雷冥、渦巻く
マスター名:犬彦
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: 普通
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2010/02/10 03:53



■オープニング本文

 その日は、どんよりとした曇天だった。
「おや、これはそろそろ一雨来るな。その辺で雨宿りが出来る場所でも探しておいた方が吉か」
 男は暗く成り往く空を見上げ、近くの森へと歩を進めた。
 木々が連なるこの場所であれば、幾らかの雨ならば凌ぐ事が出来るだろう。
 そう思った矢先、空から雷鳴が轟いた。そして、次々と雨粒が地面を叩く音が重なっていく。
「おっと、もう降って来たか!」
 すぐさま土砂降りになった雨に、男は荷物を傘代わりにして慌てて木の下へと駆け込んだ。
 だが、その所為で彼は気付く事が出来なかった。雨の音に紛れ、自身の元へ鳥の羽ばたきが近付いている事に。
 男がふっと息を吐いた時、一際大きな落雷が落ちる。
「――ッ!?」
 光に包まれ、巨大な影が映し出された事によって、男は言葉を失った。
 眼前に迫るは翼を広げ雷を纏う、蒼い鳥獣の姿。その周りに控えるように従うのは、黒烏達。
 雨音轟く中、冥府へ誘うように鋭く見つめる鳥獣の瞳は、男を捉えて離さない。
 ばさりと音を立てて地に降り立った鳥は、男に詰め寄り――瞬間、雷鳴が爆ぜるように響いた。

 処変わって、数日後の開拓者ギルド内。
「嫌な雨だね。長く降り続いて、止みそうにない」
 雲に覆われた暗い空を窓から見遣り、ギルド職員の青年は頭を振った。
 アヤカシ退治の仕事があると聞いて集まった開拓者達を見渡し、青年は再び口を開く。
「雷に打たれたような黒コゲの死体。そして、嘴で食い千切られた跡‥‥既に被害者は何人にも上ってるんだ」
 事件として報告された被害者は、みな往々にして同じ手口で殺されている。
 それも事件は決まってこのような雨の日――それも雷鳴が轟く日に起きているのだ。
「おそらく、相手は雷を使う鳥アヤカシの一味だ。目撃者によると、それは巨大な雷鳥と黒いカラスの姿をしていたらしい」
 雷鳥の体躯は鮮やかな蒼色で、二メートル程。
 現れる時は空を舞って何処からかやってくるが、いざ人を襲う時は雷鳥の方は地に降りて来る。
 そして、巨大雷鳥が従えるのはひとつ目の化けカラス達。その数は数羽。
 姿こそ変わらぬが、群がって一人へと集中攻撃を仕掛けてくる脅威は並みのカラスとは比べ物にならないだろう。
「奴らは決まって、こんな雨の日‥‥雨宿りをする人間を襲う。場所は此処からそう遠くない処だ」
 青年は開拓者達にアヤカシが現れる場所を教えた後、再び雨音が響く窓の外を見た。
 間も無くすれば雷も鳴り響きそうな雲行きだ。
 降り止まぬ雨は一層強さを増し、地面を容赦なく濡らしている。
「こんな天気だから、厳しい戦いになると思う。だけど‥‥君たちならやってくれると信じているよ」
 信頼を込めた瞳は揺ぎ無く、戦いに向かう開拓者達をしっかりと見つめていた。
 


■参加者一覧
新咲 香澄(ia6036
17歳・女・陰
莠莉(ia6843
12歳・男・弓
浅井 灰音(ia7439
20歳・女・志
天ヶ瀬 焔騎(ia8250
25歳・男・志
趙 彩虹(ia8292
21歳・女・泰
茜ヶ原 ほとり(ia9204
19歳・女・弓
柳ヶ瀬 雅(ia9470
19歳・女・巫
奈良柴 ミレイ(ia9601
17歳・女・サ


