紅葉祭りでおもてなし
マスター名:からた狐
シナリオ形態: イベント
相棒
難易度: 易しい
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2013/12/02 19:14



■オープニング本文

 暑い夏が続いたと思うや、冬がもう目の前。
 年末も近付いてきて、そろそろ年越し準備も考えねばならなくなってきた。
 とはいえ、辛い冬の前には秋が来る。実りの秋もいいが、紅葉を愛でるのも今しかない。
 風も冷たく、日差しも緩やか。けれど、春の花見とはまた違う味わいがある。
 紅葉の名所では、紅葉狩りに訪れる人々をもてなす為に、そろそろと準備を始めていた。
 皆で賑やかに秋を楽しもうと、紅葉が美しくなる時期を見計らって村や街ぐるみで紅葉祭りを開催するのは、この時期よくあること。そうして訪れた観光客の落とす金は、冬を越したりする為の大事な資金にもなる。


 とある街の、とある広場。そこも数日ほど、祭りの期間を設けて広場を整備していた。
 山の色付きは勿論のこと、広場を囲むように植えられたイチョウや紅葉も見事な色彩を放ち、訪れる者の目を和ませる。眼福と呼ぶにふさわしい風景。
 そして、花より――ではなく、紅葉より団子という者もいる。そういった人の為に屋台や芸人も集めて、毎年多くの客をもてなしてきたのだが……。

 紅葉祭り開催を控えた広場にて。町長は大慌てて広報係がもたらした凶報に、耳を疑った。
「しょ、食中毒!? 婦人会全員が、この時期に!?」
「一部の人だけなんですけどね。夕べの仕込み中に食べた飯が悪かったらしくて。秋なんで油断したようです。――幸い、軽いもんですけど、数日は人との接触を避けて厠と寝所を行ったり来たりせにゃならないようで」
 顔を引きつらせて告げる広報係に、町長もめまいを覚えてふらつく。
 さほど大きな街でも無い。
 祭りの為、住んでいる女性たちが一丸となって作った軽食を振舞うのが例年の慣わし。が、食中毒で腹を壊しているとあっては屋台など立たせる訳にはいかない。その看護にも手が必要で、自然、料理部門の手が足らなくなる。
「いや、だが大まかな仕込みは出来ているのだろう。彼女たちはゆっくり養生してもらい、残った男衆だけで後をがんばれば――」
「実は、それだけじゃないんです。毎年公演を頼んでる芸人一座が、今年の公演は無理だと今朝になって伝えてきまして……」
「何!? 公演料はもう支払ってあるはずだぞ。今更何を!?」
 婦人方の手を借りられなくなり、屋台飯の切り盛りをどうすればいいのか。
 それだけでも頭が痛いのに、さらに芸人一座もいないとは。
 嘘だといってくれ、といわんばかりに町長は目を剥くが、現実は冬より厳しい。
「ここから三つぐらい離れた村で滞在中、そこの村長の一人娘と一番人気の芸人が駆け落ちしてしまい、村からは娘をどこにやったと責められ、看板がいなくなった一座の後をどうするかで座長と妻がもめているところに、副座長が金をくすねて逃げようとしたので皆で乱闘騒ぎになって怪我人が続出したようです」
 自分のことでもないのに、広報係はすまなそうに告げる。伝えに来たのは一座の下っ端らしいが、おそらくそういう顔をしたのだろう。そういう事情なら、その村から一座は動くのは無理だろう。
 少なくとも祭りの開催中には。

