【桜蘭】行く末
マスター名:からた狐
シナリオ形態: ショート
危険
難易度: 普通
参加人数: 6人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2012/06/29 19:07



■オープニング本文


 天儀の山野を再現した庭を眺めながら、大伴の翁は無言でたたずんでいた。
 思い出すのはかつて遭都で勃発して自らが処理にあたった桜紋事件。
 もう是非を問うつもりはないが、あの後味の悪さは今でも鮮明に思い出すことができる。
「将軍職を辞し、ギルドに関わってから同種の事件に関わるとは、の」
 東堂の経歴を考えれば、超常の存在が関わっているのかと勘ぐりたくなるほど皮肉な展開だ。
 とはいえ、今回は桜紋事件とは異なる展開になりそうだ。
 反乱の主導者である東堂が、ぎりぎりの段階で退いてくれたからだ。
 前回とは違い、今回は開拓者たちが自ら動いた。開拓者たちの行動が東堂の決意を翻した。
 乱――あまりにも重い結末に至る流れを、彼らは確かに変えたのだ。東堂の協力が得られた今なら、流罪であると同時に保護でもある、八条島流罪という落としどころにもっていくことも可能だろう。
「後は1人でも多く島に送らねばな。無為な戦で命を落とすのは、もう止めにせねば」
 古強者の嘆息は、穏やかな風に吹かれて消えていった。


 東堂が捕まったのをきっかけに、逃げていた逃亡隊士たちも次々に投降して来た。中には暴れている者もいるようだが、それも直に収まるだろう。
「意外に早く決着ついたなー」
 その結末を、酒天童子は喜ぶ。大それた事件が未然に防がれてよかった……というのではなく。
 東堂俊一が面倒見ていた孤児たちを、真坂カヨを通じて預かっていたのである。――いや、押し付けられていたといった方がいいのか。
 子供らは東堂やその仲間らの行方を知る手がかりであり、また逃げた隊士らが接触を図ってくるかもしれない観察対象でもあった。屯所に置いたままだと何をされるか分からず、さりとて連れて逃げるには幼く人数も多い。
 なので、カヨは酒天に彼らの身柄を託し、事情を悟った開拓者らがそれを後押しした。
 といっても、いつまでも面倒見続けられるものでもない。期間は騒動の決着がつくまで。所詮浪志組が用のあるのは東堂及び乱に加担しようとした者たちだ。その所在が明らかになれば、子供たちがどこへ行こうとももはや関係ない。
 ただ、決着がついても、全てを喜ぶわけには行かない。罪を犯せば罰がある。
「婆ちゃん、帰ってきたの? どうなるの?」
 年長の子は心配そうに事態を見つめる。
 東堂及びその一味もまた、厳しい処罰が予定されている。
 同じく乱に加担しようとしたとしていた近衛家が所有していた島。あまりに遠く不便なその地は、現在管理する家族が住まうだけの地だが、そこに謀反人たちを流し、然る後に精霊門を閉ざし往来を禁じる事となった。
 つまり、かつての陽州と同じ境遇に入れようという訳だ。違うのは島に行く者はそれを了承し、そして天儀にいる者も彼らを忘れる必要がないという事か。
「今も昔も、朝廷のやり口は変わらんという訳か」
 不安そうに見る子供らから目を逸らし、酒天は一人呟く。


