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■オープニング本文 ●一歩進んで (桜もそろそろ散りどきかしら) まだこれからという地域もあるのは確かだけれど。晶秀 恵(iz0117)の見かける桜は盛りを過ぎてきているようだ。それだけ、春という季節も時を進めているという事実が窺えた。 「‥‥ということは」 いつぞやの仕事も、次の段階に入る頃ではないだろうか。一つ頷くと、晶秀は書付を取り出し読み直すことにするのだった。 「会場の建設の方はいかがですか?」 受付へとやってきた三豊 矩亨(iz0068)にそう尋ねれば、機嫌よく頷く依頼人。 「ええ、大まかにですが全体の大きさが分かるようにはなってきています」 建築現場を見ているだけでもわくわくします、と楽しそうな声にそれなら良かったと頷いて、晶秀は改めて仕事の話を切り出した。 「以前伺った通りに、次は衣装についてのお仕事ということで、募集をして構いませんか?」 「ええ、勿論」 衣装という言葉だけで嬉しそうに顔を笑み崩す依頼人に、晶秀は頭を抱えたくなるのを堪えつつも話を続けた。 「具体的に‥‥と言いますか。新婦のドレスデザインのお話と、新郎の衣装の提案ですよね」 さらさらと依頼書に書き出しながら、確認をしていく。確認の言葉に返事が来る前に、確定事項として既に書き込まれているようにも見えるのは‥‥それだけ、晶秀がこの依頼人の傾向をつかんでいるのだという事にしておこう。お得意様であるのは間違いないのだから。 「デザインや縫製など、服飾に関わった事のある方に向けての限定的な募集になってしまう可能性がありますけど、何か対応をされているならそれもご連絡いただけると‥‥」 「実際にデザインをしていただけるのは確かにありがたいですし、そういった方に来ていただけるなら助かりますけれど。実際に着るのはそうでない方が多いという事もわかっています。ですから、本当に漠然とした願望を教えていただけるだけでもいいと思っているんです」 そういった抽象的なイメージを、実際にデザインに起こすのも楽しいですし。陶酔しているようで、三豊の視線は遠いどこかを見ているようだ。 (こんな服が着たい、という話をするだけでもいいということかしらね) 書き添える事項が増える。 「ああ、もちろん実際に試作もしていただけますよ」 古着が主商品とはいえ本業ですから、道具も揃っている。 「期間的に、完成までは難しいのではないですか?」 「ベースドレスは用意してあるのです。そこからアレンジする形なら、仮縫いで実際の完成品に近付けることはできると思います」 衣装の数も大事ですから、新しく雇い入れた従業員達で早速進めていたのですよと言う三豊。趣味の事になると無駄に手際がいいのは変わらない。 「そうした作業が苦手な開拓者さんには、うちの針子がついてお手伝いもいたします。進み具合にもよりますが、衣装を試着して、着心地を確かめて頂く事もできると思います」 動きやすさも確認が必要ですから、と言う依頼人に、首を傾げた。 (普通の結婚式って、そんなに大きな動きが必要だったかしら?) 考え方が開拓者寄りになってきている依頼人に、同情すべきか心配すべきか悩む晶秀だった。 ●門出の衣装を 「結婚式にはこんな服を着たい、というイメージが少しでもあれば、御協力をお願いします」 天義に限らず、秦国やジルベリア、アル=カマルのデザインの衣装も準備したいとのお話ですので、そちらの衣装のお話をして下さる方も居れば助かると思いますよ、と声をかける。 「絵心がなくても、手先が器用でなくとも、衣装の提案が出来る方であれば手伝いが付くそうです」 話を聞く気になってくれた開拓者達にそう言葉を続けるが、どことなく自虐になっていて、心の中で少し、泣きたいような気もしている晶秀だった。 ●晶秀の書き取り書(受付控え) 依頼人 古物屋店主の三豊氏 結婚式事業をはじめるための手伝いを募集 全てを一度に進められないため、何度かに分けるとの申し出あり ・事業の開拓展望 (終了) ・新婦衣装、新郎衣装の案 (今回。試作可能。試着可能) ・祝い料理の案 ・接客訓練 ・宣伝展開 ‥‥他、順次思いつき次第とのこと ※期間中、三豊氏手製の食事提供あり ●事業関連の資料(三豊氏より) 全体テーマ 衣装の多い式場 会場建設着手が最優先(進行中) 場所 神楽の都(郊外) 広さ 庭を含め十分に 外観 天義の屋敷を基本に据えつつ、装飾にジルベリア、アル=カマルのデザインを採用 内装 天義・泰国のイメージで一部屋、ジルベリア・アル=カマルのイメージで一部屋、飾りの交換などで印象変化に対応 庭園 二つに分けられるかは業者と要相談、簡易チャペル設置が最優先 設備 会場二部屋の間に、控室などを配置 基本プラン三種を規模ごとに試算し設定、臨機応変に対応できるようオプション案の書き出し パンフレットの試作や瓦版への打診 従業員の教育の必要性 演出担当者の雇用について検討 |
■参加者一覧
ルオウ(ia2445)
14歳・男・サ
日依朶 美織(ib8043)
13歳・男・シ
戸隠 菫(ib9794)
19歳・女・武
葛 香里(ic1461)
18歳・女・武 |
■リプレイ本文 ●春の近く 「好みなどありましたら教えてくださいね」 「え、俺は彼女だけに決まって‥‥あああああっ!」 周りの皆から視線が集まる。大声を出したルオウ(ia2445)だったが遅かった。 「いいですねえ」 三豊 矩亨(iz0068)が更に表情を緩ませる。食べ物の件で聞いたのですよ、なんて野暮な事は言わないのがお約束。 「一途で素敵なことですよね、私は先日、夫を疑ってつい問い詰めてしまいましたけど‥‥」 体に吸盤の痕を付けて帰ってきたもので、とぼやく日依朶 美織(ib8043)。口調は柔らかいので、誤解は解けているらしい。 「それはともかく、まだ式は挙げていないので結婚式には憧れてしまいます」 「私自身は帰俗しなければお祝いする側のみではございますが、楽しんでお手伝いできればと」 微笑み意欲を告げる葛 香里(ic1461)に戸隠 菫(ib9794)も頷いた。 「婚礼衣装は、結婚式の大切な要素だよね。夢や空想でも一番比重が大きいもの」 ふふ、と笑顔で頷けば、他の皆も同じ考えのようだった。 ●夢の試作 「家事の縫物は得意だけど、婚礼衣装は勝手が違うもの。手助けをしてもらえるなら嬉しいな」 菫の言葉に、緊張していたらしい針子達の肩もほぐれた様子。顔合わせも無事に済ませた開拓者達は、それぞれ思い描くデザインの話へと移っていく。 「べーすどれす、という事はジルベリアの衣装ですね?」 布張りのマネキンに着せられた見本を確認する香里。スカート丈を長くとってあるそのドレスは純白だ。 「やっぱり、一つは絶対純白だよね。ジルベリア風ならティアラとベールも欠かせない」 握りこぶしをぐっと握った菫の言葉が熱いのは、やはり乙女の夢だからだろうか。 菫の言葉の少し後、マネキンの上からふわりとかけられたのは、数種類のベール。針子達が参考にと持ってきたのだ。 ひとつめは薄くシンプルな織が全体を占めており、縁をぐるりと大輪の薔薇が囲っているもの。 ふたつめは大小の花を模した円形のレースを幾何学的につなぎ合わせ一枚にしたもの。 みっつめは少し毛色が違うようで、段々になっている。よく見れば、紐状のレースを幾重にもつなぎ合わせているのがわかる。 前のふたつはジルベリアにて編まれたベールを仕入れたもの。後のひとつはこの店の針子が縫い目が目立たぬように、継ぎ目が自然になるように縫い合わせ試作したものらしい。 「透かし編みのれぇすは本当に美しいですね‥‥」 ほうとため息。レースそのものは皆、透かしの模様でそれぞれに魅力があった。 「衣装そのものは れぇすを使って清楚で装飾を控えて‥‥」 用意されていた別のレースをドレスのあちこちに当ててみて、香里は想像を膨らませていく。 