつつ、待ち構える広場に近付いて来ていた。
(「興醒めしたかのように見逃された‥‥ あの敗北感は今でもちゃんと覚えてる」)
 形見でもある白鞘をきつく握り締め、雪辱を期する 鈴 (ia2835)は静かに時を待つ。その隣には槍で地を突き仁王立ちする輝夜(ia1150)と、こちらは片膝ついて目を閉じる深凪 悠里(ia5376)。その少し後ろにはこちらに気付き、笑顔で手を振る剣桜花(ia1851)の姿。
「月緋。アタシはいつも通りかな?」
 こっちに手を振るなと手振りと表情で返しながら、鴇ノ宮 風葉(ia0799)はぽつりと呟いた。
「ん? まあ、勇ましいかって事なら、いつも以上だけど?」
 ブラッディ・D(ia6200)は腰の木刀を突きながらふざけて返すが、必要以上には茶化さない。
「‥‥絶対に倒してみせるわ」
 ちらりと向けた嫌そうな視線に、でもわずかばかりの不安を感じ取ると。手伝うよと、摺り寄る事で言葉にせずに伝えるブラッディ。

「っと、そろそろだよな?」
 倒れこんでくる青竹を軽く弾き返して恵皇(ia0150)が声を掛ければ。
「ほれ、こっちだこっち!」
 鷲尾天斗(ia0371)は人が悪い笑みを浮かべながら、それでも射線が通った隙を逃さず拾った小石で雷鳴鬼を狙う。しかしその事如くを雷霊によって明後日の方向へ弾かれてしまえば。
(「なるほど。てっきり眉唾物だと思っていたが、これほど精確とはな」)
 にやりと笑みを浮かべたところで、竹林が途切れる。

 余裕を持って広場に飛び込んだ二人はその任を果たしたこと、広場の中央手前で一行に応えつつ竹林に向き直る。両手の飛手を打ち付け構える恵皇に、豪槍を横一文字に薙ぎ払う天斗。
「さて、命を賭けた遊戯の時間だ。お互い愉しもうぜ」
 のそりとゆったり踏み込んできた鬼は、その身に神鳴りを纏う雷鳴鬼。そしてその周りには厳つ霊たる雷霊の姿。雷鳴鬼は一行を認めて顔を歪めると。両手に刀をぶら提げて、広場を中央に向かってゆっくりと歩き始めた。

 最初に動いたのは恵皇だった。雷鳴鬼目掛けて体を滑り込ませれば、それを読んだかのように目の前に雷霊が現れる。
「思った通り、ってな!」
 掌に練った気を溜めながら、さらに踏み込む恵皇。真正面から突き上げた拳は僅かな抵抗に上へと逸らされるが、そのまま伸びかけた体躯を捻るように肘を打ち下ろす。だがそれすら軸をずらされ、前にのめる恵皇だったが。身軽な泰拳士の体捌きは、そこからさらに加速する。
「成程、確かに手応えが違うぜ!」
 よろめいたかのように確かに脇に逸れたはずの恵皇は、緩やかな円を描いて何時の間にかその間合いを詰め直し、真横から雷霊の芯を突き徹す。まともに徹った手応えは十分であったが、だが見た目には雷霊に変化は無い。皆がこれは長引くと認めたその時。輝夜の口から、雄叫びと共に殺気が叩きつけられた。
「汝等にはしばらくの間、我の相手でもしてもらおうか」
 既に六つにまで分かれていた雷霊の内、四つまでもが輝夜に引き寄せられ、じわりと移動し始める。雷鳴鬼こそ踏み止まったようだが、まずは十分。そう思うことにした輝夜は、四体の雷霊を引きつれ、広場の縁まで下がる。
「さすが何度も討伐隊を退けたアヤカシ、中々やる」
 死角から真正面に回りこみながら、雷霊へ切りつける悠里。恵皇と天斗に倣い、手数と意表をつく攻撃で出来る限り注意を引く心積もりだが。
「悠里さん、今です!」
 二撃合わせて往なした雷霊が動きを止めるところを見計らい、鈴は悠里へ声を掛ける。間髪入れずに突きたてた一撃は芯を貫通するが、手応えは軽い。
「鈴、今ので要領は分かった。牽制には俺が回ろう」
 目線を交わしてお互い頷きあえば、何とか活路が見出せようかという矢先。雷鳴鬼が吼えれば、広場の中央に雷球が猛り、そして爆ぜる。

