【聖夜】【修羅】鬼動く
マスター名:からた狐
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: 普通
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2011/01/08 20:48



■オープニング本文

●クリスマス
 ジルベリア由来のこの祭りは冬至の季節に行われ、元々は神教会が主体の精霊へ祈りを奉げる祭りだった。
 とはいえ、そんなお祭りも今では様変わりし、神教会の信者以外も広く関わるもっと大衆的な祭典となっている。
 何でも「さんたくろうす」なる老人が良い子のところにお土産を持ってきてくれるであるとか、何故か恋人と過ごすものと相場が決まっているだとか‥‥今となってはその理由も定かではない。
 それでも、小さな子供たちにとっては、クリスマスもサンタクロースの存在も既に当たり前のものだ。
 薄暗がりの中、暖炉にはちろちろと炎が燃えている。
 円卓を囲んだ数名の人影が、深刻な面持ちで顔を見合わせていた。
「‥‥やはり限界だな」
「今年は特に人手不足だ、止むを得まい」
 暖炉を背にした白髪の老人が、大きく頷いた。


 石鏡で行われた安須大祭は、例年通りの賑わいを見せ、めでたく閉幕。
 そんな寿ぎの陰で、今年は修羅と呼ばれる者たちと朝廷の策謀が繰り広げられていた。
 紆余曲折の末、修羅たちの身柄は開拓者ギルドに預けられた。
 ただ。目覚めた酒天を再封印するか、放免するか。現れた他の修羅たちを如何様にするか。
 朝廷では今なお意見が割れ、連日陰日なたに議論が交わされている。
 あくまで結論が出るまでの仮処分に過ぎず、実質軟禁状態で留められていた。

 そんな中での神楽の都。
 酒天童子がおとなしくしているのかといえば、そうでもない。
「曲者発見!」
 深夜の路上。草履を投げると、老人が落ちた。
 大角の鹿が曳く橇は、主が無くなったのに気付き、即座に止まる。
「いきなり何をするんですか!?」
 よたよたと起き上がる老人に、負けじと酒天は詰め寄る。
「それはこっちの台詞だ。深夜に大きな荷物を持ってこそこそと何してる」
「何って、クリスマスの配達です。サンタですから」
 落ちた汚れを掃って、サンタは丁寧に礼をする。
 長い白髭に赤と白の衣装を着た恰幅のいいジルベリアの老人。
 橇を曳く鹿も、見る者が見ればトナカイと分かる。
 どう見てもサンタなのだが、酒天は首を傾げている。
「もしかして、ご存じないですか?」
「いや、最近よく聞くんで何の事か尋ねたら『玩具を売りたい商売人の陰謀の象徴』と言われたから。でも、お前は商人じゃないよな?」
「はい、違います。‥‥大人になるとそう仰る方も出てくるんですよねぇ」
 サンタは勿論、トナカイもがっかりと項垂れる。
「ちなみに、クリスマスはどう聞かれてるのでしょう」
「『一人身は黙って酒を呑む日』。その後、『チクショウ、ミサトちゃん。俺はマジだったのに‥‥』と続き、あまりに泣くから一緒に飲みに行ったら酔い潰れたんで、仕方ないから引き摺ってギルドに戻る所。ちなみに一応朝廷からの見張り役」
 足元のずた袋を、閉口しながら指す酒天。
 よく見れば、それは人間だった。多分、身なりもちゃんとしているのだろうが、泥だらけな上、酒と何かの臭いがする酷い有様。
 土気色で死にそうな顔をしているが、それはきっと酒の呑みすぎに違いない。
「小さいのに苦労されて。そんなよい子にプレゼントを配るのが我々サンタの役目であり、クリスマスという日なのですよ」
「いらんっ! 子供でもないし、そもそも誰が小さいじゃ!」
 ほろりと涙を流すサンタが取り出した品を、酒天は払いのける。
 払われたプレゼントを慌てて宙で掴みなおすと、おどけた様子でサンタは肩を竦めて見せた。
「軽いジョークです。分かってますよ、あなたは結構なお年のようですね。それを見込んでという訳でもないですが‥‥」
 そして、サンタは願いを口にする。
 酒天の顔色が微妙に曇った。