 立つ気力も失せてへたり込んだ座長に、元気を出してと広報係は力強く告げる。
「急な取り止め料と詫び料として、五倍の金額にして払い戻して来ました。なので、金銭的にはまったく損はなくむしろ儲けたぐらいです」
「それがどうした!? 紅葉祭りはもう始まるのだぞ! 近隣にも大々的に知らせて日にちの変更なんぞきかん! 変えたところで紅葉の見頃が終わってしまうだけ! だが、開いたところで、愛嬌も無く、男どもが作る飯を食いながら紅葉だけ見て帰れ、と? そんなことしたら、いい笑いものだ。来年の祭りの足に影響が出てしまう!」
 そんな味気ない祭りに来年もまた来ようという気になるだろうか。
 紅葉祭りで観光客が落としてくれる金は、街の貴重な財産になる。もし、今年まずければ来年に響き、そして再来年の街の運営に支障をきたすようになる。
 それは避けねばならない。街の明るい未来の為に!!
「すぐに都に連絡しろ。いや、祭り見物として、もう来ている者もいるかもしれない。とにかく開拓者にどうにか連絡をつけて、祭りの運営を手伝ってもらうんだ!」
 困った時にはこれしかない。
 声を上げる町長に、広報係も顔を引き締め、一つ返事で馬を手配し始める。
 街の運命がかかっている。――大げさかと思うかもしれないが、町長は至極真面目だった。


■参加者一覧
/ 柚乃(ia0638) / 礼野 真夢紀(ia1144) / 十野間 月与(ib0343) / 紫ノ宮 莉音(ib9055) / 音野寄 朔(ib9892) / ジャミール・ライル(ic0451) / ティー・ハート(ic1019) / ヴァーナ(ic1329


■リプレイ本文

 秋の紅葉。
 春の花見とはまた違い、これからの季節に身を震わせながらも、色付く木々にしばし目を留め、心を和ませる。
 休養求めて紅葉地を訪れる者も多い。祭を催すと聞けば、紅葉以外の楽しみを期待も出来る。
 そうして足を運んでみたものの。現場が何やら慌しいと勘付いたのは、やはり開拓者としての勘か。
「何かあったのかな。――くぅちゃんどうしたの?」
 人込み苦手な柚乃(ia0638)でも、楽しそうにしている相棒を見ていればこっちも楽しい。
 だが、ふらふらと祭り見物をしていたはずの提灯南瓜のクトゥルーが、大慌てで戻ってくるとさすがに慌てる。
 さらにその後ろから、いかにも祭りの運営側ですと主張する法被を着た人がついてきたなら、何事かと思うもの。
「もしや開拓者さんですか? 実は助けていただきたいことがあるのです」
 柚乃を見つけるや頼み込んでくる。切実な態度は、急な案件なのだと判断するに十分。

