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■オープニング本文 魔の森より出で来し二人の少女。 一人は黒いドレスにその身を包み、腰まで垂らした同じく漆黒の髪が風になびく。 一人は白い長衣で足首までをすっぽり包み、銀色に輝く肩口で揃えた髪がいたずらっぽく跳ねている。 この二体に向かうは、歴戦の戦士達二十人。 白衣の少女が、黒衣の少女に先んじて身の丈にして倍はあろうかという大男達に向かって駆ける。 振るう刃を潜り、華奢にしか見えぬ足を神速にて振るうと、ただの一撃で大男は彼方までぶっ飛んでいく。 どうやら長衣にはスリットがあるようで、蹴り飛ばした薄白い素足が腿までむき出しになっている。 戦士達はありえぬ少女の一撃にも臆する所なく更なる攻撃を。 袈裟に下ろされた刀を仰け反ってかわしつつ、大地を蹴る。 足首より先しか動かしておらぬ程度の僅かな挙動なれど、飛び上がる勢いは、振り上げた膝がぶち当たった男の頭部を粉砕する程だ。 くるりと空中で体勢を変え、まだ倒れる事すらせぬ頭部を失った男の体を蹴る。 いかなる奇跡の技か、男の体は倒れぬまま、少女のみが加速し空を駆ける。 真横に振られた二筋の銀光を身をよじってかわしつつ、標的直前で足を勢い良く下より上へと振り回すと、その全身がくるっと一回転。 踵を標的の頭頂に叩き込み、頭部全てを肩口までめり込ませる。 更に男を踏み台に後ろに飛び抜ける。 宙を舞うその姿の、何と艶やかな事か。 着地と同時に振り返る。 すぐ眼前には駆け寄る男の姿が。 男の槍より早く彼女が輝きに包まれた拳を胴に叩き込むと、光が爆ぜた。 全力で振るった彼女の拳は閃光の帯を生み、男は跡形も無く消し飛んでしまう。 そこで、白い長衣の少女は大きく飛び上がり、最初の黒いドレスの少女の下へ戻る。 どうやら選手交代らしい。 黒いドレスの少女が両手を前に翳すと、黒い瘴気が集まり、その手に巨大な鉄槌が現れる。 どう考えても少女よりデカイ。ジルベリア的に言うなればビッグハンマーである。 これを軽々とかつぎ、横薙ぎに一閃。 喰らった方はたまったものではない。壁が高速でぶっとんでくるようなものだ、かわしようなぞあるわけがない。 激突の瞬間、こぱーんと音がして全身が爆ぜる。 これほどの大質量、振った後ならば隙だらけと残る男が黒いドレスの少女に迫る。 少女はハンマーの回転速度を更に上げ、自身の周囲をぐるぐると回す。 止まりきれなかった男が二人巻き込まれ体の半分を削り取られる。 少女は攻め手に困った男達に、ぐるぐる回ってさんざ勢いをつけたハンマーを、踏み込みながらぶち込んだ。 打つ手無しとはこの事か。 残った男達は仕方なく退却を決意する。 ハンマーをかつぎ直した黒いドレスの少女の横に、白い長衣の少女が並ぶ。 二人はそれぞれ右手と左手を、重ね合わせるように突き出す。 両の手の前に黒い渦が巻き起こり、それはすぐに竜巻へと変化し、二人がそうあれと願った瞬間、瘴気の濁流となって男達に襲いかかった。 全てを黙らせた二人は、満足気に森の住処へと戻っていくのだった。 兵士達はこの二人を、魔の法に則り動く少女、魔法少女と呼び恐れた。 そして今回依頼されたのは、この魔法少女二人を退治せよという事であった。 「‥‥いや、普通にアヤカシでよくね?」 「固体ごとの識別が出来た方が便利でしょ」 「にしたってお前魔法少女はねえだろ。兵士達がそう呼んでるって本当なのか?」 「はっはっは、バカだなぁ先輩は。私が昨晩決めた名前なのに呼んでるわけないじゃないですか」 「‥‥‥‥誰か、コイツマジで地の底に埋めちまってくれ」 ギルドではそんな会話があったとか無かったとか。 |
