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■オープニング本文 ●王朝軍拠点にて 「大船原に対し北より新手、数は二十から三十!」 戦況を表す地形図を前に相談をする大伴 定家らの前に伝令が新たな情報を持ってくる。 「ふむ。少なくない数だが、現場に居る人員で対処できぬ相手ではないな‥‥つまりは、更に伝えるべき情報があるのだろう?」 「は‥‥ははっ!小鬼、骨鎧を軸にした集団なのですがこちらの防衛線に対し遠距離から投げ槍を行い後退。現在はこの丘に集合し、挑発攻撃を繰り返しています」 伝令が図上に置いた駒を見て定家はふむ、と考える。 「彼奴らが統率の取れた動きを取る際はより高位のアヤカシの存在を疑うのが定石だが、どうかね」 「何分向こうも甲冑を着込んでおりますゆえ‥‥ただ巨躯のアヤカシ等目立つものは見えません」 「であれば行動と合わせても陽動で間違いあるまい。他の大きな動きに注意してくれたまえよ」 定家の意を察した幕僚が図上の偵察を要する地点に次々と駒を置いていく。 「さて、陽動としても放置するわけには参りません。あの丘に居座られるとこちらが釘付けにされますし、他に手を取られた隙に緑茂の里へと攻め入られたら大事です。早速ギルドに連絡をば」 「そこは現場に任せよう、向こうの方が状況は詳しいだろうしね」 まくし立てるように言う幕僚の言葉を定家が笑いながら了承すると、傍らに控える右筆が前線への書状をしたためた。 ●大船原陣営 「‥‥との事で、大伴様は差し向ける人数などは任せるとの事」 定家の書状を携えた伝令の報を受け、前線指揮官は渋い顔で陣中を見回す。 「そう簡単に言われてもな。今は反撃作戦の準備の真っ最中だ、人手は限られている‥‥8、9人があの丘に回せる限度か。約三倍の数を相手にするのは苦しいな。何処からか兵を借り受ける事は出来んか?」 「武功目当ての傭兵豪族達が集まりつつありますので、彼らに報酬を提示し用いては如何かと」 部下からの進言に指揮官は渡りに船とばかりに同意する。 「多少譲歩してもいい、協力を取り付けてくれ。上手く行けば何とか数は揃いそうだな。後は双方にくれぐれも手柄にかまけて喧嘩をせぬように、と伝えておいてくれ」 ●大船原北部 「ええい、小鬼風情が足軽戦の真似事をしおって!」 槍の穂先を打ち払いながら騎馬武者の一人が吠える。 「向こうが退いたらこちらも引き上げだ、清原」 陣を保ったまま退いて行く小鬼に矢を放ちながら別の騎馬武者が言う。 清原と呼ばれた武者‥‥傭兵豪族は仲間に先駆けて丘に向かい、迎撃に現れるや否や後退を始めた小鬼をここぞとばかりに追撃したところ、枯れ木や逆茂木によって突撃を防がれ槍衾と飛び道具による迎撃に遭い手勢の大半を失ったのであった。 その状態で逆襲を受けあわやというところを後続の那須、垣屋に救われたもののアヤカシ達は野戦を避け早々に退いてしまった。 「やれやれ、着陣早々敵には困らぬが牛馬の秣には不自由しそうじゃな」 陣に戻り馬から下りた垣屋が、足元のすっかり乾いた枯れ草をつまみながら苦笑する。 「今年は草枯れが早いな。あの丘もすっかり秋の色に染まっておった。おお、そうそう、先程ギルドからの伝令が来てな、協力する気があるならあの丘を落とすのに開拓者を回すと言っておったぞ」 那須はそう言ってちらと清原の顔を見る。 「仕方あるまい!どの道こちらも数が足らんのだ」 「何、別にどちらも上下の無い対等の協力関係よB手柄は折半、捨て駒や盾代わりにされるわけでなし。物分りの悪い大将の下に付くよりはやりやすいとわしは思うぞ」 清原も苛立たしげに足踏みしながらも拒絶はしない。気が変わらない内にと那須は承諾の意を伝える事にした。 |
