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■オープニング本文 「さて簡潔に説明しよう。骸(むくろ)使いが現れた」 このギルド受付の簡潔すぎる説明は事態の理解には余り役に立たない。 「もう少し詳しく説明しようか。アヤカシの中でも変わった性質を持つもので、自分の力を死骸に与えて手駒とする能力を持っている。操られた死骸はさして強力では無いし、操る死骸の数に反比例して本体の力は落ちていくが、操っている骸を壊せば壊すだけ本体に力が還元されていく厄介なアヤカシだ。当然、操れる数には限度があるはずだが・・・・過去の報告ではいずれも数十体を操り、時には百以上を操る個体も確認されている」 大量の不死アヤカシをけしかけてきて、それを撃破して疲労したところで最大限の力で本体が襲ってくる。単純だが嫌らしい戦い方だ。 「その為、こちらの対処法としては一方で蠢く死骸達を破壊せぬようのらりくらりと戦いつつ、護衛のみを蹴散らして本体を叩くのが定石だ、が・・・・」 受付は地図を開き、数箇所に駒を置いていく。大駒の一つは無縁仏の眠る共同墓地、一つは街道上。 「アヤカシも学習するものだな。今回現れた骸使いは二体。一体は墓場で増援を繰り出しつつ待機、一体はもう一体の生み出した分を併せて通常の五割増しの死骸を率いて人里方面に向かっている。移動中のものを優先して叩きたいが、そうするともう一体からの増援が次々に襲い掛かってくるわけだ。かといって墓場を先に襲うと移動中のものがいよいよ村や町になだれ込みかねん」 「・・・・と、いう状況下で私に声が掛かったわけです」 何時の間にか近くに来ていた八角翠が街道の大駒の近くにトンと駒を置く。 「ギルドとしてはただの一度も掛けた覚えがないんですがね」 受付の声を聞いていないふりをして話を続ける。 「ひたすら討ち果たすのであれば別ですが、時間稼ぎと足止めの両立となると必要なのは人数です。正面の拘置は私の隊が引き受けましょう。そうすれば皆様は移動部隊の骸使いと、墓地に陣取る骸使いへの強襲に専念していただけます」 「そんなわけで、ギルドの依頼としては攻めの一辺倒で構わない。別に正面に参加してもいいが・・・・かなり単調な仕事になるぞ。協力者として注意点はありますかな、八角様?」 「皆様があまりに時間をかけすぎますと、正面を受け持つ私がアヤカシの毒牙にかかってうら若き命を儚くも散らす事に・・・・」 「注 意 点 は あ り ま す か な?」 悲運の将の浪漫を夢見心地に喋る翠を睨みながら語気を荒げて聞き直す受付。 「・・・・ええ、拘置といえど徐々に下がっていく形になりますので、阻止限界に達してしまうと死骸を撃破して押し戻す必要が生じます・・・・つまり、ある程度は猶予があるものの、時間がかかるとどうしても骸使いは強化されていくことになってしまいます」 「結局のところ定石通り、但し戦力分散必至かつ時間制限ありというわけだ。宜しく頑張ってくれ」 |
■参加者一覧
羅喉丸(ia0347)
22歳・男・泰
薙塚 冬馬(ia0398)
17歳・男・志
葛切 カズラ(ia0725)
26歳・女・陰
霧葉紫蓮(ia0982)
19歳・男・志
霧崎 灯華(ia1054)
18歳・女・陰
アルティア・L・ナイン(ia1273)
28歳・男・ジ
フェルル=グライフ(ia4572)
19歳・女・騎
各務原 義視(ia4917)
19歳・男・陰
白蛇(ia5337)
12歳・女・シ
周十(ia8748)
25歳・男・志 |
