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■オープニング本文 秋晴れは美しく、空は雲の一片すら見当たらない。 吹く風はだいぶ冷たくなり、木々はその葉のほとんどを地面に落としていた。 「さーぶっ」 上着上着、と慌てて縁側に放り出した衣を羽織る。それからもくもくと一人で兄嫁の作ったおにぎりを平らげつつ、行儀悪く納屋へと歩いた。 「てりゃ!」 「なんのっ」 いきなり横の茂みから飛び蹴りをかます老人。落ち着いて身をかわし、ついでに食べかけのおにぎりを頬張る少女。 師匠と流和である。 「む、なかなか反応もマシになったのぉ」 「食べてるときは気をつけることにした!」 「食ってないときも気をつけるんじゃ、このどあほうめ」 がすっ、と拳をひとつ落とし、師匠はため息をつく。 「だって、食べ物大事じゃん。もし食べてる最中に攻撃食って、間違って噴出しちゃったり落としちゃったりしたら‥‥!」 「そんなんでいざ人間だの食べ物以外だのの護衛をやったらどうするつもりじゃ。お主は」 ひりひりする頭をさすりながら、ぶー、と頬を膨らます流和。成長していないわけでもないし、意欲がないわけでも、決してない。しかしやっぱり彼女は根本的に平和なのだ。主に頭の中身が。 それはそれで長所なのだろうけれども、こう、命のやり取りとか、ぎりぎりの死線とか‥‥、そういうところに放り出すにはいかにも危うい。いろいろ馬鹿にはしているが、馬鹿な子ほどかわいいもの。師匠にとってはこの手のかかりすぎる、素直で平和な弟子が心配なのだ。とても。 「だって、えんえん気を張るのってしんどいよ。こないだの野営もさ‥‥、すごくしんどかったし」 「二交代じゃったろうが」 「だって‥‥、眠かったよ。すごく眠かった。途中で襲撃されたりがさごそしたりしてたから、緊張保っていられたけど‥‥、そうでもなかったらぐっすりだよ。警戒ポイント教わったから、それでもまだマシだったけど‥‥、リラックスしても油断しないとか、意味はわかるんだけどさ。すぐ身についたら、誰も修行なんていらないよー」 泣き言言う流和に、師匠は苦笑した。 「まぁ、そのへんはもう慣れじゃの。無我の境地でできれば完成じゃ。だいたい、そのために毎日毎日ワシが襲撃かましとるのに、お主、ワシの呼吸を読んで予測対応してくるんじゃもん。 ワシ的には常時意識を裂く訓練をさせたいのに、お主ときたら他人のパターンを覚えこむことで対応しよって‥‥。ワシの呼吸を覚えても意味ないじゃろーが」 「あれだけ攻撃食えば慣れもするよ‥‥」 朝から晩まで、隙あらば膝だの踵だの拳だのが飛んでくるのだ。えんえん繰り返せば、いくらなんでも慣れもする。もとよりけっこう図太い流和は、こうしてどんどん図太さに磨きをかけていた。 「何はともあれ。 村の防衛、がお前さんの最終目的じゃろう? それに開拓者になったら、護衛の仕事も多いからのー。 ちと鍛えてもらうといいじゃろ」 「へ?」 「ワシには慣れてしまったんじゃ。しっかり襲撃されてくるとよい。 こないだの野営訓練、なかなか飲み込みがよかったしのぉ。このまま開拓者に頼むのがよかろうて」 「ええー!? 今冬篭りの準備で忙しいのに!」 「なーにを甘っちょろいことを。さんざん稲刈りも手伝ってもらってたじゃろ、わしも頑張ったし。 今年はだいぶ進みが速いと、村の衆が喜んどったぞ」 「甘いっ! それこそ甘いよ! あんこに砂糖入れすぎたくらい甘いっ! うち雪は深くないけど、油断したら冬越せなくなるんだよ!? たき物とか食べ物とか‥‥! おやつだって満足に作れなくなったら、困るの師匠じゃない!」 「ぬ、ぬうっ!? いや、う、うむ、しかし‥‥」 そんなことがありつつも。 平和な少女に護衛のイロハを叩き込む依頼が、ギルドに舞い込んだ。 |