■リプレイ本文

●黒雨
 降り頻る雨、雨、雨。
 止む気配のない雨空を、趙 彩虹(ia8292)が仰ぎ見る。
「土砂降り、ですか‥‥」
 笠を被って外套を羽織り、降雨対策をしてきた彩虹だが、雨粒は激しく身体を濡らした。
 敵を待つ雨宿りとして森の木々の下に居るとはいえ、絶え間なく葉の間から滴り落ちてくる水は冷たく容赦がない。
「本当にひどい雨だね‥‥。みんな、ぬかるみに足を取られないように気をつけてね!」
 新咲 香澄(ia6036)は仲間に呼びかけ、すっかり水を吸って重くなってしまった上着を軽く絞る。
 然しすぐにまた濡れてしまうのだからと、香澄は我慢する事に決めた。
「綺麗な雪と違って、この時期の雨は暗いし冷たいしでうんざりで御座いますね」
 早く片付けて暖かい屋内に戻ると致しましょう、と肌寒さを堪えながら莠莉(ia6843)が思いを口にした。
 いつアヤカシが現れるのだろうか。開拓者達は戦いに備え、暗い空を見上げている。
 そんな中、右目を瞑って考え込むのは浅井 灰音(ia7439)だ。
「雷を司るアヤカシ、雷鳥か‥‥。なかなか面白い相手だけど、この雨が気になるね」
 ただでさえ厄介な相手の上、天気までが障害となる。それに頷く柳ヶ瀬 雅(ia9470)も、周囲を警戒していた。
「被害者が出ているとなれば捨て置けませんわ。皆さんの安全の為にも、ぱぱっと退治致してしまいたい所ですわね」
 仲間の補助を務める巫女として、これ以上被害を増やさないよう。負けられない、と雅は誓う。
 滴る雨垂れが槍の穂先を打つ音を聞き、傍の木に寄り掛かっていた奈良柴 ミレイ(ia9601)がぽつりと呟いた。
「あァあ、槍の手入れが大変だ」
 何気ない一言だが、その言葉の裏には被害者への思いが込められている。
 少女が胸に抱くのは、害者の為にもアヤカシを倒すという決意。
 次第に、不穏な空気を運ぶかのように雷鳴が響き始めた。それに混じって聞こえたのは、鳥の羽ばたき。
 ギィギィと喚く鳴き声と共に、大地に暗い影が落ちる。開拓者達は、はっとして空へ視線を廻らせた。
 そして再び激しく鳴り響く雷鳴。――それが、仄暗い空に蒼き巨大鳥が現れた瞬間だった。

●漆黒の羽
「――うわ」
 アヤカシ達の登場と同時に轟いた雷に、茜ヶ原 ほとり(ia9204)が思わず声を上げる。
 驚いてしまわぬようにと懸念してはいても、元より雷が苦手気味なほとりには我慢しきれぬ程の轟音だった。
「‥‥来たな。例え土砂降りの中で在ろうとも、燃え上る志士、天ヶ瀬だ」
 天ヶ瀬 焔騎(ia8250)が、開いていた鉄傘を雷鳥達に真っ直ぐに向けて宣言する。
 人を襲ったアヤカシは決して赦さない――。その燃えるような紅い瞳は、黒烏を従える雷鳥へと確りと向けられていて。
 地上に舞い降りた雷鳥は、じろりと鋭い瞳を向けて開拓者達を睨み付ける。
 その周りには、甲高い声を上げて騒ぐ四羽のカラス達。相手は既に、此方を獲物として捉えているようだ。
「皆様、アヤカシが来ます! 充分にご注意を‥‥!」
 仲間に呼び掛け、咄嗟に動いたのは彩虹だった。彼女は後衛を務める雅達の前に立ち、その護衛を担う。
 槍を構え、いつ攻撃が来ても受けられるようにと、警戒する姿勢を崩すまいと決めていた。
「雷鳥は私達が引きつけるから、黒鳥の方は任せたよ」
 その間に前に出た灰音と焔騎が雷鳥の突出を防き、続いて踏み込んだミレイも槍構えの姿勢を取る。
 雷鳥は目前に近付いてきた獲物へ、鳴き声を上げながら嘴を向け――弾ける雷と共に鋭利な一撃が焔騎を襲った。
「その程度の雷で、俺の焔は潰えやしねぇぜッ」
 ぐら、と焔騎の均衡が崩れそうになる。だが寸で堪えた彼は殺気を纏わせた言葉を向け、相手を挑発した。