■リプレイ本文 「久しぶり、元気そうね?」 「お久しぶりです、ご機嫌麗しゅう」 部下の戦闘準備の指揮を取る八角翠に霧崎 灯華(ia1054)が挨拶する。 「どう?」 「半数、欲を言えば七割は拘束したいとは思っています」 「・・・・あまり上手くやりすぎると・・・・警戒されるかも」 「白蛇(ia5337)の言うとおりかもね。程ほどでやって頂戴」 「心得ました」 「ふむ、初めて見た時は少女ということで驚いたが・・・・」 霧葉紫蓮(ia0982)は眼前で行われる防衛準備に唸る。 「灯華の言うとおり、たいした手並の持ち主ではないか」 「俺達の攻めに期待して守りを受け持ってくれてるようなんで、応えないわけにはいかないな」 羅喉丸(ia0347)の言葉にも決意が篭る。 「それじゃぁ、気を付けてな。武運を」 「ここと墓場、それぞれ頑張ってくれ。僕達は行進側の骸使いを一刻も早く討ってみせる」 「ご武運を。皆様が集中できる状況に入れるよう努力致します」 その言葉と共に薙塚 冬馬(ia0398)達は墓地へ、紫蓮らは行進中央を視認できる位置を取りつつ機会を窺いに向かう。 墓地へ向かう隊にも、遠目に人、獣、鳥・・・・統一感の無い骸の群れが集団となって進む様子が見える。 「なんてことを・・・・必ず止めてみせます」 フェルル=グライフ(ia4572)が怒りに肩を震わせる。骸使いを滅ぼせば、彼らも再び平穏な眠りにつけるだろうか。 ●墓場の死闘 「出てくるシーズンが悪いわね、こういうのは盆に出るのがお約束でしょうに」 葛切 カズラ(ia0725)の一見もっともな意見。が、盆でも人を襲う骸の群れの登場は怪談の中だけに収めるべきだろう。 あれだけの数を放出しつつ、まだこれほどの骸が居るのかと驚嘆する。或いは、この死の多さが今の天儀の日常ということか。 こちらに来ているのは羅喉丸、冬馬、カズラ、フェルル、各務原 義視(ia4917)の五人。 骸に周囲を守らせた骸使いが右手を軽く掲げ、現れた黒く光る光球を墓標の前へと投げ入れる。すると、地中よりむくむくと屍が現れ、何事も無かったかのように群れへと加わる。 「・・・・何という事を。死者を冒涜した報い、必ず受けてもらいますよ!」 真っ向より進み出たフェルルが怒りの声を放つ。激昂の最中にあっても、自らの役目を忘れる事はない。骸使いを守る骸を分散させるべく、間合いを測った上での咆哮が響く。 その声に誘われるように骸の一部・・・・否、全てと骸使い自身もがフェルル一人に狙いを定める。 「っ・・・・!?」 その全てが自らの技の効果でないことは直ぐにわかる。まとまりのない動きをする骸と、それを補う形で展開する骸。その中央で大鎌を掲げて近づいてくる骸使い・・・・顔があればおそらく勝ち誇った顔をしているのだろう。 「予測の外ではありますが、私は私の役目を果たす!」 隼人の瞬発力を距離を詰める為ではなく開くために使う。元々緩慢な骸達に追いつけるはずもなく、陣から飛び出す気のない骸使いもフェルルに引きずられる骸の動きに合わせて不毛な追跡を続けるしかない。 「以外に冷静な判断をするな。ま、全て上手くいくわけじゃないか」 「何にせよ賽を振った以上、潜んで眺め続ても仕方ない。さぁ、勝負といこうか」 フェルルと骸の群れを挟んだ反対側で待機していた仲間達が一斉に行動を起こす。 「長持ちする呪縛ではないのでお早めに・・・・急々如律令」 義視の呪が骸の動きを縛る。 一丸となって動いているとはいえ、咆哮につられた骸に合わせた動きをとらざるを得ない骸の群れは開拓者達に対し引きながら襲うという効果の薄い攻撃しか出来ない。 