■参加者一覧
梢・飛鈴(ia0034)
21歳・女・泰
三笠 三四郎(ia0163)
20歳・男・サ
秋霜夜(ia0979)
14歳・女・泰
礼野 真夢紀(ia1144)
10歳・女・巫
鞍馬 雪斗(ia5470)
21歳・男・巫
明王院 未楡(ib0349)
34歳・女・サ
マルカ・アルフォレスタ(ib4596)
15歳・女・騎
カチェ・ロール(ib6605)
11歳・女・砂 |
■リプレイ本文 今日も空はよく晴れていて、野外活動にはうってつけ。 「ふーン、この風景、故郷を思い出すかナ。 ここのがいい土地だケド」 梢・飛鈴(ia0034)は、故郷の記憶を重ねてそんな感想を口に乗せた。 「今回は護衛の指導です? 美味しいものを守るため‥‥以外も頑張りましょうね♪」 秋霜夜(ia0979)の茶目っ気ある物言いに、ばつが悪そうな顔を見せながらも、流和は小さく笑った。 「あは。お世話になりますー」 そんな今回の生徒と仲間を見て、鞍馬 雪斗(ia5470)はふとこの依頼に思いを馳せる。 (護衛の教示‥‥か。 今一度、原点に立ち返って考え直してみるのも一興かもしれんね) 「村の防衛の基礎だけでなく、村から出掛る人達の安全を守る為の大切な訓練ですから気を引き締めて行かないといけませんね」 明王院 未楡(ib0349)の言葉に、流和は神妙な顔をして頷いた。 「何より‥‥。 一人で村を守る以上、有事の際は殿となり、村の方々を逃がしながら村から撤退‥‥なんて事もないとは言えませんし‥‥。 護衛の訓練は疎かにしては駄目ですからね」 「はい、未楡さん」 ちょっとは流和の気も引き締まったようだ。それを感じ取り、未楡も語調を和らげた。 「そうそう‥‥折角ですから、この間の復習もしましょうね。 護衛対象の歩みに合わせ歩む事や気候を考慮しての装備と荷造りって事だけではなく‥‥。 供用出来る品について、誰が何を持ち寄るかの相談も重要になりますしね」 「うん、わかった。七輪は持ってかない」 どれだけわかってるんだか不安な台詞を、力強く告げる流和だった。 「護衛と言えば、開拓者になる前はわたくしは護衛される側でしたわね‥‥」 ふとこぼれた懐かしげな呟きは、マルカ・アルフォレスタ(ib4596)のものだった。何一つ不自由なく暮らしていたころの。 作業用のもんぺを着た礼野 真夢紀(ia1144)は、ごそごそと荷物の中から二つの瓶を取り出した。 「はい、どうぞ」 「どうも‥‥。あれ? あ、こないだの!」 反射的に受け取って、中身を認識すると顔をほころばせた。栗の渋皮煮と、剥き栗の蜜煮。梔子でつけられた黄色は柔らかな色を出している。 「お正月のきんとんに入れたら良いですよ」 「わー、ごちそうさま!」 「脱穀は地元は籾を臼と杵である程度付いてからふるいにかけて‥‥ですけど、足で踏んでって地方もあるそうですし‥‥流和さんの村はどうされてますの?」 「千歯扱きでごりっとやったら、うちも臼だよ」 そんな流和に、カチェ・ロール(ib6605)も声をかける。 「カチェも護衛のお仕事はした事ないですから、流和さんと一緒に勉強します」 「わ‥‥、えへへ、なんか嬉しい」 肩を並べて、という経験の少なさから照れつつ笑った。 一口に護衛といっても、いろいろある。三笠 三四郎(ia0163)は、改めて、教えることがすべてではないこと、それから単独での限界を解きながら、まずは村長宅に入っていった。 飛鈴は、まず心構えを伝えた。 「一、襲撃する側の心理に立て。 一、地形を把握せよ。 一、優先順位を間違えるな。 一、知りうる限り敵の情報は頭に入れよ。 一、自分の役割を完璧に理解せよ。 