■参加者一覧
犬神・彼方(ia0218)
25歳・女・陰
柳生 右京(ia0970)
25歳・男・サ
霧崎 灯華(ia1054)
18歳・女・陰
ルオウ(ia2445)
14歳・男・サ
蛇丸(ia2533)
16歳・男・泰
赤マント(ia3521)
14歳・女・泰
真珠朗(ia3553)
27歳・男・泰
七浄 天破(ia5199)
19歳・男・サ
羽貫・周(ia5320)
37歳・女・弓 |
■リプレイ本文 ●豪族たちと 「私達三人とあなた達で正面から仕掛ける振りをし、十分に引きつけた所で奇襲班が背後より雪崩れ込み敵陣を乱す。それがこちらの相談の結果だ」 羽貫・周(ia5320)が涼しげな顔で豪族達に作戦を語る。 「我らは囮と申すか!」 「静かにせい清原。ふふっ、承知いたした。隠密が要の奇襲には我らは不向きじゃからの。しかし、別働隊が窮地に陥れども援護には向かえぬぞ?」 那須の問いに、煙のくゆる煙管を突きつけながら犬神・彼方(ia0218)が答える。 「だからぁ、俺らとあんたらが一芝居打つってぇことよ。こっちが気を引けば、あっちが楽ぅに行けるってねぇ。で、あっちが穴あけりゃあ、こっちも楽に突っ込める、てぇことさぁね」 「ふむ、かなりの強攻じゃが開拓者殿のばかっ強さを見込めば十分にいけそうじゃな。あいわかった、儂らの命をその策に託すといたそう」 がたりと立ち上がった垣屋の一声で軍議は定まった。 ●陽動 「おらぁ、亀みたいに篭ってないで、かかって来いよ!」 アヤカシの篭る丘の下で、七浄 天破(ia5199)が大音声で挑発する。勿論、この程度では動かないであろう事は承知済みだ。 周と彼方は垣屋と最後の詰めを話し合う。 「ひとまず逆茂木まで進み、囲まれぬように陣を整えつつ時間稼ぎ、といったところか」 「気取られぬようにしつつ、か。矢の雨で潰走に至らぬかが問題じゃな」 「俺らもその為に弓ぃ持ってきてるんだ。姉様もいるんだし撃ち合いなら良い勝負になるさぁね」 「進めー!行くぞお前らぁーっ!」 最前線の天破が雄叫びを上げ、その後に足軽たちが続く。負けじと進み出ようとした清原の手綱を赤マント(ia3521)が掴む。 「まだまだ今は弓勝負、突撃は相手が見えてから。それまでに怪我しちゃつまらないよ」 ぐむ、と返答に詰まった清原の後ろで那須が笑う。 「清原の、まるで国許で娘に叱られている時のようじゃのお。赤マント殿、清原は緒戦の失態を挽回しようと気が逸っておるようじゃ。今のように上手い事手綱を取って使ってやってくれい、うわっはっは!」 「うん、わかったよ〜」 那須を見送りながら、赤マントは清原に向き直る。 「じゃ、行こうか。向こうが陣から出てきたら、先陣競争だよ!」 矢の降り注ぐ中、前衛は柵の隙間から降りてきた小鬼槍衾と激突する。 「槍衾構えぇ!押し負けるでないぞ!」 清原の号令下、足軽たちが槍衾を組む。敵味方の突き上げた槍が絡まり、一方に振り下ろされる事を阻む。とは言え数の差が大きく、足軽達は小鬼に押されずるずると足が下がる。 