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■オープニング本文 例えこの世にアヤカシが蔓延ろうとも、もふらの夢は消えはしない。 愛するモノを守る為、二人の乙女は奔走する。 ● 「ひと目会ったその日から!」 「恋の花咲くこともある!」 「そういうことで結婚式をするもふ」 開拓者ギルドの扉を突き破り。開拓者ギルドの係員の前で高らかに叫ぶミツコとハツコともふらさまたち。 いつも長らく唐突で。……もっともギルドに駆け込む依頼はいつだって唐突だからこれは批難するものでもない。 物騒な世の中に殺伐とした依頼が多い中、むしろこういう寿ぎの依頼は実に好ましい。 「それはめでたいな。で、誰の結婚式なんだ?」 係員も思わず笑みを作って、お祝いの言葉を述べようとしたが……。 「「「「「もふたちもふ!」」」」 胸を張ったのがそこにいたもふらさまたち全員の時点で、その笑顔が凍りついた。 「……もふらさまが? お前らではなく」 「なんであたしらが結婚するのよ。まだまだ遊び足りないのに落ち着いてらんないわよ」 「心の嫁はいっぱいいるけどー。婿はいないよねー」 張り付いた笑顔のまま、女性二人に確認を取るも、二人してあっさり首を横に振る。 「いやまぁ別にいいが……。念のために聞こう。そのもふらたちのお相手は誰……というか、何だ?」 「「「「「もふたちもふ!」」」」」 嫌な予感がひしひしと。笑顔を引きつらせて、問いただした係員に、もふらたちはさきほどと全く同じ態度で同じ返答を繰り返した。 表情から察したらしきハツコたちが、説明を始める。 「あのねー。ちょ〜っと祝言の作法とか調べてたのー」 「で、ジルベリアの結婚式とかも見てたら、もふらさまが神のお告げを下されたわけよ」 「お告げぇー?」 「そうもふ!」 胡散臭そうに見てくる係員を、気にも止めずにもふらは頷く。 「神様精霊様に絆を誓うめでたい儀式もふ! そこでもふたちも今一度結びつきを高めるべく式を挙げるもふ! これによりもっと絆が深まるもふ。そして、異国の風習を理解するべく、ジルベリア式で行うもふ!」 唐突に出てきた儀の名前に、係員は大いに首を傾げる。 「ジルベリア? 何故だ。天儀式じゃダメなのか? あるいは泰とかアル=カマルとか」 「ダメもふ。初心の真っ白な気持ちになる為には、真っ白な衣装を着るジルベリア式が一番もふ。そして、『らいすしゃわー』を行うもふ! 真っ白いお米をもらって、もふたちはますます絆が深まるに違いないもふ! でも、お米粒を撒くのは勿体無いもふ。喜ぶのは雀ぐらいもふ。雀も大事もふが、もふたちも喜ぶようなお米を撒いてくれるとありがたいもふ! それを一緒に食べればずっと仲良しもふ!!」 真剣に注げるもふらさまだが。 その口調が厳かであるほどに、係員は机に突っ伏し体を震わせる。 「ま、秋だし」 「そろそろ新米おいしーよねー♪」 そっけなく告げる乙女二人の言葉が、事の本質を見事に言い表す。 つまりは……そういうことだ。 「他の祝言作法でも食べ物添えたりはするぞ。それに、ジルベリアとはいえ必ずライスシャワーをするものとも限らんだろう」 「もふ! シンローシンプの意見が一番もふ! お式をやるのはもふたちだから、もふたちの望みを叶えてほしいもふ!」 「で、米撒きか……。だが、式をやるというならカップリングは。雄とか雌とかそういう違いは分かっているのか!?」 「そんな些細なこと、気にしちゃダメもふ」 「気にしろ、少しぐらいはっ!!」 もふらたちの結婚式……というか、団結式というか……。 ともあれ、断る必要もあるまい。 さっさと出て行ってもらう為にも、係員は大至急で募集の貼紙を作り始めた。 |
