【震嵐】一撃に込めろ
マスター名:石田牧場
シナリオ形態: ショート
危険 :相棒
難易度: 普通
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2014/03/20 22:19



■オープニング本文

●巫女の事情

「ストレス解消にいい方法って、何かなかったかしら」
 受付に誰も居ないのを見計らって、晶秀は傍に居るまくるに話をふった。
「えらく唐突」
 答えるまくるはそっけない。でも口うるさいよりは、これくらいで丁度いいのかもしれない。
「結構溜まるのよ? 貴方は気ままだからいいでしょうけど」
 ここ最近舞い込む依頼のうち、石鏡に関係する依頼は少なくない。巫女である晶秀にとってみれば出身地という事もあり、気にならずにはいられない。ここで開拓者に仕事を斡旋するだけでも、石鏡の現状に手助けできているのは確かだ。
 それは否定しない。
 否定しないけれども‥‥ものには限度というものがある。
 人を送り出して結果を聞くだけの仕事がもどかしいような、単調じみた繰り返しに飽きが来たような。とにかく落ち着いてなんていられないのだ。いつもは呼ばない相棒の猫又を、気晴らしの話し相手にしようと職場に連れてくる程度には。
「だったら自分で行けば? 開拓者なんだから」
 もどかしげな晶秀にしれっと告げるまくる。だが、晶秀に見えないところで尻尾の先だけが動いていた。緊張している証だ。
「‥‥そうか、その手もあったわね」
 一つ頷くと、晶秀は募集中のアヤカシ退治の依頼のなかから、丁度よさそうなものを見繕い始めた。

●建前も本音も織り込んで

「ふらも退治に行きましょう」
 受付に来た開拓者に、開口一言告げる晶秀。言われた開拓者の方は、その真剣な顔に『すわ愛の告白か!?』と期待していた分裏切られた気分で肩を落とした。
「なぜ気落ちするのですか? 一緒にふらも退治、行って頂けると非常に助かるのですけれど」
 れっきとしたお仕事ですよと告げる晶秀は、どこか張り切っている様子でもある。
「石鏡にかなりの数のふらもが現れたようですので、心行くまで退治できるお仕事です」
 さも『一緒に茶屋に出かけていって、お菓子食べ放題を堪能しましょう』とばかりの口調なのだが、内容はあくまでもアヤカシ退治である。
「数は本当に多いようですが、ふらもです。慣れた方でしたらそう危険なことはないと思います」
 闘いに慣れていない方でも、新しい戦い方を試したい方でも‥‥退治するだけより、試行錯誤が出来る分利点は多いと思います。
「もちろん、ふらもが弱いからと言って、気を抜いていいというわけではありませんが」
 ところで、『行きましょう』ってどういうこと? 開拓者の疑問に気がついて、晶秀は一度呼吸をはさんで答えた。
「ああ、私も同行するんです。多少の怪我でしたら私が治療できますので、少しはお役にたてると思います」
 それで改めて聞きますが、一緒に行ってくれませんか?

●ふらもふもふ

 もふもふもふ‥‥

 突撃もふー。
 邪魔だからあっち行けもふ。
 おまえこそもふ。
 体当たりもふー。
 やったなもふー。
 こっちも体当たりもふ。
 それならこっちももふー。
 
 ‥‥もふもふ、もふもふもふ。


■参加者一覧
鈴梅雛(ia0116
12歳・女・巫
三笠 三四郎(ia0163
20歳・男・サ
フェンリエッタ(ib0018
18歳・女・シ
ルンルン・パムポップン(ib0234
17歳・女・シ
リンスガルト・ギーベリ(ib5184
10歳・女・泰
緋那岐(ib5664
17歳・男・陰
刃香冶 竜胆(ib8245
20歳・女・サ
戸隠 菫(ib9794
19歳・女・武


■リプレイ本文

●可愛いは正‥‥義?

