冬の波音
マスター名:石田牧場
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: 普通
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2009/12/29 14:32



■オープニング本文


「どうも、以前に受け付けて頂いた係の方は‥‥」
 聞き覚えがあるかないかと言われれば、特別に特徴がない声ほど記憶にひっかからないものである。
 ぼんやりと手遊びをして暇をつぶしていた受付係は、自分のそばにやってくる気配を感じ、はじめてその男へと視線を向けた。
 平均よりは高い背、髪を束ねるれぇす。いつぞや、洗濯物の仕事を依頼してきた古物を扱う店の主人だ。
「こんにちは、また仕事をお願いしたく思いやってきました」
「あぁ‥‥夏頃の。それでは、洗濯の続きですか?」
 開拓者達が仕事を終えた後に、依頼人本人からも話を聞いていた受付係である。その際に書き付けたものをどこにやったのかと探しはじめる。
「いえ、それについては‥‥店にそういった仕事を得意とする者もおりますし、そちらに任せてきておりますよ」
 頂いた助言も、参考にさせて貰っていますと律儀に答えるあたり、几帳面な性格なのかもしれない。
「冬物の仕入れも順調ですし、店の方は大分落ち着いてきたところです」
 年始の晴れ着に古着を使う者はそう居ないはずで、年の瀬まではそれほど忙しくないということだろう。
「では、どのようなご用件で?」
 書付は必要ないと結論付け、受付係が男へと向き直る。それをまってから依頼人は話し始めるのだった。

「先日大きな戦がありましたでしょう? あの時、なにもできなかったことを少々悔やんでおりまして」
「あぁ‥‥でも、おたくの商売では、そう手を出しにくいでしょうね」
 衣服や装飾品にはじまり、最近では骨董も扱っているとはいえ、基本的には使い古しの品ばかり扱う商売である。例えば物資援助をしようとして、商売にかかわり、なおかつ役立てられる品はと倉庫を探す‥‥品があったとしても、数が多くないというのが現実で、それだけのために物資を送るのも忍びない、と断念するばかりだったということだ。
「でも、今から援助と言うのも難しいのではないですか?」
 話の先が見えない受付係はしきりに首をかしげている。
「えぇ、ですから復興援助のような形ではなく‥‥ある程度都や周辺が落ち着いた今の時期に、ささやかながら慰労の会を催そうと思っているのですよ」
 そう大勢は呼べませんけれど、腕によりをかけさせていただきますよ、と依頼人が微笑むのだった。


「材料の都合で、二組にわけてのお誘いになっているんですよ」
 なんでも主役となる食材だけは、参加される開拓者の皆さんに運んできて欲しいとのことで、山村と漁村二つの行き先があるとのこと。
「こちらは海の味覚をとりに行って頂く皆さん用の依頼です。鍋にすると美味しい魚介類が、そろそろあがり始めていると聞いています。運が良ければ、調理の難しい魚もあるそうですから、交渉してくるのもいいと思いますよ?」
 寒くなってきましたし、鍋、あったかいですよねぇ‥‥私も今夜は鍋にしようかなと受付係が呟くのだった。


■参加者一覧
天津疾也(ia0019
20歳・男・志
ダイフク・チャン(ia0634
16歳・女・サ
巴 渓(ia1334
25歳・女・泰
ルオウ(ia2445
14歳・男・サ
平野 譲治(ia5226
15歳・男・陰
フレイ(ia6688
24歳・女・サ
燐瀬 葉(ia7653
17歳・女・巫
天ヶ瀬 焔騎(ia8250
25歳・男・志


