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■オープニング本文 風の冷たい季節になった。 吹きすさぶ風の中を、ひたすらに進む。木枯しはずいぶん容赦なく、体温を奪うばかりだった。 「‥‥さぶ‥‥」 冬ではないからまだましとはいえ、つらいことには変わりない。肩の荷を背負いなおし、先を急ぐ。 小さな池のほとりを抜けた。ふと道端に転がる茶色いものに目をとめる。いがぐりだ。人通りが少ない森だからだろうか。まだ残っている。 寒い。とにかく寒い。疲れたし早く帰って――。 そうは思ったものの、娘の顔が思い出された。栗、好きだよなぁ。下の息子は小さすぎて、まだ好き嫌いがはっきりしないが、娘は本当に喜ぶ。 寒い。けれども。 娘が喜ぶならと、かじかむ足でいがを踏みつけた。ぐ、と体重をかける。つやつやした栗があらわれて、思わず顔がほころんだ。冷え切ってうまく動かない手で、栗を取り出す。震えたために何度か指をいがで刺してしまった。痛い。地味に痛い。手が冷えているから、なおのこと。 それでもできるかぎり栗を集めた。手ぬぐいに包んで袖にしまう。 (ほんと、さっさと帰ろう。凍死する) 大げさではあったが、男にとって切実な問題だった。足早に栗の木の下をあとにする。 もう絶対寄り道はすまい、と心に決めて、しばらく進んだときだった。 「――?」 冷たく鼻先をなぶっていく風に、ひどく甘い香りをおぼえた。 なんだろう、と思わず足をとめる。甘い甘い香り。熟しきった果実のような甘ったるさ。わずかに酸いような気がするのは、腐敗が始まっているのだろうか。 (この、香り――たぶん) 林檎、だろう。持って帰ったなら、どれだけ娘は喜ぶだろうか。あとすこし寒いのを我慢すれば、それだけで。 獣道を外れて、藪の中に踏み込んだ。 「夫を――探していただけますか」 ギルドを訪れたのは、青ざめた顔をした女だった。子供だろうか。小さな女の子を連れ、赤子を抱いている。 「詳しいお話をうかがえますか」 受付の娘が先を促すと、わずかに震える声で、女は淡々と事情を話した。 「氷鳴、と申します。夫は隆大。小さな、酒屋をしております。 先日、夫は大事な顧客の法事だと、隣町へ行きました。三日前に、帰るはずだったのです」 帰っていないのだ、と氷鳴は告げた。 「先方へ確認したところ、予定通りに帰るのを見送ったと。‥‥おそらく、途中の森でしょう。秋になってから、時折人が消えると聞きます」 「消える? なぜ、今まで放置されたのです」 「事件性が薄かったのです。身寄りのない者や、いつもふらふらしている者ばかりで。森のあたりで目撃情報が途絶えていましたが、自発的な失踪の可能性が濃かったのです。奇怪なものを見た、という話もありません。だから、森だなんて、誰も」 今まで、いなくなってもおかしくない者が消えていたが――。今回、自発的な失踪、という可能性の低い者まで消えた。消えるのはみな森のあたりで。 「‥‥わかりました。ただ‥‥」 受付は言葉を濁し、氷鳴を見つめた。青ざめた顔で、けれども氷鳴はしっかりと頷く。 そして、告げた。 娘には聞こえないよう、ぎりぎりまで声をひそめて、小さく。 「覚悟は、しております」 |
■参加者一覧
黎阿(ia5303)
18歳・女・巫
由他郎(ia5334)
21歳・男・弓
景倉 恭冶(ia6030)
20歳・男・サ
宗久(ia8011)
32歳・男・弓
ノルティア(ib0983)
10歳・女・騎
十 水魚(ib5406)
