赤もふ青もふ黄もふら
マスター名:からた狐
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: 普通
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2011/03/21 20:32



■オープニング本文

 何かと騒がしい天儀の中で。
 二人の乙女は、やっぱり困る。

「もふらさまたちがねぇ。変な遊びを始めたのよ」
「といってもー、エッチィ遊びじゃないから安心してね♪」 
 開拓者ギルドを訪れ、溜息をつくハツコに、ミツコは笑って補足を加える。
 もふらのエッチィ遊び。逆に気になったが、違うというなら突っ込むのも何だ。
「とりあえず、どんな遊びなんだ?」
 ギルドの係員が尋ねると、ハツコはますます困惑を露わにする。
「それがねぇ‥‥。まず、赤もふらさまが対象をお風呂に呼びつけるの。それからおもむろに自分がお風呂に飛び込む訳」
 もふら牧場のもふら用の風呂。それなりに大きさがある。それで怪我をする事はない。
「すると、お風呂の中から青もふらさまと黄もふらさまが現れて、『あなたが落としたもふらは青もふらですか? 黄もふらですか?』と尋ねてくる」
「なんかそういう話があったなぁ‥‥。突っ込みどころ満載ながら、その流れで行くなら落としたのは赤だろう?」
 段々と、係員の顔つきも妙になってくる。
「そう答えると、『そんな答えはつまらんもふー!』と、その他控えていた牧場のもふらさまたち大勢が一丸となって、対象を風呂に突き落とすの」
「突き落とされた衝撃と、風呂の熱気で真っ赤になっちゃうの。かわいそーだねー」
 まるっきり人事で、ミツコは笑う。
「‥‥。青、と答えると?」
「『違うもふ。嘘つく悪い子には罰があるもふー!』と、その他控えていた牧場のもふらさまたち大勢が一丸となって、対象を隣の水風呂に突き落とすの」
「水風呂って言うかー。最近の寒さで氷も浮いちゃってるのー。冷えて真っ青になっちゃうー」
 桃の節句も終わり。そろそろ暖かい日も増えてきたが、それでもまだまだ寒波が厳しい。
 そんな時に、氷が無くとも水風呂に落とされるのは嫌だろう。
「じゃあ、黄色は!? さては入浴剤入り‥‥いや、砂風呂とか!?」 
「ぶー、はずれー。『違うもふー。間違えたから罰もふー』と、何か黄色っぽいお茶を飲まされるのー。ちなみに、お茶はなんだかせがまれたからみーちゃんが頑張って作りましたー。鬱金を元に適当に仕入れた漢方とか香辛料をいれたよー」
「‥‥さては思いつかなかったな」
 風呂、全然関係ない。
 もふらさまらしい暢気な話だ。
「ちなみに、無い色を答えたらどうなる? 白とか黒とか」
「その場合は、無言のままふっと鼻で笑い、対象無視して別の人を誘いに向かう」
「うわー、地味に嫌だな」
 馬鹿に仕切ったもふらの目を想像し、係員は顔を引き攣らせる。
「とまぁ、可愛い遊びだけど通りすがりの客とかにやられたらちょっと困っちゃうでしょ? もふらさまの事だからすぐ飽きるだろうけど、そうなるまで付き合ってくれないかしら」
 そんなに時間はかからないだろう。付き合う位簡単な事だ。
 だが、それは普段の時ならば。
「残念ながら開拓者ギルドは今忙しいんだ。修羅の問題、各地のアヤカシの襲撃。その対策にむしろ手が足りないぐらいだ。それぐらい自分たちでどうにか出来るだろう」
 抱え込んでる案件が多すぎ、重すぎる。
 こうして話してる間も、いろんな情勢が各地から表も裏も引っ切り無しに人が出入りしている。
「何気に酷い目に合わされるのよ? か弱いうちらでは身がもたないわよ」
「その酷い目に開拓者をつき合わせるのか?」
「いいじゃない。丈夫で長持ちも、いい開拓者の条件でしょ」
 確かにその通りではあるが。なんかいいように解釈されすぎてる気もする。
「それに酷い事ばっかじゃないよー。遊びに付き合ってくれたらお礼に、後でいろいろしてくれるよー。風呂で湯だったら湯冷ましに背中に乗っけて牧場一周してくれるしー、水で冷えたら皆でもふもふと温めてくれるしー、お茶飲んでごちそうさましたら顔と口周りとをレロレロ舐めて綺麗にしてくれるしー」
「‥‥最後、微妙に嫌なんだが」
「えー、みーちゃん嬉しいんだけどー?」
 小首を傾げるミツコに、係員は周囲を見遣る。
 確かに、ミツコの最後の発言に俄然興味を持ったらしい開拓者の姿も見つける。
「まぁ、こんな時勢だからこそ、庶民の生活も大事か」
 肩の力を抜くと、係員は依頼を回す。
 どんな依頼を選ぶのかは、開拓者たちの自由だ。