「お先にぃ」 圧倒的瞬発力を持つ赤マントが、すかさず小鬼の側面から殴りかかる。 「人間様の強さ、見せてやろうじゃねえか」 天破も躊躇なく進み出て斬りつける。 槍衾のぶつけ合いをしている小鬼は、彼らの攻撃に対応する事が出来ず、一方的に攻撃を受けざるを得ない。 「あの子ら、ちゃんと後退できるんかぁねぇ?」 「まあ、陽動の役目は果たしているようだ」 弓足軽を率いる周と彼方は麓で上の様子を見ながら弓を構える。 「敵方の射手のいる辺りにめいめい射ち込め。無理に当てずとも、頭を下げさせるだけで十分だ」 そう言いながら、周自身の放つ一矢は逆茂木をすり抜け弓を持った小鬼を的確に捉える。 「さっすが姉様、どれ俺も‥‥っとぉ、惜しいねぇ」 彼方の矢は逆茂木に阻まれるも、被弾を避けて隠れた敵は再び弦を引きなおさねばならない。敵方の牽制には十分な効果があるようだ。 ●丘の表裏 「始まったようだな」 丘の喧騒に耳を傾け柳生 右京(ia0970)が呟く。彼ら奇襲班は葉や泥で擬装し、やや大回りに丘の裏手を目指していた。 「陽動、大丈夫かな‥‥」 「七浄君の元気な声が聞こえたんで大丈夫でしょ」 ルオウ(ia2445)の声に漏れた自問に真珠朗(ia3553)が答える。よく響く叫びというのは離れた仲間にはありがたい情報源になる。 「あたし達の為にもしっかり耐えてもらわないとね」 霧崎 灯華(ia1054)がクスクスと笑っていない目で笑う。 やがて、木々や茂みで隠れきれない線まで到達する。 「ここから先は陽動の皆さん次第ですねぇ」 真珠朗が丘の上を見やる。乱入前に見つかれば作戦は瓦解してしまう。 「しくじったら後で犬神の姐さにどんな仕置くらうか‥‥ブルル」 蛇丸(ia2533)がおどけて言うも、しくじれば陽動班はより厳しい状況に置かれる事になる。 「大将、槍衾ぁもう無理でさぁ!」 足軽が泣き言のように叫ぶ。小鬼の槍衾は赤マントや天破、清原の白兵戦で崩しつつあるものの、こちらの足軽も射られて数を減らしていた。 「俺が引き受ける!お前らはとっとと下がれ!」 天破はそう言うとアヤカシに向き直り、今日一番の音声を上げる。 「お前らのひょろひょろ矢じゃ何発あっても俺は殺れねぇんだよ!さっさと降りてこねえとこっちから踏み込んじまうぜぇ!?」 この挑発の効果があったのか、丘上の陣から、骨鎧達が刀を抜いて降りてくる。射手たちも、後退する足軽達に目もくれず天破一人に照準を合わせる。 「ヒャハハ、ようやく面白くなって来たじゃねえか!」 小鬼を切り伏せつつ骨鎧の刃を払い、逆に踏み込み一撃を加える。だが、ここまで跳ね除けてきた死神の鎌に囚われたか、鬼神の如く立ち回っていた天破の膝を一本の矢が貫く。 「痛っ‥‥まだ斬り足りねぇな」 肩膝をつき、ここが死場かと覚悟した天破に赤マントと清原が駆け寄る。 「おっさん‥‥馬はどうした?」 「遺憾ながら明日の飯の具となった。それだけ元気なら途中で果てる事はなさそうだな‥‥赤マントよ、悔しいがこの場は任せるぞ」 「うん、清原は天破をお願いね!さぁ、ここからは僕との鬼ごっこだよ!」 「もうそろそろ敵全軍がこちらに来るか」 箙から新たな矢を抜きながら周が言う。目に入る限りでは倒した敵、残る敵の合計は二十を越えている。 「足軽は後退中、残る三人では何時囲まれるやという状況ですな。