一方の開拓者達も、いかに数を「減らさずに」骸使いへの道を拓くかで苦戦していた。 「潰さない限りは妨害する力がある!倒さねばならない相手は確実に破壊するぞ!」 羅喉丸と冬馬の連携で体を半分以上失った骸が、尚も残る片腕だけで彼らの足にしがみつこうとする。 「こういう時はこう言うべきね、極楽へ逝かせてあげるわ!」 そこに打ち込まれたカズラの鏃のような式が骸を完全に砕いて地に還す。3,4体も倒せば、骸達の円形の布陣の中で骸使いに届く空間が出来る。 その穴から踏み込もうとした羅喉丸に対し、骸使いが動く。一息の跳躍とともに鎌が閃く。槍で咄嗟に防いだところで柄で喉突き、更に蹴りを重ねてくる。受けの上からでも数m吹き飛ばされる。 「カハッ、体術まで使うか。に、しても3,4体分であの力、並大抵じゃないぞ!」 更に、咆哮の影響外にある骸達をここぞとばかりに攻勢に向けてくる。 「死者たちはこちらへ来なさい!私達がその苦しみから必ず開放します・・・・っ!」 フェルルの叫びが響く。新たな骸が彼女に向かうと同時に、先に追っていた骸の一部が追いつき、掴みかかると、避けを封じたところに獣の骸が飛び掛る。喉笛を狙ったその牙をフェルルの不退転の気合が弾く。 「もう少しです・・・・だからそれまで、待っていてください」 骸を振り払い、再び距離をとる。 「グライフさんの志、無駄にはせん。貴様の相手は己達だ」 咆哮に合わせて再度フェルルのほうへと向かおうとする骸使いを挑発するように冬馬が切りかかる。思いの外にあっさりと切り払える手ごたえがある。 (「防御が弱い・・・・否、急所以外は体も骸同様捨て駒か?) 思考を中断するように大鎌が迫る。風をも切り裂くような音を立てる刃先を飛び退ってかわした冬馬の視界で、鎌に両断される骸の姿が見える。 「形振り構わずか。こちらも手段を選べるほど余裕はないがな」 手首だけで軽々と返し、もう一撃を放ってくる骸使いに牽制の苦無を投げつける。 その一発が骸使いの頭部をかすると、然程深い傷でも無いに関わらずよろめく。 「む?」 「三人ともあわせなさい。どうせ短期決戦、可能性が見えたら一発勝負よ」 投げた冬馬自身以上に即座にその意味を察したかずらが印を組むと義視もそれに続く。 二段で地より湧き上がる戒めの式が骸使いを捕らえる。 「急ぎ手律令の如く為し、万物事如くを斬刻め」 さらに攻撃の式が頭部に集中する。それだけでとどめにはならないが、続く一手を見切らせぬことはできる。 「死者の眠りを妨げる外道が。これで終わりにしてやろう!」 「耐えるべきだったな。自らへの過信が招いたのがこの一撃だ!」 羅喉丸の骨法を交えた一撃と冬馬の巻き打ちが十文字を描くように交差する。 「やったか!?・・・・ぐぅっ」 頭部に槍や刀が突き立ったまま、仁王立ちする骸使いから伸びてきた腕が二人の首を掴み、締め上げる。 「まだこんな力が・・・・」 だがその足掻きも長くは続かなかった。頭部に入ったヒビが広がり、砕け散ると同時に骸使いの体はあたかも初めから存在しなかったかのようにかき消える。それと共に骸達も動きを止め、糸の切れた人形のように崩れる。 「げほっ・・・・終わったようだな」 「大博打だったが上手く行ったようだ。だが・・・・折角判った奴の弱点をあちらに伝える術がないのが残念だ」 「ま、あっちもじきに気付くでしょ。それよりフェルルさんが呼んでるわよ。死体をもう一度ちゃんと埋葬したいって」 「刃を向けてごめんなさい、どうか安らかに・・・・」 埋葬を済ませ、倒れていた墓碑を立て直すとフェルルはその前で祈りを捧げる。