16歳・女・砲
マリアネラ・アーリス(ib5412)
21歳・女・砲
獅子神 鋼(ib5500)
30歳・男・砲 |
■リプレイ本文 木枯らしの吹きすさぶ、森だった。 行方不明。考えうるのは、ざっと三つだろうか。事故、勘違い、アヤカシ。時に自主的な行方不明も含まれるかもしれないが。 「残り二つがないんならアヤカシの仕業になるのかな。 勘違いだったら皆がはっぴーだけど、まあそうそう上手くはいかないよねえ」 宗久(ia8011)が呟く。含みのありそうな言葉であったが、実のところはわからない。 「‥‥生きていて欲しい」 覚悟をしつつも、願うようにつぶやくのは黎阿(ia5303)だった。その黒髪を冷たい風がなびかせる。とても、‥‥とても、冷たかった。 「‥‥間に合うと、良いんだが」 大きな布を抱え、由他郎(ia5334)も零す。手早く二班に分かれた。黎阿は彼を見上げる。別行動‥‥、遊びに行くわけじゃないから、とは思えど、だからといって身を案じていけないわけもない。 「怪我はしないように」 別れ際に一言、言い置く。一本道ではあるが、二つの班はそれぞれ別のところを探しにかかった。 その片方――。二班にて。 「森の中で行方不明っつーことはもしかすっと敵さんは獣かもしれねえなァ」 ギンと桃色の瞳をかっ開き、並ぶ木立の間や草むらを見るのは、マリアネラ・アーリス(ib5412)だった。ついでに嗅覚もきっちり活用している。 途中まではまともなひとりごと――だったのだが。 「まあ何にせよ、俺様はただ前の仕事ン時みたく引き金を引いて『断罪』をするまでよ‥‥キヒッ、ギャハハハハハハッ!!」 突如上がる、甲高い笑い声。同行者はまったく動じなかったが、驚いた小鳥が近くの木からいっせいに飛び立った。 前の仕事がなんだったかはともかく、穏便な仕事でないのはたしかだろう。そんな危険領域に傾倒してそうなマリアネラと対照的に、宗久は、「危ないのも痛いのも俺はイヤ」、と、飄々とかまして周囲の警戒にあたっていた。 「死人が一杯居るなら腐臭とかが酷そうだけどね」 時間経過を鑑みるに、間違ってはいないだろう。口調は完全にひとごとだった。ただ、ニヤニヤと笑う顔つきから彼の感情を推し量ることは、だいぶ難しそうである。 「行儀良く残さず食べるアヤカシってのも嫌だねえ、ふふ」 服の切れ端、骨のひとかけら、それすら残さずに。その凄惨さを軽い口調でさらりとつむぎ、風に流す。 その宗久の前で、感覚を研ぎ澄ませる黎阿とともに、しずかに周囲に気を配っていたのは景倉 恭冶(ia6030)であった。 しかしながら――。 探索場所を絞らずに、小さいとはいえ森の中。 二班による探索は、だいぶ難航した。 二班と別れた一斑は、ノルティア(ib0983)の意見をもとに、まず探索範囲を絞った。 「ここで寄り道するとすれば食料の確保‥‥とかかな? 季節的に茸とか栗とか」 野宿や水の確保もありうる、として、まず池のほとりへ来た。由他郎が弓をかき鳴らす。反応は、ない。 「まわりをすこし、探しますわ」 十 水魚(ib5406)が道なりに意識を凝らす。足跡だとか、人の通った形跡がないかと探した。 (怪我で動けないだけと言うのなら、面倒が無くて良いのですけど) そう、それなら面倒がない。黎阿が治しておしまいだ。氷鳴にありがとう、と言われて終わるだけ。 「アヤカシが見つかれば、十中八九、それの仕業ですわ」 小柄な水魚がてきぱきと動くかたわら、獅子神 鋼(ib5500)はその長身をかがめ、草の生え方などに注意する。 