無法者力王
マスター名:
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: 普通
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2010/01/26 04:53



■オープニング本文

 一列に並んだ村人達は、恐怖に震えながら彼等の動向に注視している。
 巨体を屋敷の中から引っ張り出してきた大きな椅子に落とし、鼻の中に指をつっこんでいた大男は、ぶちっと中の毛を抜いてその本数を数える。
「んー、三本だな。よしっ、三番目の奴前へ出ろ」
 左から数えて三番目には、まだ年端もいかぬ少年が並んでいた。
 慌てて隣に居た母親が息子を庇う。
「お、お許しを! こ、この子はまだ六つでございますので‥‥」
 毛を抜いた時、結構痛かったのか大男は涙目になりながら鼻をこすっている。
「んー、超ダメ。でも俺様超寛大だから、お前も一緒って事にしてやる。っと待て、それだと三じゃなくなっちまうか‥‥」
 大男の隣に控えていたがっりがりに痩せこけた細男が、奇妙な程に鋭い眼光を鈍く光らせる。
「大将、ならもう一人ヤっちまえば三になるんじゃね?」
「何だとてめえ、どんだけ天才なんだクソったれが。お前の発想は何時でも俺を熱くさせてくれやがるっ」
 大男が手を振ると、配下の荒くれ者達は全力で嫌がる子供、母親、後適当にみつくろった若者を一人引っ張り出す。
 引きずり出された三人は、縄でぐるぐると全身を縛られる。
 縄がきつすぎるせいか、それだけで三人からは悲鳴と絶叫があがるが荒くれ者達は大笑いするのみで手を緩めようとはしなかった。
 一体どういう縛り方をしたものか、三人はそれぞれまん丸くなるように縛り上げられ、大地に転がされている。
 大男は絶好調の笑みで宣言する。
「人間蹴鞠の時間だぜえええええええええええええええ! てめえら気合入れて魅せろやああああああああああ!」
 いやっはー、とばかりに荒くれ者達、総勢三十名近くから歓声があがる。
 男達はよってたかってぐるぐるに丸められた三人を、蹴って転がし大笑う。
 村が野盗に占拠されてこれで三日目。
 村人達にとっての地獄の日々がこれからも続くかどうかは、襲撃の日、辛うじて村を脱出出来た一人の若者に託されていた。
 若者は開拓者ギルドに駆け込み、野盗から村を救ってくれと懇願する。
 ここらでは有名な野盗『鉄鬼団』とその首領力王の恐ろしさは近隣に知れ渡っている。
 よくある大盗賊団のように数を揃えるような真似はせず、腕っ節のある奴のみを集めた精鋭達である。
 力王はそんな彼等と面白おかしく過ごす事しか考えておらず、行動が読めなすぎるせいか大規模討伐隊を編成してものらりくらりとかわされてしまう。
 そして中途半端な討伐隊では、返り討ちにあってしまうために下手な手出しも出来ない。
 それが故の、開拓者頼りなのだ。


■参加者一覧
紫夾院 麗羽(ia0290
19歳・女・サ
香坂 御影(ia0737
20歳・男・サ
鬼灯 仄(ia1257
35歳・男・サ
斎 朧(ia3446
18歳・女・巫
夜魅(ia5378
16歳・女・シ
小鳥遊 郭之丞(ia5560
20歳・女・志
秋冷(ia6246
20歳・女・シ
橋澄 朱鷺子(ia6844
23歳・女・弓