心構えはこんな感じかナ」 ごく端的に伝えた。一気に言われて流和はまごまごしていたが、どの道実践で教え込むので構わないだろう。 マルカは、真面目な顔つきで流和に向かう。 「護衛対象を襲うのはアヤカシやケモノだけとは限りません。野盗や山賊、人の場合もありますわ。以前言った事を覚えてらっしゃいますか?」 一年近く前のこと。マルカが覚悟を求めたとき、心の準備はしておく、流和はそう答えた。 開拓者として、そして誰かを、何かを守りたいならなおさらその覚悟が必要だとマルカは思うのだ。 「‥‥難しいよね。すごく」 殺すのが怖くて迷うのか、殺されるのが怖くてがむしゃらになるのか、流和にはまだわからない。 「とはいえ今回は訓練ですから」 いつものように微笑みかけるマルカに、答えの出ない思考は一度断たれる。 「護衛される観点から言えば、護衛者が不安そうだったり自信なさげだと、こちらも不安になりますわね。たとえ不安であってもそれを表に出さないようにしなければいけませんわ」 その次を引き継いだ霜夜は、頭を掻きつつ引き受ける。 「あたしも護衛より敵を蹴散らす方が得意ですけどね‥‥」 「あは。ですよね」 笑う流和とカチェが一緒に並ぶ。 ベドウィンの出であるカチェは、護衛には馴染み深い。それでも彼女が共に学ぶのは、やはり砂漠と天儀の街道では、事情がだいぶ違うためであった。 「さて敵の狙いは、護衛に付いた琉和さんじゃなく、守っている人や物です。 だから敵は目的を達するため、様々な方法で護衛を剥ぎ取ろうとします。 力で排除したり、陽動で引きつけたり‥‥」 わかりやすい霜夜の解説に、ふんふんと聞き入る流和。 「攻撃には応戦は必要ですし、逃げる敵は追いたくなりますよね? ただその時も自分が護ってる人や物が、どんな状況かは気にして欲しいのです。 勿論、一人であれこれはできないです。 そんな時は仲間に声をかけて、布陣の穴は無くするのが良いです。 『こっちは防戦で手いっぱいー!』と叫ぶだけでも違うと思いますよ?」 「そっか、仲間がいれば助けてもらえるもんね。 カチェちゃんは? ぜんぜん知らないわけじゃないんでしょ?」 「カチェが教わったのは、砂漠は道が無いですから、位置を把握する方法とか、安全な交易路は何処かとか。後は大砂蟲の対処とか」 「‥‥道が無い‥‥」 未知の領域、砂漠におののく流和。そんな会話を挟み、続けて霜夜は三四郎へとバトンタッチした。 「私から教えるのは想像する事と危険を嗅ぎ分ける事です」 三四郎は仮想敵をケモノや盗賊として教える。広げた紙にさらりと筆を走らせ、街道を絵に書き起こした。 「例えば‥‥物陰や木立ち、人だかり、すれ違う人といった物は充分に警戒した方がいいでしょう」 「砂漠と違って隠れる場所が一杯で、何処から襲ってくるか分らないです」 絵を見るだけでも死角が多い、とカチェも感想をこぼす。 「鳥や犬の鳴き声も襲撃につながる可能性があります。 常に警戒していると集中力が低下してきますから、「危険な物」の確認以外は、視野の維持を優先してその中で動く物に反応できる様に」 はい、と素直な生徒たちは、三四郎に頷くのだった。 雪斗が教えるのは、基本的な事から。何をすべきか、何ができるか‥‥。そして、こうしないとダメ、ということは言わない。 (それぞれが思う最善を尽くすことが何より近道だからね) そう考えて、いろいろと教える。それは柔軟性と協調性を流和に印象付けたが、具体的に考えてこなかったせいで少し漠然とした内容となってしまう。 ともあれ、そこで座学の時間は終わった。 「もっと気を張るとか、頑張って実力をつけるとか‥‥。 確かに必要ではあるけど‥‥一番大事なのは、気持ちだと思う。 ‥‥無くしたく無い物、キミにもあるだろう?」 