「よっしゃー、もふら退治にいくぞー!」
 現場まであと少しと聞いて、先頭を歩く緋那岐(ib5664)が気合のこもった声をあげた。
「やれ、もふらさまに似んしたアヤカシとはまた困ったもので」
 刃香冶 竜胆(ib8245)が聞こえるように言ってみたが、緋那岐には通じていないようだ。他の開拓者達も彼の間違いを幾度か指摘してみたが、直る気配もないのでそろそろ諦める頃合いだろう。
「アヤカシなのは分っていますが、やっぱりもふもふしたくなっちゃいそうです」
 慣れない槍の柄をぎゅっと握った鈴梅雛(ia0116)が応じる。きっと可愛いですよねと雛が言えば竜胆も頷く。
「確か、その可愛さで魅了してくるらしいよ」
「それだけ似てるなら、もふらさま並に怠け者ならいいのに」
 戸隠 菫(ib9794)とフェンリエッタ(ib0018)も話に混ざる。
「でもでも、モフモフな感触を味わえるんですよ!」
「‥‥素手で倒すのが楽しみじゃな」
 ルンルン・パムポップン(ib0234)が待ち遠しくてたまらない笑顔で主張すれば、リンスガルト・ギーベリ(ib5184)も何やら自分の手を見て想像中。どこか方向性が違う気配も混じっているけれど、これだけ女子が集まると、アヤカシ退治の仕事もどこか女子会じみた空気だ。
(まあ‥‥こうなる事は予想の範囲内ですね‥‥)
 三笠 三四郎(ia0163)は一歩ひいた目線で仲間達の後ろを歩いていた。九人のうち男性は二人だけなんて、控えめにしているのが一番。
「ストレスは美容と健康の大敵だもの、悪者退治で発散するなんて、恵さんの発想流石なのです!」
 ルンルンの言葉が、遠い世界から聞こえるような気さえする。
(ぱっと見、全員女の子に見えるのは私だけかしら)
 実は最年長の晶秀 恵(iz0117)は、こっそり不謹慎な事を考えていた。

●ひゃっぴきおーばーもふもふ

 もっふもふもふ。
 お前邪魔もふー。
 ここがいいもふ。
 あっちあいてるもふ。
 どかないもふ。

 大小様々な大量のふらもは、遠目に見ればもふらさまと大差ない。散らばっていたり集まっていたり、行動に整合性はないところもそっくり。だがよく見れば目つきがキリッとしていたり、声がハキハキしていたりと違和感があるような。とりあえずやる気がありそうなところは、もふらさまらしくない。
 その数はざっと百匹以上。盆地になっていたおかげか、早めに発見されて人が近づかないままだったおかげか。ふらも達は目的もなくもふもふしていた。

 はじめに気付いたのは竜胆。声をあげないまま、心のうちにだけ決意を刻む。
(刃香冶竜胆、アヤカシを掃滅致しんす)
 特別ストレスがあるわけではなく、腕の錆を落とすのが一番の目的だ。一撃一撃に真摯に取り組むのみ。
「いっそ壮観ですね」
 遠くを見るような視線で眺める三四郎の手は、既に弓を構えようかと動いている。
「あれが埋めつくす勢いで迫ってくるんだねえ」
 肥まみれとかではなくてよかったと、噂で聞いたふらもの話を引き合いに出しながら同意する菫。その言葉にぎょっとした晶秀は、ぎこちない笑顔でこぼした。
「言っちゃ悪いですけど、流石にそれは行きたくないですね‥‥」

