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■オープニング本文 ※このシナリオはIF世界を舞台としたマジカルハロウィンナイトシナリオです。 WTRPGの世界観には一切関係ありませんのでご注意ください。 私立ギルド学院(の設定はシナリオ・『【混夢】悪夢よ、覚めよ』を参照)では10月31日、夕方からハロウィンパーティーを学院内ではじめていた。 多くの生徒や教師達は仮装をし、広いホールで立食パーティーを楽しんでいる。ステージからは楽器の演奏に歌が披露され、空いているスペースではダンスも行われていた。 ホールの二階席からは、受付コースの担当教員の美島と女子生徒の野衣が一階で行われているパーティーを見て、ほっと安堵のため息をつく。 「何とか無事に、パーティーがはじまって良かったですね」 「ええ。でも飾り付けや料理の準備、それに仮装の方も生徒達で用意しなければならなかったので、大変でしたけどね」 ギルド学院は生徒の自立性を重視しているので、学院内のイベントはほぼ生徒任せにしている。 「野衣くんの魔女姿、可愛いですよ」 「ありがとうございます。美島先生のヴァンパイアはステキですね」 二人も仮装をしており、パーティーは無事に続く――かと思いきや。 『追いかけてくんな! ボケっ!』 『待ってよぉ!』 突然、二階の窓をすり抜けて、二つの存在がホールに入って来た。 最初に入ってきたのは死神の鎌を両手に持ち、黒い体に黒いマントを羽織った三歳ぐらいの子供のような存在。二つの丸い目と首から下げている十字架のロザリオは金色で、ホールの明かりを受けて光っている。 『テメーに用はねぇんだよ! オレ様の邪魔すんな!』 しかし可愛らしい声と反して、言葉遣いは悪い。 『そんなこと言わないでよぉ! ボクはもうそろそろ天国に行きたいんだ!』 黒い存在を追い掛け回しているのは、両目と口をくりぬいたオレンジ色のお化けかぼちゃを頭にし、ワインレッドのマントを着ている、これまた三歳ぐらいの子供のような存在だ。しかし黒い穴のような丸い両目からは、涙がじんわり滲んでいる。 『うっせー! 大体テメーが天国に行けなくなったのは、自業自得だろうがよぉ!』 『だって地獄に行けなくなるんなら、天国に行けると思うじゃないか! まさか門前払いされるとは思わなかったんだよーっ!』 お化けかぼちゃは必死になって黒い存在を追いかけるも、それを上回るぐらい必死になって逃げられていた。 二つの存在は空中をブンブン飛んでおり、下にいる教師や生徒達はパーティーに夢中で気付かない。 しかし二階にいた美島と野衣はバッチリ見てしまい、その場で硬直する。 『しにがみくんなら、ボクを天国に導けるんじゃないの?』 『へっ! 甘い考えはよすんだな。オレ様はただ、魂だけになった存在をあの世に運ぶまでが仕事なのさ。そっから先は知らねぇ。ジャック、てめぇは口だけはうまいんだから、言葉で天国の番人どもを騙すんだな!』 『そう上手くはいかないから、キミに助けを求めているんじゃないかぁ!』 『知るかボケっ!』 黒い存在こと<しにがみくん>の反応を見て、お化けかぼちゃこと<ジャック>はムッとした。 『キミがそこまで嫌がるなら、ボクにだって考えがある!』 そして<ジャック>は懐に手を入れ、小さな瓶を取り出す。 『何だそれは?』 『この瓶の中身は変身する薬だよ。何に変身するかは、薬をかぶってからのお楽しみさ!』 中身はオレンジ色の液体が入った瓶を、<しにがみくん>に向けて投げた! 『とりゃあっ!』 『甘いわっ!』 だが<しにがみくん>は自分に向かってきた小瓶を、鎌の柄の部分で打ち返す。――が、瓶はそのままホールの中央にぶら下がっていた本物のお化けかぼちゃに当たり、砕けてしまう。 『『あっ……』』 <ジャック>と<しにがみくん>の声が綺麗にそろった。 中身は液体から霧と化し、一階にいた教師と生徒達にまんべんなくかかってしまう。 だが誰一人として、異変には気付かない。 しかし美島と野衣はギョッとして、慌ててハンカチを取り出して鼻と口を覆い隠した。 