もふらさま攻撃指令
マスター名:からた狐
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: 易しい
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2010/04/13 23:02



■オープニング本文

 今日も物騒な世界の中で。
 悩める乙女二人が論議を交わす。


「もふらさまってアヤカシ退治できないのかな?」
「はぁ? でかい図体で日がな一日寝転がって、仕事は命じないと動かない上に、それも油断するとサボってたりなんかして、子猫の方がよっぽど活発に動く働き者じゃないのと思うようなもふらさまが戦闘なんて動作できる訳ないじゃない!?」
「‥‥はーちゃん、やっぱりもふらさま嫌い?」
「何で、そうなるのよ。もふもふしてて可愛いじゃない」
 小首を傾げるミツコに、ハツコの鼻息は荒い。
「大体、なんでそんな事考えたのよ。別にもふらさまは戦わなくても、もふっとしてるし荷物引っ張るぐらいはしてくれるんだから、それで十分じゃない」
 温かいお茶を啜りながら、ハツコは日向で寝ているもふらに目を向ける。
 春間近とはいえ、まだ肌寒さは残っている。
 それでも暖かい場所を探しだし、日差しの下のんびりごろんと寝ているもふらさま。太陽の光を浴びて、毛並みのもふもふもさらに増量。
 実に幸せそうだ。
「でもぉ、神様のお使いなんだもん。アヤカシが襲ってきて開拓者がいないって時、すぱっと守ってくれたりしてくれないかなぁ」
「守ってくれるわよ。‥‥じーーーっといつまでも」
 アヤカシが現れた!!
 人々は悲鳴を上げて、逃げ惑う!!
 それを、じーっと『見』守る『だけ』のもふらさま。
 ‥‥時々、ふっと笑ってくれるかもしれない。
 想像できて頭が痛い。
「大体、体が大きくて力持ちだけど、挙動は遅いんだもん。向かって行った所で躱されるのがオチでしょ」
 言って、ハツコは温かい茶を啜る。
 体躯は似ていても、牛の方がよほど素早くて脅威だ。
「でもね。もふらさまが襲われた時だって、身を守る手段だって必要だと思うの。だからみーちゃんはもふらさまの攻撃手段を考えてみました!」
「え?」
 目を丸くするハツコに構わず、真面目な顔でミツコは立ち上がる。
「まず、地面に水を撒きます」
 防水用の桶に入った水を拝借、道に撒く。土は泥に変わった。
「次、もふらさま、ここに転がってー」
 笑顔で呼ぶと、寝ていたもふらが面倒そうに起き上がる。
 ごろんごろんごろん。
 あっという間に、もふらが泥だらけになる。
「んで、はーちゃんのお膝にお座り」
「何考えてんのよ、この馬鹿ーーっ!!」
 命じられて、嫌そうに座ろうとするもふらさま。
 泥だらけの姿に擦り寄られるのは、さすがに困る。普通の乙女なら着物気にして逃げて当然。
「‥‥これが泥じゃなくて肥えだったら、さらに恐ろしい攻撃になると思うの。どう?」
「いろんな意味で恐ろしいのは認めるけど、普通に座られるだけで十分重くて怪我するし、ふかふかのもふらさまを泥くたにしてそこに価値はあるのかとか、何でそれをあたしに実践して見せるのかとか、そもそもアヤカシが泥だらけにされたところで痛くも痒くもないといろいろ考えてしまう事も告げておくわ」
 もふらさまを押し留めて、肩で息しながらハツコはミツコを睨む。
 ちなみに、もふらさまは怠けている。
「綺麗好きのアヤカシもいると思うの!」
「汚濁に塗れたアヤカシだったらどうすんのよ!」
「その時は大蒜食べて臭い息であくびするとか、じっと見つめてもらって時々含み笑いをするという精神攻撃でイライラを溜めて胃に穴を開けるとかはどうかな!?」
「無理」
 必死なミツコに、ハツコは一刀両断。
「そもそも、もふらさま自体が戦闘を好まない、よく言えば温和、ぶっちゃけ単なる怠け者な相手なのよ。ヤル気の無い相手を戦わせるなんて事自体がどだい無理なの」
「むううー」
 口を尖らすミツコ。
 ハツコはそれ以上何も言わずに、汚れたもふらさまの泥を拭く準備にかかる。