 子供らの処遇について、改めて考える。
 幸いな事にカヨは東堂捕縛の報を聞き、自ら出頭してきた。抵抗する気は無く、流罪も受け入れるという。
 ただ、それを受け入れない者もいる。
「先生や婆ちゃんたちといる」
「皆と離れるの嫌。一緒に行く」
 遠地に旅立ち、二度と会えないのだと知らせると子供たちが離れるのを嫌がった。
 幸いというべきか。流刑地には流刑者の家族も同伴できる。子供らも、東堂たちとは家族同然。連れて行く許可も出るかと思う。
 しかし、さすがに罪人と共に連れて行くのは幼すぎる。同然であっても、家族そのものとは違う。里親を探すべきではとの声も多い。
 さらに。
「子供たちは、こちらに残って欲しいのです。叶うなら、神楽の都で腕を磨き、知を築き、次代の浪志組隊士としてこの天儀の行く末を守って欲しいと思います」
 真坂カヨに、短い面会時間で子供らの主張を伝えると、彼女はそう告げた。
「それで? 己らの無念を継いでもらって、いずれは事を為させてもらおうってか?」
 皮肉気に酒天が告げると、カヨは寂しげに笑う。
「それが正しき道であるならば。向こうに連れて行ってしまえば、正道も非道も見定めすらできなくなりますので」
 かの地で穏やかには暮せるだろう。けれど、それが幸せなのかは分からない。

「根本的な問題として。俺は子守は御免被る」
 そして。開拓者ギルドに相談に来た酒天は、苦虫を潰したような表情でぶすっとしている。
 こちらに残るとすれば、居場所は必要。幼少の子ならまだ里親も探す宛があるが、年を食ってくると難しくなる。
 元々酒天には、押し付けられた相手。カヨは獄中で詫びてはいたが、かといって他に宛がある訳では無い。結局今の所は、酒天が引き取ったままになっているが……。
「よく考えればさー。真田とかいう奴に、押し付けらんねーかなー。道場持って面倒見のいい奴だし、もう捕り物は終わってんだから、屯所に連れて行っても子供らに危険は無いだろう。森が暴れても奴なら止められそうだし」
 隊士として鍛えて欲しいなら、今のうちから手伝いを始めるのもいいかもしれない。仮に隊士に向かないとしても、奴なら無体な真似はせずに何とかしてくれそうな気もする。
 事後処理で見つけて頼み込むぐらいは出来そうだ。
「別にお前さんところにこのまま置いといてもいいんじゃないのか?」
 どうせほとんどいないんだし、と係員は告げるが、途端、さらにどうしようもなく嫌そうな顔をされた。
「一日中酒飲んで寝てたら、勉学に励めだの説教してくるんだぜ。冗談じゃねぇ!! 自分で動けるなら後はどうとでもできるだろ。自分の道は自分で拓け」
「……。よく出来た子らだな。見習えよ。……いや、向こうがお前さんに似て粗暴になる可能性もあるのか」
 そっと係員は頭を抱える。確かに、酒天に感化されては道を踏み外しそうな気もしてくる。

 かくて開拓者たちが相談で集められる。
 子供たちの未来のため、彼らをどうするべきか考えて欲しいと……。


■参加者一覧
柚乃(ia0638
17歳・女・巫
巴 渓(ia1334
25歳・女・泰
菊池 志郎(ia5584
23歳・男・シ
和奏(ia8807
17歳・男・志
无(ib1198
18歳・男・陰
柏木 煉之丞(ib7974
25歳・男・志