■参加者一覧
美空(ia0225)
13歳・女・砂
小伝良 虎太郎(ia0375)
18歳・男・泰
向井・智(ia1140)
16歳・女・サ
詐欺マン(ia6851)
23歳・男・シ
ベルンスト(ib0001)
36歳・男・魔
猫宮・千佳(ib0045)
15歳・女・魔
ロック・J・グリフィス(ib0293)
25歳・男・騎
アーネスティン=W=F(ib0754)
23歳・女・魔 |
■リプレイ本文 開拓者一行は警戒しながらアヤカシの領域を進む。 そんな中でも、話をする余裕ぐらいはあるようで。 向井・智(ia1140)はつくづく疑問でならない事を口にする。 「魔法少女‥‥。いやなんというか、何故少女の姿を‥‥」 ロック・J・グリフィス(ib0293)は事前に敵アヤカシである魔法少女に関しての情報を集めていた。 正直、傷の痛みより頭の方が痛くなるような話であったが。 「魔法少女と魔術師の少女の区別が今一わからんが、ギルドの者がそう命名したのなら、そこに何かしらのこだわりがあるのだろうな」 これに猫宮・千佳(ib0045)が口を尖らせる。 「本物の魔法少女はあたしなのにゃ。アレはアヤカシっ」 いやだから俺が聞きたいのはーとか言いかけて、不毛な気がしたので黙っている事にしたロック。 小伝良 虎太郎(ia0375)は邪気の無い顔で問う。 「へぇ、じゃあ千佳も魔術師だけど実は泰拳士みたいな肉体派なんだね」 頭の上にハテナが出る千佳を他所に、小首をかしげる虎太郎。 「ところで、その魔法少女が着てるっていうヒラヒラな服って戦闘に向いてるのかな。おいらも着たらもっと強くなれるんだろうか」 流石に誰かつっこまんとマズイだろうと思ったのか、アーネスティン=W=F(ib0754)は冷静に語る。 「やめとけ、アヤカシの真似して強くなれるのなんて陰陽師ぐらいだろう」 得心したのか笑って頷く虎太郎。 つーんとそっぽを向いているのは美空(ia0225)だ。 「相手が魔法少女なら美空は巫女さんなのであります。こと萌えキャラクラスとしては魔法少女とは双璧なのでありますよ」 ベルンスト(ib0001)は心底呼び名などどうでもいいと思っているのだが、それをこの場で口にしないだけの分別というか危機回避能力は持ち合わせていたりする。 いい加減話の流れを変えてくれとばかりに、詐欺マン(ia6851)に目で助けを求める。 詐欺マンは予想される戦闘状況を想像しつつ、ぽつりと絶望的な未来予想図を口にした。 「つまり‥‥美少女に大人が寄ってたかって、でおじゃるな」 「‥‥言うな」 ベルンストの苦悩は晴れない。 一行の前に最初に姿を現したのは黒い魔法少女であった。 岩場の上で両足を組んだままでこちらを見下ろす。 岩場の下には、何処から現れたのか白い魔法少女が。 両腕を組んだままこちらを睨みつけている。 千佳は開拓者ならば気付けるだろう強者の気配にも怯える事なく、気丈に声を張り上げる。 「魔法少女マジカル♪ チカ参上にゃ♪ あたしの前で魔法少女なんて100年早いのにゃ!」 ぴくっと、白魔法少女の眉が動く。 同時に黒魔法少女が岩場の上から飛び降りた。 全員の視線がそちらに移った一瞬の隙に、白魔法少女が踏み込んできた。 真っ先に動いたのは詐欺マン。 斜めに構えた槍の柄で、拳の弾道を見切ってこれを受け止める。 ぎしぃっと槍がしなり、踏み堪える詐欺マンの足が大地を削って後方へと引きずられていく。 「この先を行きたければ、まろを倒していくでおじゃる」 すぐに後衛達が散開したのは、流石は開拓者達という所であろう。 そして駆け寄ってくる黒魔法少女。 両の手より瘴気が溢れ、巨大はハンマーを作り出しながらこちらも恐るべき速度で踏み込んでくる。 