後詰に上がりますぞ」 「待ちなよ、俺ぇも一緒に行くぜぇ」 弓を置き槍を取り出した彼方が那須、垣屋に声をかける。 「元気な連中だからねぇ。一発怒鳴ってやらねぇと、下がらないかぁもとね」 ●挟襲 最早無警戒になった丘の裏側を一気に駆け上がった奇襲班は、丸太を飛び越えるようにして丘の陣に乱入する。 「てりゃあ!」 最も早く動いたルオウは、陣中で最も大柄な鬼に切りかかる。斬られた瞬間まで何が起きていたかわからなかった鬼が叫び声を上げる。 陽動班の追撃すれば壊滅を期待させる状況は、これまで守勢を保ってきたアヤカシ達をして攻めに移らせるものだった。そこに背後からの奇襲を受け鬼達は明らかに動揺し、感情の無い骨鎧達も想定外の状況に動きが止まる。 「奇襲は成功、後は丘を血で染め上げるだけだ‥‥背を見せても無駄だ。我らが攻め入った時点で最早大勢は決した」 骨鎧に一当てしつつ、右京は冷ややかに宣告する。静かな咆哮はアヤカシに自棄を起こさせるに十分な効力があった。 弓持ちのアヤカシは、丸太や逆茂木を乗り越え陣外へ逃れようとするが 「残念、逃がさないわよ」 けらけらと笑う灯華の赤い雷がアヤカシに降り注ぐ。 「一つ、二つ‥‥あら、これで終わりと安心した?残念、あたしの死舞はもう少し続くの」 そう言いながら踊るように放った三本目の雷を受け、黒焦げになったアヤカシは崩れ落ちた。 「正直、あんたがたに恨みも興味もないんですがね‥‥あんたらの首に懸かってる恩賞にゃ大有りだって話で。悪いんですがねぇ」 小鬼の退路を塞いだ真珠朗が腰溜めの構えから七節棍を振るう。骨法を組み込んだ打撃は、鎧の隙間から痛撃を与えていく。ちらと陽動班のほうを見た真珠朗は笑顔のまま言葉を継ぐ。 「失礼、恨みは無いと言っちゃいましたが言い直しますよ。天破君を怪我させた仇ってことでここは一つ」 蛇丸は先程までアヤカシの弓兵が陣取っていた辺りに移動した。 「なぁるほど、こりゃあいいや。丘の下まで全部見渡せるね」 そういいつつ放つ矢が槍衾を成したアヤカシの背後から降り注ぐ。 「まずは、逃げる連中を叩くのと陽動班を楽にしてあげないとね」 不意の背後からの攻撃に、アヤカシたちの統率が乱れる。そこに足軽達の士気を取り戻させた彼方たちが登ってくる。 「よおし、今度は勝ち戦じゃ。すわ、懸かれえ!」 「やばそぉなのは、俺らが片付けるから、横は見ずに真っ直ぐすすみなぁよ!」 クルリと槍を回した彼方は足軽達を鼓舞しながら攻め上がる。 「曲射で雨のように降らせろ。動きが止まれば当たりやすくなるぞ」 周の指揮の下、弓足軽たちが支援射撃を続ける。弓術師である周の指示のおかげか、短時間で見違えるほど射ち方が上達している。とはいえ足軽達と彼女には桁違いの技量差がある。一矢一殺とばかりに放たれた周の矢は兜を貫通し骨鎧の頭を射抜く。 「次の斉射後に十歩進め。最早ここまで反撃する余力は向こうには無いぞ」 逃げる敵に対応できるよう、周は弓隊の距離を詰めさせる。 「これで‥‥二つめ!」 鬼を切り倒したルオウが自分が倒した相手の数を叫び上げる。 丘の上は押取り引き返してきたアヤカシとの乱戦状態になっていたが、個々の技量では開拓者達に軍配が上がっていた。 「鬼より上かと期待したが‥‥この程度か」 太刀筋を見切ったといわんばかりに最小の被害で受け流した右京が骨鎧に冷たい視線を向ける。 