 これで完全に雷鳥の意識は前衛の三名に注がれる事になり、黒烏を前にした香澄が陰陽符を手に取る。
「これ以上の被害者を出すわけにはいかないから、町に被害が出る前にここで仕留める!」
 意気込んだ香澄の言葉と同時に、霊魂の式が出現した。さながら弾丸の如く放たれた式符は黒烏へ向かった。
 続いて莠莉が矢を番え、符の衝撃から今だ立ち直れぬ烏アヤカシを狙う。
「群れる事しか能の無い雑兵に、前に出る方々の手を煩わせる訳には参りませんっ」
 放った矢の軌跡は雨の間を縫い、吸い込まれる様に命中。アヤカシは地に落ち――そして、完全に動きが止まった。
 然し相手方もやられてばかりではない。一羽の黒烏が空中に舞い上がったのを合図に、他の烏も後を追う。
 高く、ひたすら高く。
 攻撃の手が届かぬ程の高みへと登った三羽のアヤカシが、矢の様に重なる。
「皆様、御気を付け下さい」
 神楽舞を舞っていた雅は注意深く空を見据え、標的が誰に向かっているのかを見極めようと目を凝らす。
 応援を受けたほとりも狙いを定めて攻撃の機を窺っていた。
「光り物で身代りに‥‥とも行かないみたいだねぇ」
 手鏡を使って囮として使おうと思っていた彼女だが、日の射さぬ雨の中で鏡を反射させるすべは無い。
 代わりにほとりは事前に確りと防水準備していた弓を構え、一矢を逃さぬようにと極限まで意識を集中させていた。
 そして、急降下する黒烏達の狙いが彩虹に定められる。
「皆様を守ると茜ヶ原様と約束しましたし、しっかりと働きますよ‥‥!」
 迎え撃つ機は万全。槍を構えた彩虹が、三羽の攻撃を一度に受ける。
 瞬時に鋭い痛みが襲い、よろけそうになる身体。だが彩虹は踏み止まり、衝撃を堪えきる。
「大丈夫ですか? 今すぐに癒しますわ」
 即座に雅が恩寵の風を吹かせ、彩虹の傷を癒す。
 烏達が標的から離れた瞬間を狙ったほとりも、素早く番えた矢を狙い澄まし、アヤカシへと打ち放った。
 矢は一羽の身体を真正面から貫き、その体を地に落とす。どうやら大打撃を与えたようだ。
 苦しげに鳴き声を上げる黒烏は、地面でじたばたと雨水を巻き込んで暴れ、そのままぱたりと倒れ込んだ。
「こちらは地に墜ちれば無力で御座いますね」
 凛とした莠莉の声が響き、残りのアヤカシに向けて影撃を放つ。
 すぅっと曲がった軌道に惑わされ、避ける事も出来なかった黒烏は地面に墜落した。
「後は二羽だね。しかも一羽は後一撃で倒せそうな雰囲気だよ!」
 香澄が再び符を手にし、式を呼び出す。然しその隙に、一羽のアヤカシがほとりに向かって飛翔していた。
 放たれる霊魂砲。その隙間を飛び交い、鋭い爪で攻撃を仕掛ける黒烏。
 身構えるほとりだが、流石に避け切れずに防御に徹するしかない。
「‥‥‥‥っ」
 雨に混じって赤い血が流れる。然し、すかさず援護に回った雅の癒しの力が傷を見る間に癒していて。
 前に飛び出した彩虹が背拳を使って敵を薙ぎ――残りは、一羽。
 しかしそれでも尚、最後の黒烏達は再び飛び上がった。弱っている所為か、次の滞空位置は先程より高くはない。
「紫電と比べれば‥‥その程度、鈍足な的に御座いますっ!」
 精霊力の込められた莠莉の瞳が、雨の中の標的を映す。力を込めて弦を引いた彼の矢が、精確に黒烏を捉え――
 黒い羽が宙を舞う。雨に打たれた其れ等は、ぬかるむ地面に沈んでいくようにして消えていった。

