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■オープニング本文 ●折衝 護大派との会談は、十々戸里にて執り行われることとなった。 これは、まずは予備交渉である。 和平を締結する上での護大派の条件は、天儀が護大と瘴気を受け容れること――無論、呑める条件ではないが、この交渉はまず第一歩であり、交渉とはお互いに食い違う条件をいかに妥協するかを言う。そういう意味では偽りも無かろう。 護大派よりは随伴含めて使節が三十人。 現地での警備はギルドと開拓者を中心に戦力を展開して万全を期すものとされた。 「ゆめゆめ油断するでないぞ」 大伴定家が、難しい表情で開拓者たちに告げる。 大伴とて彼らと戦わずに済むならばそれを望まぬわけがない。しかし、護大派の出方にどうしても懸念が拭えないのだ。 だが同時に、護大派の意思決定者らとの正面切っての邂逅でもある。交渉に応じた彼らの真意は解らない。果たして、箱の中には何が在るのか。 ●再訪 遭都、御所の地下、夢語部の間――。 各部屋は過去を記憶する不思議な結界が施されており、刻の記憶を司る精霊によって現代の人々が知り得るはずの無い過去の情報を授けてくれる。 穂邑(iz0002)――神代の少女がその精霊と交信し、部屋に入った開拓者達に夢を見せてくれるよう頼めば、それは再びなされるはずだ。 各部屋そのものがある種の結界になっており、その結界の中で一晩を過ごすとそれぞれに記憶を夢として見、過去の出来事を追体験できる不思議の部屋。 この部屋で見る夢は、ただ見るだけではない。 聞いて、嗅いで、触れて‥‥過去の物語の登場人物としての行動が出来る。 吟遊詩人の『時の蜃気楼』、それよりも強力な、精霊力にあふれていたのだ。 そのうちの一つの部屋に、数名の開拓者達が集められていた。 武帝と神代の少女穂邑もその場に揃っている。 「新たな儀‥‥『箱庭』だったか。かの地で得た情報は、この部屋の記憶を思い起こさせた」 かつての始祖帝が姉と共に旅をし、この遭都に身を落ち着けた成り行き。その情報が開拓者達に広く知られることとなったのは、春のことだったろうか。 「全くの手さぐりで向かったあの時と、今は違う。今回は、新たに知り得た情報が手札となるはずだ」 そうであってほしいと願うような口調で告げる武帝に、開拓者達は神妙に頷く。 「‥‥精霊力が弱まっているように感じます」 静かに目を閉じていた穂邑がゆっくりと目を開ける。以前のように表情は強張っていない。神代としての彼女が感じ取っているのは、刻の記憶を司る精霊そのもの。その存在が弱くなっているということは―― 「何度も試せるわけではないということか」 武帝の言葉に静かに頷く。 「今回は、問題ないと思います。ですがそれ以降も交信が成功する、その保証はありません」 神代とて精霊の意思が完璧にわかるわけではない。だが、精霊だって自ら進んで消えゆく道を選ぶことはないはずだ。ならばこの機会を最後と思って向かわねばなるまい―― ●護大の頭蓋骨 ズゥゥゥゥゥンンンンン! 黒い靄が晴れたその場所に残された、巨大な頭蓋骨。 大アヤカシが倒された後でさえなお感じ取れる濃密な瘴気。 話に聞いていた通りの状況とはいえ、戦いは気を抜けるものではなかった。ギリギリの戦いを乗り越えたことに、開拓者達はほうと安堵の息を吐いた。 瘴気が薄れたわけではなく、体全体がぴりぴりと痛いくらいだけれど。この先がどうなるかも知っているからこそ、気を抜くことも出来るのだ。 「皆、待っていてくれるか」 仲間達が無言で見つめる中、男――始祖帝は懐から何か小さな袋を取り出し頭蓋骨に歩み寄る。 空いた方の手をかざし――結界が完成した。 ――かつての始祖帝と、慕容。そう知った上で見る光景―― 結界を完成させ、仲間達を振り返り笑顔を見せる青年。 弟を笑顔で迎える姉。 姉弟の様子を眺めながら、開拓者達は新たな一手を選ぼうとしていた。 |