 開拓者だと分かって頼まれて。あるいはギルドからも要請があって赴いて。
 事情様々ながら、紅葉祭に訪れた開拓者たちは、紅葉を楽しむ側から楽しませる側へと変わる。


「亡き主人が喜んで聞いてくれた歌が、人々の慰めになるなら……」
 話を聞きつけ、訪れたヴァーナ(ic1329)は祭りの会場を見つめる。
 一見、人のように見えるが、よくみればからくり特有の紋様などがある。他にもからくりを連れてきている開拓者はいるが、彼女が仕える主はすでにない。彼女自身が開拓者として来ていた。
 会場にいる客は、多くは誰かと連れ立っている。そんな彼らをどこか寂しげに見ている。
「おにーさん、遊びに来たんだけど……。でもま、金もらえんならいいかぁ」
 妙な展開になったものだと思いながらも、ジャミール・ライル(ic0451)は暢気に舞台を確認していた。
 広場の中心に作られた簡素な舞台。そこに立つはずの一座はこの場にはいない。ここに来るまでに騒動が起き、足止めされてしまっていた。
 彼らに代わってどう祭を盛り上げるか。幸い、奏者になる開拓者もいて、踊りも華やかに出来そうだ。
「ライルー! 味見してくれー!」
 舞台見ながら計画を立てていると、屋台の方からティー・ハート(ic1019)の声が届く。
 距離は十分ある。すでに人もいる。が、屋台からジャミールまでの直線状にいた人以外反応が無いのは、貴女の声の届く距離で呼びかけられたからだ。
 そうまでして呼ぶほどのものかと思いつつ、駆けつけてみれば。味見用の皿を突き出し、「旨いよな?」と、ティーがにっこり笑う。
 屋台も、本来作り手になるはずだった村の婦人方が倒れてしまい人手が足りない。
 代わりに集まった開拓者たちが仕上げに奮闘しているが、何故その中に味覚音痴というティーが混じっているのだろう?
 ジャミールは、おそるおそると口をつける。
「まあ美味い……ってか、これ、野菜ばっかじゃない? イノシシはどこに行った」
 山椒、塘蒿、蜜柑、銀杏と癖と香りの強い食材が調達され、放り込まれていた。
 食べられなくもない。が、何故か首を傾げたくなる。味見した本人だけが、上機嫌でさらに何か手を加えている。
「下ごしらえぐらいは手伝えますけど。イノシシ汁ってこんなのでしたか?」
「なんだか。本当に今年の祭りはツキが無いような気もしてきました」
 軽く手伝いながらも、やはり首を傾げる紫ノ宮 莉音(ib9055)。
 銀の狐耳を寝かせて呟く音野寄 朔(ib9892)を見上げて、忍犬の和も同じように耳を寝かせてなんとも情けない声を上げていた。
「来年以降のことも考えると、常と同じ味付けにした方がいいでしょうね。他は……、林檎と薩摩芋の蜂蜜生姜煮を甘味で加えておきます」
 予定していたキノコ御飯とイノシシ汁の材料はかなり用意してあったし、鍋もある。作り分けておくのもいいかもしれない。
 こちらに来てくれた婦人方も若干名はいる。彼女たちから作り方を教わりつつ、礼野 真夢紀(ia1144)は、ティーとは別に、普通にイノシシ汁を仕込んでいく。
 ただ、予定に無い料理は、材料から買出ししなくてはならず、その分余計な時間をかけてしまっている。
 急がなければと、相棒である上級からくりのしらさぎも急かして慌しく火を起こして材料を刻む。
「食べ歩き用に何かあってもいいよね。肉まん、茶饅頭。温かい御茶と、汁粉と冷茶の組み合わせから選んでもらうとして、料金設定はえーと」
 十野間 月与(ib0343)は慣れた手つきで算盤を弾いて値段を決める。帳面や釣銭をからくりの睡蓮に託して、接客の仕方を指導したりと忙しい。

 そうこうする内に、祭りの開始時刻は迫っていた。


 ひとまず舞台を一番に使ったのは、町長だった。祭り開始と共に簡単な挨拶をしながらも、ちらちらと心配げに目線は屋台の方に向いている。
 そんな町長に気付く暇もなく。
 早々と屋台は食べ物目当てに人が集まってきていた。
「はい、こちらキノコ御飯二人前にイノシシ汁のお客様へ。そちらの竹水筒は向こうでお待ちのお客様にお願い」
 旗袍「紅雀」を着た月与が次から次に入ってくる注文に忙しく手を動かしつつ、からくりの睡蓮に指示を出す。
 その睡蓮も普段から小料理屋兼民宿での従業員をしているだけあって粗相は無い。金銭のやり取りも手慣れた風。
 食べ歩き用に作った料理も、散歩で腹を満たすのにいい、と好調に売れている。
 売れている分だけ、月与も品切れを起こさないよう急いで補充する。接客に回る暇が無く動き続ける。

 舞台では、堅苦しい挨拶も終わり。代わって台上に現れたのはジャミールだった。
「ほんとはもっと高いんだけどね……。今日だけ特別よ――? おひねりは後でねー」
 赤いベールをまとって、ジャミールは身軽に踊る。異国の風貌に華麗な踊りは、来てよかったと紅葉よりも注目を集めている。
 伴奏には莉音が河乙女の竪琴を奏でる。
「ジャミール様、やっぱりお上手ね。お次は朔様ですか」
 心からの賛辞を送ると、莉音は朔に合わせて楽器を変える。
 紅葉と同じ緋の扇子を手にした朔は、風のように気ままな舞で魅せる。舞い散る真っ赤な紅葉を引き立てるように。
 莉音はブレスレット・ベルを足につけて、舞に合わせて鈴の音を鳴らす。主役は踊り手、そして紅葉。それを邪魔しないような厳かさで、ジャミールとはまた違う風情を醸し出す。
見事な演奏とあいまって、舞台上に人々の目がひきつけられる。
 優雅に一礼をして舞台を去ると、心からの拍手と惜しむ声が追いかけてきていた。