●暗雷
 一方、雷鳥の足止めを担う灰音達は予想以上の苦戦を強いられていた。
「雅さんの回復は後ろにかかりきり‥‥耐えるしかない、か」
 素早く止血剤を使い、雷を纏った一撃を仕掛けてくる雷鳥に備えてバスターソードを構える灰音。
 ミレイも攻撃を受け止め流してはいるが、体力をかなり消耗していた。
 全体に広がる雷撃が来ない事がまだ救いだったが、黒烏を仕留め終わるまで耐えると決めた負担は流石に大きい。
 鉄傘を巧みに利用し、雨の妨害から逃れつつ戦う焔騎でさえも若干息が上がっている。
「だが、向こうもカタを付けたみたいだ。漸く、本格的に相手が出来るな」
 疲れを見せるまいと、飛手を構えた焔騎はちらりと後方を確認した後に告げた。
「黒鳥が片付いたよ!」
「お待たせ致しました。これで存分に大物狩りに集中できますっ」
 同時に、香澄と莠莉が彼らの傍へ駆け付けた。雅も射程内に近付き、大きな傷を負っていた灰音に回復を施す。
「遅れて申し訳ありません。ですが、もう傷の心配はなさらないで下さいまし」
 自分が来たからには、誰も倒れさせない。優しげな言葉の中には、雅の切実な思いが込められている。
 ありがとう、と礼を述べながらも灰音は雷鳥を押し留める為に、更に敵に立ち向かっていく。
 その時だった。機を計ったかのように、アヤカシの翼が怪しくはためいた。
 ぱちぱちと、雷鳥の羽をから小さな静電気の様な塊が次々と生まれて行くのが見えた。
 今までに無い動作、それは即ち――はっと気が付いた焔騎が声を上げる前に、静電気は黒い雷撃へと変わる。
「――――ッ!」
 迸る黒い雷がその場に居る全員を襲う。鋭い痛み、脳天を付くかのような衝撃にほとりは頭を押さえた。
 片膝を地面に付いた莠莉は息を整え、ミレイもきゅっと唇を噛み締めて耐える。
 全員が射程内に入るのを待っていたのだろうか。雷鳥は再び、同じ動作を行おうとしているように映った。
「させません。皆さん、例のヤツ‥‥いきます!」
 倒れそうになった所から立ち上がった彩虹が、仲間達に呼び掛けて合図を送る。
 やられる前に、畳み掛ける。呼び掛けに頷いた三人それぞれが武器を構え、対する雷鳥をしかと見据えていた。
 此処から連携攻撃を仕掛けるのだと分かり、雅が舞って応援の力を投げ掛ける。
「ホンちゃん、行くよ!」
 香澄が式を呼び出そうと符を掲げ、その機に併せた彩虹が身に纏う白虎の如く駆け抜けた。
「さあ、行こうか、彩虹さん、香澄さん、焔騎さん!」
 続いて合図に応えた灰音と、飛手を構えた焔騎が後を追う。
 炎魂縛武の炎を纏った焔騎の手甲は赤々と燃え、駆ける勢いで広がった外套がまるで火の鳥の如く広がる。
「踏み込みは武道の命! ‥‥我流、朱焔優雀」
 雷鳥に向けて振り下ろされた一撃の後に、すかさず灰音が追撃として剣を横に薙いだ。
 其処へ、香澄の式符が更に襲い掛かり、槍を爪に見立てた彩虹の一撃が敵の羽根目掛けて振るわれる。
「喰らって下さい、私達四人の連携攻撃――“四獣煉迅”!」