■リプレイ本文

 東堂確保。その話が広まると共に、逃げていた隊士たちも観念して続々と縛についた。真坂カヨもその一人。
 まだ暴れてる連中もいるが、それもやがては納まる。こうして東堂たちによる謀叛計画は未遂で終わったのだが。
「で。ガキどもをどこに放り出すかだ」
 集まった酒天童子宅。手土産渡して、挨拶もそこそこ。東堂派から託されていた子供をどうするかで、酒天童子は真剣に話をそう切り出す。
「子供の行く末を考えるんです。……毎日賑やかで楽しかったでしょう」
「どーこーがーっ! 起床時間から就寝まできっちり決めやがって、気の休まる暇がねぇっ!!」
「そうですか。子守するより、される側が好きなのね」
「んな訳は無い!」
 嫌そうに顔を歪める酒天に、柚乃(ia0638)はその頭を撫でながらやや呆れた面持ちで見る。
 家の中は掃除が行き届き、お台所を借りたがそこもきちんと整頓されていた。実に普通の事だが、普段家に寄り付く気配の無い酒天を思えば、この様子はいささか妙である。子供らが動いたのだろう。一緒に買出しにも出かけたが、実にいい子たちだ。いったいどっちが保護者なのか分かったものじゃない。
 その子供らは、込み入った話になると厄介という事で一旦席を外してもらっている。どの道彼らの言い分は「先生と一緒に行きたい」と決まっている。
 いいつけにもきちんと従い、立ち聞きの気配無く、外で遊ぶ声が聞こえる。
「俺はガキどもの島流しを推す」
 その声を聞きながら、巴 渓(ia1334)は冷静にそう告げた。
「無論、ガキどもが成人する最低十年以上、身分証明、生活の後ろ盾、生活資金その他もろもろ。全てに完璧完全かつ、お上を納得させうるパーフェクトな提案が為されたら従おう。だが、あるのかそんなの」
 東堂の計画を暴くべく渓もまた動いた。もし完遂されれば、より多くの人が巻き添えとなっていた計画。それを阻止できた事に後悔は無い。
 だが、結果子供らがこうして迷っているのは、苦いものがある。やらねばならなかった事態とはいえ、救えない人間がいるのは仕方が無いが、それをそのまま放っておく事も出来なかった。
「今は東堂がガキどもの親、離れ離れにはさせられんさ……。理屈じゃねえんだ。何が一番幸せかは、ガキどもが知ってるさ」
 その為なら渓は泥ぐらい被る覚悟は出来ている。
「お上を納得させる必要は無いな。むしろ子供を島流しにするのは評判が悪かろう。送りつける方が慌てるだろうさ」
 それも悪くは無いと笑う酒天に、渓はやや顔を顰める。
 茶を啜りながら、和奏(ia8807)も考える。……ぼんやり空を見上げているが、多分考えている。
「子供たちが慕っていたとしても思想的に問題がある人ですし……。残るにしても出来たら浪志組とかでもなく養子縁組や手に職つける方向に出来ませんかねぇ」
「思想面は確かに問題だな。向こうにいる間は何喚こうとも関係ないが、何かの弾みで門が開いたならどっとその集団がやってくるって訳だ。もっともその頃には朝廷の方が無いかもな」
「笑い事じゃないですよ。何かいろいろいろと」
 愉快に笑う酒天童子。頭を抱えたのは、菊池 志郎(ia5584)だけでもない。
 流罪予定の八条島。行けば神楽の都へ戻れない。今後二度と会う事など無いだろう。
「別荘地とされていたなら、良き地なのでしょう。……陽州のように」
 柚乃がふと告げる。これまで管理人家族が住んでいただけの場所だが、その気になれば数千人が暮らせる島らしい。
