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■オープニング本文 ●まず意欲ありき ギルドには、毎日必ず何かしらの仕事が準備されている。なかでもアヤカシ退治の仕事というものは途切れる事がない。開拓者になったばかりの者でも倒せるような小鬼から、戦い慣れた者向けの特異性のあるアヤカシ等、その敵も多種多様だ。 「今日追加されたのは‥‥と」 受付係の晶秀 恵(iz0117)は、今日もそうした依頼書のいくつかを確認しながら受付に座っていた。 「すみません、依頼の事で相談させて欲しいのですが」 依頼書の端に影がかかり、すぐ後に声がかけられる。発音も響きもはっきりした声。 「相談‥‥依頼の参加だけではないということですか」 顔をあげて声の主を見れば、楽器を持った吟遊詩人が一人。何度かギルドで見かけたこがあり、開拓者であることは間違いない。 「はい。この依頼に参加を考えているのですが‥‥」 そう言って示されたのは、ジャバト・アクラブというアヤカシの退治依頼。開拓者のクラスについては指定もないため、ただ参加するだけならこれと言って問題はない話であった。 「この仕事に、少し内容の追加をしていただくことはできますか?」 「内容にもよりますし、場合によっては報酬として貴方からもお代を頂戴することになるかと思いますけれど」 前置きをした上で、晶秀は話を促した。 「ひとまず、詳しいお話をしていただけますか?」 ●創作の種 「追加依頼あり?」 依頼内容の最後に書き添えられた一言に目を留めた開拓者が、なんのことなのかと受付へ尋ねる視線を向けた。 「その依頼は、少し変わった事情の同行者が居るのです」 吟遊詩人なので、開拓者なのですけれどもと答える晶秀。 「新しい歌をつくる糧にしたいので、共に参加される方はその旨を了承して頂きたい‥‥と仰ってました」 「歌? 退治依頼で歌って‥‥まあそういう仕事なのはわかるが」 楽器を弾き歌を歌うのが吟遊詩人だ。だが歌詞は伝承の類が一般的である。 「その方、戦闘時の仲間の様子を歌にするのがお好きなのだそうです。今回のお仕事の同行者には、歌詞の参考にさせて欲しいというお願いが追加されているのです」 良いものが出来れば、このお仕事が終わった後も歌い広めるつもりのようで、自身の武勇伝が伝承と同じように、後世に残る可能性も秘めているという話。 「歌にさせていただくのだから、と報酬も少し追加されています」 だから同じような強さのアヤカシ退治より、報酬が多めになっている。 「ご自分の字名の事などお話しておけば、より自分に合った歌詞にしてもらえるかもしれませんよ?」 ●吟遊詩人 「ところで」 「はい?」 声をかけた晶秀に、笑顔で向きなおる吟遊詩人。 「興味本位なので答えていただかなくてもいいんですが、結局のところ、どちらなんですか?」 「‥‥その時までの秘密、ということで」 晶秀が手にしている吟遊詩人の参加受付書類、性別記入の欄には『不詳』と書き込まれていた。 |
■参加者一覧
リンスガルト・ギーベリ(ib5184)
10歳・女・泰
リィムナ・ピサレット(ib5201)
10歳・女・魔
ファムニス・ピサレット(ib5896)
10歳・女・巫
フランヴェル・ギーベリ(ib5897)
20歳・女・サ
雁久良 霧依(ib9706)
23歳・女・魔 |