■リプレイ本文


 力王率いる盗賊達、鉄鬼団に襲われた村人達は救出の目処も立たぬまま、この世の地獄を味わっていた。
 しかし、不幸とは重なる物。
 荒らされ放題であったこの村に、更にもう一団、今度は六人組の盗賊達が現れたのである。
 鬼灯仄(ia1257)は率先して前に出ており、見張りを一刀で斬り倒す。
 残る見張りが誰何の声を上げるも、知った事かと更に斬りかかり、二人目は血塗れになって逃げ惑う。
 これを、香坂御影(ia0737)は無慈悲に一撃し、トドメを刺す。
「こいつらのようになりたくなけりゃ、金目の物を出しな!」
 御影の怒声に、しかし最後に残った見張りは虚勢を失わず、てめえただじゃ済まさねえぞと村の中へと逃げ込んでいく。
 仄と御影は顔を見合す。
「よう御影。とりあえずはこんなもんかね」
「ああ、問題ないだろう。そのいかつい顔といい、随分と悪党が堂に入っていたぞ」
「人の事言えるか」
 鉄鬼団のやり方を事前に聞いていたせいか、二人の機嫌はすこぶる悪い。
 今なら何人でも軽く斬り倒せそうだと仄は刀を鞘に収め、御影は大薙刀を肩にかつぐ。
 二人の暴れっぷりに、手を出せずに終わってしまった小鳥遊郭之丞(ia5560)は、うーむと腕を組み唸る。
「や、やはり私に賊の真似は難しいかもしれん……」
 そんな郭之丞を紫夾院麗羽(ia0290)はけらけらと笑い飛ばす。
「郭之丞、気張る必要はないぞ。そのままで充分だ。この間も随分と怖れられていた様じゃないか」
 ぶっと思わず噴出す郭之丞。
「そ、それはまた別の話であろう! 私が言いたいのは……」
 勢い込んで反論する郭之丞を見て、斎朧(ia3446)はあらあらと頬に手を当てる。
「ああも元気に言い返してくれるとなれば、麗羽さんがからかいたくなる気持ちもわかるというものですね」
 ふうと嘆息しているのは橋澄朱鷺子(ia6844)である。
「気を紛らわせられるのなら、ああいうやりとりも悪くは無いでしょう。偵察内容を聞いた時は、私も腸煮えくり返る思いでしたから」
 一行は先に村へと偵察を出していたのだ。
 シノビの二人、夜魅(ia5378)と秋冷(ia6246)は今回人質となりそうな村人への対処の為に影働きを行っている。
 その一環で村への偵察を行ったのだが、大怪我を負った村人がロクに治療もされぬまま適当に転がされているのを見た秋冷は、自制するのに相当な苦労を要したものだ。
 一刻も早い突入を。そう結論が出るのにさして時間はかからなかった。
 そして今回開拓者達が取った策は、こうして賊を装って鉄鬼団を潰しにかかる事であった。
 これならば村人への人質作戦が有効であるとは、相手に思われにくい。
 更に見破られた時や、村人が戦闘に巻き込まれそうになった時の為に、夜魅は村人に紛れ潜んでいるのだ。
 偵察の終わった秋冷は、戦闘開始の際、村人達の避難を誘導する為やはり賊班には加わらず潜んだままである。
 そうこうしている間に、鉄鬼団が皆の前に現れる。
 一目でそれとわかる巨漢、力王を先頭に、すぐ脇には異常に眼光の鋭い細身の男、これが技将軍であろう、と残る悪党達。
「てめぇら、何処のモンだ」
 悪党には悪党なりの筋目というものがある。そういったものを無視して突っ走るのが力王達鉄鬼団であるが、何処にどんな悪党達が縄張りを広げているかぐらいは知っている。
 いきなりこの村に現れるような賊に、彼等は心当たりが無かった。
 諸悪の権化を前にして、郭之丞は比較的さくっと、あっさりと、それまでの忍耐が嘘のように、キレた。
「貴様っ!」
 が、付き合いの長い友人はこういう時にありがたいもので。
 きっと無理だろーなーとか思っていた麗羽が速攻で止める。実際麗羽も頭にはきているのだが、友人がすぐ側でより以上に怒っていてくれると案外自分は冷静になれるものである。
 力王と対するのは、御影と仄の二人に任せる形になった。
 仄はにこりともせず、両手を広げる。
「俺が何処の何様なのか、誰が後ろについているのか、そんな事はどうだっていい。俺達が興味あるのはてめぇが溜め込んでるだろう金だけだ。今すぐそいつをここに持って来い。その場合のみ、命を助けてやらん事もねえぞ」
 部下達はあまりの台詞に激昂するが、力王は彼等を腕の一振りのみで制する。
「随分な言い草じゃねえか。そんだけ言っといてたった六人って事ぁねえだろ。ヤる気ならそいつらもとっとと出せよ」
 横で無言で居た御影は、ふふっと含み笑う。
「六人も要るか? 御託はいいからとっととかかって来い」
 びきびきっと青筋を立てる荒くれ者達、しかし力王が何も言わない事から堪えていたが、次の朧の言葉がトドメになる。
「間抜け面を数だけ揃えている貴方方に使われるより、私達に絞られた方がこの村の方々の命にとってまだ有意義な使い道でしょう」
 おーけいぶらざー木っ端微塵にぶっころすぜせにょおおおおおおおる、とかちょっとジルベリア風味入りながら、完全にぶっちギレた荒くれ者達は、力王の言葉も待たずに突っ込んで来た。
 頭から湯気を噴出さんばかりの彼等を前に、しかし、前衛に立つ仄も御影も麗羽も郭之丞も怯んだ様子は見られない。
 後衛である朱鷺子と朧を取り囲むようにしながら、皆の思いを口にする郭之丞。
「怒り心頭なのはこちらの方だ。……命乞いする暇も与えぬ、己が所業を冥府で悔いろ!」