■参加者一覧
時津風 美沙樹(ia0158)
22歳・女・巫
天河 ふしぎ(ia1037)
17歳・男・シ
フェルル=グライフ(ia4572)
19歳・女・騎
劫光(ia9510)
22歳・男・陰
ユリア・ソル(ia9996)
21歳・女・泰
蜂矢 ゆりね(ic0105)
32歳・女・弓
天月 神影(ic0936)
17歳・男・志
白鋼 玉葉(ic1211)
24歳・男・武 |
■リプレイ本文 ●欠片の封印 「今の技‥‥何?」 瘴気が感じられなくなったことを確認して時津風 美沙樹(ia0158)が疑問を投げる。神代の力による封印だとは知っているが、この場の『美沙樹』は知らない。後の会話に繋げるためだ。 「この頭蓋は、護大の欠片と呼ばれるものだ。それを封印した。外に運ぶなんて面倒だからな」 答えはかつてとほぼ同じ。姓を名乗らず同行する天月 神影(ic0936)と、若き頃の姿を選んだ蜂矢 ゆりね(ic0105)も同じように会話を辿る。 「幼い頃の記憶がないから確証はないが、俺の故郷では見たことがない。皆の故郷では普通なのか?」 「いや、あたしは知らないね」 「当たり前だ、俺と姉貴の故郷にしかないような技術だからな」 予定通りの答えに、心の内で安堵する。 「聞いたことなかったけど、アニキとねぇの故郷ってどこなの?」 自身の怪我の様子を見ながら、天河 ふしぎ(ia1037)が問う。かつてと同じ浮鴫と名乗った少年の姿で。 「捨ててきたから、無いよ」 「待つ者も今は居りませんから」 ここまで聞けば次に繋げられるだろう。 「捨てたのは何故です? あなた達を育んだ大地、私は見てみたいけれど、適わないのでしょうか」 姓だけを名乗った女騎士、フェルル=グライフ(ia4572)は男の恋人の事を想った。彼女だって姉弟の故郷を見たいと想っているはずだ。 「故郷の考え方に同意できなかったのさ」 姉貴はそれに付き合わせちゃったんだけどな、苦笑いする弟に、姉は微笑んで首を振る。 「同じ考えだから、ついてきたんですよ?」 仲の良い姉弟である。それだけ長い間旅をしてきたのだろう。 「ねえ、故郷に伝わる技なのよね? この技を編み出したのは、どんな方なの?」 話の方向を変えようとしたのは美沙樹。 「とても凄い人だったんじゃないかな。興味を感じるのよね。‥‥うん、詳しく知りたいなあ」 できるなら同じような技を身につけたいと男に乞う。 「そもそも、護大をどうして壊さずに封じるの? 壊してしまった方が安全じゃないの?」 それができないというのなら、私にも封印のやり方を教えて欲しいと同じく乞うのはユリア・ヴァル(ia9996)。幼い姿でリアと名乗る今の姿は、子供特有の知的好奇心を盛り上げる意図もあるのかもしれない。 「どんな封印もいつか必ず解けてしまうものではないの? その時が来て、貴方達がいなかったら‥‥私達はどうすればいいの? 今は良くても、子供達は? 孫達は? そのずうっと先の子達は?」 「まだ小さいのに大人びた考えをするんだな、リアは」 もう孫のことまで考えているのかと男が笑う、怪しまれたかと思ったが、保護者のような視線にほっとする。 「そうだよね、何かあった時に助かると思う。だから教えて欲しいな」 美沙樹もリアに同意する。 「なんで、戦わなきゃならなかったんだろうな‥‥?」 そもそも、闘う理由がわからない。本来の劫光(ia9510)の考え方とは変わっているようで、アヤカシそのものと戦うこと自体が疑問になっている青竜が護大の頭蓋を振り返りながら呟いた。 「青竜もか。戦いの後なのに熱心だな、皆」 ここじゃ腰も落ち着けていられないだろう、せめて地上に戻ろうぜと男が促す。 