■参加者一覧
水鏡 絵梨乃(ia0191
20歳・女・泰
紗耶香・ソーヴィニオン(ia0454
18歳・女・泰
柚乃(ia0638
17歳・女・巫
橘 天花(ia1196
15歳・女・巫
羅轟(ia1687
25歳・男・サ
ノルティア(ib0983
10歳・女・騎
光河 神之介(ib5549
17歳・男・サ
平賀 爽(ib6101
22歳・女・志


■リプレイ本文

「もふらさまの‥‥と。一緒。遊べる‥‥聞いたけど、どんな。遊びなんだろ?」
 実は開拓者ギルドでの募集をよく見ない内に参加したノルティア(ib0983)。
 改めて詳細を依頼人に尋ねるが、ハツコは困った顔でそっと指差す。
 そこにはじっと開拓者を見つめる赤もふら。
「ようこそいらっしゃったもふ。こっちに来るもふー」
 赤もふらの案内に着いて行き、やってきたのは大きな露天風呂。
 もふら用らしく、いろんなもふらたちが浸りながら鼻歌を歌っていた。
「こんなに沢山のもふら様、初めて見ました。本当に、一緒に遊ぶだけで良いのでしょうか?」
 開拓者たちも折角なので、自身のもふらたちを連れて来ている。
 大勢のもふらに平賀 爽(ib6101)が目を輝かせる一方で、羅轟(ia1687)は他と違い少々尻込みしてしまっている。
「こ、こっちを見てはいないな。‥‥いや、ダメだ。何の為にここに来たのか!」
 なにやら複雑な過去があるらしく。もふらさまの直視が苦手になっていた。
 それを克服すべく今回赴いたのだが、やはりいきなり治るものでもない。
「いいなぁ。もふら様たちとのんびりお風呂っていいよね」
 柚乃(ia0638)が楽しそうな風呂場に微笑む。
 そんなもふらたちの中を、赤もふらが粛々と進み、いきなり派手な水飛沫を上げて風呂に飛び込む。
「もふらさま!?」
 周知の周囲は落ち着いたもの。だが、分かってないノルティアは何事かと一人慌てる。
 そして、まだ波静まらぬ風呂から、青もふらと黄もふらが現れた。
「「あなたが落としたもふらは青もふらもふか? 黄もふらもふか?」」
「どっちも違う!」
 声を揃えて尋ねる二体のもふらに、きっぱりとノルティアが答える。
 止める間もあらばこそ、勢いよく風呂に飛び込んでしまう。
「皆、何ボッとしてるの! 探さないと、大変な事になってるかもしれないんだから!!」
 泣きそうになりながら、ノルティアは必死に飛び込んだ辺りを探り続ける。
 ちなみに風呂なので、そんなに水深は無い。が、大勢を入れる為か広い。
「いや、あそこにいるけどね」
 捜索範囲を広げるノルティアに、ハツコは手招きして風呂の縁を指す。
 そこには一足先に風呂から上がった赤もふらがのんびりしていた。
「よかった、心配かけてー‥‥って、あれ? 赤でよかったっけ? 青‥‥?」
 ノルティアが赤もふらに抱き付く。無事と分かって一安心‥‥した途端に、記憶が飛んだらしい。
 自信を失くし、青もふらを見る。
 途端、もふらたちの目がきらーんと輝く。
「「「「青違うもふ。嘘つく悪い子には罰もふー!」」」」
「きゃーーっ!?」
 その団結ぶりは見事だった。
 普段はあんなに暢気なもふらたちが、一斉に風呂に飛び込むや機敏な動作でノルティアを掬い上げ、皆でわっしょいわっしょい隣の氷水風呂に容赦無く放り込む!!
「とまぁ、こういう遊びだから宜しく」
 氷風呂に浮いたノルティア。ドン引きする開拓者たちから若干目を逸らしてハツコが後を任せる。
「もふらさまたちもー、あの人が遊んでくれるから、もう他の人を放り込んじゃ、めっ、だよー」
「誰だろうと投げ込むのは、めっ、だよ? お水は‥‥本当に怖いんだから」
 もふらたちに注意を促すミツコに、ノルティアが震えながら言葉を付け足していた。