「わぁ、もふもふが一杯なのです!」
 ふらも達を見つけたルンルンの声が響いて、緋那岐がカチンと凍りつく。その横を奔刃術ですり抜けたルンルンはふらも達の中へと飛び出した。
「ニンジャの力でみんな纏めてやっつけちゃいますよっ」
 目的地はふらもの群れの向こう側。その場所を見据えながらルンルンはふらも達の中を駆ける。群れの中心に近いあたりでは、すれ違いざまに技を決めていくのも忘れない。
「ジュゲームジュゲームパムポップン‥‥ルンルン忍法神風カッター!」
 バトンの様にクルクルと回されるカドゥケウス、そこから飛び出す刃が周囲のふらも達に牙を剥く。ふらも達が自分達への攻撃に気づき刃のもとへと視線を向ければ、ルンルンは次の場所で新たに技を決めている。
 痛いもふ、なんだもふ?
 敵もふ!
 獲物もふ!
 皆で倒すもふ。
 ルンルンを認識したふらも達が、攻撃すべしと集まろうとし始める‥‥狙い通り、群れの中心付近に。
「みーんな寄ってらっしゃいですよ!‥‥纏めてストレス発散だもの」
 ふらもはすぐには止まれない。十分に注意をひきつけた事を確認してから、ルンルンは群れの外へと駆けた。

「単独突撃? んなことすりゃ、包囲されてたちまち袋叩き、に‥‥後は任せた」
 回れ右で立ち去ろうとぎこちなく一歩を踏み出しかけていた緋那岐だったが、移動中に確認しあった作戦を思い出しすんでのところで堪える。
(おそるる事なかれ、俺。あれはアヤカシ、殲滅すればいいのだ)
 どんなにもふらさまに似ていようが、目の前のもふもふはアヤカシだ。
「そうさ、遠慮はいらないんだー!」
 迷いを振り切り符を閃かせれば、巨大な龍が緋那岐の頭上に姿を現した。主に似て鮮やかな青の鬣を翻すその式は大きな口をあけてふらも達へと向かっていく。
 グワォォオォォーー!
 実際に攻撃をするわけではない式だが、雄たけびに驚いたふらも達が奥へと寄っていく。ルンルンが中心へとひきつけた事と合わせれば、ふらも達の群れは随分とその展開範囲を狭めていた。

 集まっていくふらも達の中心へと早駆で飛び込むフェンリエッタは、己と己の技を重ね合わせていた。
(ふらもに特段の恨みはないけど‥‥)
 もうひとつの私の姿、そう思えるこの一撃に自身の気持ちを乗せてしまっても困るものは誰も居ない。長い時間をかけて積み重ねた想いを考えれば、簡単に晴らすことなどできやしないとわかってはいるけれど、晴らすフリくらいはしてみてもいいのかもしれない。
 やり場のない胸の痛みを伴う想いが、孤独を思わせるかなしい声を紡いだ。
「その恨み、存分に晴らせ」
 呪いの悲鳴が、ふらも達を覆った。怨念達はふらも達の大半を弱らせることに成功したのだ。

「不届き千万な偽もふら共め、悉く斬り裂いてくれるわ!」
 対包囲、対複数の場合の策を確認しながら、リンスガルトは包囲の端位置へと駆ける。思考も体も作戦通りに動いているが、言葉と思いは後にとってあるお楽しみへと飛んでいるようだ。
「ひいなはこちら側の担当ですね」
 回復ができる雛は晶秀の術の届かない側に駆けている。
(流石に今回は使う機会は無いですよね)
 これから先も使わずに済めばいいと思いながら、少しだけ天津甕星に思いを馳せた。
 竜胆、三四郎、菫、晶秀も各自の配置へと散っていく。

 全てのふらもが開拓者達の存在に気付く頃には、開拓者達は包囲網を完成させていた。しかも大半のふらもは既に手負いの身だ。
 彼らは皆乱戦にも対応できるよう準備を整えている。もふらに似ていても所詮は下級のアヤカシだ、多少の知恵はあっても逃走され取りこぼす心配は少ない。手負いのふらもから止めを刺していけば、確実に数は減るはずだ。
 互いの位置取りに留意しておけば、後は時間との勝負といったところだろう。