「‥‥あら」 白鋼 玉葉(ic1211)の怪我を癒そうと近づいていた姉がわずかに目を見開く。彼女を庇ったせいで玉葉の装備は破損し、隠していた作り物の体が見えていたのだ。 「驚かないのか?」 露見する度に居場所を追われていた玉葉。女の反応に驚いた様子を見せる。 「大事な仲間ですもの。‥‥そう、貴方達は大変な思いをしているのね」 「同類が他にも居るというのか」 複数形の呟きに食いつく玉葉に、落ち着いてと微笑む。 「あの子も戻ろうと言っているし、まずは地上に戻りましょうか」 ●過去と未来 旅の間も、姉弟は技術や知識を乞えば教えてくれていた。開拓者達なら知っている事ばかりではあるが、この時代の人間にとっては新しいことが多い。それだけ文明が発展していない時代だということだ。 見張りをしながら待機していたもふらに帰還を告げ、休息をとる。自然と姉弟を中心に集まり師事する形で様々なことを尋ねるのは、これまでにも何度もあったことだ。 「どこから説明すればいいんだろうな」 教師の気分にでもなっているのか、腕を組み考える男。しばらくして、聞かれた順でいいかと話し始める。 「封印方法は故郷に伝えられていたというよりも、故郷に居た奴なら全員当たり前にできることだ」 全員同じことができるのが当たり前の場所だった。そして美沙樹やリアには同じ術は不可能だという事を添える。 「先天的に‥‥あー、生まれつきで決まってるものだから、教えても意味がないんだ」 凄い人かはともかく、俺の人となりはもう十分知っているんじゃないのか、期待に添えなくて悪いなと笑う。 「それじゃ、ねぇも封印ができるの?」 浮鴫が確認をとると、頷く女。 「できますよ」 「それじゃあ、貴方達の両親もそれができるんだな」 家族皆ですごいのだなとしみじみとした神影の声。 「いや、多分出来ないだろう」 「物心ついたころには親は居ませんでしたから、確かめたことはありませんけど‥‥おそらく」 誤魔化している言い方ではない。しかし親が居なかったとはどういう事だろう。 (箱庭で生まれたわけではないと思っていたんだが) 顔に出すわけにはいかないと、神影は頬に力を入れる。 「悪いことを聞いてしまったな、すまない」 「いいえ、構いません。お互い様ですよ」 逆に姉に気を使われてしまった。 (始祖帝は子供を為したことで人と同じ寿命になったはずだねえ) 不老不死はこの姉弟だけ。神代は武帝の前の代くらいまで伝わっていたようだが、親にはない。そしてからくりに聞いた培養室の事。それらを繋ぎ合わせると? (冗談じゃなくなってきたかねえ) ゆりねは自分の推測が近いことを知る。だがすぐに言ってもいいものか―― 「あの欠片は壊せないの?」 リアが先を急かす。 「今の俺達では足りない、だから封印して時を待つんだ」 「巨大な頭蓋骨だったよね‥‥これ、今まで封じてきた部分見ても、当然集まった元の形があるんだよね、それがもし蘇るようなことが起きたら、一体どうなっちゃうんだろう」 浮鴫も手段が欲しいと乞う。 「二人は十分強いと思うのに。でも私ももっと強くなりたい‥‥護大がアヤカシの力を増すように、私達を助けてくれる何かが欲しい」 「浮鴫、リア、ちょっと待て」 「「え?」」 リアの言葉を途中で遮る男。姉が弟の様子に気づき、一瞬体を強張らせたのに玉葉は気づいた。 「‥‥いや、なんでもない。遮って悪かった」 続けてくれと言いながらも確かめるような視線を向けてくる。だが理由は言おうとしない男。 「大切な人を守れるように。今だけじゃなくて‥‥私だけじゃなくて、この先もずっと助けてくれる何か。二人は知らない?」 「蘇らせやしない、そのために俺達はいる」 「‥‥宝珠なら、これから探していけば見つかると思いますよ」 弟もひとつ持っていますから、貴女の分もどこかで見つかるのではないかしら。