 あっという間に阿鼻叫喚の大混乱となる村の大通り。
 そんな中、戦闘が始まると同時に動き出した者が居る。
 密かに村人達の中の潜んでいた夜魅は、逃げられては面倒だと一箇所に集められていた彼等に、今が好機と逃げ出すよう促す。
 窓から恐る恐る外を見た村人は、鉄鬼団が総力で戦闘中なのは理解出来た。
 しかし、それでも恐怖はある。たった一人に見つかっただけでも村人達は致命的な事態に陥るのだ。
「その為に私がこちらに居るのです。野盗の一人や二人、開拓者でもある私一人で斬り倒してみせます」
 開拓者、志体を持つ者が優れた戦士である事は皆知っていた。
 ならば大丈夫と五十人近く居た村人達は、夜魅の指示に従い外へ静かに抜け出していく。
 こちらを通って、次はこちらに、次々指し示す裏道には誰一人おらず、遂に村の外にまで抜け出せたのだ。
 後は走って逃げるのみ。隣村まで一気に走れと命ずると、皆こけつまろびつ逃げ出していった。
 それを見送った夜魅は、何時の間にか隣に立っていた秋冷に微笑みかける。
「ありがと。見張りは二人?」
「三人だ。全て処理した」
 村人達が逃げられるよう、見張りを秋冷が密かに始末していたのだ。
 戦闘開始から夜魅が村人を説得するまでの時間でこれをやってしまったのだから、段取りは相当よろしい方であろう。
 もっとも秋冷が、表面上はそうは見えないが、鉄鬼団にいたく腹を立てているというのも理由の一つであろうが。
 村人達が見えなくなると、秋冷は踵を返す。
「急ごう、流石に敵も数は多い」
 こくりと頷き、夜魅も後を追う。もう、気兼ねをする必要は無くなったのだ。