「おまえには失望した‥‥消えろ」 示現の構えから振り下ろされた珠刀は骨鎧を甲冑諸共両断した。 「真珠朗さ!」 「はいはい、お一人様ご案内ですねぇ」 蛇丸が転ばし、真珠朗が起承拳で仕留める。強敵にも逃げようとする相手にも効果的な連携だ。 「さてさて、逃げる手合いはあらかた潰したようですし、あたしらもそろそろ本腰入れますかねぇ」 丘正面ではアヤカシ達が赤マントに翻弄され逃げ時も、態勢を立て直しての組織的迎撃の機会も失っていた。尤も麓から援護射撃が続く中ではそうでなくとも逃げる術はなかったであろうが。 「ほらほら、鬼さんこちら‥‥っと!」 追いすがってバラバラになったところで身を翻した赤マントの牙狼拳が炸裂する。攻撃に力点を置く分回避が覚束無くなるが、受けの構えで深手を巧みに避ける。そして全てのアヤカシが彼女のほうを向いた時‥‥ 「槍衾、入れぃ!」 足軽隊の槍が一斉に繰り出される。半数に減っているとはいえ、側面から襲う隙間の無い攻撃はアヤカシを打ち倒し転ばせるには十分な威力を発揮する。 「お疲れさぁん。上も押してるみたいだぁし、楽ぅにしててもらっていいよぉ」 倒れた骨鎧を片足で踏みながら彼方が赤マントの労を労う言葉をかけると、そのまま、ザクッと槍を突き立てる。穂先から流れ出る式の力が、内側から骨鎧の体を砕く。 周囲の掃討が済んだ事を見た赤マントはしかしにんまりと笑うと丘上へと駆け出す。 「まだまだ、僕の速さなら上でもう一仕事できるよ!ほら、彼方や清原たちも早く来ないと全部倒しちゃうよ」 「おう、これ以上黙っておれんわ。首級の一つも挙げねば戦に加わった心地がせぬわい!」 足軽を率いて彼女の後を追う清原を見ながらやれやれと首を振って彼方は懐から煙管を取り出す。 「元気だぁね。どぉれ、俺ももう一仕事してくっかぁねぇ」 「四つ!‥‥悪い灯華、一匹そっちに行った!」 新手を成敗したルオウが注意を促す。ほぼ包囲状況下に陥った中で、一匹の小鬼は小柄な灯華が一番倒しやすいと踏んだのだろう、わき目もふらず彼女に突進する。が、得物を振り上げた所で三つの真空の刃が小鬼を切り裂き、その首がごとりと落ちる。 噴きあがる血で白い衣を赤く染めつつ灯華は笑う。 「キャハハハ、もう終わり?もっと楽しませて欲しかったなー」 「つまらん‥‥」 右京は刃毀れが無いか確かめると早々と刀を納める。最早手空きの相手は無く苦戦する味方もいない。彼の求める強敵はこの戦場には残っていない。 暫くして彼の後方で、仲間達の鬨の声が上がった。 ●勝鬨 「いやはや、これ程の圧勝になるとは思いませなんだわい」 制圧した丘の上で垣屋が笑う。足軽二名が討死しているものの、彼我の数を考えれば圧勝と言って間違いない。何よりも敵を一人残らず討ち果したとなれば恩賞に弾みもつく。 「いやー、随分派手に暴れたよね」 「‥‥ててっ、俺ぁまだまだ暴れたりないぜ」 戦の余波で崩れた防御設備を見ながら感想を言うルオウに担架で運ばれながらも天破が食ってかかる。応急手当は受けたものの、本格的な治療は戻るまでおあずけだ。 「あんたはぁ一番活躍したんだからぁ、ゆっくり休みなぁよ」 くつくつと笑いながら彼方が言う。実際、足軽隊が無事に後退できたのは天破が殿を務めたからこそに他ならない。 丘の上から眺めると、開拓者が最初に来た時よりも少し王朝軍の前線は進んでいる。 周囲に響き渡らせるように、彼らは丘の上で勝鬨を上げた。 |