つられるように仲間達も手を合わせる。 「さて、こっちは燃やしちゃっていいわね?」 かずらのいうこっち、とは明らかに埋葬されていたとは思えない野の獣や鳥の死骸。 「灰は灰に、塵は塵に、在るべきものは在るべき姿に!」 呼び出された火炎獣の吐き出す炎で、それらの死骸は荼毘にふされる。 「さて、間に合わぬとは思っても行かぬ選択は己達には無い。行こう」 冬馬に続いて皆が墓地を後にする中、フェルルはもう一度振り向くと小さく祈った。 (「再びこのような悲劇が起きぬよう私達は戦います・・・・どうか、天より見ていてください」) ●行進への一撃 「正面、もうもたないか?」 周十(ia8748)が見るに、土嚢の隙間から槍で応戦していた八角党が陣を捨て逃げる様子が見える。 「見てなさいって。そう思ったところからの詐欺みたいなやり方が彼女の得意技なんだから」 灯華の言葉を証明するように、すかさず次の隊が土嚢を抱えよると次の陣を敷き、前の隊同様長槍で応戦する。陣を囲もうと集まってきた骸が展開するとまた放棄して先に逃げた隊が入れ替わりに守りに入る。さらに軽装の遊撃隊が遠隔攻撃をかけては直ぐ離れる。のらりくらりとした攻防の繰り返しの中で段々と先鋒の骸が本隊から距離が開いていく。 「上手いな・・・・だがまだ半数ほどは本隊側か。墓地側の結果が出るまでもう少し待つか?」 「あまり待つと・・・・気付かれるかもしれない・・・・。ほんとは・・・・もう少し待ちたかったけど・・・・」 「期待してますよ。あまり負担にならないように、電光石火の攻めでフォローしよう」 囮の為に動き出す白蛇にアルティア・L・ナイン(ia1273)が軽く敬礼する。 距離の開きすぎた前線部隊との距離を詰めようと骸使いが本隊を動かし始めたその時、その側を円月輪がかすめる。白蛇はそこに更に間髪入れず数発の円月輪を投げつける。 露骨な挑発ではあるが、無視は出来ないという考えと40体近い護衛の生む強気の結果として、8体近い骸が差し向けられてくる。 白蛇は追撃を確認すると、足を速めて更に別の角度から撃ち込む。業を煮やした骸使いが更に数体を差し向けたところで、踵を返して離脱を始める。そして獣や鳥といった足の速い骸の攻撃を鉄傘で防ぎながら、横笛を取り出す。哀しく響く鎮魂の笛の音は、また仲間達への報せともなった。 笛の音を聴いた紫蓮は囮の成功と白蛇のひとまずの無事に安堵の表情を浮かべる。本隊にまだ少なくない数が残ってはいるが、足の速い骸を使った分強力な骸の数は減っている。 「さて、それでは迅速に禍を断つとしようか」 アルティアに続いて続々と切り込む開拓者。 「さて、見た目からして雑魚だけど、どうなのかしらね?」 灯華の放った式に足を切り取られた骸は、そのまま進もうとして転げ倒れる。腕を切り飛ばされた骸はそのまま切れた腕で殴りかかろうとする。 「丈夫でよかったわ。そこでお寝んねしててね♪」 「よし、俺達も足を狙っていくぞ。倒れた骸に足を取られるなよ!」 周十たちも足を切り、あるいは蹴倒して骸使いへの道を拓く。骸使いが周囲の骸を集めて壁を作ろうとしたその時・・・・ 「なんだ?」 「・・・・墓地のほうが片が着いたんじゃないかしら?」 突然、骸の一部がくずおれる様に倒れ、動かなくなる。群れは2体の骸使いの使役する骸が入り混じっていたため、囮の追尾、前線、本隊、あらゆる集団の密度が薄くなる。 「絶好の好機だ・・・・容赦なく斬らせてもらおうか」 紫蓮がすかさず踏み込むと、真っ向から一気に斬りつけ・・・・ない。骸使いの意識を逸らすフェイントだ。 