「天儀の着物が帯や付け襟を変えられるように‥‥リボンですとか袖を付け替えて、お好みに合わせて個性や変化を表す事が出来たらよいのではと思います」 ベールも、着る者の好みに合わせて組み合わせられそうだ。 「あたしはマーメイドラインのドレスが良いな」 体のラインに沿った優雅なラインが良いんだよ。と菫は実際に絵に描いて説明している。用意されていたベースドレスはプリンセスラインのもので、実際にはスカートの下にパニエと呼ばれる別のスカート状の服を重ね、スカート全体を膨らませて見せる仕様のものだ。菫の話すドレスは膝より少し上のあたりで一度細く絞られており、膝から裾にかけては広がっている。 「それと、小粒の真珠や水晶で星と月、太陽の意匠をね。袖はフレンチにして、白い長手袋だよねー。そして純白のハイヒール」 言葉と同時に手も動き、絵が形になっていく。針子の一人は既に、スカートのギャザーを寄せてまち針で留める作業を始めていた。 「‥‥え、動きやすさ? 婚礼衣装だよ、こだわる所じゃないもの」 天義の和装の婚礼衣装だって、重かったりして動きにくいものはある。美しさを追求する乙女にとってみれば、動き難さなど気にするものではないらしい。 「お色直しのドレスは、鮮やかな赤をベースにね」 体型に自信がないと着こなせないけど、泰の鮮やかな色に緻密な刺繍が華やかなドレスって良いよねー。実際のチャイナドレスを想像しているのか、少しだけ手を止めて目を閉じた。 (刺繍ブーツと綺麗な扇子を組み合わせて、うん。横のスリットも大きいから動きやすい‥‥旦那様を悩殺するよね、きっと) 美織は事前にスケッチを用意してきたらしく、作業台の上に絵を広げている。 「他の儀の衣装も準備する‥‥との事ですが、希儀の衣装は如何でしょう?」 着ている様子のスケッチを見るだけではそうとわからないが、実際は長方形の一枚の布で体を包んで着る仕様だ。着方をわかりやすくするためにと用意した別のスケッチを示して話を続ける。 「肩を留めて、腰に帯を巻くんです」 実際に見てみたくなったようで、針子の一人が反物をひと巻き持ってきて美織に頼む。布幅は足りないが、長さとしては申し分ないそれを受け取り、美織はトルソーに着せる形で実演をして見せた。 「実際にはもっと長く、膝や踝のあたりまで丈があるものなのですが‥‥」 スケッチと合わせて想像で補ってくださいと言いつつも、肩から腰にかけての部分を再現する。まずは両肩で一カ所ずつ留めるキトン式。 「他にも、肩から手首にかけて沢山の留め具で留める方法もあります」 イオニア式での実演ではとりあえずでまち針を使ったが、そこはスケッチが補完してくれる。 「ですがこれだけだと、ちょっと露出度が高くなるかも知れません」 体の片側が見えてしまったり、腕がしっかり隠されない等、女性にとってみれば気にするところの多い様式である。 「なので、上にヒマティオン‥‥希儀の外套を纏うのがいいと思います」 様々な色のものを用意し、キトンとヒマティオンで色を分ければ色々な組み合わせに対応できるだろう。 「殿方の衣装としてもキトンはありますが‥‥その、目のやり場に困りますので‥‥」 左肩でのみ留める方法は、右胸が露出してしまう。こちらもやはりヒマティオンを合わせた方がよさそうだ。 男性向けは太股丈だけでなく女性と同じ踝丈のものにした方がよい事や、花嫁の花冠、花婿の月桂冠の話も伝える。 「他にも、希儀風のアクセサリを用意した方がいいですね」 金属製の繊細な細工物ならば、店でもいくつか扱っている。それが使えるかもしれない。 「あー。身長とか気にする男も多いんじゃねーかなー、と」 一般論として聞こえるように言葉を選んだルオウ。担当についた針子はルオウの内心には気づかなかった模様で、なるほどと頷き対策を尋ねた。 「背が低くても似合うタキシードとかだな」 ヒップラインがギリギリ隠れる長さのジャケットにするとか、丈を短くすれば足が長く見えるのではと話していく。 