■リプレイ本文


「久しぶりだな、元気だったか?」
 依頼人である三豊矩亨へと声をかけたのは巴 渓(ia1334)。初夏の頃に三豊がギルドに頼んだ依頼で面識があり、その縁で今回も手伝いに来た様子。簡単に挨拶を終えると、すぐに買出しに使える金子の額を確認するのは商売への知識があるからだろう。
「‥‥だいたいわかった」
 満足のいく答えだったかどうかは、渓の口元が笑みを形作ったところを見る限りそれなりのようだ。
「魚の目利は心眼クラスの志士。天ヶ瀬だ‥‥今日は満足するまで探すぞ」
 任せておけと言わんばかりの気迫を漲らせるのは天ヶ瀬 焔騎(ia8250)。口調も姿勢も生真面目に挨拶をするのだが、無造作に持参した包丁が妙に浮いている。刃が剥き出しになっているわけではないのだが、まさに『包丁の理由を聞いてくれ』と言わんばかりの見せる持ち方だ。
「焔、引かれてるんとちがう?」
 その後すぐに燐瀬 葉(ia7653)の握りこぶしが焔騎のお腹にくりーんひっと。しっかり危険物を避けるあたり慣れているようで、小柄な昔馴染の軽い一撃で簡単に崩れおちる焔騎。
「うちも料理は好きやから、あとで手伝わせてぇな」
 三豊を見上げてにっこり微笑めば、効果は抜群のようである。
 なお焔騎は数秒後に復活している。当てる側も受ける側も慣れるほどの付き合い‥‥いや、それほどまでに日常的だということだろうか?

「みゃ☆ お魚みゃ☆」
 村への移動中、スキップでぴょんぴょんと跳ねていきそうなのはダイフク・チャン(ia0634)。ひとりで駆け出していきそうな喜びようではあるのだが、仲のよい葉がいることもあり、そわそわと落ちつかなげに歩む程度ですんでいるようである。
「何を食べようかみゃ〜?」
 かっくりと首をかしげれば、ちょうど天津疾也(ia0019)も同じことを考えていたようで。
「冬は脂が乗ったええもんが多いからなあ、今からでもよだれがでてとまらんな」
 魚だけじゃなくて貝も美味いぞとダイフクに言いながら口元をぬぐう仕草。過去に食べた、そのときの味を思い出したようである。
「食材も豊富に調達せな、名が廃るってもんだな」

「たった、とっと、つんつん、とっと、つーいっしょ♪」
 道行く景色が変わるごとに、平野 譲治(ia5226)が奏でる調子もその音を変える。
「とっと、てって、たーたんっ、た‥‥」
「それ、何の歌だ?」
 気になったルオウ(ia2445)が一度聞いてみたのだが、明確な答えは得られなかった。一度中断させた物の、しばらくするとそれまでと同じように不思議な調子は口ずさまれるので、ルオウも次第に楽しくなってきた。
「てって、くっくーぅ、たーったんった♪」
「てって、くっくーぅ、たーったんった?」
 譲治が一節進むと、ルオウが一節追いかける。道行きは、彼ら二人の言葉遊びで朗らかな空気に満たされるのだった。