■リプレイ本文 ※ 本文中の歌詞部分については、朗読の際に表記と異なる読み方を行う場合がございます。 ご了承ください。 ●序曲「ねこだらけ」 「敵は下級かぁ。あたしが本気出したら一瞬で終わりそうだね」 「つまるところ、可愛げのない猫じゃの」 ジャバト・アクラブについての情報を確認し披露したリィムナ・ピサレット(ib5201)に、リンスガルト・ギーベリ(ib5184)の答えはどこかそっけない。せっかく恋人であり親友でもあるリィムナと同じ依頼を請け、終始楽しめるだろうと思っていたはずのリンスガルトだが、別の所に不満を持っていたからだ。 「どうせなら、リンスガルトやリィムナ、ファムニスの様な可愛らしい子猫ちゃん達と戦いたかったな」 リンスガルトの視線の先には額に手を当て溜息をつくフランヴェル・ギーベリ(ib5897)の姿。姓からわかるが血縁である。 「勿論、ベッドの中でね♪」 視線に気づいたフランヴェルがリンスガルトに笑顔を向けてくる。光る歯がうざったいこの叔母をどうにかしたいリンスガルトは、容赦なくフランヴェルに足蹴りを喰らわせた。 「ええい、近寄るでないわっ」 「じょ冗談だともっ」 姪に稀代の変態と思われていようが、足蹴にされようがめげないのがフランヴェルの美点とも言える。つまり真性だ。 その変態の愛を受け入れている貴重な存在、ファムニス・ピサレット(ib5896)はフランヴェルではなく雁久良 霧依(ib9706)に見とれていた。主にその立派な果実に釘付けである。 こちらはリィムナの双子の妹で、霧依はリィムナと寮で同室の間柄である。揃った5人は何かしら互いに縁があり、同じ小隊に所属している仲であった。 「霧依さん、頑張ったらご褒美に抱き付いていいですか?」 「ええ、終わったらぎゅってしてあげる♪」 「やったー! 私頑張ります!」 「‥‥胸が大きい方がいいんだろうか」 恋愛と胸は別物、フランヴェルという恋人がありながら霧依と仲良く話すファムニスにフランヴェルから寂しげな声があがる。だが、フォローは誰からもはいらない。 「そーだ、あたし称号はいっぱいあり過ぎて決めらんないから皆に投票してもらうね♪ どれが一番かな、楽しみっ♪」 そう言って一行の先頭に立ったリィムナはこの時気付かなかった。吟遊詩人以外の全員が同じことを考えていたことに。 ●練習曲「おてにゃみ拝見」 「来たなキモ猫共」 にゃーにゃーに゛ゃー にゃぎゃーぁ はじめに見えたのは3匹。悪態に気付いたのか、フランヴェルよりは御しやすいと考えたのか。開拓者達よりも早く動いた一匹が鎌の尻尾でリンスガルトに迫る。ささやかな傷であっても毒は侵入していく。 「リンスガルトの真珠のような肌に傷がぁぁぁ!?」 フランヴェルの叫び声を背に、リンスガルトの目じりが鋭くつり上がった。 「この妾に傷を付けたこと、後悔しても足りぬほど痛めつけてやるのじゃ」 気高き翼の 駆けた後 毒の蠍尾 消えてゆく 紅のスカート 翻し 右に左に 翻弄するうちに 残る獣は ただの猫 鳴くしか出来ぬ ただの猫 「妾の斬撃を追えぬほどの駄猫じゃの」 攻撃手段である尾を一本ずつ丁寧に切り落とした後、頭から斬りふせた。 「リンスガルトに傷を付けるようなお前達をこれ以上子猫ちゃん達に近付けさせるわけにはいかない! ボクが相手だ! 猫もどき!」 引き付けた一匹とは別の敵に斬りかかる。 「我が太刀筋、見切れるかっ!」 同好の士に 届くよう 叫ぶ魂 剣技に込めて 惑わしの刃 閃かせ 最前の担い手は 連撃を見舞う 「奇跡とはいえ先手を取られるなんて。もっと可愛い猫ちゃんだったらよかったのにねぇ♪」 リンスガルトの秋水に光を纏わせながら霧依が笑う。 「これ以上悪戯できないように、ご褒美をあげるわ♪」 霧依の言葉に同意するように、砂地から蔦が生えてくる。