「一秒でもはよう見つけちゃらんとのぉ、無事でおればええが」 気を揉みながらも地面に気をつけて歩く鋼。その視界の中に、入ってくるのは。 「‥‥? いがぐり、け?」 転がる茶色いものがあった。見上げれば栗の木。 「実は残ってないんだね」 ノルティアも気づいて寄ってくる。さらに進んでいくと、ふと強い香りがした。甘ったるく、わずかに酸いような。 由他郎が弓をかき鳴らすのと、水魚が声を上げるのは同時だった。 「草が倒れていますわ」 「反応がある。あっちだ」 由他郎が指差すのは、水魚が見つけた痕跡の先だ。 「どうする? ボクは無理に進まず他の班の方と合流したらいいと思うけど」 ただ、安否不明な隆大がいるため、ノルティアは他に話を振った。 「さっさと退治したいと思いますわ」 他二人は特別どちらというわけでもないようで、水魚の意見が優先された。 ブーツの靴底が、好き勝手に生え延びる草地を踏みしめる。そうして均された足場を、後衛三人がついていった。 「足元‥‥気、つけてだね」 「まだすこし遠いな」 ノルティアのあとを進みながら鏡弦で確認し、由他郎は状況を伝える。抜いたままの銃を握りなおし、ふと鋼は気づいた。 「おお、合図を忘れちょったのぉ」 出発前、二班に伝えたのはいいが、うっかり自分が合図をし忘れるところであった。飛竜の短銃に火薬のみを入れ、空に放つ。乾いた音が響いた。 残る火薬の匂いが風に吹き飛ばされ、消えていく。かわりに、熟れすぎた甘ったるい香りが運ばれてきた。あいかわらず、わずかに酸い。 そして。 木立の向こうに、一本の木が見えた。 その木のまわりだけすこし開けており、明るい日差しが注いでいる。枝は熟しきった赤い果実で重く垂れ、いかにも食べるのによさそうだった。 冷たく風が吹く。香る甘い甘い、香り。彼らが身構えるより、一瞬だけ早く。 「っ‥‥!」 重く垂れた枝が振るわれ、果実がぐしゃり、と鋼の腹を打ち据えた。一瞬息の詰まる鋼。ノルティアが二撃目を、盾を使ってカバーした。そのまま鋼の前に位置取る。水魚はすぐさま木陰に身を寄せ、由他郎はアヤカシから距離を取った。 「大丈夫?」 「すまんのぉ」 鋼は答えた。威力が半端ないのか、押さえた腹はずくずくと痛む。まだ戦える範囲内だが、無理は禁物だろう。 「ノルティアは無事け?」 「ボクは平気。後ろから撃ってくれればいいよ」 伸びた枝がノルティアに迫る。が、彼女はそれを一刀のもとに切り捨てた。単動作で弾を込め、鋼は襲い来る枝を狙う。かすめただけだ。うごめく枝は狙いにくい。 水魚の構えたクルマルスが、引き金を引き絞る。 「銃の練習には、ちょうど良い的ですわ」 弾はしなる幹をかすめる。すぐに再装填にとりかかった。スキルを使わない分多少手間取るが、一瞬の差が明暗を分ける局面でもない。落ち着いて、けれどすみやかに作業する。 そんな水魚たちの後方から、惜しみなく矢を放つのは由他郎だ。木々の中から、長距離で狙うのは若干苦労する。なにせ木立は邪魔だわ風で枝葉はざわめくわ、距離を空ければ空けるほど、一直線に狙える場所は少なくない。それでも矢を貫通させる。貫くたびに幹は苦痛にのたうった。 乾いた音を聞きつけて、二班はすぐさま移動を開始した。 「見ィつけたっ!」 真っ先にノルティアの踏み均したあとを見つけ、追跡するマリアネラ。 「気をつけたほうがいいわ」 奥から銃撃音と、薄く火薬の匂いがただよう。先行した由他郎を案じつつ、黎阿は瘴索結界を張って進む。 しばらく進むと、一斑の面々の背中が見えた。マリアネラを抜いて駆け出す恭冶。