■参加者一覧
鈴木 透子(ia5664)
13歳・女・陰
ユリア・ソル(ia9996)
21歳・女・泰
リィムナ・ピサレット(ib5201)
10歳・女・魔
エルレーン(ib7455)
18歳・女・志
黒曜 焔(ib9754)
30歳・男・武
零式−黒耀 (ic1206)
26歳・女・シ |
■リプレイ本文 「結婚式をするもふー」 「面白ーい♪ よっし、盛大に祝っちゃうぞ♪」 元気なもふらたちに、リィムナ・ピサレット(ib5201)も両手を上げて応援する。 けれど、明るいのは彼らぐらいだ。 「うわあ。もふらさまにも、結婚式とかあるんだ」 「お手伝いはします。しますけど……」 エルレーン(ib7455)と鈴木 透子(ia5664)は困惑しきり。 何せ、結婚式をやるもふらさまは複数。組分けもいい加減極まりなく、その数自体も遊び半分で増えたり減ったりしている。 結婚自体、どこまで正確に捉えているやら。 不安そうな二人の肩を、ユリア・ヴァル(ia9996)は宥めるように叩く。 「深く考えたら負けね。――私も六月に結婚したばかりだし、ここは一つ楽しみましょう♪」 たとえ意味は異なろうとも、もふらなりにおめでたいことをしようとしている。ならばいつものように、それに協力してあげればいい。 「早速段取りを整えないとね。ジルベリア式がいいんだよね」 「もふ」 明るいリィムナに、もふらも満面の笑みを浮かべて答える。 「でもなんで、ジルベリア式おし? ……えーっと、らいすしゃわー?」 首を傾げるエルレーンに、零式−黒耀(ic1206)が淡々と答える。 「ライスシャワー。参列者が式を行った新郎新婦に米をかける演出でございます。米のような実りのある生活を送れるように、食うに困らない生活を送れるように、といった祝福の意味を持つそうでございます」 手にした本は『ジルベリア文化ブライダル編』と書かれている。内容を読み上げると、おもむろにもふらたちを見つめ返す。 「ただ米をまくというのもなかなか手のかかる作業でございます。そこで昨今、花びらをまいたり、シャボン玉で出迎える演出なども行われているのでございますが……」 「ダメもふ! それじゃ意味無いもふ!」 「今は秋もふ! お米が大事もふ!」 言葉途中で、もふらたちは一斉に抗議。必死の形相は、米以外許さないと告げている。 「つまり、米が大事なのよねー」 もふらを宥めながら、依頼人のハツコとミツコは苦笑する。 食いしん坊のもふらたちが、下心無く突飛な儀式を始めるはずが無い。 結婚式などむしろおまけ。本音は、単に秋の新米が食べたいのだ。 「でしたら、こちらもそのつもりで御用意いたしましょう」 ひとまず本を閉じると、零式−黒耀は深々と礼を取る。 その間、表情は動かない。冷徹でもなさそうな所作は、からくりだからなのか、他に理由があるのか。 「らいすしゃわーが主だとしても、お式はお式。もふらさまたちにもめかしこんでいただきましょう。ミツコさんたちも、参列者としてめかし込んでください」 黒い猫耳と尻尾を振り上げ、黒曜 焔(ib9754)が張り切っている。 結婚式と言えば、新婦に限らず、参列者も綺麗に着飾る者。綺麗なおねえさんが見られるのは楽しみでしかたが無い様子。 喜ぶもふらに、苦笑するハツコ、はしゃぐミツコ。 例えまねとはいえ、華やかな式を行うのは楽しみだろう。 ● 会場はいつものもふら牧場の一角。適当にそれっぽく仕立て上げ、聖職者も依頼人たちが適当にこなす。 とはいえ、雰囲気は必要。 「バージンロードには赤い絨毯。やっぱり結婚式にはお花がないとね」 「絨毯の幅が狭いかしら。もふらさまたちが並ぶのなら、もう少しあった方がよさそうね」 ユリアが絨毯ともふらたちを見比べて幅を増やすと、エルレーンも手配した花の配置に悩む。 