●痛撃、そして‥‥
 広場に立てられた高さ二メートルほどの鉄の棒。雷は高い位置にある金属に落ちやすい、というのは開拓者でも知る者は多い知識であり、それを見込んでの策ではあったのだが。確かに雷撃は鉄棒にも落ちてはいたが、一行を狙ったものが逸れた訳ではなく。単に雷鳴鬼に邪魔な異物として数えられたであろう鉄棒は、放電を受けるとそのまま粉々に吹き飛んでしまう。そして一行は、同時にその威力を身をもって思い知る。
「中々効くのよね、あの雷撃‥‥」
 軽口を叩きつつも、杖を握る拳は既に白い。風葉の手を静かに握るブラッディと、それに頷いて答える風葉は、好機を待ってじっと耐える。

「‥‥目の付け所は良かった、のでしょうか?」
 突き抜ける衝撃に力なく呟く桜花は、鉄棒が飛び散る様に気力が萎えるのを感じてしまうが。周りの呻き声に我に返れば、力を奮い立たせて精霊へ加護を祈り始める。
「水遁も効かず、か。厄介だな」
 がくりと膝を突いた悠里は、だが上手く動かぬ体に鞭打ち、雷鳴鬼の注意を引く。牽制を続けるのは当然としても、更なる追撃を避けるためにも的を絞らせるのは得策ではない。
「この程度の雷撃じゃ、俺をいかせる事は出来ないぜ?」
 くつりと嗤う天斗も、完全に背後から一撃を受けている以上、そう余裕があるはずも無く。そしてその表情には狂気の影が浮びつつある。

 その中で、唯一傷が浅いのが鈴だった。左手に構えた精霊の小刀で見事に雷撃を切り払って見せれば、無傷とは行かなかったようだがおくびにも出さず。抜き身の刀を突きつけ、静かに体を撓ませる。
「今回こそ‥‥ お前は切り倒す‥‥」
 雷鳴鬼のいぶかしげな視線と、一瞬ながら睨み合う鈴。

「転がってる場合じゃねえ、よなっ!」
 輝夜がその大半を引き付けている内に、目の前の雷霊を落とす。出来れば雷鳴鬼に一撃入れておきたい所だが、そこまでしなくても気は引けるはず。崩れかけた膝に喝を入れると、間合いを詰める恵皇。その連撃を受け止めに動く雷霊に。
「戦闘中余所見をするな、阿呆が!」
 恵皇の動きに反応して目の前から跳ねるように動いた瞬間を見逃さず、天斗は精霊剣から平突へと繋げる一連の槍撃を叩き込む。蒼い力を纏った『火柱』が雷球を貫けば、燃やし尽くされるかのように掻き消えてゆく。
「まずは一つ!」
 残心の構えが解けると、そのままよろめくようにがくりと膝を突く天斗。だが後ろから照らされる光に、今度は活力が湧いてくるのを感じる。
「回復はお任せを!」
 己から溢れる精霊の加護を、等しく一行へと届ける桜花。自分が受けた傷を含め、癒せる傷は癒しつくした感覚に満足を覚えれば、後は他の者に事を託すのみ。
「鈴!」
「分かりました!」
 後方から飛び出し、斜め前方へ走り抜ける悠里を雷霊が追随する。鈴の目の前で動きを止めて刀を振るえば、それに合わせるかのように飛び込む鈴に合わせてその身を引く悠里。雷霊は消滅こそしなかったが、その輝きを幾分弱め、そして動きが格段に鈍くなったその時。雷鳴鬼のまさに真後ろから、二つの人影が飛び出した。