雪斗の言葉に、流和は頷く。 「うん。ここが大事だから、あたしのできることで頑張りたいの」 家の裏手で、未楡は隊列の最前列で警戒をすることと索敵、あわせて初動対応を教える。 「視野を広く、音や肌の感覚に気を配って、異常を感じたら仲間に示し、情報を共有して下さいね。 そして護衛の際は、護衛対象から不用意に離れてはいけません」 そして数度目になる薙刀術の指導。 「長柄の間合いの広さと対応力の良さを活かし、襲撃者を近付けない事を優先して対処する位で良いと思いますよ」 「慣れるまではいろいろミスしそうだなぁ」 ぽりぽりと頬をかく流和に、ええ、と未楡は微笑んだ。 「ですので、実習です」 ひらり、指をそろえた手で流和の後方をさししめす。陽光にかがやく金髪。刀身が光を弾くグラーシーザ。 「相手を殺したくないなら、流和様がそれが出来るくらい強くならなければなりませんから」 「よ、よろしくお願いします」 過去の戦績ゆえに引きつりつつ、流和も半身になって構えた。 「さあ、これでいいですよ」 にこにこと満面の笑みを浮かべるのは、三江。流和の兄嫁である。 村人の衣服を。そう望んだマルカに着せられたのは、鴇色の小袖だった。鮮やかな髪紐で簡単に結い上げられる。 三江に礼を述べて村長宅を出ると、他の面々はみな揃っていた。 「収穫を売りそのお金で冬籠りの品々を買う村の代表2名の護衛を1泊2日で行います。ご飯は今回村人が提供してくれます」 言いつつ流和の装備を見る。防寒具も持ってきたようだし、悪くはない。 「マルカさんとまゆは村人役ですから戦えませんよ?」 「そうなの?」 「さあて、それじゃ拳士と開拓者のイロハを教え込むとするかいナ。 勿論手加減はしてやるから安心しとケ。 腕は使わないでおいておいてやるから」 「‥‥腕は?」 引きつる流和を放って、飛鈴と三四郎、霜夜が先に行く。彼らがすっかり見えなくなると荷車を引き、田畑を抜けて雑木林に入る。 木立の影が長く伸びる街道を歩いていると、前方から三四郎が、ごく普通に歩いてきた。 「え?」 戸惑いつつも警戒する流和。 「道を伺いたいのですが」 「え、えっと‥‥」 まるで想定していなかった出方に戸惑う流和と、話を引き伸ばす三四郎。じりじりと嫌な緊張感が高まっていく。 「飛鈴さんが来ます」 カチェの言葉と。飛鈴が瞬脚で一気に接近してきたのは、ほぼ同時だった。動こうとした未楡を、すかさず三四郎が足止めする。 「んぎゃっ」 流和の悲鳴。飛鈴のつま先が、しっかり流和の足を踏みつけていた。 「長物を扱うなら、相手を近くに寄らせないコト。 拳士やシノビを相手にするときは特に気をつけるべし」 慌てて薙刀を振るうが、懐に入られてしまうと弱い。 「引いて間合いを取られる位なら前に出るコトだナ。 引きすぎて敵の手が護衛に届いちまったら元も子もないからナ」 飛鈴の言葉にはっとして、薙刀の柄の上下を一尺ほどあけて握り、飛鈴を柄で押し返すように力を込めた。背後から飛んできたウィンドカッターの牽制で一瞬飛鈴の足が緩む。すかさず足を引き抜いた。 「いきなり周りと合わせろって言っても難しいシ、まずは目の前の敵を迅速に片付ける事。その後で護衛対象に一番近い敵に向かう事。可能なら敵の頭を潰すこと。この辺が護衛の基本だナ。 よーく覚えておくこと」 「開拓者様、お助け下さい」 「え、えーっとっ、大丈夫っ!?」 引きつった感じと頼りなさがマイナスですわね。おびえる村人の演技の下で、マルカは現実的な判定を下した。 疾風脚で一気に近づいてきた霜夜とカチェも対峙していた。 「荷車には、近付かせないです」 鞘のままのシャムシール「アサド」。振るう軌跡を読んで、ひらりひらりとかわす。霜夜は荷物奪取担当で、攻撃手段はまるきり考えていないのだ。