右脇に振り上げたハンマーに合わせ、智もまたこれに駆け寄りつつ右脇に大斧を大きく引き寄せる。 人とアヤカシ、互いの意図が一致する。 お互いの体を狙わず、その前の空間へ、そう、どちらの威力が上かを競うために槌と斧とを叩き付けあう。 音高く弾かれるは智の大斧。 弾き飛ばされそうな衝撃を腕力のみにて堪えつつ、大斧を後ろを通して今度は左側より振り薙ぐ。 その技に驚いた黒魔法少女は僅かに対応が遅れ、叩き付ける事も出来ず巨大なハンマーでこれを受け止める。 弾かれるように両者は距離を取る。 不意に黒魔法少女がその身をよじる。 反射的な行動であったが、その眼前を金属の薔薇が飛びぬけていく。 半端な攻撃ではその動きを制する事は出来ない。 そう判断したロックは渾身の力を込めた槍で、周囲一帯を薙ぎ払う勢いで襲いかかる。 恐るべきは黒魔法少女か、智の大斧をすらはじき返す質量のハンマーをその手にしながら、舞うようにひらりと後ろへ飛び下がる。 それでも、ロックが為すべき事の第一歩は成功している。 こうして少しづつ、白魔法少女との距離を取らせるのがロックと智の役割なのだから。 詐欺マンは数手を合わせて理解した。 まともにやったらコレ絶対無理だと。 例えば、そう今である。 前方より回し蹴りが来たので槍をかざしてこれを受ける。 槍の中でも最大級の重量がある朱槍ですらこれを防ぎきれず、衝撃が受けた腕を痺れさせる。 が、そんな泣き言を無視して今度は後背へと槍を回す。 向きを変えてる暇なんてない。とうに白魔法少女は詐欺マンの頭上後方に飛び上がっており、こんなトンデモキックを後頭部にぶちこもうとしてるわけだ。 振るわれた踵をこれまた槍にて受け捌く。いや、捌くとか無理。槍ごと頭を蹴り飛ばされて危うく転倒しそうになるのを堪える。 背後の大地がじゃりっと削れる音がする。 振り向きざまに、胴中央正中線に沿った形で槍を立てる。 拳がきらりと光ってるのを見て、身をよじりつつ受け流し。 詐欺マンの脇を、何かもー良くわからんビームが突き抜けていった。 肩が半分ぐらい焦げたっぽい。 それでも閃光に気を取られはしない。 何故ならその足がぼやけて見えるから。 軌道を捉える事すら出来ぬ上段回し蹴りは、詐欺マンの頭部を強打し、流石の詐欺マンも意識を失いかけたのかふらっと前方に倒れる。 ふにっ。 柔らかい小ぶりの丘にその手をついて、何とか転倒を免れた詐欺マンは、ふうと息を一つ。 「じ、事故でおじゃる」 おもっくそぶん殴られ宙を舞った詐欺マンの視界に映る仲間達、特に女性陣の目が冷ややかに見えてならないのはきっと詐欺マンの気のせいであろう。 まあ実際の所気のせいで、仲間達は洒落にならない白魔法少女の速さについていこうとするので必死だったのであるが。 ベルンストは叫ぶ。 「まずはあの足を止めんとどうしようもない! 危険は承知だ、踏み込むぞ!」 虎太郎が声を聞いてぎょっとするが、ならばと手の平に気の塊を作り出し備える。 アーネスティンも同様に構えたのを見て、千佳は間合いを詰め射程距離を確保する。 「まずは動きを遅くするにゃ! マジカル♪ コールドにゃ!」 マジカルって何だ、とか思ってる余裕もないベルンストも同時に冷気を白魔法少女に叩き込む。 しかし動きに動いてるせいか、はたまた熱き血潮でも燃え滾っているのか、凍結効果は得られず。 ぎろりと睨む白魔法少女に、その視界から仲間を隠すようにアーネスティンの稲妻が、そして虎太郎の気弾が襲い掛かる。 その間に、詐欺マンの側には美空が駆け寄っていた。 「き、危険でおじゃるよ‥‥」 「そうも言ってられないのであります」 淡い光が宿る手が触れると、傷がみるみる癒えていく。 