●暴走
 前衛の巧みな誘導が功を奏し、目の前には雷鳴鬼の背。輝夜が引き連れた雷霊はまだ健在だが、あの程度の威力ならしばらくは任せておいて大丈夫。そして雷鳴鬼に纏わり付く奴はあと一匹、それも明らかに萎んだと見れば、好機はここ!
 無言で飛び出した風葉は、ほとんど移動する事無く杖を構えて浄炎の詠唱に入る。その脇を、疾風の如くブラッディは駆け抜ける。一息に満たぬ間に距離を詰めると、踏み込むと同時に両手に構えた剣を振り上げ、その反動まで利用して空を舞う。足場も無しに、三メートルの鬼を越える位置に達すれば、その勢いを殺さぬままにくるりと体を回転させ、雷鳴鬼の頭を狙って踵を落とす。
(「ちょっ、なんてべたな奴!」)
 その初撃は、不意に空に向けて吼える仕草に、耳を削いで肩口を打つに留まってしまったが。そこからさらに躊躇無く軽やかに宙へ飛び出し、振り回した剣の反動を使って雷鳴鬼の視界から消えて見せれば。続く一撃は無防備な頭頂へ、ブラッディは見事に踵をめり込ませていた。
 そして体をふらつかせる雷鳴鬼を認めれば。風葉は杖を投げ捨て木刀を腰だめに構えると、そのまま詠唱する術式を強引に組み替えて突撃を敢行する。
(「アタシが本気になるのは今だ! 心で‥‥ 意地で斬って見せる‥‥ッ!」)

 咆哮が途切れるとほぼ同時に、鈍い打撃音が続いた。雷鳴鬼の背後から叩き込まれたその数撃は、その巨体ゆえに前方に位置する一行にはほとんど見えることは無かったが。がくりと倒れこむ雷鳴鬼の腹から生える木刀から、その持ち主の意地を垣間見た気がした。

 そして一行から歓声が上がる前に。動きを止めかけていた雷鳴鬼が、両膝を付いた姿勢のまま天を仰いで絶叫し始める。それに呼応するかのように、広場のあちこちに出鱈目に、先程爆ぜた雷球が出現し始める。
「風葉、下がって!」
 言いながらその襟を掴んで引き摺りつつ、間合いを無理矢理取ったブラッディは、両手に剣を構えて衝撃に備える。雷球は三つ四つと数を増やし続けているが、まだ爆ぜる様子は無い。
「力を溜めに溜め込んでいるみたいな‥‥ んだよ、お預けなんて性質が悪い女みたいだこと!」
 だが最初に爆ぜたのは雷球ではなく。輝夜に纏わり付いていた雷霊がその形を変え、そして轟音と共に輝夜へ突き立っていた。

「がっ‥‥!」
 球形に稲妻を纏っていた雷霊は、前後に引っ張られるように伸びつつ捩れ。遂には二メートルほどの投げ槍といった物騒な形を取ると、予備動作無しに弾けて飛び出していた。それは稲妻が落ちる轟音と共に輝夜の体を貫き、その内部で容赦なく爆ぜる。続け様に三発、その轟音と雷撃の固まりである鳴霊に貫かれれば、輝夜は流石に地に膝を突いてしまう。槍に縋り付き、地に伏すことだけは耐えていたが、ふと上げた目線の先に、輝夜は久しく見たことが無い絶望を見てしまう。最後に残っていた雷霊が分裂を始め、鳴霊と化した後にも分裂を繰り返す。そしてそれが三本を数えて己に降り注ぎ始めると。衝撃と共に意識が弾け飛ぶのを感じた気がした。

 あまりの出来事に、一瞬棒立ちになる一行。輝夜が倒れた場所に一個残った雷霊が、ふわりと次の目標を見定めたと感じた瞬間、広場に出来ていた雷球が今度は二つ、同時に爆ぜる。
「ぐは‥‥」
 体内を焼いて突き抜ける雷撃に、己の口から黒く焦げた煙を吐いた気になった恵皇は、思わず苦しいながらも笑みを浮かべてしまったが。次の瞬間それに気付きながらもどうすることも出来ない。
「回復は、‥‥お任せを!」
 来ると分かっていても、痛いものは痛い。それでも回復以外を一行に任せる以上、巫女として自分が回復を怠る訳にはいかない。途切れそうになる詠唱を無理矢理続け、回復の光で皆を照らした直後。
「‥‥え?」
 雷霊も、その癒しの光が脅威であることを察したらしい。音も無く桜花の目の前に移動していた雷霊は、分裂と鳴霊への変化を繰り返すと。幾発もの轟音と共に桜花の意識を刈り取った。