ことさらゆっくりとした口調でリアに伝える女。 姉弟の声がどちらも緊張を帯びたものになっている。警戒されている‥‥しかしやり直しはきかない。 (最後にするつもりだったけど、今聞くべきだわ) 決心したリアが居住まいを正し、姉弟それぞれを正面から見つめる。 「助けてほしいことがあるの」 「「‥‥」」 姉弟もその視線に向き合う。 「もしも護大の封印が解けて、世界が均衡を崩して、この大地が失われる危機に瀕しているとしたら。その時、人はどうやったら破滅を回避できる? 用意できるのは三種の神器、護大の心臓と幾つかの欠片」 一つの賭けだ。グライフもリアの隣に並んだ。 「‥‥あくまでも封印、なんですよね。これからも人々は日々を暮らし、子を、孫を生し、そしていつしか私達の事は忘れられます。けれどあの封印はいつまでも残り続ける。形ある物は壊れます。そのいつか来る開封の時に、遠く私達の血を引く子らは何ができるのでしょう」 「結界が解かれたらまた復活しちゃうって事だよね‥‥? これからもずっと、やっつける手はないのかなぁ?」 浮鴫も続く。仲間達も神妙な顔をしており、その様子を順繰りに見ながら男は、何かを考えていた。 「‥‥共に戦ってきた貴方達を、私達は信じたいのです。ですが疑わなければならない言葉に、どうしていいのか迷っています」 変わりに姉が口を開く。証となる何かが欲しい、そう言っているのだ。 「過去を体験できる部屋があるの」 誰が言い出すべきか視線を見合わせ、美沙樹がその役に立った。 「僕達箱庭にも行ったんだ」 からくりにも会ったことを伝えるのは浮鴫。 「そこにも同じような部屋があるよね。あれってアニキ達が残しておいたんでしょう?」 「ああ。‥‥俺達は今を現実だと思っているが、お前達にとってはただの記録なんだな?」 だから他の欠片の事も、欠片でアヤカシが強くなることも知っていたんだなと確認され、開拓者達は頷く。 「今の俺を残すことに決めたのも、未来の俺なんだろう。お前たちは情報が欲しい、そういうことか」 それだけ状況が差し迫っているという事には、互いにあえて触れなかった。 ●解を求めて 「アヤカシを倒しても止まぬ瘴気の源、あの頭蓋は現し身なのだろうか?」 「瘴気を集めるための実体、その欠片だ。本体は別にある」 ならばと玉葉は食い下がる。 「器物にすら自分のような意志は宿るし精霊も意志があると聞く。なら頭蓋にも宿らせて、制御させられぬのだろうか?」 からくりが宝珠と人形の体で動いているように。 「欠片とはいえ、実体が本体と繋がっている可能性は捨てきれない。意思そのものを受けつけないのではないかと思う」 「試したとしても、貴方にアヤカシが憑依した、そんな存在になってしまうのではないかしら」 「だから封印したのですね」 グライフの確認に頷く。 「今の段階で破壊することはできない。リアが言っていた神器、あれを揃えるまでの時間稼ぎだ」 「それなら、破壊はできるのね!?」 活路が見えた、そう思えたけれど、姉弟の顔を見て言葉が止まる。 「実体の破壊なら、な」 「‥‥あの実体を破壊しても、本体には影響を及ぼすことはないでしょう」 それはつまり。 「破滅を回避する方法は、ないの?」 「それを探すことが、俺達の本来の目的だ。その為に知識と技術を広めて、神器を探していた。だがそれは為されなかった、少なくとも俺の代では‥‥そうなんだろう?」 叶えられないと知ったからこそ、子孫に託すため、そのヒントとするための夢語り部の間を用意した‥‥そういうことになるのだろう。 「貴方達が『そうしたい』と思えるほどの理由はなんなのですか。貴方がたが世界派の者だからでしょうか?」 「護大派を名乗る古代人には接触出来たんだけど。