 ノルティアが別の遊びを誘うが、もふらたちは今はこれがいいようで。
 次の犠牲者をわくわくしながら待っている。
 楽しかろうが危険な遊び。志体持ちでなければ大怪我もありうる。
「色々遊ぶ事考えるんですよね‥‥。もふ龍ちゃんも、この間、空を飛ぶんだと風呂敷持って屋根から飛び降りようとしてましたし」
「飛べなかったけど楽しかったもふ♪」
 誉められたと取ったか、もふ龍が薄い金色の尻尾を震わせている。
 感心している紗耶香・ソーヴィニオン(ia0454)だが、付き合わされる方は非常に大変。
「酷い目に遭うのは確実だが‥‥、もふもふされてぇしな‥‥」
 光河 神之介(ib5549)としても悩む所。
 氷風呂に入ったノルティアは、寒かろうと沢山のもふらたちがもふもふ温めている。
 羨ましいが、氷風呂は今の季節辛すぎる。
「こんな遊びが楽しいのか?」
 神之介が問うと、揃って含み笑いをされた。
 ま、楽しいからやるのだろう。そっと隣のもふ助を見れば、何やら熱心に見入っている。変な遊びを覚えないか不安である。
「確かに意味は分かりません。しかし、もふら様は精霊様の御使い。何かの儀式に違いありません! とことんまで付き合わせていただきます!」
 もふらを信じて決意する橘 天花(ia1196)。だが、周囲はこっそり「ないない」と手を振っている。
「で? 落としたのは青もふ? 黄もふ?」
 尋ねるもふらに、天花は真剣に悩み答える。
「そうですね‥‥。順番に参りましょう、黄色です」
「違うもふー。間違えたから罰もふー」
 そして、器用に頭に乗せてもふらが黄色い液体を持ってくる。飲め、と期待されたので口にすると、天花の表情が微妙に歪んだものになる。
「美味しいのですか?」
 恐る恐る爽が尋ねるも、天花は首を傾げる。
「‥‥何とも言い難く。でも、精進決済の意味があるのかも知れません。ありがたくいただきます!」
 やはり周囲が手を振って否定する中、天花は一息に黄色い飲み物を煽る。
「御苦労様もふ。食べ物を大事にするのはいい子もふ」
 微妙な表情で固まった天花の顔を、もふらさまは嬉しそうにべろべろ舐める。
「三つの中から選ぶの? なら、柚乃も黄色かなぁ‥‥」
 熱湯は肌に良くなく、冷水は体によくない。迷いつつ柚乃は黄色を選択。
 すぐにもふらが例の微妙な飲み物を運んできたが、
「‥‥藤色って答えたらどうなるんだろうね?」
 連れてきた藤色もふらの八曜丸に向かって何気に発した一言を聞き逃さず。もふらはふっと鼻で笑うと、そのまま背を向けて他の開拓者に向かってしまう。
「行かないで、もふらさま! 柚乃が悪かったです!!」
「ちょっとした思い付きもふー。許してほしいもふ」
 すがり付いて泣く柚乃に、八曜丸も必死に口添え。幸い、もふらたちにもすぐに聞いてもらえ、飲み物を改めて渡される。
「泣いちゃダメもふ。冗談もふ」
「冗談でも、もふらさまに相手にされないなんて‥‥耐えられません!」
 飲んだ柚乃の顔を、一生懸命舐めるもふらたち。何ともしょっぱい味がしたとか。