「人によっては喜ばれるんじゃねーかと思うんだ」 あくまでも自然に聞こえるように、声の調子を意識するルオウ。大丈夫、気づかれていない。 彼の身長は確かに少し控えめかもしれない、彼女との身長差はあった方が格好いいと思うお年頃なので、心のうちでは気にしているのだが‥‥いやいや、顔に出さないようにしなくては。 「紋付袴とかも、身長の高い低いに対応できるように用意しとけばいいんじゃないかな?」 差し出された衣装の手や足が余ったら、ハレの日の新郎だって気落ちしてしまうと思うから。 (って、今俺が落ち込んでどうする!?) ぶんと首を振って切り替える。話そうと思っていた事はきちんと伝えておかなければ。 「色もさ、やっぱタキシードなら白がいいんじゃないかな?」 目立つしかっこいいよな! その声に気付いた三豊はルオウを見て頭の中で見立てたようだ。 (‥‥確かに強い赤の髪色のルオウさんなら、白い服は映えそうですねえ) ●時を忘れて 「皆さんお疲れ様です、休憩にしませんか?」 食事の準備がありますからと一旦離離れていた三豊が皆に声をかけた。作業に没頭していた者もおり、時間も随分と経っている事に気づいていなかったらしい。三豊の声に顔をあげてはじめて、空腹だったなと思い出す。 「食べやすさを優先してみたのですが」 そう言いながら作業場に大皿をもってくる。その上には海苔の巻かれたたくさんのおにぎりが乗っていた。 「特に好き嫌いのご要望はありませんでしたので、具については目印など付けませんでした」 焼いた肉や魚、煮付けに佃煮、天麩羅やきんぴらにした野菜‥‥隣り合っているおにぎりであっても、別の具が入っている。大きさも小さめに揃えてあるので、やれ次の味はなんだろうとついつい手が伸びる。 別の皿には、香の物と一緒に棒状になった根菜の炊きあわせが盛られていた。行儀を気にせず手づかみで食べられるようにしているらしい。見た目ではよくわからないが、人参や牛蒡と共に蓮根も含まれていた。 「変わった形ですね」 おっかなびっくり手にとる美織を皮切りに手づかみで食べる面々。確かに、出汁はきいていた。 ●見えてくる形 「んー、じ、じゃあ、試着でもしてみようかな」 試作の作業も目処がついてきた頃合いで、ルオウは衣装を見繕う。 「依頼の為な、依頼の‥‥」 心の中だけで言っているだけにするはずだったが、口から声が漏れているのは御愛嬌。自分でも提案していた白のタキシードを試してみることにする。勿論丈についても調整済なのだが、それは他の参加者に男性役が居なかっただけであって、ルオウの身長が丁度よかったからというわけではない‥‥はずだ。 「あの、よければこちらも試していただけませんか」 美織が大きな布を二枚持って寄ってくる。無地の反物を利用した希儀の衣装。 白に近い薄茶のキトンに、黒のヒマティオン。上着のヒマティオンは布が薄手になっているのだが、夏のように暑い季節なら風通しも良く過ごしやすそうである。 「日依朶さんにはこちらなんていかがですか」 試していただけますかと三豊が差し出したのは女性向けのキトンのようだが、なにやら少し様子が違う。薄桃色のキトンを広げてみれば、色の少し濃い桃色地に白抜きで幾何学模様が入った柄布が、斜めに線を描くように縫い合わされている。対してヒマティオンの方は白地だが、縁に沿う様に橙や紫、桃の色で小花が刺繍されていた。 「希儀風の衣装、という事で少し置いてみようかと思うのです」 着ると、柄布の部分はひだで波打つので目線も変わった。平面で見ることを前提とする刺繍等では模様が崩れてしまうだけだが、規則的な柄布ならばこうして楽しめる。 「作業をされていると思ったら、これを作っていらっしゃったのですね」 「服を身立てるのも趣味の一つなのですよ」 可愛らしい奥方で、旦那様が羨ましいですね。お似合いですよと微笑む三豊は、美織の本当の性別を知らない。 