●思い思いの掃討戦

 ザシュァッ。
「万象一切我に斬れぬもの無し‥‥成敗!」
 見えない刃が霊剣「御雷」から放たれれば、視線の先にいたふらもが言葉もなく消えていく。次はその隣のふらもをと視線を向ければ、ふらもも竜胆へと向かって来ようとする構え。
 やっつけるもふー。
(可愛きものを斬るは心進みんせんが‥‥これも修練と思いんして頑張りんしょう)
 やる気のあるもふらさま、という観点から見れば立派に可愛い部類に入るふらもである。乙女心はうずくがアヤカシはアヤカシだ、気を抜けばこちらが傷物にされてしまう。技の恥ずかしさを誤魔化すようにもふもふの体に斬りつければ、また一匹、ふらもが空に消えていく。
「久々の仕事と覚悟を決めんしたが‥‥味気なきものになりんすか」
 手ごたえがないというわけではないが、ふらも達のあっけない散り方に物足りなさを感じてしまう竜胆であった。

「鬼さん、こちら♪」
 あっちも居るもふ。
 狙いやすいもふ。
 魅了対策も備えた菫は、群れの中から切り崩している仲間の助けになればと声をあげる。節をつけたような声はふらもの気を引いたようで、数匹のふらもが菫を標的へと切り替えた様子がうかがえた。
 使い込んで手に馴染むウィングド・スピアは思う通りに振ることができる。寄ってくるふらも達を押しとどめながら、菫は機を窺った。
「これ以上は行かせないよ、ふらも達!」
 大上段に構え精神を研ぎ澄ませるほどに、精霊力が愛器へと集まっていく。菫の精神とスピアが同じ清浄な高みに登りつめたところで、それを目の前のふらもへと振り下ろした。
「瘴気もろとも葬ってあげるよ」
 菫の言葉を最後まで聞くことなく、また一匹が空に消えた。

「出やがったな、もふら!」
 先ほどからずっと居るしふらもです、と戦闘中にまで指摘してくれる仲間は残念ながら居なかった。ぱっと見冗談にしか見えないのも原因かもしれないが、常に本気の緋那岐は気付かないまま氷龍の符を掲げて叫ぶ。
「俺は、打ち克つんだー!」
 ふらもの数は減っているが、脂汗を垂らしている時点で色々と発散されていない気配。

 フェンリエッタとルンルンは、機動力を生かして集まったふらも達を切り崩している。
「あなた達に恨みはないけど、乙女とニンジャの美容の為に成敗です!」
 数が多いため全てを避けきるのは非常に難しいのだが、身軽な二人は踊るような身のこなしでふらも達をいなしていく。
「大人しく瘴気へ還りなさい」
 繰り出す一撃は見た目に反して重く、二人の駆けた後は少しずつ地の色が見え始めていた。

 ふらもの数が半減したところで、三四郎は迎撃用の弓矢を収めた。
「‥‥そろそろですか」
 個々は大した強さではないふらもでも、数の暴力は存在する。だからこそ三四郎は安全圏と思える段階まで戦況が移りゆく時機を待っていた。
 弓の替わりに構えるは三叉戟「毘沙門天」。自身の背丈よりもなお長いそれを、一見細身の三四郎がぶれずに構える。
 ウオォォォォォオッ!
 気になるもふ。
 いきがいいもふ。
 腹の底から響かせる低音は地鳴りの如く、その雄叫びに引き付けられたふらもが間合いに入ったところを見計らって一閃。活きのよい獲物と思い三四郎に寄ってきたふらも達は一様に斬り倒され消えていく。

 開拓者達の包囲網は徐々に狭まっている。しかし勢いに任せて突進なり体当たりを仕掛けてくるふらもは、時折包囲の外に飛び出してしまう事もある。そんな突出したふらもならば互いに一対一で戦えると、精霊槍「グランテピエ」を構え対峙するのは雛。
(ひいなは、攻撃できる術は一つも覚えてないです)
 彼女は晶秀と同じく巫女の身だ。だが乱戦になる事も多い世情、少しでも自衛が出来るようにしたいと思ったのが同行の理由である。
「‥‥もふら様そっくりで、ちょっと戦い難いです」
 動きがどこかぎこちないように見えるのは、ふらもの魅了の影響か武器を振るう事に慣れていないためか。その迷いにふらもが目を付けた。
 やっつけるもふっ。
 目線もあまり変わらないふらもが雛に迫る。高さは近くとも幅はふらもが勝っている、雛の視界の大半がふらもで埋まった。
 もふっ。
 槍ごしにもわかる感触がもふらそのものにしか思えない。けれど積極的な様子はもふらではないと思いなおせば覚悟も切り替わるというもの。
「ひいなはどれくらい、戦えるのか‥‥練習相手になってください」
 槍を中断に構えると、ふらもへ強い視線を向けた。

