超猫
マスター名:
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: 普通
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2010/04/07 23:45



■オープニング本文

 鍬をかついだ中年の男は、仕事に疲れた体を引きずりながらあぜ道を歩く。
 ふと、道の端に一匹の猫を見つけた。
 疲れもあってか無視していたのだが、何やら足元にまとわりついてくるのを見ると、その可愛らしさからついつい足を止めてしまう。
「どうした? 腹でも減ったか?」
 完全に猫の姿を模しているアヤカシは、その通りと答えるかのように男の首を爪で斬り裂いた。

 村人の一人がその異様な光景を見つける。
 二十匹以上の猫がぞろぞろ並んで村への街道を進んでくるのだ。
 しかもその一番後ろには、猫であろうが、ちょっとこう遠近法無視しすぎでしょう君は、というぐらい巨大な猫が二足歩行しつつ棍棒のようなものをかついで歩いていた。
「お前のような猫が居るか!」
 思わずつっこんでしまった村人は、大慌てで村に戻り、アヤカシが出たと叫んで回る。
 辛うじて、ほとんどの村人は避難が間に合った。
 しかしやはり逃げ足に劣る老人が数人と、これを救わんとした若者が犠牲となってしまった。
 そのまま村を占拠する猫達、というかアヤカシ達。
 村長はこのままでは家財一式全て回収する事が出来ぬと、借金覚悟で開拓者達に依頼する。
 総勢五十人にも満たない小さな村だ、その為の金を用意するのも楽ではないのだが、急いで対応しない事には家財道具が全て失われてからでは取り返しがつかなくなってしまう。
 もちろん、仲間の命を奪った怒りが何より先に来ているのだが。

 係員が集めた情報を元にアヤカシ達の戦力を分析する。
 率いるのはあの巨大猫アヤカシであろう。人間を探しているのか、家を一軒粉砕するのを見たが、見た目通り恐ろしく腕力のある猫、ではなくアヤカシらしい。
 また、問題なのは配下の猫アヤカシ達だ。
 何せ大きさが通常の猫とほとんど変わらため、とにかく小さく素早い。
 その癖、人一人の首を一撃で跳ね飛ばす程の威力を持っているのだから相手をする方はたまったものではない。
 更に調査を進めた結果、配下の猫アヤカシは、どうやら様々な術を用いるようだ。
 他所の例も参考に、この任務、可愛らしい容姿に惑わされてはとんでもない事になるような、厳しい任務であると理解する。
 ならばと開拓者の数もきっちり揃え、更に朋友の使用許可を申請する。
 係員はぼそっと溢す。
「猫好きな奴には頼めんなこれは。くっそー、もふもふした格好しやがって。何て賢い連中だ」


■参加者一覧
神町・桜(ia0020
10歳・女・巫
酒々井 統真(ia0893
19歳・男・泰
玲璃(ia1114
17歳・男・吟
鬼灯 仄(ia1257
35歳・男・サ
水波(ia1360
18歳・女・巫
ルオウ(ia2445
14歳・男・サ
綾羽(ia6653
24歳・女・巫
ルンルン・パムポップン(ib0234
17歳・女・シ