「あたしはどこにいればいいかな」 式に臨む新郎新婦もふらに、やってくるお客もふらたち。彼らの邪魔にはならず、演奏を聞かせるにはどこがいいか。リィムナももふらたちの位置を想定していろいろと試す。 「聖職者用の台がご用意出来ました。それと周囲に色違いの敷物を敷くのはいかがでしょうか」 「それなら、敷物はライスシャワーが落ちても食べやすいものの方がいいな」 大きな台を運んできた零式−黒耀が、式場の雰囲気に口を挟むと、焔ももふらたちを予想して食べやすそうな敷物を選んでくる。 「それをするなら、花の配置ももう少し変えないと」 一つ頷くと、さっそくエルレーンは花瓶を整え始める。 会場の設備が整う一方で、もふらたちの衣装にもかなり気合いが入っている。 「結婚式ですので、やはりおめかしくらいは必要だろうと考えます。綺麗な姿で美味しく召し上がるのがよろしいかと」 零式−黒耀は、女性用の白レースのヴェールを四つ、男性用の白い燕尾服っぽい服を三つ用意している。 誰がどれを着るか……。性別は、聞いた所でしたり顔で笑うだけ。仕方無いので適当に選んで着てもらうが、もふらはやっぱり気にしてない。 「後は、それにあう飾りかな。花に布、宝飾をつけると素敵ではないかな。それと、来てくれたもふらたちにもヴェールガールかボーイとして手伝ってもらいましょう」 「それ何もふ?」 あれこれ試しにつけてみる焔に、もふらたちは何をするのかと首を傾げる。 実はよく分かっておらず、その度に零式−黒耀が説明を加える。 「お式に臨むのはそれでいいとして……。その後、お色直しは何回しますか?」 「それは必要もふか?」 「どうでしょう。ライスシャワーの時には……でも着替えた方がいいでしょうね」 首を傾げるもふらたちに、透子も考えながら言葉を選ぶ。 ● 会場や衣装なども必要だが、それ以上に大変なのがライスシャワー作りだった。 ある意味こちらがメイン。しかも、普通のライスシャワーではもふらたちは満足していただけない様子。 まぁ、ライスシャワー自体を根本的に曲解しているのだが、依頼とならばやるしかない。 といっても、零式−黒耀は御菓子屋に頼んだので、ほぼやることが無い。 「皆様、もう少しお待ち下さい。お暇であれば、一芸など致します」 暇をもてあますもふらたちの話し相手になったり、苦無を使ったジャグリングなどを見せたりして、時間をすごす。 なんせ暇潰しに式場で遊ばれても困る。厨房にこられてつまみ食いをされるのはもっと困る。 零式−黒耀がもふらを相手にしている隙に、他の面々はライスシャワー製作に励む。 焔とエルレーンはおにぎりを作る。 「せっかくだしと思うが、ジルベリアっぽい具とは何がよいだろう……。――それより私に作れるのだろうか」 「たらこにこんぶにのりの佃煮。……そうだね、これはお花に詰めてみようかな」 じっと手を見つめて悩みながらの焔のそばでは、エルレーンが型に御飯を詰め込んで整える。 その手があったか。気を取り直すと、焔ももふらが食べやすい大きさを気にしながら作り出す。 「もふらさまが飽きないようにいろいろ作った方がいいよね」 「旬の食材も喜んで下さるだろう。栗おこわに、きのこ御飯。鮭を焼いたり、秋刀魚の蒲焼。でも、これだと和風ばかりかな」 手早く揃えていくエルレーンに、多少もたつきながらも焔も出来た料理を並べていく。 「ジルベリア風なら用意してるわよ。米粉にしてスノーボール。もちもちマドレーヌに、シンプルに御団子を用意。――その他にもね」 「こっちもちまき用意しているよ。こっちも中身に餡を入れたり、野菜や干し肉を入れて醤油で味付けしたのやら、色々揃えてるよ」 ユリアは焼き上がった黄色や赤に着色したさまざまな洋菓子を手にする。 