 そして、ギルドに乙女が駆け込む。
「はーちゃんはああ言ったけど、もふらさまだって戦う手段はあるはずだよ。いろんな事できるんだもん。だから、知り合いのもふら牧場に見学させてもらえるよう頼んだから、皆で一緒にもふらさまが戦う方法を考えよう」
「それはいいんだけど、何であたしも一緒なのよ。攻撃が確立してから見せてもらうだけでもいいよ」
 ハツコの手をがっしりと握り締めて、逃さないようにしながらミツコが受付で手続きを始める。
「えー、だって。その牧場には大きな桜の木があって今見ごろなんだよ。桜・もふらさまと揃ったら、後は美味しい食事と場所取りではーちゃんの出番じゃない!」
「あたしにたかるつもり!?」
「細かい事は気にしな〜い」
「気にするっ」
 へらっと笑って踊り出すミツコに、ハツコが血相を変える。
「えーと、つまりはもふら牧場でもふらさまを見ながら適当に駄弁りつつお花見、という依頼でいいのでしょうか?」
 大騒ぎの二人に、受付は確認を取る。
「そだよー」
「え、それ主旨変わってない!?」
 あっさり頷くミツコに、ハツコは動揺を隠せなかったり。


■参加者一覧
向井・智(ia1140
16歳・女・サ
剣桜花(ia1851
18歳・女・泰
琴月・志乃(ia3253
29歳・男・サ
赤マント(ia3521
14歳・女・泰
橘 楓子(ia4243
24歳・女・陰
スワンレイク(ia5416
24歳・女・弓
設楽 万理(ia5443
22歳・女・弓
ワイズ・ナルター(ib0991
30歳・女・魔


■リプレイ本文

「今回もおやつ食べるだけでお金がもらえるって本当ですか!」
「そんなに甘くないわよ。さぁ、お弁当持ってゴー」
「おー」
 目を輝かせる剣桜花(ia1851)に、にやりと笑うと、お弁当と酒をどーんと持たせる依頼者のミツコとハツコ。
 出向いた先はもふら牧場。もふらがもふもふと放牧され、季節の花が周辺を彩る。
 暢気に寝そべるもふらの顔を、設楽 万理(ia5443)は覗き込む。
「思えば、もふらさまっていつの間にこんなユルキャラ以下の扱いばかりになったのかしら? ま、あのイヤらしい笑みが原因な気もするけど」
 考える万理を見つめ返し、もふらはふてぶてしくふっと笑いかける。
「で、あのもふらさまに最速を出してもらう為の工夫をするんだね」
 赤い外套をなびかせて、赤マント(ia3521)は確認するも、
「ちょっと違うのー。最速じゃなくてもいいから、もふら様の攻撃方法を考えたいのー」
「違うの? それじゃあ、どうしようかなぁ」
 小首傾げてミツコは否定。それに驚きつつも、赤マントは前向きにもふらについて考え出す。
「にしても妙な事考えたものねぇ。春の陽気に当てられて、脳味噌沸いちゃったのね」
 橘 楓子(ia4243)の眼差しは同情めいて悲しい。
 日差しも風も春めいて。萌える花目に心浮き立つ季節。
 ‥‥変な奴が出やすい季節でもある。
「えへへ。それほどでもー」
「ほめられてないからね」
 ミツコは全く気付かず素直に喜んでいる。ハツコは同類に見ないでくれと、言外に目で語り返す。
「平和的な依頼やしかまへんけど。‥‥よう見たら男って俺一人だけやん」
 ぐるりと見回す琴月・志乃(ia3253)。
 確かに目に入るのは女性ともふらばかり。
「‥‥女装でもすっかね」
 紅一点ならぬ、黒一点。何となく志乃が呟いた囁きに、途端、機敏に動く依頼人たち。
「了解。口紅は薄めがいいかしら」
「かんざしどれにするー?」
 どこに持っていたのか。乙女たちの化粧道具一式が志乃の前に広げられる。
「‥‥やっぱ脳味噌沸いてるやろ、お二人さん」
「ちっ。冗談よ、冗談」
 残念そうに道具を仕舞うハツコに、志乃は首を傾げずにいられない。