■リプレイ本文

 ルンルン・パムポップン(ib0234)が偵察から戻ってくると、すぐに村の地図を広げ状況を報告する。
「この辺でそのでっかい猫が、人間舐めたような表情で陣取ってました」
 他の猫達は数匹が超猫の側に居るのみで、建物の中にでもいるのか姿は見当たらなかった。
 また鬼灯 仄(ia1257)の提案で、朋友の猫又には首に赤い布を巻く事にした。
 何せ猫だらけだ。味方の猫がどれなのかわからなくなる可能性も大いにある。
 ルオウ(ia2445)がまず先行し、村へと向かう。
 村の表門より入り、そのまま主道を進む。
 時折ちらっと見える影のようなもの。恐らく猫アヤカシ達であろう。
 道の先に、巨大な直立した猫、超猫の姿が見えた所でルオウは足を止める。
 通りの左右に立つ建物からぞろぞろと猫アヤカシが姿を現したからだ。
 これが全部アヤカシかと思うとぞっとしないが、皆姿は愛らしい猫である。
 もの凄いやりきれない気持ちを抱えつつ、胸いっぱいに息を吸い込む。
 開戦の合図はルオウの咆哮。
 周囲一体に響いた声に、一瞬の間の後、姿を現した猫達のほとんどがルオウ目掛けてすっとんで来た。
「げっ!」
 流石にコレは効き過ぎである。
 慌てて身を翻すルオウ。これに何処からか神楽舞「抗」がふりかかる。
 上空で駿龍、夏香に乗って待機していた玲璃(ia1114)からだ。
 直後、後ろからもうどれが何だかわからん程の術が飛んで来る。
 元々術への抵抗は苦手ではない。心を強く保ち、細波一つ立たぬ水面のごとく平静に。
 何とか全て抗する事が出来た。
 そして一定の距離を下がった所で背後の地面に刀で線を引き、ここよりは一歩も下がらぬと不退転の決意を自らに言い聞かせる。
 更に懐に居る朋友、猫又の雪に向かって一言。
「雪! 無理はすんなよな!」
 懐からはうにゃっとお返事。
 後は当たるを幸い叩っ斬るのみ。
 あっという間に取り囲まれるが、その好機を活かし、両手に持った刀を大きく前に突き出す。
「うおおおおおおおお!」
 真後ろに振り返りざま、刀を横薙ぎに振るう。
 真横、ちょい上、下に軌道を変えつつ、回転を落とさずに真後ろまで振られた刀を、足を組み替え今度は正面まで持っていく。
 ただ闇雲に振るっただけで敵を捉える事など出来はしない。
 振り返った一瞬で敵との間合い、位置を測って刀の軌道を調節する、この妙技回転切りの肝はどれだけ威力を落とさぬまま正確に敵を捉えられるかにかかっている。
 剣術道場ならば満点をもらえる出来の斬撃。
 しかし吹き飛んだ猫達を見て、ルオウの瞳より一筋の滴が零れる。
 彼は、猫が大好きだった。

 酒々井 統真(ia0893)はぴょんぴょん跳ねながらルオウの後を追う猫達を見て、頬を引きつらせる。
「おいおい、大丈夫かあれ」
 不動をも用いており、防御回避能力を考えるに攻撃が一番ダメージとなり難いルオウに攻撃が集中するのは、総被損害を考えるに最も効率の良い形ではあるが、まあ何事も限度があるという話で。
 統真の人妖ルイも主と似たような顔だ。
「猫猫猫‥‥こんなに多いと、ちょっと怖いかも」
「っつっても逃げるわけにもいかねえしな」
「ん、いつも通り、支えるからね、とーま」
 おしっと気合を入れつつ後ろを振り返る統真。
「綾羽も出すぎるなよ。咆哮が切れた瞬間が一番危ないんだからな」
 綾羽(ia6653)は頷きつつ、朋友の猫又、絆丸に無駄と知りつつ声をかけてみる。
「‥‥絆丸? あなたもたまにはあれくらい元気に動いてみても‥‥」
 絆丸からはふわぁと欠伸でお返事。
 ルンルンはむーっと怒りに眦を上げていた。
「村人さん達の生活を守る為にも、放っておく事は出来ないもの‥‥それに、昔、お魚盗んだ猫を裸足で追っかけて、みんなに笑われた屈辱、忘れてないんだからっ!」
 つっこむと話がこじれそうなので、統真は聞こえないフリをして足を踏み出す。
「‥‥行こうぜ」
 真っ先に飛び込む統真、その全身が紅に染まる。
 奇襲の初撃。これで一気に数を減らす算段なのだ。
 ルオウを狙う猫達の中で、瘴気をまとわぬ猫又をまず潰す。
 その姿に気付いた第一の標的である猫が身を翻す。
 猫又が大地を蹴った直後、飛びすさる速度にすら追いつき掬い上げるような蹴り。
 その感触が、常の生物と違うアヤカシのものであった事がありがたかった。
 重さも若干猫より重いがその体を跳ね上げるには充分な蹴りだ。
 空中をくるんと回る猫又に、半身になりながら右腕を振り降ろす。
 手刀狙いを猫又は空中でかわしにかかったのだが、当たった場所が腕であろうと威力は一緒だ。
 地面に叩きつけられ、自らの足によらず再度飛んだ猫又に後ろ回し蹴り一閃。
 赤光に包まれた統真の連撃は終わらぬ。
 三撃目の手ごたえから、次の標的を狙い定める。
 下段の蹴りから入った一撃は、猫又が飛ぶのに合わせて中段に変化しこれを逃がさない。
 軽すぎる猫又の体躯は容易く跳ね飛ぶも、一足で飛び込み追いつき中段突き。
 胴中央ではなく下をかすめるように放たれた拳に、猫又の体が空中で縦にぐるりと回る。
 これを継ぎ目すらわからぬ程、自然な所作で振り上げた踵の一撃で叩き落す。
 体の節々に無理が出始め、一呼吸で動ける限界が近づいているのに気付きつつも動きは止めず。
 更に別の猫又を、両の拳に気合を乗せつつ、力は入れずの自然体。
 最後に来て最速の三連撃。
 猫又の胴に拳の痕が三つ刻み込まれ、地に伏す頃には、統真はふっと強く息を吐きつつ腰を落として周囲を警戒する構えを取る。
「三つ、か。案外しぶといな」
 瞬く間に三体の猫又を仕留めた統真は、守るべき巫女綾羽の姿を一度だけ確認する。
 ぴんと伸ばした背筋で扇子を手に舞を舞っている姿は、女性にしては高い身長も相まって優雅で流麗な迫力を伴っている。
 が、その表情は淀みない舞の所作とはまるで違う、何というか、多分あれ、目に涙が溜まっているのだと思われ。
 そうか、猫好きか、とこちらにもつっこむのは止めてやる統真であった。
 上空にて駿龍、驟雨に跨るは水波(ia1360)だ。
 瘴索結界にてやたら小さな猫アヤカシの居所を確認しているのだ。
 効果範囲の問題もあるが、やはり上から索敵が出来るのは強い。
 ルオウの周りに山ほど。少し離れた場所に数匹。
 注意すべきは屋根の上に居る二匹。
 これは遠距離攻撃でもなくば届かないだろうし、そもそも、下からでは位置がわかりずらい。
「右奥の屋根です!」
 統真は動けない。ルオウ周りの猫又を削り取るのは彼の仕事だ。
 だからこれに応えたのは自称ニンジャなシノビのルンルンである。
 そして水波はルンルンの動きを見逃さぬようにしつつ、予定とは違うがルオウの援護も準備する。
 治癒の術と二つの舞とを両立させるのは、さしもの玲璃とて厳しいだろうから。
 ルンルンは家に向かって走ると、勢いそのままに飛び上がり、家の壁を蹴り飛ばす。
 同時に飛び出している屋根瓦の端を手で掴み、掴んだ手を基点に蹴り飛ばした勢いでくるっと一回転。
 そこそこの高さがあり、飛び出した斜めの瓦が邪魔で登り難いはずの屋根にあっさりと飛び乗った。
 下の動きには注意を払っていた猫又だが、ルンルンのそれこそ猫のような身のこなしは予想していなかった模様。
 ルンルンは瓦を蹴り飛ばしながら踏み込み、逆手に持った刀を振りぬく。
「ルンルン忍法くりてぃかるひっと!」
 つっこみ所だらけな言動も、何せアヤカシなので文句の一つも言えやしないのである。