精霊力によって作られた魔法の蔦は、左右対称の模様を描くように敵の体を覆い縛りつけていく。 「ほら、芸術的な仕上がりでしょう?」 誰にともなく尋ねれば、前衛の二人がほうと感嘆の息を零した。 神楽の女神の手による 魔法の枷は 美麗な模様で 彩られ 捕らわれの猫は 身動き忘れ 心も体も 落とされる 「あたしが本気出したら一瞬で終わりそうだし、しばらくは牽制役でもしてようかな?」 後衛のファムニスと霧依を自分の背に、そして敵との射線上に身を躍らせるリィムナ。フランヴェルに引き寄せられている一匹へ、肉弾戦の練習とばかりに拳や蹴りを繰り出していく。 軽く振る舞う その拳 身軽な体重 込めた脚 見た目と字名に 惑わされれば 重い一撃 知らぬうち おねしょ娘の 策のうち 「ってちょっと待って! お、おねしょ娘?!」 耳まで真っ赤になったリィムナが詩人を振り返る。演奏が途中の詩人は視線だけで答えた。 見回せば、4人が皆楽しそうな笑顔でリィムナの様子を窺っている。おかげで脳裏には4人の言いそうな台詞が浮かんできた。 『愛しいリィムナの称号はおねしょ娘?! しかあるまい、くくくっ』 『リィムナの称号? おねしょ娘?! で決まりだ♪』 『姉さんの称号はおねしょ娘?! がいいですね』 『リィムナちゃんの称号はおねしょ娘?! 一択よ♪』 全会一致の結果に、詩人は忠実に従っただけだ。 「皆、なんて称号に投票してるのっ! 詩人さん、『アヤカシの天敵』と『魔王幼女』に変更してっ!」 必死の叫びに詩人も頷く。仲間達はまだ笑顔のままだ。 「ううっ‥‥今まで歌った分は変えらんないよね‥‥恥ずかしいよぅ‥‥」 4人全員が期待していた照れ顔のまま、リィムナは改めて敵へと向き直った。 「リンス義姉さん、今解毒します!」 藍の光に包まれた後、その光と共にリンスガルトの身体をじわじわと覆っていただるさが消えていった。動きに制限を受けるほどではなくても、体の中の違和感は切り離せるものではない。毒の消える感覚にリンスガルトの口角が上がる。 「感謝じゃ」 敵を倒して 切り開いても 顧みないで 歩を進めても 力尽きては 意味がない 背から襲撃 備えあれ 癒しの光に 敵への警戒 希望の光が あってこそ 「もっと居るかと思っていましたが‥‥砂地に潜っている可能性もありますよね」 どんな小さな異変も見逃すまいと、ファムニスは周辺への警戒を強めた。 ぎにゃぁぁぁぁぁあああ! 霧依の蔦に飾られた一匹が叫ぶ。 「もしかして、仲間を呼んでいるのでしょうか」 飛びかかるわけでもない、とにかく大きく遠くまで響かせようとする鳴き方だ。 「‥‥ファムニス、正解みたいだよ」 フランヴェルが指し示す先に見えるのは、まず3匹。 それよりも遠くに、更に3匹。 「ふふっ、見せ場はこれからだもん、ちょーどいいよっ♪」 「リィムナの可愛い姿なら何度でも見たいぞ」 「私もそれには賛成よ♪」 ●円舞曲「龍と貴族の閃き」 動きを鈍くさせられながらも攻撃を諦めなかった一匹は霧依に傷を与えることが出来た。だが尻尾そのものは盾で防がれ得意の特殊な毒の効果は与えられない。傷もほんの小さな痣程度だ。 「あら、まだ諦めて無かったの? イキがいいのは褒めてあげるわ♪」 しかし増援があろうと、彼らの全滅は避けられないだろう。 「終わりまでの時間を愉しませてもらうのじゃ♪」 リンスガルトが秋水を構えなおす。 「それくらいとはいえ妾の役に立てること、光栄に思うがよいぞ。龍刃一閃!」 