でも、世界派の情報は入ってこないの」 箱庭で暮らしていた者達が世界派に縁あるという情報をもとに、姉弟が世界派なのかと問うグライフと美沙樹。 未だ世界派と名乗る存在に、開拓者達は出会えていないのだ。 「‥‥世界派は、護大による世界の破滅を拒否して、瘴気の渦から逃れて。あらゆる手段を用いて世界の崩壊を阻止しようとしていた」 「そして実体の破壊に成功したのです。その証拠があの欠片です」 しかし、そこから先に進んでいない。だからこそこの記録があり、現代がある。語られる言葉を待つだけなのに、開拓者達に緊張が走る。 「その直後、世界派も護大派も被害は甚大でどちらも瘴気の渦にのみこまれた。護大派は瘴気の耐性があるためドームで暮らし、世界派は残っていた精霊力を全て用いて儀を飛ばした」 世界派が天儀を作った、とも聞こえる。開拓者達の顔に徐々に理解が広がっていく。 「‥‥そう、この天儀に暮らす人々は、皆世界派の末裔なのですよ」 「貴方達二人は?」 意を決して神影が口にする。 「護大を撃破するより前に、世界派によって作られた。だから護大の撃破も、天儀の様子も。あの時はただ見ているだけだった」 「はじめは何も思いませんでした。けれど、天儀の人々に触れるうち‥‥私達は、自分達だけが残ればいいなんて思えなくなったのです」 「世界が終わったその後に新しい世界を作ればいい、そこが平和ならいいなんて、ただの欺瞞だ。それまでに生きていた皆を見捨てて自分達だけなんて、俺には思えなくなっていた。そんなことをしていた自分にも腹が立った」 だから、全てを壊して箱庭を出た。天儀の皆もそのままに、破滅を避ける方法を探して。技術と知識を天儀に広めながら。 「でもね、そこで管理されていた生き物達には何の責任もなかったから、自由にしてねって、解放してきたの」 玉葉の方を見て目を細める姉。かつて自分達の補佐をしていたからくりの事を思い出す。 「あのからくりさんならね、今も元気に暮らしてるよ!」 「植物園の世話をしながらね。あんたたちの故郷だから、覚えていたいんだってさ」 浮鴫とゆりねの言葉に、姉弟の顔がゆるむ。自由にしろって言ったのに、律義な奴だとあきれる様子さえ嬉しそうだった。 「自分達の志体と、アヤカシの力はどちらも強力だ。争うことなく力を合わせる道はなかったのか‥‥? 敵の邪悪さも感じたが、一方で、無視できない、ケモノではなく自分達と同様の、理性もどこかに感じられた気がする」 「護大派が作ったアヤカシは、護大派が制御していたと聞いている。だが護大の実体が破壊された際に欠片が飛び散り、それを飲み込んだアヤカシは力を得て、護大派の制御下を離れたようだ」 それは自我と呼ぶべきもの。青竜が感じ取ったのは自我の片鱗だったかもしれない。 「だがアヤカシも護大派と根本は同じだ。強くなるために瘴気を取り込む。瘴気を増やすことは護大に沿っているからな」 アヤカシと相いれることはないのだ。 「なあ、瘴気で穢れた地は捨てざるをえないのか‥‥?」 故郷を思う神影にとって、今も過去も重要な疑問。 「時間はかかるが、いつかもとに戻るはずだ」 現代のスキルにもあるように、浄化は可能。瘴気と同じだけの精霊力があればいい。 「今のバランスを確保する方法はないの?」 美沙樹が望むのは精霊力と瘴気の調和方法。今の天儀の崩壊を止められるだけの、精霊力の確保だ。 「まず瘴気も精霊力も、元は同じだ。いずれ合わさり元に戻る」 これは浄化の原理にも通じている。 護大が元を分けて瘴気だけを集めたから、もう一方の精霊力も増えた。瘴気が増えたからアヤカシも増え、精霊力が増えたから志体を持つ者とその力が増えた。 「アヤカシを退治していき瘴気が減れば、精霊力も減る。お前たちの力も、いつか弱くなるだろうな」 「崩壊を留める術は、私達も探していて‥‥結果は、ご存じの通りです」 |