 戦闘開始より時が経つも猫達のボスである超猫が参戦してこないのは、仄が神町・桜(ia0020)と共にこれを抑えているからであった。
 超猫の持つ棍棒が仄へと叩きつけられる。
 前へ踏み込むフリを見せた後での事だ、真後ろに下がって危なげなくこれを回避する。
 しかし、大地に跳ねた棍棒の次の動きまでは見切れず。
 超猫の巨体がずいっと前にズレ、そのまま棍棒を突き込んで来た。
 まともにこれをもらってしまい、一瞬、完全に呼吸が止まる。
 更に横薙ぎの一打で大きく跳ね飛ばされてしまう。
「鬼灯!」
 駆け寄る桜の両脇から、化猫が襲い掛かり腰と二の腕を切り裂く。
 小さい悲鳴を聞いた仄は思わず声を上げてしまう。
「桜坊!?」
 駆け抜けた二体の化猫に、それぞれ桜の朋友、猫又の桜花と、同じく仄の朋友、猫又のミケが当たり次撃を防ぐ。
 これまでもこの二体が化猫を押さえていたのだが、技量は敵が一段上手のようだ。
 最早ミケが主ではなく女性を守りに行く事に関して、仄は一切の疑問を感じないらしい。
 仄が隙を見てはこの二体に攻撃を仕掛けているので、とにもかくにも桜を守れればと二匹の朋友は必死にこれに喰らい付いている。
 苦痛を堪えながら桜は、仄の側まで来ると片眉を上げて抗議する。
「だ、誰が坊じゃ、そういうヤツは回復はしてやらぬぞ」
 そんな事を言いながらも恋慈手にて仄の傷を癒してやる。
 自分の怪我より先に仄を治療する桜を見て、仄はこんな時だというのに、つい零れる笑みを止める事が出来ない。
「へいへい。だが、こりゃ余程性根を入れてやんねえと持ち堪えられねえぞ」
「うむ、可愛さを捨てた分強くなったのじゃろう。でもなければあの憎ったらしい容姿は説明がつかぬ」
 それは大して関係無いだろ、とか思いつつも、アレが憎たらしいという所には心底同意出来る。
 何せ速い、強い、手数が多い、更に知恵が回るとあっては、ただ抑えているだけでも一苦労だ。
 それでも何とか持ち堪えるしかない。
「あいつらはまだか。あんまり遅いと片付けちまうぞ」
「へらず口を叩くでない」
 へっ、と笑って仄は再び超猫へと向かっていった。