 朧は完全に包囲された状況ながら、冷静に周囲の戦況を把握していた。
 数はこちらより遙かに多いが、力王と技将軍の二人が戦闘に参加してきていないので、こちらはまるで崩れる気配がない。
 開拓者六人が完全に陣形を整えて迎え撃てば当然といえば当然の結果だが、こちらのそんな動きを見た力王は、苛立たしげに斧を構えなおした。
「皆さん、二人が来ます。気をつけて」
 真っ先に力王の斬撃を受ける事になったのは御影であった。
 大薙刀にて大斧を受け止めたのだが、それでも支えきれぬ衝撃が体を貫いていく。
 この豪腕ならば、無理や力押しのみでも大抵の事はまかり通るであろう、そう理解出来てしまう程の一撃。
「だけど、勝てない相手じゃ無い、な」
 仄が斬り伏せた相手の、影から伸び来るように姿を現したのは技将軍である。
 ねばっこく張り付くように、急所目掛けて滑り込んできた刀を、逆手にもった飛苦無で弾く。
 すぐに別の荒くれ者の影に隠れる技将軍。
 味方を盾にするふざけた戦闘方法だが、これに文句をつける下っ端が居ない所を見ると、よほどこの男が恐ろしいのか、はたまたこれが戦術として優れているやり方かのどちらかだ。
 確かに面倒な戦法だ。この調子で張り付かれ、いやらしく突かれ続けるのはかなり精神に負担がかかる。
 しかし、そんな彼の戦法を見て、食らった仄以上に激怒している人が居る。
 大鎌を薙ぐように振り回す、小鳥遊郭之丞である。
 兼ねてより鉄鬼団のやり方に憤慨していた郭之丞だ。更にこの上卑怯を重ねられては最早我慢ならんといった所なのだろう。
 目で合図を送ると、すぐに察したのか麗羽がフォローに入る。
 あの素早い動きと吸い込まれるような薄気味悪い剣撃は、決して油断してよい相手ではないと仄は見切っていたのである。
 二人が技将軍に向かうとなると、後衛を守る人間が足りなくなってしまう。
 もちろんそれも仄にはわかっている。
「夜魅! 秋冷! 二人は任せる! おれは数を減らしにかかる!」
 二人は早駆にて一瞬で朧と朱鷺子の側に現れ、近接は我等がと武器を抜き放つ。
 不意に現れた二人の攻撃を食らった荒くれ者は、傷口を抑えて地面にうずくまる。
「い、いてぇ! ちくしょう! ふざけんなくそ本気で痛ぇぞ! 死ねてめぇら!」
 夜魅は呆れた顔でぼやいた。
「せめて悔いてはどうです? 蜘蛛の糸でもあるかもしれませんよ」
 すぐに急所を一撃で刺し貫いた秋冷は、誰にともなく呟く。
「人の不幸だけで築き上げた人生など脆いものだ」
 おお怖い怖いと肩をすくめる仄。
「さて、んじゃこっちも派手に始めるとするか」
 仄の刀から赤い閃光が漏れ走る。
 卑怯上等、外道相手にまともにやっちゃいられないと、どっちが悪党かわからないような真似を平気で行いながら、一人、また一人と荒くれ者達を斬り倒していく。
 力王と技将軍、この二人が乱入した事により、均衡を保てていた戦闘はまた大きくバランスを崩す。
 同時に夜魅、秋冷も参戦してきたおかげで何とか支える事は出来ている。
 しかし全員が複数人に囲まれ続けている現状は変わらない。それでもと支えられているのは、要所要所で放たれる朧の閃癒のおかげである。
 範囲内に居るのなら一度に何人もの仲間の傷を回復してくれる正に切り札的術式である。
 その分練力への負担も大きいが、これで堪えに堪えて敵の頭数を減らしていくしかないのである。
 また、志体を持つ力王と技将軍の二人には、相応の戦力を差し向けないと、逆に斬り倒されてしまうかもしれない。
 この状況で一人でも減るのは致命的である。
 なので確実を期す意味でも、郭之丞と麗羽を差し向けたのは正しい判断であろう。
 力王の相手は御影のみであるが、他にも一人、射程圏内に入るなり他なぞ見えぬと力王を狙い続けている者が一人。
 橋澄朱鷺子であった。