 残りも数匹となったところで、武器も拳布も外したのはリンスガルト。無防備なようにも見えるその様子に、勝てると踏んだのか憐れな一匹のふらもが彼女へと突進する。
 隙ありもふ!
「目じゃ!」
 そのふらもはリンスガルトの浮かべた笑みを目にする事はなかった。ふらもの勢いを生かした指拳が両眼へと吸い込まれ、すぐに潰されたのだから。
「耳じゃ!」
 ひきぬいた両手を耳にかけ、力任せに引き千切る。彼女の声も聞きとる事はないだろう。
「次は鼻! そして顎!」
 言葉の通りにリンスガルトが鼻に爪をかけようとしたところで、ふらもの体が耐えきれず、消えた。
「なんじゃ、あっけないのう」
 もう少し楽しめるかと思ったのに、笑みを湛えたままの顔でつぶやく様子はさして残念そうにも見えない。思うままに痛めつけることが許される、格好の獲物なのだ。
「瞬く間とはいえ、素手で殺す感触は最高じゃな!」
 ふはははは! 続きは次の獲物で試せばよかろうと、舌で自らの手を舐め上げるリンスガルトは再び視線を走らせた。

 最後のふらもが空に消えるまで、そう時間はかからなかった。数の多さとふらもの図体のおかげで、濃密な時間ではあったのだが。

●締めは甘味で

 ふわりと漂う小豆の香り。白玉も浮かばせたお椀を手にして、三四郎が笑みを浮かべた。
「いいですね、ありがとうございます」
「全力で戦った後の甘い物って、本当に美味しんだよ」
 振る舞い主の菫は手早く仲間達に配り終えて、最後に自分のお汁粉もお椀によそう。
「さあ暖かいうちに召し上がれっ」
 甘味好きも混ざる仲間達は、待ってましたとばかりに口をつける。
「上品な甘さじゃの、悪くないぞ」
「おかわりもあるから、ゆっくり食べて平気だよ?」
 言葉より態度で味を絶賛するリンスガルトの眼を見て菫は笑顔になる。美味しそうにたべてくれる様子が一番の賛辞だ。
「どうしてふらもだったんですか?」
 いろんなアヤカシが出没してるって聞きましたーと晶秀に尋ねるのはルンルン。
「聞かないで、あなたは特に」
 顔見知りの気やすさで遮りつつ、秋桜の花言葉で気を逸らそうと企む晶秀に助けの手が入った。
「晶秀殿、近辺でもふらさまをもふれる場所を知りんせんか?」
「もふ、もふらっ?」
 ギギギ‥‥とお汁粉を啜る様子もぎこちなくなる男子一名。
「流石にちょっと可哀想なので、とりあえずこれを代わりに」
 晶秀が緋那岐に見えないように貸し出すのはもふら張子。あとでご案内しますねと耳打ちされて、竜胆は手のひらでそれをもてあそぶ事にする。
「怪我もほとんどなくてよかったです」
 雛がほっと息をつく。数の多さで避けきれず、仕方なくもふもふ攻撃を受けた者は居た。だが全てかすり傷程度、晶秀の治療で回復したため大事はない。
「んんーっ‥‥と。結構動かせたかな?」
 ストレッチで全身を確かめるフェンリエッタは、悲恋姫を放ったとは思えないさっぱりとした様子だ。
「やる気のあるもふらが退治される様子って、スカッとするわよね」
 改めて誘いに乗ってくれた開拓者達を見回し、応援するだけでもストレス解消になったと言う晶秀。
(皆も、何かしら得るものがあったならいいと思うわ)