リィムナも、用意していた笹にちまきを詰めて縛り上げる。だが、その表情が少し歪む。 「こうやって葉っぱにくるめば、地面に落ちても大丈夫♪ ……だけど、もふらさま、葉っぱごと食べないかな」 「それは……あるかもしれません」 持ち帰り用に作った特大シフォンケーキを切り分け、小分けに包んでいたユリアがふと手を止める。包みも気にしないと、丸ごと食べてしまうかもしれない。 どうしたものかと悩んでいると、外からどかんと大きな破裂音が響いた。 「何事!?」 騒ぎに驚き、依頼人たちも駆け寄る。 そこには、透子が苦笑いで結界呪符「白」の陰に隠れていた。 「すみません。どうやら失敗したみたいです」 火にかけられていた土鍋の周囲に結界呪符「白」を展開して防御。一体どんな料理をと思うが、それが必要だったとしか分からない。 「っていうか。焦げてるよ?」 ミツコが恐る恐る鍋を覗き込む。 鉄鍋には黒く変わった米が張り付いて煙を吐き、明らかに失敗を告げている。 「鍋に蓋して目張りして。成功すれば、さくっとした感じのお菓子になるらしいのですが……。やはり何らかの魔法に頼らざるを得ないみたいですね」 しょぼんと肩を落とす透子。幾つか試してみたが、鍋が悪いのか火の具合が悪いのか。どうにも上手くいかない。 「大丈夫もふ。焦げてもきっと美味しいもふー」 「こっちの洋菓子も美味しそうもふー」 大きな音を聞きつけたか、いつの間にやらもふらたちが集まってきている。焦げた米を食べてくれるのは気遣いだろうが、ついでに出来ていた他の米料理にも目をつけて口をつけようとする。 「はい、そこまでです。さらに盛大な芸を披露してみようと思うのですが、ここでは手狭なので向こうでどうでしょう?」 いらないおやつを少しだけもらって気を引くと、零式−黒耀は急いで別の場所へと追い立てていった。 ● 「それでは準備が整ったところで、さっそく始めよー。新郎新婦の入場でーす☆」 威厳など何もなく、ミツコが式の開始を宣言する。 聖職者に扮したリィムナがオルガネットを演奏する。楽譜「結婚式のためのスコア」も用意し、選曲も万全。 厳かな曲に合わせて、もふらたちが式場に入ってくる。さすがに雰囲気を感じたか、粛々と。けれど、目だけは妙に期待を込めて輝いている。 その後ろには、小さなもふらたちが花嫁役のヴェールをくわえてついてくる。こちらも目を輝かせている辺り、目的は依頼人達のもふらと似たりよったりでついでにあやかろうという所か。 それでも思惑通りの愛らしい姿に焔は満足。さらには女性たちにも目を向けて口元が穏やかに緩ませている。 「いやぁ、みなさま美しいですねぇ。ミツコさんもハツコさんもなんと可憐で麗しい」 焔もジルベリアの服を着ている。他の人も遊び半分とは晴れの舞台。身綺麗に整えるぐらいはしている。 「褒めても依頼料は上げらんないわよ」 返すミツコも口は悪いが、まんざらでも無い様子。 赤い絨毯をしずしずと歩いていたもふらたちは、やがて祭壇前に立つ。 聖職者役のミツコの隣では、それとなく零式−黒耀が控え、やるべきことを小声で指示する。 「えーと。それでは。もふらさまたちは、互いに仲間として認め、これから先はいついかなる時も互いに助け合うことを誓いますか」 「「「「「誓うもふー」」」」」 「では、指輪の交換を」 そこで、リィムナが指輪ならぬ輪切りの竹輪を運んでくる。 「はい、これ。みんなで交換しながら食べるんだよ」 やはりこれの方がもふらさまらしい。 御互いに、譲り合っての竹輪の食べあいも終わる。 「それでは、新郎新婦の退場です! 皆さん、祝福を――!!」 「もふー!」 待ってましたと、もふらたちが身構える。 