「プレゼントを配達する筈の村の近くに、アヤカシが潜んでいるらしく、トナカイとかいう鹿が怖がって行きたがらない。だから、討伐を頼みにここに向かう途中だったのを俺が引き止めちまったって訳だ」
 ギルドでふんぞり返り、状況を説明する酒天。
「サンタはなんだか手が足りないらしくって、これ幸いってな感じに荷物とギルドへの伝言押し付けて、次の配達地域にいきやがりました。まぁ、草履投げた手前もあるし、玩具ももらったしで頼まれてやるのはいいんだが、問題はアヤカシなんだなぁ」
「結局もらったのか」
「悪いか。暇潰しぐらいにはなるだろ」
 どうみても子供用の玩具をもて遊ぶ酒天に、受付は呆れる。
 それでいて、似合ってるとか言おうものなら、即座に蹴りつけられかねない。面倒な相手だ。
「それよりもアヤカシだ。手ごわいのか?」
「いいや。話に聞く限り怪狼が五体。ただなぁ、前なら暇潰しにもならない相手だっつーのに、封印の影響なのか、体は鈍ってるし力の加減はおかしいし。たかが五体程度でも、こんな大荷物を守ってだと不安にならにゃならんつーのが本音。大事なお届け物ならなおさら汚す訳にもいかんしさー。
 という訳で、アヤカシ潰して荷物を村の子供らに届けるのを手伝ってくれ」
 受付の眉間にしわが寄る。
 別にアヤカシ退治や配達が問題では無い。気になったのは‥‥。
「手伝えって。まさか、お前さん一緒に行く気か!?」
「当然だろ? 俺が頼まれた話なんだから」
 声を上げると、酒天は意外な事を言われたと言わんばかり。
「いやいやいやいや。確かに大伴様の御助言もあってこうして一応動き回れるが、まだ朝廷からの監視付きの身っていうのは忘れるなよ。‥‥で、肝心の監視はあれだし」
 慌てる受付は、そっと後方を見る。
 そこで、監視は倒れていた。『ミサトちゃん』と自棄酒の影響で体調不良らしい。
 とてもじゃないが出歩ける状態では無い。アヤカシ退治に連れ出すなどもっての他。‥‥上に知れれば、職務怠慢で怒られるに違いなし。
「だから。監視代行もついでに。大丈夫、代行希望の旨はあいつに承諾書かせたから」
「本当に、奴が書いたのか」
 意気揚々と差し出された手紙は、みみずがのたくったような文字。
 不調の監視が書きそうだが、正直誰でも書ける字面だ。
 とはいえ、あまりくどくど言っては、酒天一人でとっとと動きかねない。
 ここらが妥協点なのだろうが、本当にいいのか。胃を痛くしながら、受付は依頼を請け負う。
「ちなみに他の二人は?」
「別行動。常にいられても息がつまるし、朝廷の奴らからいらん勘繰り受けるだけだからな」
 あっさり告げられ、受付はほっとする。
 これで三人揃って行動とかだったら、どんな騒ぎになるか。
 もっとも、酒天だけでも不安は大きい。
「つーか、周りが騒ぎすぎなんだよ。俺、まだ祭りで呑んで移動して何人か投げ飛ばしたぐらいしかしてねーってのに」
 そんな当人は、全く無自覚のまま不服を漏らしている。


■参加者一覧
天津疾也(ia0019
20歳・男・志
アルティア・L・ナイン(ia1273
28歳・男・ジ
浅井 灰音(ia7439
20歳・女・志
メグレズ・ファウンテン(ia9696
25歳・女・サ
不破 颯(ib0495
25歳・男・弓
无(ib1198
18歳・男・陰
盾男(ib1622
23歳・男・サ
雪刃(ib5814
20歳・女・サ