「コレはっ……! 液体が霧になったのを吸った人々の仮装した姿が、本物になっていきますね」 「でも気付かないみたいですよ? ……あっ、仮装しているから逆に気付きにくいのかも……」 狼男の仮装をしている者は本物の狼の毛が全身に生え、顔も狼のものになっていく。 女悪魔の仮装をしている者は背中に黒いコウモリのような羽が生え、また腰の辺りからは黒く細い尻尾が生えた。頭からは角も出てくるが、本人は全く気付いていない。 『ジャック! てめぇ、何てことしやがるっ!』 『あわわっ! だっだってしにがみくんが瓶を打ち返すからぁ』 『ちっ。こんなところ、知り合いに見られたら厄介なことになる。オレ様はトンズラするぜ!』 『うわぁーんっ! ボクも行くよぉ!』 ――こうして原因達は、ホールの壁をすりぬけて出て行った。 「せっ先生、どうしましょう?」 「……とりあえず、このホールにいる人々を誰一人として学院の外に出さないようにしましょう。薬の効果がいつ切れるのかは分かりませんが、今夜は幸いにもハロウィンパーティーを行っていますので、多少帰りが遅くなっても平気でしょうし」 「じゃあ、早速校門を閉めてきますね。学院の外に一歩でも出られたら、大変ですから」 「ええ、お願いします」 |
■参加者一覧
ルオウ(ia2445)
14歳・男・サ
和奏(ia8807)
17歳・男・志
ユリア・ソル(ia9996)
21歳・女・泰
ルンルン・パムポップン(ib0234)
17歳・女・シ
リィムナ・ピサレット(ib5201)
10歳・女・魔
八塚 小萩(ib9778)
10歳・女・武
瀏 影蘭(ic0520)
23歳・男・陰
クード・グラス(ic0974)
30歳・男・砲 |
■リプレイ本文 ☆変身する人々 「うーん……。何か変な感じがするなぁ」 ヴァンパイアに仮装しているクード・グラス(ic0974)は自分の身に起きている変化を感じ取り、浅い眠りから覚める。 連日ハロウィンパーティーの準備に追われていた為に、いざはじまると気が緩んで、壁際に置かれたイスに座ると眠ってしまった。 しかしその間に、<ジャック>の怪しげな変身薬を吸い込んでしまったのだ。 作り物の牙は本物になり、顔色は白く、眼と唇は血のように真っ赤に染まる。 「よく分からんが、無性にトマトが欲しいな。だが俺はアレの食感とか味とか苦手で、本当は食えないはずなんだけどな」 不思議に思いながらも立ち上がり、料理が並べられているテーブルに向かう。 トマトジュースが入った瓶があったのだが、グラスに注がずそのまま呷る。そしてトマト料理があったので、片っ端から食べていく。 「んぐっ!? やっやっぱり苦手だ……。しかし食べずにはいられない!」 真っ青な顔色で苦痛な表情を浮かべながらも、クードはトマトを貪った。 腹がいっぱいになったところで、何故だか自分がヴァンパイアである自覚が生まれる。 「ああ、そうだった。俺はヴァンパイアで、トマトが苦手でも欲する体質だったな。ヴァンパイアができることは……そうそう、確かコウモリに変身できるんだったな。どれ、飛んでみるか」 トンッと地面を蹴って飛び上がると、次の瞬間、クードは一羽のコウモリになった。そしてホール内を、ぐるっと回って見る。 「ははっ、空を飛ぶのは気持ち良いものだ。さて、次は霧になって移動するか。……トマトを食い過ぎたせいか、体が冷えたな」 霧になったクードはホールを出て、男子トイレに行く。 「ハッ! いけない。自分は何でこんな所にいるんでしょう? パティシエなんですから、お菓子を作らなければ」 パティシエの格好をしている和奏(ia8807)はホールでお菓子を食べていたが、変身薬を吸い込むと慌てて調理室に向かった。 そして洋菓子を手馴れた仕草で作っていくが……。 『わーはははっ!』 『ギャハハハ〜!』 『いえーいっ!』 お化けカボチャの形をしているケーキやカボチャを丸ごと使ったプリン、指クッキーに目玉ゼリーなどが生き物のように動き出したものだから、調理室に恐怖の悲鳴が響いた。 「おかしいですね……。