 桜の花はまさに満開。見晴らしのいい区画に陣取り、持って来た食料などを広げる。
「おにぎり持って来ました。よろしければどうぞ」
「では、折角の御好意。遠慮なく戴きます」
 向井・智(ia1140)が弁当を広げる。手を伸ばしかけた赤マントは、その先に重箱に詰まったぼた餅を見つけ、素早くそちらへと手を伸ばしていた。
 花より団子という言葉もあるけれど、
「もふらさまの戦闘手段なんて、言うまでもないですわっ!! あのもふもふ力によって人々はメロメロ! 全てが私たちのハートを鷲掴みですわ!!」
 スワンレイク(ia5416)にとっては、花より団子よりもふらさま。
 その一挙一動に大きく反応し、声を上げ、興奮しすぎて眩暈まで起こす。
「大丈夫?」
「ええ、これしきの事‥‥。でも、今でさえこれ程の攻撃力を持つもふらさまに更に強さを身に着けたいだなんて。禁断の領域に立ち入ろうとしているのですね、ミツコさん!」
 スワンレイクが衝撃のあまりに白目を剥く。
 背後には稲妻が迸り、弦楽器で戦慄めいた音色も聞こえてくるようだ。
「確かにです。抱きついた時の感触、こちらの心をくすぐる深い声。愛くるしい円らな瞳‥‥。既にこれだけで全身が武器だと言っても過言ではないと思いませんか!?」
 智も深く頷く。
「それが上手くないなら、赤く塗ってみた上で、怖顔の化粧をすれば強そうに見えるんじゃないかな? さらに、アヤカシの腕に見える珍しい大根を食べさせて『俺の主食はアヤカシです』という表現も可能!」
「アヤカシに似た大根ってどんなよ」
「みーちゃんは、内股でいや〜んな大根なら見た事あるよ」
 赤マントの提案に想像してみるが、アヤカシも千差万別。大根の想像が難しい。
「見た目からも一理ありか。でも、手持ちの紅だけじゃ足りないわね」
「墨なら集めやすいよ。黒もふらさまにする?」
 考え込む依頼者たちに、赤マントは即行否定を入れる。
「黒に塗るのは断固反対! 暗黒道に落ちるよ!」
「何故ですか!? 素早さでは定評のある我が神も、基本色は黒や茶ですよ!? 素敵じゃないですか!」
 それにさらに桜花が抗議する。
 ま、信仰は自由だ。
「それで実際に戦闘を‥‥と言っても、そもそも私たち弓術師からしたらもふらさまは有用よ。騎射で、跨って自分は射撃に専念すれば‥‥」
 万理の言葉が知りすぼむ。
「安定性は抜群だろうけど。‥‥動くかしら?」
「やっぱりそこよねぇ。命令通りに動いてくれないと困るけど」
 ハツコの指摘に、万理も悩む。
「食べ物で釣ればいいかもね?」
 ワイズ・ナルター(ib0991)が適当に食べ物を振る。
 気付いたもふらさまたち。普段よりかはやや早めな動きで食いついた。
 しかし、食べ終わるやすぐに怠けてしまう。
「駄目ですねぇ。‥‥何だかわたくしもお腹がすいてきました。お食事いただきますね」
「どうぞどうぞ」
 がっかりと気落ちしたワイズに、弁当が勧められる。
 見上げれば、青い空に薄紅色。いい日だ。
「攻撃ならば、この向井・智にお任せあれ! 必ずやもふらさまを最強の猛獣に変貌させて見せましょう!!」
「おー! それでどうするのー?」
 鼻息荒く拳振り上げる智に、周囲から何となく拍手が沸き起こる。
「幾つかすでに案はあります。ひとーつ! 遥かな高みより、もふらさまが落ちてくる恐怖の技。対象はその重量に押し潰され、かつ、もふもふを味わうという精神的攻撃にも襲われる二段構えの奥義! 名付けて――もふら落し!!!」
 胸を張って告げるが、ハツコは首を傾げている。
「‥‥もふもふはさておき。遥かな高みってどのくらい?」
「縁側ぐらいです!」
「低っ!! いや、その高さも危険ではあるけどっ」
 自信満々に告げる智に、ハツコが悩む。
「お気に召さないようですね。では二つ目! 舞う様な動きで敵へ接近、全身の重量を預けたのしかかりの一撃を叩き込む大技。圧倒的なその一撃に、相手の精神は崩壊してしまうのです。――名付けて、もふらさま闘舞!!」
「舞うような動きって?」
「もふらさまの歩み自体一つの舞ではありませんか!」
「そーかなー。それと、そこで何故精神? 肉体じゃなくて?」
「もふもふ加減で恍惚としてしまうじゃないですか」
「「それは恐ろしいですぅ〜」」
「二名、倒せた!?」
 スワンレイクとミツコが、想像したのか恍惚とした表情で蹲る。
「移動系の技はあたしも考えたわよ。例えばねぇ、的に向かうと思いきや、逆方向に突進する。または通り過ぎるのよ。――名付けて突進」
「まんま、というより‥‥戦えてないような?」
「そうね。あたしも脳味噌沸いたかしら」
 遠い目で、楓子は空に浮かぶ雲を見つめる。