立ち止まり、六節を行う。そして弓を引き絞る宗久。マリアネラも銃を引き抜いた。 枝が恭冶をなぎ払うが、負けじと切り返す。熟れすぎた果実が宗久の肩をかすめた。無視して矢を放つ。 鷲の目と朧月で強められた矢が、幹を撃ちぬく。 「救済救済救済‥‥罪深き魂の権化に救いの手を!」 単動作、そしてフェイントショット。 「ギャハハハハハハッ!」 響く銃声。上がる笑い声。火薬の匂い。甘い香り。わずかに、酸いのは。 枝を振り払うノルティアの刀。甘い果実が盾にぶつかり飛び散る。その影から絶え間なく鋼の単動作で弾が打ち込まれ、木陰から水魚が狙撃する。続く銃声。そして。 「きえろ、瘴気の塊」 鷲の目がまっすぐにアヤカシをとらえ。 一筋の矢が、それを貫き消し去った。 形を失い、瘴気へ戻り、その瘴気も大気にとけ、わずかに残った残滓すら地にとけて。 「何だこりゃ? 俺様の目から涙、だと‥‥」 桃色の瞳からこぼれ、頬を濡らすもの。理由はわからない、マリアネラにも。ほのかに体温の残っていたその雫を、冷たい風が吹き飛ばした。かすかな熱が一瞬で散る。 そこに甘い香りはあとかたもなく、立ち込める火薬の匂いは風に運ばれ消えてゆく。けれど残る、その、匂いは。 「やっぱりねえ」 宗久が小さく呟く。アヤカシが根を張っていたそこ。 「くそっ! 間に合わんかったんかよ‥‥」 恭冶が拳を握り締めた。 「‥‥待ってる家族がいたんだろう? 残された子供もいるんにっ!」 ひとり、ふたり、さんにん、ひとだとはわかるものの、直視に耐えない姿のもの。よにん、四人目。まだ若い。恭冶より、いくつか年上だろうか。眠る男は胸元を染めていた。貫かれた、のだろう。赤くはなかった。とうに乾ききって。 「数日たってるゆえ、まさかとは思ったけど‥‥やっぱりか」 ノルティアが呟く。この季節にはそぐわない、かがやく緑の眼差しが見下ろす。冷え切った男。 父はいなかった。ノルティアには、いなかった。だから。 「娘さんのためにも助けたいとは思ったけど‥‥」 かなわなかった。男はもう、動かない。 鋼を癒し、黎阿がそこへ足を向けた。すっかり痛みの消えた鋼もやってくる。 鋼の瞳がそれをとらえた。自分の傷は、癒えたのに。視界が滲んだ。ぼやけ、輪郭が曖昧になっていく。 「黎阿、ぬしの巫女の力でも‥‥無理け? 助けられんのか?」 ゆっくりと黎阿は首を振る。死は死だ。力の尽くしようは、ない。 黎阿は言葉をつむがなかった。思うところはあるのだろう。けれどそれを丁寧に心の奥に仕舞い込み、静かに黙祷を捧げる。それから隆大のかたわらに膝をつき、持ち物を探った。袖の中から、手ぬぐいに包まれた栗があらわれる。それをそっと、手に取った。 「隆大は、家族へ返す‥‥でいいな?」 異論はなかった。手ごろな枝を二本落とし、余計な枝葉を除いてあの大きな布をくくる。そこへ隆大の身体を乗せた。 水魚は四人の遺体を確認すると、ふいと背を向けて近くを調べに行く。あの四人が今しがた倒したアヤカシの犠牲者で間違いなかろうが、他にいないともかぎらない、と。 遺体は見慣れていた。ただ淡々と、水魚は周囲の森を調べて回った。 名もない墓へと黙祷する。遺品と呼べるものはなかった。身元がわかるようなものも。氷鳴の町で聞けば、もしかすると行方不明者の名くらいはわかるかもしれないが‥‥。判別できるような姿でもない。どれがだれだかわからないだろう。 「これが開拓者の仕事け‥‥辛いわぃ。 ぬしらに死後、精霊の導きがあらん事を」 由他郎の隣で、鋼が祈りを捧げる。死者は黙して語らない。