「莉音、伴奏ありがとう。良かったら私たちも警備も兼ねて紅葉狩りと行きません?」
「分かりました。和ちゃんもよろしく」
 朔がお礼と共に誘うと、莉音はあっさり了承する。
 楽しげに尻尾を振る忍犬と回ったり跳ねたりして楽しそうにしているが、あまりはしゃいでは他の客にも迷惑。それとなく朔が注意を入れる。
「あれ。朔ちゃん、何してるんだ?」
 そこに声をかけてきたのはティーだった。
 手には食材の数々。ティーのイノシシ汁も、変わった味付けだとよく売れた。気を良くして、さらなるイノシシ汁を作るべく、材料の追加を取りに行っていたのだ。
 両手ふさがったまま、少し寄り道と駆け寄ってきたのはいいのだが……。
「うわっとととと!」
 足を取られて、体勢を崩す。危ないとそれぞれが駆け寄ったり支えようとした結果で、何がどうなったのか。
 ばら撒かれかけた食材は、莉音がしっかり受け止める。
 そして、転びかけていたティーを朔がその胸でしっかりと受け止める。いや、助けたいとは朔も思ったが、そこで受け止める気はさらさらなかった。
「ごめ……事故だから! 誤解だから! ありがとうございます! って、あ……」
「そう。どういたしまして!!」
 慌てて顔を上げて謝るティーだが、口走る内容は誤っている。
 朔は耳も尻尾も総毛立たせて、口端を引き吊らせていたが。やがて、冷たい目で睨むと、きれいな紅葉がティーの頬に張り付いた。
「ああ、なんということを。男ばっかで可愛い女の子がいるかもって期待していたのに、この現状。せめて音野寄ちゃんに癒してもらおうと思っていたら、先を越されているとは」
「紅葉を楽しみたいならいつでもどうぞ。お星様も見せてあげられるかもしれませんよ」
 頬を押さえて涙目のティーに、ジャミールがどこまで本気か歎く素振り。
 朔は普段の落ち着きを取り戻していたかに見えたが、手首の調子はしっかりと確かめていた。

 舞台ではヴァーナは河乙女の竪琴を奏でている。
 その場の雰囲気に応じて、心弾む軽やかな楽曲から、しっとりとした雰囲気で落ち着いた曲まで様々に。
 自身の寂しいという感情は重くのしかかるが、向けられてくる満足げな客の顔は、主の表情とよく似ていた。
(この曲を、楽しんでいただけているでしょうか)
 主人の為だった曲を、今は皆の為に。
 時折出てくる要望も、叶えられる範囲で応えながら、ヴァーナは祭りを穏やかに盛り上げていく。
 その舞台に、ひょっこりと顔を出したのはねじり鉢巻をした一匹の子猫。――いや、子猫の猫又だ。
 真夢紀が連れていた相棒の小雪だと分かると、ヴァーナは一つ頷いて交代する。
 小雪が舞台に立つと、空から空龍が降りてきた。こちらも真夢紀の相棒の鈴鹿だ。
 呼子笛やブレスレット・ベル鳴らして踊る猫又と龍。その演目に、周囲は歓声を上げた。