 海組の大半は市場での交渉へと人手を割くようである。朝早くから海へと出ていた漁師達の船がちょうど戻ってくる頃合に漁村へと到着した一行は、休む間もなく漁師達へと声をかけていく。
「今の時期だと脂が乗った鰤、鱈、鮟鱇、鯛、ほっけとかかみゃ?」
 水揚げされる様子を見ながら両手をにぎにぎ、わきわきとさせているダイフク。今にも魚の山に飛び出して行きたい衝動を堪えるのも大変なようで‥‥むしろ今にも涎が出そうな勢いだ。
「確かにちょうど、冬場はあんこう鍋が美味い時期だな」
 メインはそれにするかと呟いて、渓が早速漁師達の言い値をたずねる。同時に彼らの出す商品‥‥魚それぞれの全体を検分しだした。
(「ウロコのはがれや身崩れがあればとっつき易いんだがな」)
 検分の間を埋めるように交渉を引き継いだのは疾也で、言い値からずいぶんと差のある小額を購入希望として提示する。勿論冷やかしと取られぬように、その額も低すぎととられぬよう気を配っている。
「この額ならどうや?」
 交渉の基本は互いの妥協と譲歩による歩み寄りということで、疾也自身も希望の購入額を少しずつ高く変えていく。その話すテンポが軽やかで、まさに手の上を転がされて居るように、漁師達もつられて言い値を下げていく。そうして互いの望む金額が同じになれば詰みだ。
 そうして数種の魚の交渉が成立したところで、一通り検分を終えた渓が話の輪に戻ってくる。
「ふん‥‥だいたいわかった。親父、こっちの身が小さいやつらを纏めて貰おうか」
 端のほうに退けられた、商品としての価値が薄いと判断された魚肉達‥‥積んだ際の重みのせいか、それとも運ぶ間に傷がついたのか経緯は不明だが‥‥を指差し、あわせて鮟鱇も買いたいと伝える。
「でも、できれば試食なんかも食べたいみゃ〜‥‥」
 ダイフクは先ほどからそのアラとも呼べる魚を穴が開くほど見つめていた。売れ残ると諦めていたものが僅かでも金子にかわる目処がついた漁師としてはそれくらい瑣末なことだった。手づかみになるがよければと気安く請け負ってくれた。
「ところで‥‥ものは相談なんやが。俺達、もう少し別の魚も手に入れたいんやけども」
 船を貸してもらえないだろうか。また話し相手が疾也に変わり、同じ漁師への交渉はまだもう少し続くのだ。

「予想してたけど、潮風がちょっと寒いようやね〜」
 軽く全身で伸びをする葉は、いつもより少しばかり厚着だ。歩き詰めだった体をほぐすように大きく深呼吸をして、これから始める交渉への気合を入れる。だが目利きに自身があるわけではないようで、事前にそれの担当は焔騎だと申し入れているようだ。
「任せろ。‥‥おじさんの今日の最高の品を見せてくれ」
 都で食べるいい魚を探しているんだと声をかけ笑顔を向ければ、後方の葉にしてみればわざとらしいと茶化す笑顔だとしても、村人には効果覿面のようで気前のよさそうな、威勢の良い声が返ってくる。安心したように今度は落ち着いた笑みを浮かべてから、焔騎が交渉へと話を進めていく。
「あっちの魚はなんやろ?」
「うちは無理なんやけど、友達のために海老と蟹も欲しいわぁ」
「これ、もうちょっとまからん?」
 焔騎が話し込む合間を縫うように、葉が笑顔を浮かべ話に割り込む。邪魔をしているようにも見えるが、村人が何かを出し渋ったり迷ったりするタイミングで行っているために、結果として良い方向へと繋がっている様子。元が小柄なせいで誰に対しても上目遣いになる葉が可愛らしく駄々を捏ねているわけで‥‥免疫がない者には絶大な効果を誇った。
(「地酒は掘り出し物があるからな‥‥楽しみだ」)
 粗方めぼしい品を買い付けたところで、彼ら二人の魚の担当は終了だ。大半を疾也たちに任せることにして、二人は酒の交渉先を求めて海辺を離れるのだった。

 ルオウと譲治は漁村についてからも元気いっぱい。むしろ到着して海を見てからのほうが、移動中よりも力が漲っているようにも感じられる。
「カキとかとりたいぜ! 魚もいいよな!」
「面白そうぜよっ!」
 水揚げ最中の漁師達の下へと駆けていき、頼み込んで手伝わせてもらうことにした。彼らのような見るからに開拓者とわかる旅人がこうして声をかけてくるのははじめてではないようで、漁師たちも快く二人を受け入れる。
「俺達貝を手に入れたくて‥‥よかったら、もぐって取りにいきたいんだけど」
 ひと段落ついたところで小休止。漁師達が一息ついたところでルオウが本来の目的を話し出す。
「おいらたち買い付けでこの村に来たんでござるよっ」
 途中で譲治が事の次第の説明を引き継げば、三豊さんの使いかと納得する漁師達。それなら海女のところに行けばいいと、潜り場の場所を教えてくれるのだが、これはちょっとした礼だと言って引き上げたばかりの魚を一尾、二人へと押し付けた。なんでも刺身にすると美味いとのことだった。
「さーて取りまくって食いまくるぜ!」
「力いっぱい遊ぶぜよっ!」
 はたからみると何か勘違いしているようにも見える二人だが、これはただの気合をこめる掛け声なので問題はないのである。