ただ静かに、今は土に還るのを待つばかり。 「‥‥怪我は無かったか? 黎阿」 ひと段落、と由他郎は黎阿を見下ろした。 「ええ。ひとつも」 たがいの無事に安堵する。それから、恭冶の手を借り隆大を運んだ。即席ゆえに若干安定感を欠く担架であるが、相手は痛がる怪我人ではない。幸い、とは‥‥言えないが。 (甘ったるい、林檎のような匂いで誘き出すアヤカシだった) 飢えたものが。好んだものが。そして。愛する人にと。 「持ち帰って、食わせてやりたかったんだろうな‥‥」 かすかに。担架を支える手に、振動が伝わった気がした。 「‥‥大切な人が笑ってくれるなら」 反対側を支える恭冶が、呟く。 「俺も何だってやるけども‥‥その行動がこの結果なんて‥‥やりきれねぇな‥‥」 両手にかかる重みが、つらかった。 戸を叩くと、氷鳴が一行を出迎えた。ノルティアが籐鳴と光大を預かり、担架を見せないよう、外へ連れて行く。寒いけれど、空はよく晴れていた。 「籐鳴ちゃんは‥‥弟、いるんだ。おねーちゃん、なんだね」 「うん。ねぇ、なにしてあそぶ?」 「何が好き?」 「おとーさんとちゃんばら!」 存外、おてんばのようだ。刀を佩いたノルティアを、うらやましそうに見つめる。 「でも、おとーさんかえってこないの。もうすぐっていつ?」 ぶすーとぶすくれる籐鳴。腕の光大をあやしながら、ノルティアはやんわりと回答を避けた。帰ってくると信じて疑わないでいられるのも、あと、ほんのすこしの間だけだろう。 同時刻。夫の遺体を迎えた氷鳴は、ほろりと一筋、涙を流した。 「‥‥おかえりなさい、あなた」 声は震えていた。氷鳴は奥の間を示し、布団を敷いた。そこへ隆大を寝かせる。 目を伏せた。感情は押し殺す。そうして黎阿は隆大の袖から取り出した、栗の包みをそっと手渡した。 「‥‥息絶えても持っていたわ。最後まで貴方達家族を思っていたのね」 震える手で、それは解かれる。 あふれるような栗だった。 「‥‥っ!」 言葉はなかった。ただその栗をひとつも零さないように抱きしめて、冷たい身体にすがって。 嗚咽だけが響いた。 一度席を外し、顔を洗って氷鳴は戻ってきた。 「お恥ずかしいところを‥‥」 いや、と恭冶が頭を振る。事実だけを、ありのまま彼女に話した。 「‥‥間に合わなかった」 間に合ったなら。間に合ったならあの程度のアヤカシに、遅れなどとらなかっただろう。歯がゆくて悔しくて、表情をつくりかねた彼に、氷鳴は静かに告げた。 「飲み込むほか、ないのでしょう。‥‥彼を。ありがとう」 静かな言葉に見送られ、彼らはその家を出る。それに気づいてノルティアが、籐鳴と光大を連れて戻ってきた。光大は母の腕に戻される。 「これからも、おかーさんのこと‥‥助けて、あげてね」 籐鳴に告げた。うん、と頼もしく籐鳴は頷く。まだ知らない彼女へと、黎阿も言葉をかけた。 「‥‥強く生きて」 知らないひとからの言葉に、籐鳴はうん? と返事をする。 「きっとお父さんも貴方達が笑ってくれる事を望んでいた筈だから‥‥」 「うん! とーな、つよくなるよ」 その様子に、ふと氷鳴は目元を和らげ。最後に、丁寧に開拓者に礼を言って見送った。 (アヤカシが居る限り、こんな事件はなくならん) ギルドへ報告に行く道すがら。 (それなら‥‥俺は、狩り続けるだけだ。 例え、果てが無いのだとしても、だ) 由他郎は思う。 (命を捨てても、なんて事は言わない) 刺し違えて果てるよりも、と、いうことだろうか。 (何が起きても生延びて‥‥一匹でも多く、狩ってやる) |