 咆哮が切れるとルオウは再びこれを仕掛けるべきか迷う。
 恐らくまたこの辺一帯の猫アヤカシはルオウを狙うだろう。さっきのは本気でヤバかった。
 ちらっと上を見ると駿龍、夏香に乗った玲璃と目が合う。
 大きく首を横に振ってきた。
 現状でも超猫を抑えている仄達とは距離がある事もあって、今ここにいる猫アヤカシがそちらに流れる心配は少ない。
 となれば、後心配なのはルオウ、統真と共に地上に居る綾羽だ。
 位置的にそう数は流れないと踏んでこのままで行くと決めた。
 大体、このままでも既にかなりの数に取り囲まれているのだ。
 玲璃からの二種の舞、速と抗がこんなに頼もしいとは思わなかった。
 心得ているのかルオウの側には寄らない統真。
 ありがたいと回転斬りを繰り返す。
 厄介な猫又も、統真やルンルンへと標的を変えており、後は化猫の群を倒しきれるかどうかだ。
 常より鋭い剣先、機敏に反応する体、心の揺れを治めてくれる春の日のようにうららかな律動。
 敵との交戦に集中しているルオウに、舞を舞う玲璃の姿が常時見えているわけではない。
 それでも心に、体に響く感動に似た感覚は、ルオウの体の奥底に眠る力を信じる玲璃の舞がもたらしたものだ。
 或いはそれは儀式なのかもしれない。
 ルオウの力を引き上げる、そんな自身であれるよう、心をそうあるべき場所に収めるための。
 舞う事で精霊に語りかけている今の玲璃は、その瞬間は人ではなく精霊そのものではないかと思える程に美しかった。
「‥‥時々、男だって事忘れるよな」
 などとぽつりと呟くルオウであった。
 統真もルンルンも数度敵の術中にはまってしまっていた。
 抗する為の術を受けていて尚通る強力なまやかしには、さしもの二人もてこずったが、積み重なった不利が雪崩を打って決壊する直前、決まって届く玲璃よりの癒しの輝きがこれを支え、何とか凌ぎきった。
 綾羽もまた、治療と平行して舞を続けていた。
 こちらは玲璃とは違い、赤い舞傘を開きゆるゆると、しかし大きく動く舞である。
 何処か硬質な触れ得ざる高貴な雰囲気のある玲璃とは対照的に、綾羽の舞は親しみやすい見たもの全てが思わず笑みを溢すような、誰にとってもわかりやすい舞である。
 その横で、交戦中だというのに暢気にさぼっている猫又、絆丸の存在もそれに一役買っているのは間違いないであろうが。
 そんな舞に惹かれたか、はたまた赤い傘が気に障ったか、化猫の一匹が綾羽へと迫る。
 舞の最中に攻撃を受けるのは、開拓者として戦に出る以上当然予想すべき出来事だ。
 綾羽もまた攻撃に晒されながら役割を果たす覚悟を決めてもいるが、不意に、うにゃら〜とだべっていた絆丸が動く。
 閃光を放ちその目を封じ、鎌鼬により化猫を追い返す。
 もう今すぐ抱きしめ撫でてやりたいのを堪えつつ、綾羽は後で全力全開でもふもふしてやろうと心に決めた。
 ルオウが咆哮を控えた事で、ルンルンへの支援に集中出来るようになった水波は、それだけでは足りぬと更に踏み込む。
 駿龍、驟雨にルンルンが狙う猫又の上を飛び行かせるだけで、充分な牽制になるのだ。
 屋根の上で一人戦うルンルンに錯乱はあまり意味が無く、主に幻惑と呪声にて体力を削り取りにかかる。
 水波の加護法を受けて尚突き抜けた幻惑に動きを惑わされたルンルンは、キレたというわけでもないだろうが、符を取り出し術を唱える。
「パックンちゃんGO!」
 ずずいっと現れたのは朋友としては珍しい大蝦蟇の姿をしたジライヤであった。
 もちろんルンルンはその頭の上に足を揃えて立ち、手を複雑な形で組んだままだ。
 驚き慌てた猫又は、ジライヤのパックンちゃん(ちゃんまでが正式名称らしい)に呪声を浴びせかけるが、確かに損傷を与えてるにも関わらず、さして気にした風もなくパックンちゃん(ちゃんまでが略)は手のひらを大きく開いて横薙ぎに殴りつける。
 びったーんとエライ音と共に屋根の端まで吹っ飛ぶ猫又。
 数度どつきあった後、肉体的な攻撃より幻惑の方がより効果が高いと理解した猫又に幻惑を受けると、ルンルンはならやーめたとばかりに集中を解き、パックンちゃん(ちゃん略)を送還して屋根の上にすとっと降り立つ。
 そしてワンドを独特の体勢でくるりくるりと回し振り上げ、猫又にびしーっと突きつける。
「ジュゲームジュゲームパムポップン‥‥ルンルン忍法ファイヤーフラワー!」
 つっこんだら負けというゲームではないのだろうかと、天から見下ろす水波が思ったかどうかは定かではないが、ルンルンの周囲から巻き上がった炎は猫又を包み込みこんがり程よい感じに、黒焦げにしてやった。