軽く笑いながらも、開拓者たちはライスシャワーの準備にかかる。 リィムナが華彩歌の演奏。あわせて、周囲の花々が一斉に開花する。 「お菓子はうまくいきませんでしたから、せめてこちらはがんばらせていただきましょう」 透子も多くの夜光虫を召喚。小さな光を辺りにさまよわせる。 実に美しい演出で、これが普通の結婚式なら感嘆の声がもっと多く聞けたに違いない。 さすがのもふらたちも感じ入ったようだが、それよりも食い気が勝る。 「じゃ、もふらさま行くよー」 「もふ!」 ライスシャワーを一つ投げるや、たちまちそちらに夢中になる。 「ほらよ。喉に詰まらせないようにしろよ」 気をつけて焔が与えると、満足そうにもふらは頬張っている。 「はい。こっちよー」 「美味しそうもふ……って。ひどいもふー!!」 ユリアはシフォンケーキをもふらの口に向けて投げ……るとみせて、それは釣竿の餌。 赤い薔薇を思わせる華麗な衣装に似合わない釣竿を楽しげに振り回せば、宙ぶらりんで揺れる菓子に、もふらたちは右往左。勿論ほんの悪戯なので、すぐに用意した米菓子を渡す。 「もふらさま、おめでとうございます。――皆様はどうぞお楽しみ下さい。雑務は私が」 団子やおはぎを投げていた零式−黒耀だが、一通り配り終わると一礼してまた裏方に戻っていく。 おにぎりもちまきも洋菓子も和菓子も順当に消えていき、土産用まで食われそうな勢い。 「それでは、ブーケトスと行きましょう。未婚の方は集まってー」 適度な時間を持って、エルレーンがもふらたちを集める。 「せっかくですから、お色直しと行きましょう。服も用意しております」 「ほら、ミツコさんもハツコさんも。いい女はなかなか落ち着いてられないけど。運命の女神が気まぐれを起こしたら、どうなるかは分からないものよ。――私みたいにね」 透子がもふらさまを招く一方で、ユリアは依頼人たちを所定位置につかせる。 「じゃあ、行くもふー。もふたちの絆、受け取るもふー!」 何だか残念そうなのは、ブーケがスナックキャンディーで出来ているからだ。自分たちで食べたそうにしていたが、それは次の人に祝福として渡すものと言われ、泣く泣く我慢している。 口にくわえたキャンディーを、後ろ向きにもふらが投げる。落ちる先に殺到するのは、やはり見ていたもふらさまたちだった。 ● 「これで式は終了。後は披露宴でお色直しも致しますか?」 「もふぅ。とりあえず今は動きたくないもふ」 零式−黒耀が本を閉じる。もふらに訊ねるも、相手は丸いおなかを重そうにゆするだけ。 「お花さんたち、ありがとう。御疲れさま」 季節はずれに咲いた花々も、今はもう消えている。式場を盛り上げた精霊たちに、リィムナは礼を告げる。 「さて。終わったからには後は掃除です」 楽しい時間はあっという間。だが、そのままにもしておけない。 透子が掃除道具を出してくると、各々も当然とばかりにそれを受け取る。 「御飯はほとんどきれいに平らげたな。――のどが渇いてるならここは茶でも入れようか」 「お願いするもふ」 満足そうにひっくり返っていたもふらが、焔の申し出に飛び起きる。 「御土産は残っているわね。だったら、持ち帰らせてもらおうかしら」 来客のもふらたちも満足そうに転がっている。 彼らを見渡した後、ユリアは土産のケーキを見て微笑む。甘い土産はさらに甘くなるのだろう。 「いいなぁ。私も結婚式ってできるかなぁ」 拾った飴をぼりぼり食べているもふらたちを見つつ、エルレーンがぽつりと呟く。まだ見ぬ恋人を想像し、赤くなったり、なにやら考え込んだり。 お祭りのような結婚式だったが、もふらたちの絆は十分に深まったようだ。 こんな風に、特定の誰かと絆を深める日は来るのだろうか。 |