「とりあえず濡れていいように水着は着てきました。遊びに付き合わせてもらいますよ」
 準備万端、気合十分。
 紗耶香は風呂場に立つと、早々ともふらたちに絡まれ落とされる。
「確かに汚れても大丈夫そうな着物を着て参りましたが‥‥。微妙に面倒く‥‥いえ、何でもありませんよ」
 そんな惨状を目にし。
 思わず本音が出かけた爽だが、もふらたちの純粋な眼差しに気付き目線を泳がせる。
「とりあえず、私は赤です」
「つまらんもふー!」
 気を取り直し答えると、途端にどーんっと一発風呂に突き落とされる爽。
「理不尽!! ‥‥と言いますか、風呂熱っ!?」
 頭から飛び込み、すぐに顔を出したものの。青白い肌が真っ赤になっていた。
「冬の野外はすぐ冷めちゃうから。爺ぃが喜ぶ熱め設定」
「薪割り大変なのよー。ありがたく浸かって頂戴」
 一応遊びを見学していた依頼人たちから、笑顔の注釈が入る。
「無理ですー! お爺ちゃんもびっくりの温度ですよ!」
「あれ? 焚きすぎ?」
 すぐに風呂から飛び出すと、のぼせたか、爽が荒い息で座り込む。そのままぐったりともふらの背に乗せられ牧場一周の旅へ。
「しかし、しっかりと出来た風呂だな。‥‥帰ったら、風呂の改装が第一目標だな」
 依頼がてら、神之介はもふら牧場の設備もしっかり見学。そんな彼にももふらはやってくる。
「それで、お兄さんの落し物は何色もふか?」
「嘘は好きじゃねぇ。‥‥赤だ!」
「つまらんもふー!!」
 風呂に落とそうと押し寄せたもふらたちを、しかし、神之介はがっちりと正面から受け止める!
「サムライの力、甘く見るなよ!!」
 ぐっと筋肉が張るが、もふら様も数を増やして対抗する。
 意外と力持ちのもふら様。そして、負けられないサムライ。
 意地と意地とのぶつかり合い。
 その横で、水鏡 絵梨乃(ia0191)は「赤」と答える。
「こう見えても結構素直なんですよ。どう見えてるかはわからないけど」
「でも、それではつまらんもふー」
 不敵に笑う絵梨乃にも、もふらさまたちは元気に詰め寄り突き落とす。
「と言う訳で、ここは一つ巻き添えに」
 風呂場に落とされながら、絵梨乃はもふらたちと力比べをしていた神之介の襟首を掴む。
「ありかーっ!?」
 いきなり後ろに引っ張られ、為す術なく神之介は風呂に落ちる。
 そして絵梨乃自身は、押された瞬間に華麗に飛び跳ね空中で一回転した挙句に足から着水。
 周囲から暖かい拍手が飛んだ。
「アチチチチ! しかもいてぇ! ‥‥黄色って答えるんだったぜ!」
 落ちた際に床で擦ったか、熱湯が沁みる。大した怪我でないものの、少々失敗だったか?
「飲むもふ?」
「‥‥今は遠慮するか」
 気を使ったか、すぐに持ってきてくれた微妙な飲み物をさすがに受け取る気にはなれなかった。
「おねーさんが出てこないもふ?」
 とりあえず神之介も牧場一周旅行に送り出したもふらたちだが。絵梨乃が全く風呂から出てこない事に気付く。
 覗き込めば、所詮風呂。底に絵梨乃がいるのは分かる。
「よくも突き落としてくれたなー♪!!」
「もふーっ!」
 それは水中からも同じ事。もふらが覗き込んでくるのを待っていた絵梨乃は、すかさずもふらを引き釣りこもうとする。
 濡れた髪はべったりと顔に張り付き、その奥から輝きを失った瞳がもふらを射る。‥‥もふらで無くても怖い。
 逃げるもふらと戯れるもふら。たちまち風呂が賑やかになる。

 派手に風呂で暴れてる彼らを、羅轟はやはりやや離れて見ていた。
 行かねばと思うが、一旦気合を入れねばならない分、他より遅れを取ってしまう。
 そんな羅轟を横合いからちょいちょいと叩く手があった。
「ん?」
 いつの間にやら青と黄のもふらが回りこみ、じっと羅轟を見つめている。何を選ぶのか、無言の催促。
 羅轟は手を伸ばすと、そっともふらたちの顔を背けさせる。
 抱き上げると、器用に身体を捻って覗き込んでくる。それも無理矢理逸らせる。視線さえなければ何とかなる。
「‥‥‥‥赤」
 視線が減った所で答える。後のもふらの行動は他と同じなのだが。
「待て、今は危ない!!」
 風呂ではまだ絵梨乃が騒いでる。そこに鎧着た筋肉質の大男が放り込まれるのは危険極まりないが、もふらさまは待った無し。
「きゃーっ!」
 気付いた絵梨乃が慌てて逃げ出す。
 その直後、それまで以上に派手な水飛沫を上げて羅轟が放り込まれた。
 絵梨乃はそのままもふらに連れられ牧場へ。
 羅轟も水底から助け出されて、同じく牧場旅行に行く筈だったが。
「もふもふ、お付き合いいただきありがとうもふ。でも鎧が熱いもふ。冷ますもふー」
 止める間もあればこそ。あっという間に、羅轟は答えてもない水風呂にも放り込まれていた。