 海辺の食材はその種類も限られてくる。魚、貝類が揃ってしまうとそれ以外を探すのも少々手間だ。野菜と呼べる品も潮風に強い品種が少ない分そう多くなく、村人達が食べる野菜類の大半は、より内地に近い別の村から買い付けるなどして対応しているものらしい。
 とはいえ多く生産できる食材がないわけでもなく。出汁に使用する昆布や汁物の具材に使うワカメとともに、カボスや岩塩といった魚に必須ともよべる調味食材も手に入れることが出来た。また旬とは違うが、貝紐や開きといった、別の季節に収穫され保存食として加工された干物もいくつか買い付けている。
 まだ息のある魚達は海水を満たした瓶に、それ以外は腐らぬよう手を加えたり湿気を避けたりと工夫しつつ荷を整える。あとは神楽へと戻れば美味しい食事が待っている。


 皆さん、陸路でどうもお疲れ様でした。山村に向かった方達とは違い、水ごとの輸送はずいぶんと時間がかかったようで、おおきく手間をかけたことと思います。のんびりしてくださって構いません、どうぞゆっくりと道中の疲れを癒してくださいね。
 勿論食事の都合は出来る限り対応しますので、どうぞ遠慮なくおっしゃってください。先に届いた山の食材から調子もはじめています。完成したものから順に運び込みますから、お先にはじめていただいても構いませんよ?

「調理法とは違うんやけど、個人的に御稲荷さん食べたいなぁ、頼んでみたらあかんかなぁ?」
 大丈夫ですよ葉さん、お寿司も握るつもりでしたから、酢飯も準備してありますよ。茸や山菜の五目煮を入れたり、ゴマを入れたりカボスの皮を混ぜたり‥‥種類も作れますから、お好みがあればおっしゃってくださいね。
「寿司って事は、刺身も食べられるのでござるなっ?」
「貝も刺身で食えるのか?」
 勿論お出ししますよ、せっかく新鮮な魚がたくさんありますからね、釣りや素潜りまでしてきて頂いたようで、お疲れ様です。水は冷たかったのではないですか? 譲治さん、ルオウさん。
「貝は味噌汁が定番だが、炙り焼きもいいな‥‥頼めるか?」
 数もありますからどちらも試せますよ、疾也さんは食べ比べてみますか? 数がまだ余るようなら、炊き込みも美味しいですよね。甘辛く味をつけた佃煮も捨てがたいですけれど。
「鮟肝、少しでいいんだが生で残しておいてもらえないだろうか」
 新鮮だからこその贅沢ですよね、そのままでよろしいですか? よろしければ、出汁で味もつけますけれど‥‥そうだ、どちらでも食べられるようにタレと鮟肝は別の器に用意しておきますね。

「俺も料理の腕は多少あるんでな。手伝うぜ」
 お疲れのところすみません渓さん。山村組の方達で手が足りるかと思っていましたが、そちらの方達にも休んでいただきたいですから助かります。葱入りのつみれですか‥‥確かに臭みとりにも風味付けにもなる分おいしそうですね。でも量が多いですから時間もかかってしまって、めったに作らないのですよ。ですからどんな味か楽しみです。
「‥‥鍋、煮付け、焼き魚とかかみゃ〜」
 ダイフクさん、この手ぬぐい使われますか? 煮付けの味を甘くするか辛くするかといった違いもありますが、魚の身の焼き方ひとつで味もずいぶんと変わるものなのですよ。そんな違いをつけて、じっくりと食べ比べられるほどの食材というのも久しぶりなのですよね。そういえば皆さんに、好き嫌いや好みを確認するのを忘れていました‥‥