「留め具なども、装飾を凝ったものをと思ったのですが、意見が頂きたくて‥‥」 「こういった柄を入れたものになら、帯締めや帯留もつかえるのではないでしょうか?」 じきに希儀と天儀の混合衣装も生まれそうだ。 マーメイドラインの試作が出来たところで、菫も試着をすることに。ベースのスカートを回転させながら段階的にギャザーを寄せたことで、腰から膝上までの絞りの部分はエスカルゴに見えるようになっている。膝から下は元の通り広がっており、ギャザーのある膝部分はより引き締まって見せる効果があるようで、スタイルを際立たせそうだ。 なお今回は試作なのでベースドレスを流用したが、ギャザーのない物も作れるよう、型紙の準備も進められている。 (ここでくるっと回って‥‥と) リズムを取るように、直線の上を進むように数歩歩いて、止まった場所でくるりとターン。膝下部分のスカートもふわりと浮いた。 「ふふ、どうかしら?」 ぱちぱちぱち‥‥香里の拍手に菫も笑顔になる。 「歩きにくいとは言っても、堂々としていないと衣装に負けちゃうね。でも、あたしは負けないよ」 言いながらふと思い付く。 「そうだ、歩き方も含めた立居振舞の指導もした方が絶対良いよ。それだけで見栄えが凄く変わるもの」 「葛さんは、試着なさいませんか?」 三豊に話をふられてはいたが、丁重にお断りをしていた。 「試着は‥‥私はご遠慮申し上げます。精霊と共にある身ですし、その‥‥本番で無いとしても、数は控えた方が良いと思うのです」 そう言うお考えならば、無理強いはいけませんねと頷く依頼人に感謝をしつつ、胸の内でそっと呟く。 (もし、着るとして‥‥見て、喜んでくださる人が、傍にいるときに‥‥) 思い浮かべるだけで嬉しくなれる、その想いは、ここでは内に秘めておく。 「あと、そう。花言葉が素敵な布製の花飾りが多いと華やかで良いかと」 八重の梔子なら『この上なく幸福』、牡丹なら『恥じらい』や『高貴』、百合は『無垢』、蘭は『変わらぬ愛』など‥‥色によって違う言葉をもつ花もあるが、それぞれ花嫁に似合いの言葉ばかり。 「胸元や帯等、つける場所が違うだけで印象が変わりますでしょう?」 新婦の希望にあわせて 種類や数を変えて縫い付けるなりピンで留めるなりすれば使い回しもきく。特に個人の希望に合わせられるというところがとてもいい。 「この機会に造花の作り方を会得するのも面白そうですね」 伝手を頼ってみます、と三豊は更なるやる気を見せた。 (新婦側の衣装は、男の俺じゃなくて、女性に任せておいたほうがいいんじゃないかなー) そうは思っていながらも、女性陣の試着や案には注意深く耳を傾けているルオウ。 「……どんなのが似合うかな?」 恋人の姿を思い浮かべ、ピンク系かな、シンプルなのがいいかな‥‥シンプルだけどスカート丈は長くして、花をあしらったようなのとか似合うかなあ。香里の言ってた花飾りも使えそうだなあ。 「何でも似合‥‥はっ!?」 仕事中だったと思いだし、立ち上がるや否や作業場の出入り口へと向かっていく。 「宣伝とか任せてくれよな! 賑やかしは得意だぜ!」 勢い良く飛び出していった。手には宣伝文句の書きつけをもっているのでそれを口上に街道に立つようだ。 「最終的には模擬結婚式を行う予定でしたが‥‥そういえば」 事前の宣伝をいつから行うか決めていなかった三豊。いい機会ですし、今日から始めましょうと従業員の手配を組み直すことにする。 表通りから、ルオウの張り上げた元気な声が聞こえていた。 ●貸衣装リスト(簡易版) 新婦用 白無垢 色内掛(洋装アレンジあり) プリンセスライン(和柄アレンジあり) マーメイドライン(エスカルゴあり) キルトとヒマティオン(和柄アレンジあり) チャイナドレス(刺繍入りあり) ※布製花飾、星系アクセサリー、金属製細工、花冠 新郎用 紋付袴 タキシード(色多数、和柄の差し色アレンジあり) 踝丈キトンとヒマティオン(和柄アレンジあり) ※月桂冠 |