「ま、残しておいて東堂の二の舞は勘弁だが、子供らまで封じ込めて無かった事にしようというのも気が咎めるって所だな」
 酒天は肩を竦める。
「けれど、引き取り先は確かに迷いますね。虫がいい話ですが、真田さんを頼れないでしょうか」
 志郎が少し考えるが、やはり妥当なのはその辺りか。和奏が何でもないように横から口を挿む。
「政治絡みの環境に巻き込まれて欲しくは無いですねぇ」
 浪志組は天儀最大の都の治安維持に勤める以上、朝廷や各国との関係も必要になる。どこから思わぬ茶々が入るかは分からない。
「他に受け入れ先はないでしょうか。たとえば、開拓者ギルド長屋や陰陽寮、図書館、教育機関など公共機関。酒天の家にそのまま下宿。里親を募集する」
「今、どうやって追い出そうかという時に下宿なんぞさせるか」
 无(ib1198)の唱えた提案に、早速酒天が難色を示す。
「図書館はさすがにねぇだろ。あいつら本ばっかだし。聞いた話、一応公共で孤児を保護してる場所はあるってよ。もっとも今のご時世、どこもいっぱいだそうだ。寺社仏閣が基本かねぇ。天輪宗の寺院、神教会系か。陰陽寮や日照宗系は少ないとか言ってたな。大抵は、親類縁者を頼るか丁稚奉公か。東堂みたいな奇特な奴が保護しているってさ」
 一応は気にかけていたのか。それとも追い出す先を探していたのか。妙に棒読みで酒天が語る。
「あー、そうそう。引き取り手が無いならゼロの奴も考えていいってさ。――案外味方が多いな、あのガキども」
 外ではしゃぐ声を聞きながら、酒天が目を細める。
 ゼロ(iz0003)は以前に東堂に頼まれ、子供らの勉強を見た仲。今回の事態も気に止めていたそうだ。
「面倒といってもなぁ。俺たちも明日アヤカシに殺されるかも知れん根無し草だ。口先だけでは、ガキども全員の人生を背負えやしねえだろ?」
「親の罪は罪だが、子供が背負うべきでない。親の思いと罪は別物と考えるべきだろう」
 渋面を作る渓。无も言葉は強い。
「ただですねぇ。少々理解に難が。閉門までの時間もありますし、酒天さまにしても『短い期間でなら』というお話でしたから、結論を急ぐのは分かります。ですが、人の未来を決める大事なお話を、自分たちが安易に決めてしまって良いのかなぁとも思います。お子方は、既に一度裏切られていらっしゃいますし」
 それまで何となく話を聞いていた和奏だが、眉間に皺を寄せるときりきり頭を揉む。
「それに、東堂さんやカヨさんに関しては、酒天さまに押しつけた時点で責任を放り出しておいて、今更、希望云々は少し筋違いでは? ――仮に森派が今後子供らにどんな扱いをしても、責任の一端は間違いなくお二人に起因するものですよね。……他人に運命を変えられた事を憤っているのに、子供たちの運命を翻弄する……。どうなんでしょう」
 和奏が考え込む。けれども答えは出ない。
「一度、真坂たちと話してみてはどうだろう。面会の手筈は整えている。真田殿も恐らく今ならいるはず」
「そうしてみるか」
 浪志組隊士として、柏木 煉之丞(ib7974)は事前に手を打っている。からの言葉に、酒天は軽く天を仰いだ。
「どんな結果になろうとも。子供達の将来は子供達のモノ。最終的に決めるのは彼ら自身。手助けはしても一方的な押し付けはしたくないです。子供達の望み……意思。それを無視するのは大人の勝手な都合だもの」
 出かける用意を始めると、子供らが一斉に見送りに出てくれた。
 精一杯胸を張って不安などないように振舞う子供らを見て、柚乃の胸が痛む。