■リプレイ本文

「本物のサンタから依頼かぁ。また面白いモノを拾ってきたもんだ」
 年に一度のクリスマス。
 子供たちにプレゼントを運ぶサンタクロースは天儀でも知らぬ者は無い精霊。反面、実在するかは話が分かれる。
 そんな存在からの依頼。しかも受けたのが祭りを騒がせた修羅――酒天童子というのだから、不破 颯(ib0495)の笑みもまた分かろう。
「贈り物を受け取れば、子供たちは喜ぶ。そういう事なら幾らでも協力する。酒天君だっけ。その心意気には感心、だね」
「やめろ。これでもお前らより年上だぞ」
 頭を撫でていいか。躊躇しながら雪刃(ib5814)が伸ばした手を、酒天は軽く睨む。
 怒ったかなと雪刃が考えるより前に、酒天は気にした様子無く興味はとっとと別に向いていた。
「面白いかどうかよく知らんけど。それよりお前ら何やってる訳?」
 プレゼントもサンタも興味は無い様子。
 ただ今は開拓者たちの動きに、怪訝そうな顔をしている。
「何って、台車をクリスマス仕様に飾り付けてるんだよ。子供たちのクリスマスプレゼントを運ぶのに、このままじゃ味気ないだろう?」
「は?」
 台車に緑の蔦を巻きながら、浅井 灰音(ia7439)は真顔と告げる。
 灰音だけでなく。他の開拓者もまた一丸となって飾り付けに励んでいる。
 それが当然とばかりに動くのが、酒天には理解出来ないよう。
「荷物を村に届けるのが依頼のようだが。サンタ衣装もギルドから借してもらえたのだし、せっかくだから子供たちに配るまでやってもいいだろ。子供たちの夢とサンタの想いを乗せてってところかな」
「酒天さんには是非サンタになってもらいたい! 直接依頼を受けたのはあんたなんだ。責任持ってやらなきゃだろうよぉ」
「はぁ」
 无(ib1198)が告げると、颯は酒天に詰め寄り、熱心に諭してサンタ衣装を渡す。
 颯の笑みに胡散臭さを感じて警戒する酒天だが、他の開拓者もやっぱり当たり前のようにギルドから借りたサンタ衣装を着込んでいる。
 そういうものなのか、と、まだ若干首を傾げつつも、一応受け取る。
「紅白でめでたそうだしいっけど。‥‥それで、お前さんはなんで鹿?」
「荷物を運ぶのはトナカイの役目なのですよ」
 角の獣の衣装を着て、メグレズ・ファウンテン(ia9696)は台車に手をかける。
「なるほど。そういえばあいつもそんな感じだっけ」
 元々の依頼者であるサンタを思い出してか、納得している。
「酒天とは、大アヤカシとかにいそうな強そうな名前ですね。それはそうとサンタは三種類いるんですよ。本物と偽者とアヤカシです。あなたがあったのはどれでしょうかネー」
 盾男(ib1622)の軽口に、酒天はふと首を傾げる。
「前なら殺り合う程度は出来たけどな。とりあえず俺が会ったサンタはアヤカシじゃない。本物と偽物がどう違うのかは知らんけど」
 酒天が、肩を竦める。
 どこまで本当かどうかわかったものじゃない。
 ただ、今回の配達には怪狼が立ち塞がる。下級アヤカシ相手に開拓者に動向を求むなら、実力も大体知れる。
「一体荷物を託した御老体は何者なのやら。や、サンタだろうけど‥‥」
「まぁ、結局悪い奴じゃなかったしいいんじゃね?」
 正体を考え込むアルティア・L・ナイン(ia1273)に、受けた当人は悪童のように笑う。