舞を舞う暇すら惜しんで治癒に努めなければ、回復が追いつかないだろう。 あの手数の多さは想定外である。 「氷結が通れば、何とか打開の機会はあるであります」 「わかったでおじゃる」 「それと、いくら少女が好きとはいえ戦闘中は控えた方がいいであります」 「‥‥‥‥」 誤解をとくのは後にしようと、詐欺マンは再度白魔法少女へと突貫していった。 絶望的に思えた戦況であったが、ベルンストは静かにその機を待つ。 敵の動きではない。自らの内面の問題だ。 ずきりと痛む傷の中、集中を途切れさせず自らが最も充実する瞬間を探る。 常ならば、と考えるのは止めた。 今出来る最大で挑む以外に、何が出来るというのか。 そう決めた時、脳の後ろから天へと突き抜けるような感覚を覚える。 と、同時に詐欺マンをすり抜けこちらへと駆け寄る白魔法少女。 口が、心が、体が、自然と動いてくれた。 あの異常に跳ね回る右の足を封じる。 放たれたベルンストの冷気は大気の水分をも凍らせ、白魔法少女の右足にまとわりつく。 さしもの白魔法少女も、片足が凍った状態では踏み込みきれない。 おかげで何とか詐欺マンが間に合う。 駆け寄った詐欺マンに振るう拳も、基点である足を止められては精彩を欠いてしまう。 機を見るに敏なのか、千佳が号令をかける。 「うに、ここは一気に連続攻撃にゃー♪ 全力全壊、マジカル♪ サンダーにゃー♪」 台詞の内容はさておき、と苦笑しつつアーネスティンも続く。 二筋の稲光が白魔法少女を貫くと、満を持して虎太郎が気塊を胴中央へと叩き込む。 それをすら回避する白魔法少女の身体能力は飛びぬけたものであったが、そうするためには、後方へと下がらざるをえない。 下がれば押し、引く余裕が出来る。 完全に陣形を建て直した開拓者達は、後一歩という所まで白魔法少女を追い詰める。 智はヒドイ有様であった。 白と黒が合流しては一大事とその配置に気を使いつつ、黒魔法少女のハンマーを全弾その身で受け止め続けてきたのだから。 不動の術があって尚、痛烈な攻撃であったのだ。 ロックもまた真っ白な槍にて牽制を行ってくれているが、こちらも怪我のせいで無理は出来ない。 白魔法少女が潰れるのが先か、智達が潰れるのが先か。 そんな勝負に横槍が入る。 槍に斬り裂かれ、雷に貫かれ、気弾をたたきつけられながらも、大きく宙を舞った白魔法少女が、こちらへと飛び込んで来ていたのだ。 二体の位置関係を把握出来るよう常に動いていた智であるし、その間にあるようしていたのだが、黒魔法少女が巨大なハンマーを放り捨てて飛び上がると予想外の俊敏さに対応が間に合わず。 間に合わぬと悟った皆は散開を始めるが、おそらく、それでも二、三人は巻き込まれる。 二体は着地と同時に手を絡め、闇を集める。 「合体ビームなんて羨ま――危険なものは撃たせませんよ!」 どうせ避けられる位置ではない。そう見切った智は、こちらから二体に向けて駆け出した。 一呼吸の間に両手を広げる程の大きさに育った瘴気球。 智はこれに向けてありったけの力で大斧を振り下ろした。 「っだあああああああああああ!」 弾く力に負けまいと両腕を奮わせると、斧がじわりじわりと瘴気の中に食い込んでいく。 ギリギリ、二体の速さが勝る。 球より放たれた黒き波動が智の全身を覆うが、それでも、智は諦めていなかった。 力が放たれた事により抵抗が失われた黒球を、波動に侵されながら智の斧が斬り裂く。 そのまま重ね合わせた二人の手の平に斧が叩き込まれるまで、智は力を緩めなかった。 一直線に伸びる黒い輝きが真っ二つに割れ、白と黒の魔法少女は跳ね飛ばされて大地を転がる。 虎太郎はここが勝負と転がる白魔法少女の側に駆け寄っていた。 