 怒涛の連続攻撃にぐらりと均衡を崩したアヤカシは、巨大な翼を広げて苦しげに呻く。
 その様子から、一度に畳み掛けた攻撃で大打撃は喰らわせる事が出来たようだが、未だ倒すには至らない。
 羽を散らして暴れ出した雷鳥を警戒して、開拓者達は身構えて距離を取った。
 怒り狂うアヤカシの視線はミレイに向けられ、激しく戦慄いた雷鳥から激しく鋭い風が吹き荒れる。
「く、ぅ‥‥」
 衝撃波となった風が雨を巻き込んでミレイの身体を切り裂き、槍を構えていた少女は痛みに呻く。
 下がっていてください、と咄嗟に莠莉が呼び掛けて矢を矧ぎ、ほとりも続いて手負いの雷鳥に矢を引き放った。
 均衡を崩したアヤカシの鳴き声が雨空に響き渡り、その翼が大きく広げられる。
 再び雷撃が襲い来るだろうと見た開拓者達は、攻撃に備えて身構えた。
 だが雷鳥は攻撃をしてこようとせず、バタバタと羽をはばたかせながら空に向かって飛び上がろうとしている。
「ち、逃がすかよッ!」
 焔騎が追い縋るが、雷鳥の方が一歩早く地を蹴った。
 このまま、逃走されてはいけない――真剣な瞳で、莠莉が弓の弦をきりりと引く。
「相手が速いならば、稲妻より疾く射掛けるのみに御座います。この一射‥‥雷を超えてみせますっ!」
 狙ったのは、アヤカシの片翼 。気合いと共に放たれた矢は一点を目指して飛んだ。
「わたくしもお手伝いしますわ。逃がす訳にはいきませんもの」
 意識を集中させた雅は雷鳥の周囲の空間に歪みを出現させ、地へと引き摺り落とした。もう相手は蟲の息だ。
 そして降り頻る雨の中、全速力でアヤカシの落下地点へ走り抜けるのは灰音。
 最後の一撃を喰らわせる為、全ての力を込めて――
「これで、最後だよ‥‥!」
 バスターソードが相手を一刀両断するかの如く振り下ろされた。手に残るは確かな手応え、そして。
 アヤカシの姿がじわりと揺らいだ。そのまま地に倒れた体は泥に沈み、ゆっくりと霧散していく。
 地を打つ雨音が、戦いの終わりを示すように響いていた。

 武器を収めた開拓者達は、空を見上げた。
「悪天候だったけど、なんとかなったね。みんなお疲れ様」
 ひたひたと張り付く前髪を手で払い、笑顔を向けた香澄が仲間達を見渡す。
 それぞれ、ずぶ濡れでぼろぼろだ。だが、それでも一同は皆、やり遂げたという表情を浮かべていた。
 雷が鳴らぬと分かれば、ほとりも安堵を覚えて。持ってきた着替えに着替えたいなぁ、と小さな呟きを漏らす。
「風邪を引いてしまわぬ内に、帰路に付くと致しましょうか」
 莠莉が呼び掛け、それに頷いたミレイ。彼女は目を細め、再び空を仰いだ。
 これでもう、アヤカシがこの場所に現れる事はないのだ。被害者の冥福を祈り、開拓者達は街へと歩き出した。

 いつしか土砂降りだった空模様は色を変え、雨足は徐々に弱まり始める。
 雷冥には、開拓者の手によって終わりが齎された。明けない夜が無いように、止まない雨も無い。
 遠くの雲間から晴れ間が見えた様子に、開拓者達は表情を綻ばせる。
 長く降り続いた雨が上がった後には、きっと――虹が出る筈だ。