 ああ、春とはなんと罪な季節か。
「こうへきひょーひょーにゃら、ふぁんたんふぇすよ」
「食べ物置いたら?」
「おまんまは大事です!」
 桜華は頬張っていた弁当をまずは綺麗にすると、一服してから意見を述べる。
「もふらさまに導火線付巨大火薬を大量に括りつけ点火してGO! これぞ神風特別攻撃もふら!!」
「それもふらさま死ぬから!!」
 マジに語る桜花に、依頼人たちは震え上がる。
「マジな戦闘方法っちゅうたら、体当たりくらいなもんやろ。食べ物で釣れへんのやったら。酒はどないやろ」
「いやいやいや。牧場のもふらさまだから無茶しないように」
 花見を満喫していた志乃が酒瓶を振ると、何頭か寄ってくる。
 が、一応何かあったら困るので、ハツコが止めに入る。
「では、これはお酌しましょう」
「ありがとさん」
 行き場を失った酒を智が取り上げると、志乃の杯に注ぐ。
「特別な好物があれば、非常時に一箇所に集結。群れになったもふらさまの上に多頭竜が描かれた布を被せて強そうに見えるという手もありましたが」
 赤マントはぼた餅を頬張り、指についた餡子も満足そうに舐める。
「では、逆に移動しない事を利用して、もふらさまの周辺地形を飾り付けるとかは? もふらさま起点に魔方陣を描けば、『コヤツ、何かする気なのか!?』と解釈してくれるかも」
「素敵ですねぇ。わたくしも、それまでのんびりしていたもふらさまが、急に何も存在しない一点を見つめ出す事で『えっ、もふらさま何見てるの?』と周囲の人をちょっぴりドキドキさせる大技を考えておりましたの。題して、もふら様が見てる改め、もふら様が見てる? ですわ」
 白飯と赤飯と海苔でもふらを模したらしいもふらさま弁当。しっかり確保して嬉しそうにスワンレイクが微笑む。
「じゃあ、魔法陣の真ん中で、もふらさまが見つめて二倍ドキドキだね。それで、時々含み笑いしたら相手はさらに警戒しそうだよね」
「「結構いい出来ですねー」」
「いい出来、じゃないでしょ。結局何も無いなら相手怒らせるだけでしょう」
 乗っかるミツコに、赤マントとスワンレイクも満足げに頷く。
 が、ハツコとしてはまだ不満。
「挑発して隙を作るという考えも出来るけどね。まぁ、単独で戦うとなると‥‥自力で動かないなら坂の上から転がってみれば? どうせそのまま転がり続けるだろうから、下の敵への質量攻撃になるわよ。ちょっとやってみましょう:
 寝そべっていたもふらに万理は協力を仰ぐ。
 運動用にか、ちょっとした山が作られている。
「転がれー!」
 面倒そうにもふらは起き上がり、山の上でごろんと転がると
「「「「ぎゃーーーーっ」」」」
 そのまま勢いついて目論み通りに坂の下まで転がった。
 が、慌てたもふらがもがいたせいか。途中から微妙に曲がって到達地点変更。見事こちらへと向かってくる。
 そのまま桜の木に見事激突。衝撃で、空から花びらと毛虫が降ってくる。
 一足先に各々荷物確保し逃げていたが、敷布の上を何かの幼虫がうねうねと動く。
「あ‥‥新たな攻撃法完成?」
「いやまぁその。坂が無いとどうにもならないのと、あのもふらさま無事なの」
 意外に怖かったのと、敷布が気持ち悪い事になったのとで。
 万理もハツコも何かしどろもどろになっている。
 ちなみに、もふらは毛皮が衝撃を吸収したか、怪我は無い。だが、もう勘弁とばかりに、駆け足で去って行った。
 敷布のゴミを払いのけ。改めて、仕切り直し。
「ですが、これで私も最後の技に確信が持てました!」
 智の眼鏡がきらりと光る。
「え、まだあるの?」
「はい。名付けてスペシャルもふらさま落としスペシャル!」
「すぺしゃるが二つあるわよ」
「それだけすぺしゃるなんだよねー」
 勢い込む智に、ハツコは冷たい。
「人知を超えた高みより、もふらさまが落ち以下略。鍛え抜かれたもふらさまの肉体とて、この高度は命取り。使用には細心注意が必要と考えましたが、さっきの攻撃法で大丈夫と判断しました!」
 厩舎の屋根を指差し、早口で解説する。
「もしかして、屋根から落とすのー?」
「‥‥完璧です‥‥!」
「駄目! それは危ない。もふらが危ない。ってか、その屋根にどうやって登らせるの!?」
 余韻に浸る智に、ハツコは先の動揺も覚めやらぬままに止めに入る。
 それでも一応桜花が考えを述べる。
「そうですねー。攻撃手段で、小型のもふらなら石みたいに投げて、とか考えたのですが。応用で屋根に放ってみるのはどうでしょう」
「‥‥もふらさま結構重いわよ?」
 小さいもふらでも人並みの体重がある。投げるなら投石機がある方がいいだろうが、それで放物線を描いたもふらがどうなるかは推して知るべし。