 牢の中で、真坂カヨは流罪の日を静かに待っている。
 大人しいがそれでも罪人は罪人。面会の時間は限られた。
「僕らは元気にやるから、婆ちゃんたちもがんばって、だそうですよ。逃亡している時に、子供らから預かった伝言です。何か伝言があるなら承りますが?」
 无の申し出に、カヨは静かに首を横に振る。
「特に。虚勢でも、元気でやっていけるのならそれで……」
 途端、渓が一喝する。
「東堂が壊そうとした今の社会に、都合のいい慈悲を求めるな!」
 見張りの隊士たちが驚いて腰を浮かす。何か揉め事かと蒼くなっているが、渓はそちらにかまわずカヨを見据える。
 その老女は、ただ少し目を丸くしただけで、後に寂しげに笑った。
「確かにそうかもしれません。すでにこの世に慈悲などないのかも」
 諦観した表情は、何を思うのか。
 子供らの島流し。子供らの願いが叶うと共に、東堂たちへの一番の罰にもなる。

 東堂派の謀叛計画により、浪志組はどこも騒がしい。その調整やら統括やらで真田悠はあちこちへと走り回らねばならなくなっていた。
 その最中に時間を割いて貰う。こちらもまた、時間は限られた。
「あの子供たちは、東堂さんのいわば忘れ形見。隊士見習いとしてでも置いて導き手になっていただけませんか?」
「俺からも。金に関しては、俺の組からの給金をあの子らに当ててほしい。不足分も何とか工面しよう」
「助けたいのは山々だが……。見ての通り、騒々しい場所だ。うっかり転んで怪我しても誰も助けてなどくれない」
 単刀直入、志郎が申し入れると、煉之丞も真摯に訴えかける。
 申し訳なさそうに真田悠(iz0262)は周囲を見た。
「そうすると里親探しですか……。十数人の子ら、バラバラになってしまいます。すでに家族同然なのに」
「まぁその時は、ゼロにでも押し付けよう」
「だからどうして押し付けたがるの」
 子供たちを思い悩む柚乃だが、酒天の言葉でまた悩みが増える。
「せめてどこかを探す間だけでも何とかならないか」
「ギルドからも、開拓者が定期的にこの様子を見に行くよう頼んでみる」
 煉之丞も志郎も諦めない。必死に食い下がる。
「天儀へ残留できるように受け入れ先を頼めませんか」
「しばらくならどうとでもしよう。――ただ、ここは子供らに楽しい所ではないからな」
 无が頼むと、真田も表情を引き締めて頷く。
 また誰かが暴れているのか。外では刀を鳴らして駆け出す隊士たちの姿があった。


 酒天宅に戻り、慰労も兼ねて食事会となる。もっとも、酒が入ると騒がしいのでここは控えてもらう。
 子供らと一緒に和気藹々と。だが、年配になる程薄々何があるのか勘付くの、どことなく緊張した様子を見せている。
「それで、結局どうする。行くならそれなりの準備も必要になる」
 酒天が口火を切る。年長の子は不安そうに開拓者らを見る。
「俺は先生たちと一緒にいたい」
「私も」
「皆と一緒がいい」
 顔を見合わせると、口々に子供らが答えた。
「先生方は罪人として流刑地へ送られる。一度島へ行けばこちらに戻る事は出来ない。……それは分かってますか?」
 確かめる志郎に、子供たちは口を閉ざして俯く。
「真坂さん達は子供達に、次代の浪志組隊士になってほしい、と願っています。それに、皆が島へ行ってしまったら、先生たちは、神楽の人々にただ『謀反人』としてしか記憶されなくなるでしょう。それが嫌ならば、彼らの優しさを、理想を忘れられたくないならば、ここに留まり、東堂派の皆の誇りとなる人間を目指すべきではないでしょうか」
 語る者が少ないほど、真実は歪められる。かつての修羅たちのように。
「真坂さんたちの願いは、こちらに残留して欲しいとの事だ。都に残って、真坂さんや東堂さんの想いを叶えて欲しい」
 无が語りかけても迷う素振りはある。
「陽州は知っているか?」
 煉之丞が尋ねると、はっきりと子供らは頷いた。
「俺はそこから天儀に来、外を見た身だ。外の者がどれだけ心配で、希望だったか承知している。そして此方側が広大だとも知った。まだ見ぬ世に触れてほしい思いはあり、同時に向けられる目も言葉も思い至る。――どうしたいか、どうすべきか。真摯に己が義と、未来を選んでくれ」
 幼い子等に決断は難しい。だが考える事は出来る。
「でも、残った所で居場所なんて無いよ」
 泣きそうな顔でちらりと子供らは酒天の方を向いた。即座にそっぽを向き、とぼける酒天。
「それならしばらくは真田殿が預かってくれる。里親や小姓に見習い……働き口も探せば見つかるだろう」
「じゃあ、がんばる。それで先生方が悪くないって証明して、いつか迎えに行く」
 それだけ告げると、後は一人泣き出し、それにつられて皆が泣き出し。慌てた開拓者たちが宥めに入る。
「そんなんでいいのかよ」
 その様子を微妙な顔つきで、渓が見ている。
「さあな。世の中なるようにしかならないさ」
 やっと肩の荷が降りたとばかりに、酒天は背を伸ばすと、早速酒杯へと手を出していた。