 目的の村まで、台車転がしのんびり移動。
 道すがら、酒天にクリスマスについての知識を改めて説明する。
 曰く。
『クリスマスとはセイントクロスというアーマーのようなものを駈り、活躍したクリスト・マッスルの偉業を称える行事である』(盾男)
『とある有名人が生まれた日。大事な人達とケーキやごちそう食べて互いにプレゼント渡して騒ぎ、さらに良い子にのみサンタが不法侵入し枕元にプレゼントを置いて去る。悪い子には動物の臓物を置いて去る』(颯)
『泰国でサンタは燦刀紅老僧と書き、向こうでは子供の笑顔を守る守り神として奉られている』(アルティア)
 ‥‥皆様。実に真面目に解説して下さる。
 一概に間違いと言えぬ部分も含まれてるので、黙って聞いてた女性陣もどうしてよいのやら。
「人が知らんと思って、適当言ってんじゃねー! 商売人の陰謀とか一体どんな祭だ!?」
 そんな雰囲気はさすがに分かり。
 顔を真っ赤にして酒天が怒鳴る。
「何やて!? 年末商戦は一年の総決算なんや!! その為の方便にくりすますつこうて何が悪いんやーー!!!」
 その酒天にさらに天津疾也(ia0019)が力説。もはや何が何やら。
「HoHoHo、メリークリスマス、っていってプレゼントは配られるのですよ」
「もういいっ」
「本当ですよ」
 会話半分。どこかに気を取られて進んでいた无が、ふと口ごもる。
 人魂を飛ばしての偵察。その先で、問題のアヤカシたちを見つける。
「来たか」
 むすっとしたまま、酒天が告げる。開拓者たちが荷を中心に展開する。
「木刀と破理戦。どっちがいいですか?」
「破理戦とやら。借りるぞ」
 无が差し出した鉄板の方を、一瞬迷って酒天は受け取る。
「どうやら。向こうもこっちに気がついたみたいだね」
 灰音も宝珠銃「皇帝」を構える。
 さわさわと草の陰に隠れ移動する音が聞こえる。だが、警戒してるのか、間を取りなかなか攻めて来ない。
「じゃあ、こっちから行くか」
 酒天はあっさり告げると、破理戦を振るった。
 光弾が距離を飛び、隠れていたアヤカシを見事撃つ。
「キャン!」
 可愛い声を上げて獣のようなものがもんどりうった。
 それが合図であったように、一斉にアヤカシが動き出した。
 奇妙に歪んだ狼――怪狼。転んだ一体も即座に後を追ってくる。その数、五体。
「くそ、弱ぇ!」
「あ、ちょっと」
 舌打すると、酒天が走り出す。すかさず雪刃も動き出した。
「変に荷物に興味を持たれても困るしね。それに‥‥」
 雪刃は酒天に一瞬視線を向ける。子供が中身どうあれ、見た目が子供である以上傷付くのは見たくは無い。
 視線を即座に戻す。迫ってくる怪狼は容赦なく牙を見せる。
 まず接したのはアルティアだった。隼襲で俊敏を上げると、群に両手の二刀で斬り込む。
「──燦刀紅老僧をなめるなよ?」
 サンタ衣装で不敵に笑うアルティア。
 多数相手でも、力量的には十分。他に行かれないよう咆哮を放ち注意を惹く。
「でも、アルティアさん。まだ貴方の新しいスタイルは粗があるみたいだね」
 左手に短銃。轟音と共に打ち放ち、弾込めながらも灰音は軽口を叩く。
「力不足は承知の上だ。一からやり直しになっても、今後の為になるなら」
 アルティアも動き回りながら、からかう口調で返す。
「さーて、なかなか使う機会の無かった、このバイエンの試し撃ちでもさせてもらうとするかいな。‥‥なんや、一年半前から持っとる気もするが気のせいやら」
 ぶつぶつと誰かに告げつつ、疾也はマスケットを撃つ。
 両手に重い反動を感じるや、末期の声を上げる間も無く。怪狼一体が派手に吹っ飛ぶ。
 横たわった姿は未練がましく痙攣したが、それもすぐに消えた。
「‥‥で、再充填開始。ちょぉ手間かかるんやな」
 前装式銃は特に時間がかかる。その間も、事態は待ってくれない。
「散らばられるのも面倒ですけど、纏まられても動きづらいですね」
 咆哮の効果でアルティアに向かっていく怪狼たち。
 メグレズは刀に盾を合わせ、十字組受で一体の動きを阻む。そのまま焔陰を纏った刃で押し返すと、深々と相手の体に斬り込まれる。
「酒天さん、横!」
「げ!」
 飛び出してきた怪狼に、颯が先即封。
 気付いた酒天が振り返り、无が呪縛符を投げ手足を縛るが、それでも負けじと酒天の腕に噛み付く。
「こなくそ!」
 力任せに振り払うと、簡単に外れた。
 すっ飛んでった相手が起き上がる前に、狙い定めた颯が強射「繊月」で仕留める。
「大丈夫ですか?」
「ああ、構うな」
 治癒符を出しかけた无を制して、酒天は動く。
「やっぱり一撃で行くべきだよね。一刀で決めてしまえば、何も恐れる必要は無い」
 苦い表情で、雪刃は地断撃を放つ。
「キャウーン!」
 めくれ上がった大地に怪狼が情けない声を上げる。
 太刀抜き迫ると、力を溜めて渾身の一撃で斬りかかる。
「刀だけじゃないよ! メリークリスマス! 悪いアヤカシには銃弾をプレゼントだ」
 笑って片手で扱える銃二丁を構えると、盾男が猿叫。怯んだ怪狼に容赦なく両手の銃をぶっ放した。