 論議は尽きぬ。時は過ぎる。
 話の合間にも酒は呑まれて、弁当は食われ、もふらはもふられる。
「やっぱり、もふらさまの攻撃方法を考えようっていうのは無理よね。最終的に『でも戦わない』とか『危ない』に落ち着いちゃう」
「はーちゃんが何でもかんでも駄目っていうからー」
 延々と喋りつくしても、ハツコとしてはやはりそこから考えが抜けない。
 不満そうなミツコとしても、だからといっていい案が出る訳でなく。
「まぁ、戦闘関連は俺らががんばったらええことやしな」
「よねー。もふらさまは戦闘に出すより、嫌がらせしてふてぶてしい顔をさせたりしてる方が面白いわ」
 杯に落ちた花びらに目を細める志乃に、万理も伸びやかに笑う。 
「案外、そう思わせる事がもふらの戦闘方法なのかもね」
 のんびりしているもふらに戦闘は似合わない。
 諦めるよう諭すハツコに、ミツコは口を尖らせる。
「不満なら赤いマントを着せてみる? 速そうに見えるよ」
 赤マントは、協力していただいたもふらたちをお礼にブラッシング。綺麗になった所に、自分のマントを着せてみる。
「格好いいし、邪魔にならないからもふらさまも続けられるはず!」
「‥‥だから、実戦にはあまりつながらないんじゃないのかなーと」
 満足げな赤マントに、ハツコは苦笑気味。
「ま、そろそろお開きかしらね。お弁当も綺麗になったし。‥‥帰る仕度しましょうか。ほら、彼女も起きて」
「むにゃむにゃ〜。いけ〜もふら〜」
 持ってきたお弁当も粗方が空。
 その傍では、もふらさまを枕に、いつの間にやらワイズも気持ちよさそうに寝てたりする。
「‥‥はっ、ごめん〜、寝ちゃってたね」
 揺すられ、ワイズは寝ぼけ眼で周囲を見渡していたが。
 状況を把握するや、素直に赤面する。
「本日はご馳走様でした。また、おまんま食べ放題依頼があったら、お願いしますね」
 桜花が満足した笑顔で両手を合わせる。
「うん。考えとくねー」
「冗談じゃないわ、自力で何とかなさいよ。ギルドの報酬ってかなりいい筈でしょ」
「鍛治屋さえ‥‥、鍛治屋さえいなければっ!」
 安請け合いのミツコ。ハツコはとんでもないと身を震わせ、桜華は暗い瞳で黒い微笑を浮かべる。
「おまんま食べ放題依頼‥‥ねぇ。結局今回の依頼って何やったんや?」
「いーじゃないの、春だし。ここん所、殺伐としてたから、たまにはもふらさま見習って怠惰になるのも」
 苦笑する志乃に、楓子も気軽に笑う。
「お名残惜しくありますが、本日はこれまでのようです。またいずれの日にかお会いして、こうしてもふもふと楽しませてくれる事を‥‥」
「はいはい。帰りますよー」
 もふらにお礼がてら、すがり付いて離れないスワンレイクとミツコを、ハツコが無理やり剥がす。
「今日は楽しかったです。またお付き合いお願いしますね」
 畳んだ敷布を抱えると、ワイズはにこやかに礼を述べる。

 桜咲き、もふら転がる長閑な日。
 これが何の益になったかは各自の判断にお任せするとして。
 とりあえず怠惰な一日を満喫し、開拓者たちはもふら牧場を後にした。