「闇鍋はいい記憶がないから嫌やけど。それ以外は特に‥‥あかん、うち海老と蟹は体調悪くなるんよ」
「俺も甲殻類は駄目なんだわ。俺からも頼む」
 体質の問題は訓練して変えられるものでもありませんからね、全て仕上がりましたと言う前でよかったです。鍋はもともと数種類作る予定でしたし、なんら不都合はありませんよ。お気にされないでくださいね。


 山海の味覚、秋冬の味覚。
 並んだ料理の中でも一番に目を引くのが、一番大きな土鍋を使い、使える食材をすべて投入したといっても差し支えないであろう鍋である。蟹の胴身の中をくりぬき皿の状態にしてから、蟹味噌を浮かべる器にしてみたり、尾頭付きの海老が蟹の足と並べられた状態で顔をのぞかせて、火がとおり赤く染まったその鮮やかな色を空に向けて突き上げているような様子。土鍋の中、蓋の内に留まらない盛り付けは生花の様子を呈している。上層部分に盛られた具材を食べすすめ取り除けば、それ自身でも出汁がとれるようなつみれが顔をのぞかせる。なお鍋の出汁はシンプルに昆布での水炊きだ。魚介類をはじめとした旨みを持つ食材が多くなることを考え、味が混濁しないよう、食材それぞれの味を楽しめるよう考えられた結果である。
 別の土鍋では鮟鱇を主役にすえた鍋、貝類と干椎茸の出汁を生かした山菜鍋、生姜の絞り汁を強めに混ぜた野菜出汁のぶりしゃぶといったように、出汁や食べ方を変えて暖かい料理に趣向を凝らしている。
 生の魚は刺身でも寿司でもどちらでも食べられるよう、銀シャリに乗せやすい大きさで揃えた者が大皿に盛り付けられた。赤身はそのまま、白身はものにより昆布〆や酢〆で味を引き締める。それらをいただく醤油も各自好みの違いに対応できるよう、山葵に始まり大根おろし、生姜や紅葉のおろし、しそ、茗荷、葱‥‥と薬味の種類も揃えてある。
 魚のアラ身は纏めて荒炊きとなっていた。醤油は少なめにする代わりに出汁を増やして炊いたそれは色目が薄くなっているが、梅干と葱で臭みを抑えているので薄味の上品な仕上がりになっている。
 もちろん素材そのままに炭火で焼いた貝類や魚の串焼き、軽く炙った干物、あぶりの刺身なども並ぶ。
「御託ばかりではせっかくの料理も冷めてしまいますね。改めて、皆さんどうぞお召し上がりください」
 簡単に話しながら、開拓者達へ飲み物を注ぎまわった三豊がそう告げれば、14人全員が卓に着くまで始まっていなかった宴会の幕が上がる。
「いただきます。‥‥基本やね」
「自然の恵みに感謝して、命を『いただく』わけだからな」
「それくらい常識ちゃうん? なんやその疑わしそうな目は」
「バレタカ」
 食事の席では拳は飛ばず、冗談を言い合う葉と焔騎。
「やっぱり自分で採ったものが使われていると、ただ美味しい料理ではなく最高でござるなっ!」
「採るときは夢中だったけど‥‥お、譲治見ろ見ろ、これ俺が採ったやつだ!」
 宝探しをするように箸を勧めていく譲治とルオウはなにを食べても笑顔が溢れ出す。
「ふー、ふー‥‥ちょっと熱いけど、うまうまみゃ〜☆」
 猫舌のダイフクだが、豊富な魚料理に舌鼓を打ち続ける。彼女の喜びの声と競うように、だが箸が止まらず吼えるのは疾也。
「うーまーいーぞー!!!」
「‥‥‥」
 そして他の者達の様子を眺めながら、渓はちびりちびりと杯を進めていた。