「この距離で、かわせるもんならかわしてみろっ!」 拳と共に放った気功の力は、ようやく白魔法少女の動きを止めたのだった。 残るは黒魔法少女のみ。 しかし、皆の援護があっても、黒魔法少女は容易く崩れてはくれなかった。 放り投げたハンマーを再度瘴気にて作り出して縦横無尽に暴れまわる。 詐欺マンは既にぐろっきー。 怪我云々もそうだが、治しては殴られ治しては殴られを、明らかに上の技量の者を相手に繰り返していたのだ。 ここまでよく神経が持ったと褒めてやるべきだろう。 美空の術によりもーどーしよーもないぐらいへろっへろでぼっこぼこであった智が、何とか持ち直して黒魔法少女を抑えている。 黒魔法少女も必死だ。 智にハンマーを叩き付け、その意識が一瞬飛びかけた隙に奥へと飛び込む。 冷気が、雷撃がこれを襲うも踏み堪えて更に奥へと。 振りかぶったハンマーにて、一撃で戦況を覆さんと試みる。 標的の一つにされたアーネスティンは冷静に、その足元へと雷撃を放つ。 ハンマーは無視したまま雷は足ごと大地を削り取り、黒魔法少女の姿勢が斜めに崩れる。 「独楽の軸をぶれさせると、どうなると思う?」 それでも一回転はと両腕に力を込める黒魔法少女。 その剛力を止められるものなど、この場に存在しない。 アーネスティンと狙いを同じくするロックは、これでトドメと低く滑るように黒魔法少女に駆け寄り、純白の槍にて綺麗に足元を突き払う。 斜めに振るおうとしていたハンマーはこの一撃で完全に方向を失い、大地に轟音とともに突き立つ。 ハンマーに振り回されるように転倒する黒魔法少女を尻目に、ロックのリボンがきらりと光を放った。 「そのような重い武器を軽々と‥‥と言いたい所だが、軸さえずらせば、ふっ。これこの通りだ」 随分と余裕があるもんだ、とアーネスティンはさらっとスルー。 どたどたと駆け回るのは美空だ。 全身が泣きそうなぐらい痛いのを、涙目になって堪えてる智に、はいっと恋慈手。 「絶対に勝つであります」 「うん!」 そしてやはりここぞで叫ぶは千佳だ。 「一体になれば合体技も怖くないにゃ! 皆で一気に倒してしまうのにゃ〜♪ ‥‥マジカル♪ フルボッコ?」 正しい。とことん正しい言葉である。 練力も不足してきた皆であるが、奴が転倒しているここが好機とありったけを振り絞る。 近寄られたままの状態でアーネスティンが振り上げた両腕に炎が絡みあがる。 突き出した右腕、その先に炎の帯が集まり一瞬で火球を作り出し、指先が指す方へとまっしぐらに飛び行く。 ロックの白槍が大地をなめるように黒魔法少女へと迫り、下生えを切り裂き、腹部目掛けて伸びていく。 千佳の全身に青白い稲光が走る。 手先、足先より波打つ青白い雷は、胸の前から放たれた瞬間、蒼穹のごとき剣と化す。 ベルンストの力によって集められた真っ白き神の力。 右腕を後ろに引き、左腕にて狙いを定め、矢となった奇跡を解き放つ。 詐欺マンもまた、最後の力を振り絞って裏術・鉄血針を。 虎太郎の拳に宿った輝きが、白魔法少女のそれのように輝きの軌跡を引きつれ放たれる。 まっすぐではなく、僅かに軌道が曲がっているのは、それこそが命中への秘策故。 倒れた相手に上より降り注げば、これをかわすのも難しかろうという虎太郎必死の工夫である。 美空の舞、というより踊りに近い応援(専門用語でちありーでぃんぐというらしい)が、駆け寄る智へと届けられ。 「ハンマーより斧の方がかっこいいんですよー!」 といった今一しまらん声と共に、智の大斧が振り下ろされた。 こうして、二体の魔法少女を退治した開拓者一行。 幼女虐待にしか見えぬ現場であったが、せめてもアヤカシの体は瘴気と共に消えてくれたのが幸いであった。 |