黄金の光を振りかざし 血朱の瞳が 見据える先に 笑みを湛えて 終焉を告げる 美少女吸血鬼 覇道を歩め 黄金の光を振り乱し 内で研ぎ澄ました 蜜蜂の棘 毒尾に勝る 毒を注いで 鬼殺しの龍 覇道を昇れ 「龍尾一穿! 縛られたうえ妾の尾で逝けるとは、羨まれる最期じゃの」 蜜蜂の針で的確に顔のど真ん中を穿たれたのは、霧依が縛りつけていた一匹だった。 「流石リンスガルト! ボクの最愛の姪! ‥‥ボクも、負けていられないね♪」 大事な仲間達に向かい近づいてくる猫達、そのうちの一匹を見据える。 「さあ、まずは君からだ!」 風を越えるよう 駆けあがる先 すれ違う瞬間 超変態仮面貴族が笑う 流星の後は 何も残らない 空に光る 星の輝きが 雷と共に降る 一刀の元に 悪を両断する剣 流星の跡は 何も残らない 「見ていて欲しいな、ボクの美しい戦い、このクライマックスを‥‥流星斬・雷霆重力落とし!」 舞いあがる過程で一匹を蹴りあげ撃破するだけでなく、地面へと戻る動きも無駄なく使う鮮やかさは技の通り流星のごとし。 あまりの早業に、すぐ目の前に迫っていた一匹が狙いを外してしまうほど。 ●協奏曲「お−ばー・ざ・にゃんだふぉー」 「そろそろでしょうか‥‥霧依さんっ!」 「んふふ、わかったわ。みんな、そろそろ下がってもらえるかしら?」 猫達が到着する前に出された霧依の合図に、前に出ていたフランヴェルも含め敵から距離を取りはじめる。 「それじゃあ準備お願いね♪」 「詩人さん、舞うための一曲をお願いできますか」 ファムニスの声に肯定するように、曲調がそれまでの勇壮なものから淑やかなものへと変わる。 「では、ひとさし舞いますね」 ゆったりとした服が領巾のようにファムニスの所作を彩る。手や足が動くたび、服が一拍遅れついていくのだ。 ファムニスは舞う間、目を閉じていた。 フランヴェルやリンスガルトが前衛としてたっているし、姉だって自分や霧依を護るために前に出ていた。今は彼女達が周囲を警戒しているのだから安心して、この舞に集中できる。 精霊に 想いに 願い 願い 奉る 大切な人に 大事な仲間に あの人の力になりたいと 精霊に 力に 舞い 踊り 奉り 私の願いを力へと 想いを込めた力へと この願い届きますように そして詩人の奏でる調は身を添わせやすかった。仲間の歌を唄うだけあって、仲間の観察は常に行っているのだろう。同行する者の好む曲調、苦手とする調‥‥判断する能力が高いに違いない。 (大好きな二人のお手伝いになるんですから。勿論自信だってあるけれど、それ以上の舞で‥‥いけますっ!) 最後の所作が終わり、余韻を残すようにゆっくりと目を開けた。 「霧依さん、お姉ちゃん。一気にやっちゃってくださぁい!」 「了解よ♪ それじゃみんな‥‥引火しない様気を付けてね♪」 霧依が言い終わると同時に、周囲の地表からは炎が巻きあがっていく。 それまでは、霧依がひとりになっていく様子に髭を震わせていた猫達から、悲痛な悲鳴が上がっていった。 笑みを浮かべ 待ち受ける セクシー・Sの 巡らせた罠 かかる蟲は 気付かぬままに 微笑だけを覚え 消えていく 炎の中響く 叫び声 仕掛け人の舞台を 彩る調 かかった猫は 気付かぬままに 燃えて全てが 夢のあと 「ふふ、だいぶ巻き込めたわね?」 術の合間も、楽しげに笑っていた霧依である。悲痛な猫の鳴き声も、悦ぶためのスパイスだったようだ。 「リィムナちゃん、あとはお願いね♪」 燃やされずに残っているのは、後1匹である。 「霧依さんってば容赦ないなあ。もっと残してくれたっていいのにっ」 頬を膨らませるリィムナ。真っ赤になっていた顔も妹の舞を見たおかげか、今は元通り落ち着いている。 