「あっちは好評みたいですね。他の人も適度に休めているようですし、でも頃合を見て舞台から降りるのも知らせてあげなきゃ」
 屋台から相棒の舞台を見ていた真夢紀はほっと胸をなでおろす。ただ、彼らでは時間配分が分からないかもしれない。
 他の開拓者たちの動向も見守りつつ、相棒たちも管理しないとと思うが、真夢紀も真夢紀でやっぱり忙しい。
 他の料理と同じように、蜂蜜生姜煮も売れ行き好調。
 しらさぎの手を借りながら、御飯をよそおったり、洗物をしたりと紅葉を楽しむ暇も無く、動き回るのは他の屋台担当と同じだった。

 舞台の催しも好調。屋台も客足が途切れることなく売り上げを伸ばし続けている。
 客は来る。けど、祭りを楽しんで帰らない。というのはいいことではあるが、同時に困った面もある。
「おかあさーん、どこー」
「どうかしましたか。おちついて、御話を聞かせてくれませんか?」
 人が増えると、問題も起きやすい。
 屋台の人手が集まったので、男衆は警備にも向かえるが、それでも万全とは言い難い。
 親とはぐれたらしき子供を見つけて柚乃が声をかける。
 少しでも落ち着けるよう、再生されし平穏を聖鈴の首飾りで歌い上げ。相手と目線を同じくして警戒心を解くと、必要とあれば親を探したり、一緒に待ったり。
「ごめんね、これが終わったら食事にしようか。屋台おいしそうですよね」
 お祭り見物なのに、御仕事に代わり。一緒に来た相棒たちもつき合わせてしまい、すまなそうにする柚乃。
 食事と聞いてすごいもふらの八曜丸は期待に満ちた目を向けてくる。からくりの天澪は好奇心一杯に祭りを楽しんでおり問題ないと主を気遣う。
 そして――。
「あれ? くぅちゃんは?」
 そもそも依頼を持ってきた本人ならぬ本妖精の姿が見えない。まさか、迷子? とすぐに探していると。
「うわー、カボチャの目が光ったー!!」
「ごめんなさい! それうちの子です!」
 人込みから起きた悲鳴に、すぐに柚乃は事態を把握。多少荒っぽいが、騒動になる前に夜の子守唄で眠らせて騒ぎの元凶を眠らせる。
 自由気ままな悪戯南瓜は、時に悪意無く騒動も起こす。
 警備する側から騒動を起こしていてはたまらない。もうすこしおとなしくしてね、と柚乃は頼むが、さてどこまで聞いてくれるのか。


 祭りの終了よりもやや早く。屋台は売り切れ御免の札を並べて、後片付けを始めた。
 売り上げ好調。少々好調すぎて品切れとなった訳だ。
 収益は、月与が睡蓮と共にそのまま町長宅に運び込む。部外者が大金を運ぶわけだが、開拓者が扱うのならむしろ安全と頼み込まれてしまった。
 大きな騒動も起こらず。細々とした迷子や、迷惑な酔客や絡み客は多少いたが、その場にいた者たちでも落ち着かせることは出来た。
「手も空いたし、俺も一肌脱ぎますか」
 頬の紅葉もすっかり消えて。ティーは軽く伸びをすると、おもむろにフルートを取り出す。
 彼を知る者の表情が険しくなった。何せ、無自覚に盛大に音を外してくれる時がある。機嫌いいとその傾向が強い。
 止めさせるべきか、と話し合う間も無く。ティーはそちらの気も知らずに、演奏を始める。
 幸い音が外れる気配は無い。ほっとした莉音がティーの音に合わせて、ステップを踏み出す。
 そうなると、ジャミールも負けじと舞台に上がる。朔も扇子を開くと音に合わせて舞い始める。
 時間的にも最後の踊り。ヴァーナもまた演奏を合わせる。
 柚乃は相棒たちと耳を傾け、その舞台に見入る。
 踊るべきと見てくる相棒たちに、真夢紀はただごくろうさまと笑って撫でる。

 風と共に、紅葉が舞い散る。風の冷たさに身を震わせつつも、祭りは賑やかなまま幕を下ろす。
 満足した表情で会場を後にする客たち。その笑顔が、開拓者たちの働きを何よりも評価していた。