 危険ではあるが、怪狼は一般人でも倒せる相手。
 ましてや数でも勝っている。負ける要素は無く。現れてから決着まで、あっという間だった。
 荷物も勿論無事。目的の村までつくと、トナカイにサンタがプレゼントを持ってきたと子供たちが歓声を持って出迎え。
 大人たちも、もたらされたアヤカシ討伐の報で歓喜に震えた。
 だというのに、酒天は御機嫌斜め。彼にとっては梃子摺った方で、それが気に入らないのようだ。
「実際、梃子摺ってたからなぁ」
 修羅の王というからには実力やいかに!?
 密かに期待していたアルティアだが、正直拍子抜けした。
 同じ修羅である羅生丸の方がよっぽど頼りに思える。
「反応はしようとしてたけどね。体が上手く動いてない感じかなぁ」
 盾男が首を傾げる。
 それが元からなのか、それとも言うように封印の影響からなのか。彼らには判別つかない。
「そんな事より、今はほら。子供たちがお待ちかねですよ」
 折角運んだプレゼント。
 期待に溢れた目で見てくる子供たちの為、メグレズは早速届けたいが、
「いいじゃん。お前らでやっとけば」
「駄目です! サンタさんから託された以上、最後までキチンと果たさねば!」
 拗ねてる酒天を、気合入れて引っ張り出す。
「そや。大体クリスマスに一人で寂しくおったら、どこからともなく覆面をつけた集団が現れて、じーく、嫉妬と叫ばされるようになると‥‥いひゃい。何すんねん! 顔の造りも商売には大事なんやでー」
「だ・か・ら、そういうのはもういいの!」
 真面目に嘘を教える疾也の頬を、酒天が引っ張る。
「私の仕事はアヤカシ退治、やる事はもうやった‥‥だから酒天は、贈り物配り、頑張って。サンタクロースだっけ‥‥。なってみるのも子供たちに感謝されるのも、いいと思うよ」
 雪刃も静かに諭す。
 聞いていた酒天はやがて嘆息一つ、大きく伸び上がる。
「ああもう。悩むのは後でいいや。確かに、頼まれ事を途中で投げちゃ悪いわな」
 先程の不機嫌はどこへやら。けろっとした表情でプレゼントの準備をし始める。
「届け終わったら酒でも呑みにいきませんか? ‥‥あの時の酒も気になりますし」
「いいねー。なんかクリスマスは鶏肉で酒呑む日らしいしー♪ この件で金も入るし奢るぐらいいいぜ♪」
 无が誘うとさらに上機嫌になり、いそいそと配りに出かける。
 サンタな開拓者たちは、待っている子供たちに楽器の音と共に「メリークリスマス」を伝え、一人一人に贈り物。
「この村の子たちはサンタが沢山いるもんだと思って生きるのか‥‥。あれ? サンタって複数いたんだっけか?」
 颯が首を傾げる。
「何人いてもいいじゃない。‥‥だから、来年も良い子にしていればプレゼントを運んできてくれるよ」
 取り残しのアヤカシがいないか周囲を見回ってきた灰音。幸い、その気配もなく。
 出迎えてくれた喜んでいる子供の頭を撫でると、右目を瞑る。

 贈り物も届け、村人たち見送りを受けながら帰路につく。
 その頃にはすっかり忘れたようで、酒天の足取りは軽い。
「そういえば‥‥監視の人って大丈夫? 何か言われそうなら、私も口添えする‥‥けど?」
 ふと雪刃はその存在を思い出した。一応承諾書はあるとはいえ、真偽は怪しい。
「別にいいんじゃね? 言われた所で今は手なんて出してこねぇだろ」
 含むような嗤いで、酒天が答える。
「どんな形にせよ。人々に喜び笑顔を浮かべて貰えるのは良い物。そう易々と奪って良い物ではないし、だから、色々とあるのかも知れないけど、仲良く出来るならそれに越したことはないよなぁ‥‥と、僕なんかは思うのだけど。どうなんだろうね?」
「出来るなら、な」
 諳んじるように告げたアルティアが、酒天を見る。
 見返した酒天は肩を竦めると、首を振る。
「でも、クリスマスっていいよなー。あの紅白男、俺にも何かくれねぇのかなー」
「残念、子供の夢しか叶えてくれないよね。今回、本物のサンタが依頼主の可能性があるならあるいはと思ったけど‥‥ああ、何でも言う事聞く綺麗で若い娘さん‥‥」
 がっくりと肩を落とす盾男。それは自分で見つけよう。
「となると、五百年前にサンタがいても武器調達とかはしてくれそうにないか。ま、いいさ。夢なら自分で分捕るし。とりあえず今は酒だな。ほれ、早く」
 返事をする間もあればこそ。
 空になった台車に、開拓者たちを荷物ごと無理矢理放り込む。
「じゃ、呑みにいくぞーー♪」
 楽しそうな声で告げると、いきなり発車。その手際は見事なもの。
「「「「こういう時だけ速いんかいっ!!!」」」」
「喋ると舌噛むぞー!」
 揃って抗議するが、風を切って走る台車は石につまずく度に大きく揺れる。
 神楽の都に着くまでが、今回最大の難事になったのは言うまでも無い。