だが。 「お二人とも、荷車の陰で身を低くしていてください」 カチェが周囲に気を回していること。襲撃側の3人だけではなくて、他にも周囲に盗賊が潜んでいるつもりで注意を払っていること。 それは、本物の盗賊なら人数の不明、物陰からの弓への警戒として正しい。しかし、一対一でやるには隙になりやすい。 「隙あり、です♪」 ひらりとカチェの脇をすりぬけ、マルカと真夢紀の肩に軽く触れた。 「倒してしまうのか? 人質でなくて」 未楡と共に三四郎を相手取りながら、飛鈴や霜夜に牽制のウィンドカッター放ち、尋ねる雪斗。 「あ、そういえばそうですねー。じゃあ、ちょっと失礼します」 ぴっとマルカの髪紐をほどき、ちょちょいと真夢紀とマルカの両手をまとめてリボン結び。それから二人を荷車に乗せる。 「疾風の霜夜、お宝を頂戴しましたー♪ 二人の命が惜しかったら、追いかけてきちゃだめですよー」 荷車引いて一目散。 「ああーっ! 逃げた!!」 「連携して助けて下さいね」 真夢紀の声が、遠くなっていった。 (まずは流和君自身に考えさせたいと思うかな‥‥) 「ど、どうすんの!? これどうすんの!?」 テンパる流和に、雪斗はまず見守るスタンスをとる。 結局、荷車を引くことで移動速度の落ちた霜夜を先回りし、雪斗が瞬脚と、アクセラレートをかけた流和とで強襲。未楡とカチェが人質を確保して撤退し、終了した。 「まず、もっと安心できるように振舞うこと。それから安全策はすっかりロール様がなさっていましたが、流和様も考えなくてはいけませんわよ」 村に戻り、びしびしとマルカに指摘される流和。 「カチェも一人で霜夜さんは、大変でした。もっと声がけしたほうがよかったです。流和さんはどうでしたか?」 「すごい緊張した。難しいねー、護衛。声がけとかすこんと抜けてたよ」 不安げなマルカの声。飛び込んできた霜夜の気配。背後に聞こえる剣戟の音。飛んでくる雪斗の援護射撃。カチェの対応。 去年チーム戦をしたときには感じ取れなかったそういったものを、なんとなく肌に感じた。上手くはいかなかったけれど、それも糧だと思う。 それから、忘れないうちにカチェと復習する。他の面々は冬篭りの準備へと移った。 「アタシもこれでも農家の生まれだしナ」 そう言う飛鈴や雪斗は、保存食の仕込みに。 「力仕事はお任せ下さいまし!」 ひょいと斧を取り上げて、薪を手ごろなサイズに割るのはマルカ。 人手不足の分野を。そう申し出た未楡は脱穀に。 そしてもっとも精力的にこなしたのは、真夢紀だろう。あいかわらず小さな姿でくるくると、よく働く少女だった。 「大根漬けはまゆの家でも昆布と鷹の爪は入れてましたから‥‥陳皮は、鷹の爪と同量でいいかな? あ、大根の葉ってどうされてます? よければ下さい、茹でて刻んで刻んだ油揚げと解した塩鮭と胡麻油で炒めてご飯にかけると美味しいですよ」 「いいよー。いろいろ使うけど、どうせいくらでもあるし」 「干し柿作り終わりました?」 「ええと、三江さーん」 「あ、雪囲い」 藁を抱えて準備する真夢紀。 「いつもいつも、かたじけない」 仕事がはかどる。浮かれる村人をよそに、村長が一同へ深々と頭を下げた。 一方霜夜は、ぼりぼりとかりんとうを貪る師匠に相談を持ちかけていた。 「先々、琉和さんの成長を待つと共に、相棒で琉和さんの欠点を補えませんか?」 「ふむ」 「わんこ、にゃんこ、きつねさんなら普段村に居ても違和感ないですし‥‥。 早期警戒とか、相棒に補助してもらうのもアリかなぁと」 「良いの。では次はそれにするか。ただ、猫又は充分に制御できねば問題じゃし、管狐は‥‥あやつ、召喚して使うシロモノだからのぉ‥‥。まあ、まとめて後日じゃな」 あっさり次回の予定が決定した。 |