「アルティア!」 「この身は疾風のように速く、我が剣撃は暴風のように荒々しいと知れ!」 嵐のような四連撃を浴びた骸使いがぐらりとふらつく。が、たたらを踏みながらも持ちこたえた骸使いは大きく鎌を振って間合いを開く。そして骸達に新たな動きをさせる。 「この数では脅威足り得まい・・・・ぬ?」 動き出した骸達は・・・・体の一部が崩れ戦力外となった骸達を砕き始める。 「・・・・!。やってくれるじゃない!」 気づいた灯華の式が骸の動きを封じるが、既に数体の骸が粉々に砕かれている。そして、地を薙ぐように鎌を低く構えた骸使いが駆け抜ける。 「・・・・まさか自分で破壊するとは予想していなかったな・・・・」 半端に残すより自己に力を。十数体分の力を回収した骸使いが鎌を持ち直し、開拓者達に向かう。 一斉に薙がれるよりも前に紫蓮が前に出て攻撃を受け止める。 (「くっ・・・・一撃がさっきと比べ物にならないほど重い!」) 「鎌をこれ以上使わせられん。腕を狙ってくれ!」 圧倒的腕力で叩きつけられた鎌の刃先が具足と体にめり込んでいくなか、紫蓮が叫ぶ。その陰から飛び掛ったアルティアの再度の連撃が狙い違わず両の腕を切り落とす。 からん、と大鎌が落ちる音と鉄拳の鈍い音が同時に響く。斬られた腕を即座に再生させた骸使いの拳が攻撃直後のアルティアを殴り飛ばす。胃液が逆流しそうな衝撃を浴びながらも、何とか立ち直ると再度の攻撃の為に前に踏み出す。 「同じ手は受けない。いや、受ける前に、風の如く切り裂く!」 鋭い斬り込みで再度両腕を断つ。 「ずっと機を窺ってたのよね。さ、一気に突っ込みなさい」 灯華の放った一枚の呪符から飛び出した式がしがみつく。直後にもう一枚を介して降る雷閃が骸使いを焦がす。煙を上げながら先程に比べると時間をかけて腕を再生する骸使いの背中で青い炎が上がる。 「ごめん・・・・死人を撒くのに・・・・時間がかかった・・・・」 白蛇はさらに、その炎めがけて焙烙玉を投げつける。丁度骸使いの体が前衛を爆風から守る盾になる。 「いや・・・・丁度いいタイミングだ!」 「千載一遇の好機、仕留めさせてもらう」 前のめりに倒れ掛かってくる骸使いに、周十と紫蓮が踏み込みながら斬り上げる。 三分割された骸使いの体は、繋がる事無く塵となった。 ●二度目の眠り 「皆様ご苦労様でした」 「あの・・・・頼みたい事が・・・・」 撤収準備がてらに挨拶に来た翠に、白蛇が切り出したのは死者の再度の埋葬。 「墓地のほうはやってるだろうと思うんだが、こっちで広く散った死体を運ぶのは俺達だけじゃ大仕事なもんで手伝って欲しいんだ」 「獣の死骸や、骸使いに砕かれた骸は墓地にそのままは帰れんだろうから、せめて火葬にしてやりたいな」 周十と紫蓮が頼みごとを並べる。翠はそういうことならと槍と布を組み合わせた即席の担架や盾板に骸を載せ墓地へと向かわせる。 途中で合流した仲間達と墓地へと向かい、死者を埋葬すると最後に火のついた櫓の中で無縁の骸達が天へと還される。 「悪いわね、こっちの勝手で手伝わせちゃって」 「いえ、良い心がけだと思いますよ。もののついでですし」 灯華がきびきびと動く八角党を良く見ると、板や組木のような使い捨ての防衛装備をここぞとばかりに焼き捨てている。そういえばさっきの埋葬でも上から被せていたのは土嚢の土だったように思える。 「・・・・あいかわらずちゃっかりしてるわねー」 「せっかく眠っていたのにすまないな。今度こそゆっくり眠ってくれ」 冬馬の言葉とともに、一同が弔いに手を合わせる。 白蛇の鎮魂の笛の音だけが静かに響き渡って行った。 |