 最後の一匹、飛び込んできたこの一撃に対し、ルオウは刀を振り切った姿勢のためかわす動作が一瞬遅れてしまった。
 すると、懐からひょいっと顔を出してきた雪が片手だけを出してうにゃっと手招きをする。
 手の先より生じるは鎌鼬。
 このため攻撃を為しえずふっとぶ化猫に、ルオウがトドメの一撃をくれてやりこの場は決着が着いた。
 統真、ルンルンと目を合わせると三人は同時に頷く。一刻も早く超猫の元へと向かわなければならない。
 三人共もうロクに練力も残っておらず、統真の人妖ルイも、ルオウが洒落にならない集中攻撃を受けた時、その回復に練力を使い切ってしまっていた。
 常に支援を絶やさず戦い続けていた巫女三人もかなり消耗はしていたのだが、流石に練力自慢が揃っているだけあって、まだ援護する余裕が残っていた。
 ならばまだまだ戦える。
 六人が超猫戦線にたどり着くと、そこでは仄と桜の二人が並んで肩で息をしていた。
 化猫は二匹とも成敗済み、その代わりこちらの猫又二匹も危険域であったので退避中。
 二人は同時に振り返り、一同に向かって怒鳴りつけた。
『遅いっ!』
 どつかれ過ぎて、ちょっと目がぐるぐる回っている仄。
「コイツ、絶対猫じゃねえよ。こんな猫が居てたまるか」
 ひっきりなしに治癒をし続けていたせいか、練力切れ寸前で荒い息を漏らす桜。
「全員揃ったようじゃの。では‥‥ここから本気で行くのじゃ! 桜花、全力全壊じゃ!」
 建物の影に隠れていた桜花が、とっておきの黒炎破をぶちかます。
『今までの借りを全て返すのじゃ! 釣りはいらないからとっておくにゃ!』
 これを合図に、皆が一斉に踊りかかる。
 次弾は夏香のソニックブームだ。
 玲璃の合図に応え、高周波の衝撃が超猫を切り裂く。
 綾羽の神楽舞「速」を受けたルンルンが早駆にて一瞬で間合いを詰める。
「逃がさないんだからっ‥‥シュリケーン!」
 と言いつつ右足に刀で斬りつける。
 何故か大激怒のルオウによる、瞬速の三連撃。
「てめえだけはゆるさねえ!!」
 猫を斬るハメになったのが余程お気に召さなかった模様。
 統真は敢えて超猫の正面に立つ。
 轟音と共に振るわれる棍棒、これを目を見開いて見切り、踏み込みざまにかわしてのける。
 そしてルオウの斬り開いた傷口に拳を三打。
 同時に飛びのいた統真に代わり、揺れる超猫の前には仄が刀を鞘に納めたままで立つ。
 最後の力を振り絞り、超猫の棍棒が仄を襲う。
「バカヤロウ、何度見たと思ってんだ」
 くぐりぬけざま、脇腹に居合い一閃。遂に超猫は地に伏す。
 最後に水波が瘴索結界により村にアヤカシが存在しないことを確認し、任務は終了した。

 村人達が戻る前に、倒した猫達の供養を行う開拓者達。
 相手はアヤカシではあるが、猫好きが集まったこの面々には、これをせずに去る事が出来なかったのだ。
 報告を聞き終えたギルド係員はぽつりと呟いた。
「‥‥いやさ、猫退治って依頼で何で猫好きばっか集まるのさ」
 彼は最後までわかっていなかった。
 猫大好きな人間が、猫好きでない者に猫が退治されるのを良しとするはずもないという事を。