 御影は力王のとんでもない腕力により怪我を負い続けてはいるが、それは全て致命傷ではない。
 大薙刀を巧みに操り、右に左にいなしながら損傷を抑えてきているのだ。
 もちろん、防御一辺倒ではない。
 どっしりと防御優先の構えではあるが、同時にきっちり突き返せるよう腰を入れた体勢を常時維持しているのだ。
 自身の脇で縦にくるんと大薙刀を回し、刃は上から背中を通って下へと弧を描く。
 足を滑らせるように前に踏み込み、穂先が振れる瞬間、大地を蹴って強く、激しく斬り上げる。
「おおおおっ!?」
 などと暢気な悲鳴を上げる力王の右胸部に、深い裂傷を刻み込む。
 すぐに、朱鷺子の強射「朔月」が放たれる。
 たかが細き矢一本ごとき何するものぞと放置する事が出来ぬのは、これまでの射撃で力王には充分にわかっている。
 それでも眼前に御影が居る以上、アレはどうしようもないのだ。
 飛び来る矢を受けるのは難しく、そしてその威力は金属の鎧をすら貫いて力王に手傷を負わせる。
 まるでサムライの斬撃のような強力無比な攻撃だ。
「私の弓の威力は弓術師の中でも異端ですからね……」
 再び矢を番え、容赦なく無慈悲に眉間を狙って撃つ。
「こんな私に狙われるのも、日ごろの行いの報いというやつですよ」
 力王の兜が音高く弾き飛ばされる。
 御影の大薙刀が片腕を半ばまで斬り落とす。
 腿に突き刺さった矢は、どうやっても抜けそうにない程深くまで入り込んでしまっている。
「ま、待て! ちょ、ちょっと待てお前等!」
 力王からの泣き言にも、朱鷺子は戦場の狂気にとり憑かれたかの様に目を紅く変化させており、一切取り合う様子は無い。
「悪人に人権などないと言われますからね」
 御影もまた一切の躊躇を持たず、如何に崩すかを考え続け、大薙刀を振り回す。
「……人質を囲い略奪の限りを尽くし、挙げ句の果てに暴力三昧か。大した下衆だよ、お前は」
 最後ははいずるようにしながら逃げまどうが、二人は、完全に動きを止めるまで攻撃の手を緩めることは無かった。
 紅蓮の炎に包まれた全長240cmの大鎌なんて物騒極まりないものを、郭之丞は縦に横に斜めに斬り結んで技将軍を追い詰める。
 最早盾にする配下も残っていない。
 それでも戦闘を止めようとしないのは、勇気や献身などでは決してなく、自棄になりやすい性質のせいであろう。
 思考を停止し、少し考えればすぐにわかる未来予想図から目を背ける。
 そんな相手に負けてやらねばならん理由なぞ何処にもありはしない。
 麗羽の刀が轟音と共に叩き付けられると、技将軍はあまりの衝撃に刀を落としそうになってしまう。
 それでも止まらぬと麗羽は二撃目を打ち込む。
 技将軍の名は伊達ではないと、直後に斬り返すが、これは郭之丞の鎌の柄にて受け止められる。
 ほんの一瞬だけ視線を合わせる麗羽と郭之丞。
 大鎌の刃中ほどに技将軍の刀を引っ掛ける形で払い落とす。
 即座に麗羽が踏み込み、下から掬い上げる地断撃を。
 刀を振り上げた姿勢のまま、腰は低く落とし頭をすっと下に降ろす。
 直後、郭之丞の大鎌が麗羽の頭上を振りぬかれ、技将軍の腕から、胸板を真横に斬り裂く。
 横から振るわれた鎌は、勢いそのままに上へと伸びていた麗羽の刀にカツンと大当たり。
 麗羽が腕に力を入れてなかったこともあり、再び刀は足元に一息の間も無く戻ってくる。
 そして麗羽は再度地断撃。
 この一撃で、技将軍は完全に動きを止めるのだった。

 仄は御影を誘って逃げ散った残党を狩りに出向く。
 その間に朧は大怪我を負って動けなかった村人の治療を。
 そして一行は、ギルドの係員に報告を上げる。

『村人は全員無事だ。係員の助言は尤もだったが、我々は勝手を許される身分だ。悪いが好きにやらせてもらった』

 少しだけ、胸がすく気持ちであった。