「でもせっかくの出番だから、大盤振る舞いしちゃおうかな?」 言いながら呪本を捲る手は準備も万端だ。 「もうおねしょ娘って唄わせないくらいに、大掛かりなのをねっ♪ さあ、行っておいで!」 魔王幼女の手より 呼ばれる者達 ひとりふたりさんにんよにん 瞬きの間か 時の狭間か 獲物を求め 手を伸ばす 呼ばれた者の 呪いが軋み つづくごにんろくにんしちにん 鮮華乱れて 知らず身は臥せて 苦しみの闇に 誘う手 「これ一撃でも苦しいよね、でもせっかく歌になるんだったらかっこよく歌にして欲しいでしょ♪」 時を止めてまで7回もの数を放つ心意気で、言葉通り、魅せる戦い方だった。 「ほらあたしってば最強美少女開拓者だから♪」 笑顔で振り返るリィムナの後ろには、アヤカシの影はもうどこにも見当たらないのだった。 ●終曲「まな板の上のねこまんま」 「リンス義姉さんに霧依さん。二人とも、これでもう大丈夫ですよ」 かすり傷とはいえ乙女の柔肌。ファムニスの体が淡く輝き手早く癒していく。 「感謝じゃ」 「ありがとファムちゃん♪」 「では改めて‥‥やりました! ご褒美くださああい!」 叫ぶと同時に霧依の胸に飛び込んでいくファムニス。霧依の全身に頬ずりしにかかる勢いだが、霧依は気にせず笑顔のまま。 「ん〜いい子ね♪」 むしろもっととばかりにファムニスを抱きしめ返し頭を撫でる霧依。顔が埋まっている。 「幸せ‥‥♪」 おっぱい聖人には至福の時だったようである。 周辺警戒を終えたリィムナが戻り、全快したリンスガルトに抱きついた。 「ねね、みんなで美味しいもの食べに行かない? 詩人さんも一緒に♪」 「私もよいのですか?」 「これも何かの縁だろう、いいじゃないか♪」 詩人の肩に手を置いてフランヴェルが顔を寄せた。中性的な外見の二人がそうするだけで、倒錯の世界の扉が開きそうだ。 「皆と共に食事に行くのじゃ♪ 汝も遠慮せずともよい、食事は多いに越したことはないぞ」 「ならばお邪魔しましょうか」 「やったねリンスちゃん♪ ‥‥フランさんに邪魔されずに済みそうだね」 小声でリンスガルトに耳打ちするリィムナは小さく笑っている。 「でもリィムナちゃん、冷たいものの飲み過ぎは駄目よ?」 ファムニスを解放した霧依が近づいて、お尻をぽんと叩く。 「夕べも隠れて甘いのをごくごく飲んで、おねしょしちゃったんだから♪」 「〜〜雁久良さんっ! ばらすなんてひどいよっ!?」 「気にする事はないリィムナ。今日は我が屋敷に外泊じゃから、眠る心配なぞないからのう、くふふっ♪」 フランヴェルの方もファムニスにそっと耳打ちをしていた。 「食事の後、いつもの所で‥‥ね?」 両腕に挟まれたファムニスの顔は赤い。 「えっ‥‥はい、喜んでっ」 小さいながらもはっきりとした返事に、フランヴェルも微笑む。 「明日の朝、君とリィムナのどちらが大きな欠伸をするんだろうね?」 よく似た叔母と姪、よく似た双子姉妹と言える。 「どこもご馳走様ねえ。食事より後の事ばかり頭にあるみたい」 「そのようですね」 「ねえ?」 「‥‥私で手を打たれますか?」 意味ありげに見上げる霧依に、詩人も薄く微笑んだ。 「妥協なんかじゃないわ、その声が気に入ったのよ♪ ファムちゃんも気持ちよさそうにしてたじゃない?」 「お褒めににあずかり光栄ですが‥‥どちらなのか、聞かないのですか?」 「あら、私は気にしないわよ♪」 「‥‥では、お受けいたしましょう」 彼女達の歌が、その後も歌い継がれたかどうかは、さておき。 霧依が聞いたところによれば、詩人は『狂想組曲』として編纂したようである。 |