 よほど暇を持て余していたのか。
 もふらさまのお遊びはしつこく続く。

「黄色の精進潔斎、青の禊と行わせていただきました。ならば最後は三度目の正直、赤です! 誤まった後に正しい選択は儀式の形式にも見受けられます!」
「でも、そんな答えはつまらんもふー」
 自身満々に答える天花だが、結果はやはり熱い風呂に落とされる。
「柚乃も、やっぱり全部挑戦してみようかな?」
「毛並みが乱れるもふ。やめるもふ」
 ゆだる天花がもふらに揺られて旅立つ。羨ましげに見送る柚乃だが、八曜丸は渋い顔で止める。
「でも、そろそろ御主人さまに何するもふかって、言っちゃダメもふかー?」
 紗耶香が風呂に放り込まれるのもこれで何度目か。
 見ていたもふ龍もさすがに心配になって尋ねてくる。予め喧嘩しないよう言われたので見てるだけだが、やはりおもしろくはなさそう。
「んー、でもそろそろ大丈夫と思うよー。少々飽きてるみたいだしー」
 ミツコが指す先、黄色に挑戦し、一気飲みしている羅轟がいるが。
「味はまぁまぁ‥‥。しかし、寒ムム」
 水風呂にも突っ込まれ。もふらたちにもふもふされたが、鎧の上からではさほど温まってない様子。
 そして、飲んだ後のお掃除も今一つ。
「鎧邪魔もふー。お顔を綺麗に出来ないもふー」
「そういえば、鉄は体にいいと聞いたもふ」
「じゃあ、皆で食べるもふ」
「やめろー」
 じっと我慢していた羅轟に、他のもふらも圧し掛かって鎧を齧り出す。‥‥まぁ、その程度で壊れる物でもないが。
「いいの、あれ?」
「いいもふ。おにーさんの特訓の為にも遠慮しないでやっちゃうもふ」
 もふらに集られている羅轟を、きっぱりと言い置くもふべえ。主人思いか、冷たいのか。それは評価の分かれる所。
「お腹が空いたんでしたら、遊びは止めにしておやつにしましょうか。お饅頭用意しますよ」
 頃合と見て、紗耶香がお茶に誘う。思った通り、おやつの声にもふらたちの動きが変わる。
「じゃあ、ボクは芋羊羹でも食べさせてあげるか」
 運んでくれたもふらの頭を撫でて、絵梨乃も答える。
「最近貰ったお酒を持ってきました。もふらさまは飲めます?」
「好きな奴はいるけど。でも、酔ってお風呂はダメよ?」
 柚乃が差し出したお酒「もふ殺し」に、目を輝かせるもふらも何体か。が、その後ハツコに注意され悩み出す。
「その態度‥‥、まだ続ける気はあるんだ。‥‥危ないから、別の遊びを、ね?」
 ノルティアが冷や汗を流すが、もふらたちは聞かぬふり。
「もふらさまが楽しんでらっしゃるのなら、わたくしもこの儀式‥‥いえ、遊びを楽しませてもらいますよ」
 にこやかに笑う天花に、もふらたちは一斉に不気味な笑いを浮かべていた。

● 
 おやつを挿みながら、その後もしつこくしつこくしつこく遊びは繰り返され。
 やっと納得して解放された時には、全員それなりに倒れこんでいた。
「思ったより‥‥大変だった‥‥」
 鎧着たまま遊ぶものじゃないと、羅轟は悟る。
「「「「もふもふ、また何か思いついたら遊んでほしいもふ♪」」」」
 一方で、遊んでもらった牧場のもふらたちはご満悦。揃って朗らかに礼を告げる。
 笑顔で頷き返す開拓者たちだったが、正直、もう少し大人しい遊びに誘ってほしいと思う。

 湯当たりと遊び疲れでやや足取り重く。連れてきたもふらに揺られながら帰宅していく者も何人か。
 もふ助はそんな開拓者たちの表情を見渡し、妙に満足げで足取り軽い。
「とりあえず、大きなお風呂は必要もふ」
「‥‥おまえ、家で遊ぶとか言い出さないでくれよ?」
 非常に心配になる神之介だが、否定もせずもふらはもふもふ歩いていた。