「なに、ぼうっとしてるのよ! 雷霊如きに好き勝手させるんじゃないわよ!」
 鈴! と名指しで風葉が喝を入れれば、あまりの出来事に忘れていた教訓を思い出す。
(「そうだ、兎に角手数を出して、相手の自由に行動させない、だ!」)
 皆さん、と声に出して戦略を確認する鈴の様子に、とりあえず場を立て直せたと感じる風葉。
「回復は任せなさい! ま、二撃は耐えられるのは見たかんね、勝手に倒れるんじゃないわよ!」

●戦いの果てに
 何時の間にか四体にまで数を戻した雷霊だったが、その先は一進一退の攻防が続いた。直後に分裂と鳴霊化を許してしまうが、的を絞り込めずに各個に放った稲妻には、皆何とか耐え抜く。雷鳴鬼の絶叫がいつまでも続く中、ぎりぎりの闘争が続く。
「残り‥‥ これで三つだな、増やさせんなよ!」
 恵皇の膝が突き刺さって雷霊が三体に減ると、遂に均衡が崩れ始める。悠里の牽制から天斗の槍撃が決まれば、続けて雷霊の数が減って残り二体。だがそこで流れを変えるのは、またしても雷鳴鬼。一瞬弱まった絶叫が限界を超えるかの様に、再度その勢いを増して雷球が放たれる。それは今までよりも一回り以上も大きく膨れ上がり、そして急激に凝縮を始める。
(「あれは拙い!」)
 皆一様に、それまでと振る舞いと規模の違う雷球の出現に覚悟を決める。持てる限りの気力を振り絞れば、恵皇の拳が雷霊を抉って天斗の槍撃が貫き。悠里の一撃が雷霊を切り裂けば、鈴の紅蓮の刀が雷霊を断ち切る。
 それでも、雷霊は瘴気となって消えそうになる力を掻き集めて、己を槍と化す。
「風葉さん!」
 最後に意地を見せる雷霊は、鳴霊と化すと今まで争っていた相手に背を向けて、さらに分裂してみせる。向かう先は、幾度と無く一行を癒した巫女。轟音と化して風葉を目掛けた稲妻は、だがその手前でブラッディの剣に阻まれた。
「ちょっと目移り、し過ぎなんじゃねえか? ま、その根性だけは認めてやるけどよ!」
 射線に割り込んだブラッディは、軽く刃先を合わせて二度振りぬくと、相手の勢いを利用してあっさりと切り裂いてしまう。真っ二つに断ち切られた稲妻は、二人を逸れて背後の竹林を貫いて消えた。

 そして、雷鳴鬼の絶叫が途切れると、姿勢はそのままに口から浄炎を噴き出す。
「折角なんだから。『劫火絢爛』、しっかり味わっていくといいわ!」
 風葉の一撃は既に致命傷であったが、前衛の四人はすかざず己の得物を雷鳴鬼に突き立てる。そこまでして漸く、広場に散らばっていた雷球も消え。遂には雷鳴鬼も瘴気に返り始めた。

 雷鳴鬼が刀も残さず瘴気に返ったのを見届けて、漸く気を緩めた一行は。申し合わせたように皆、その場に座り込んでしまった。その表情は消耗しきったもの、ふてぶてしいもの、様々であったが。
「人里に出る前に‥‥ ここで仕留める事が出来て良かった‥‥」
 年相応の笑顔を見せて呟く鈴の言葉は、皆の思いを代弁していた。
「っと、アンタたちの手当ては悪いけど後回し! 動けるのは手伝って!」
 気合い一つ入れて真っ先に立ち上がった風葉は、伏して動かぬ二人に走って寄ると。思った以上に重い傷にも動じず、その治療に当たり始めた。