ハロウィンにまつわるお菓子を作ったせいでしょうか?」 おかしなお菓子を作った張本人である和奏が呆然としている間に、お菓子達は『トリックオアトリート!』と叫びながら調理台から下りて、廊下に出てしまう。 「あっ、飲み物はお抹茶を用意しなければ。お菓子のみなさん、美味しいお茶をいれますので、冷める前に戻って来てくださいね」 『って、何で抹茶なんだよ! 洋菓子には紅茶かコーヒーだろう!』 調理台に残った丸ごとプリンに怒られるも、和奏はかっくんと首を傾げる。 「飲み物は抹茶しかいれたことがありませんので……。洋風の飲み物はちょっと」 『……飲めれば玉露も出涸らしも大差ないくせに、生意気な』 「自分のことを味音痴のように言うの、やめてくれません?」 調理室がパニックになる中、和奏は冷静にお菓子達と会話を続けるのであった。 ホールではルオウ(ia2445)がローストチキンに齧り付きながら、周囲を見回す。 「ハロウィンはみんな、面白い格好してんなー。まっ、俺も今日は竜の仮装をしてっけどな」 竜の被り物まで着用しているルオウは、口の中のローストチキンを飲み込む為に近くにあったぶどうジュースを飲む。 ――が、それと同時に変身薬を吸い込んだ。 「んっ? おおっ! 何だか力が溢れてくるぜー!」 徐々に竜そのものに変身していくも、本人は全く気付かない。 「どれ、ちょっと飛んでみるか」 翼をバサバサッと動かし、ホールの中を飛ぶ。 次に大きく口を開き、叫び声と共に炎を出した。 「ガオーッ! おっ、炎が吹ける! 楽しいな♪」 喜んで尻尾を振りながら空中を旋回するも、美味しそうな料理やお菓子を見つけると下りて食べ始める。 ホールに戻って来たクードは、竜に変身したルオウを見て呟く。 「あの小さな竜、本物か?」 「小さいって言うなーっ!」 二人の間には距離があるものの、ルオウの耳にはしっかり届いていた。 ルオウは涙目になりながらも腹がいっぱいになるまで飲んで食べた後、少しボ〜っとした表情でボリボリと頭をかく。 「う〜ん……。何かいつもと違う感じがするんだよなぁ。疲れがたまってんのか? 少し寝ればスッキリするかな」 大きな欠伸をするとルオウは壁際に行き、体を丸めて眠り始めた。 「イエーイ☆ 私はこの国の神様の仮装をしてみました! うふふっ、この格好で学院のみんなに幸せを振りまいちゃいます!」 ルンルン・パムポップン(ib0234)はツギハギだらけのボロボロの衣装を、嬉しそうに着ている。 「でもこの国の神様って謙虚なんですね〜。日本の神様特集の本を読んで見たけど、こんな服を着ているなんて感心しちゃいます」 楽しそうに鼻歌を歌いながらホール入りしたルンルンだが、変身薬を吸い込み、その身は変化していく。 ルンルンがホールに飾られている生花の近くを歩くと枯れてしまい、知り合いに声をかけながらその体に触れると、触られた人々は元気をなくしていった。 「う〜ん。みんな、仮装に気合が入っているね! 私も負けないようにしなくちゃなのねん! ……って、アレ? 何か口調が変なのねん」 ルンルンの口調よりも周囲の変化の方が凄まじいが、貧乏神になってしまった本人は全く気付かない。 「まっ、いっか。それよりパーティーを盛り上げなきゃねん!」 カゴにカボチャのクッキーを入れて、ルンルンは参加者達に配っていく。 だが貧乏神から貰ったクッキーを食べた途端、参加者達は顔色悪くグッタリしてしまう。 負の空気が満ちる中、ルンルンだけはどんどん元気になっていった。 「おおっ!? 気分が盛り上がってきたせいでしょうか? 何だかパワーが溢れてきます!」 貧乏神のルンルンは負のエネルギーを吸い込み、その身をどんどん大きくさせていく。 天井に頭がつくほど巨大化したルンルンは、真剣な顔付きで大きく口を開いて叫ぶ。 「ううっ〜〜……ボンビーーっ!!」 「うふっ、お菓子をくれないとイタズラしちゃうわよ? ……と言いたいとこだけど、今日の私は料理人なのよね」 瀏影蘭(ic0520)は仮装した姿で、和奏がいる調理室の隣の第二調理室で料理を作っている。 パーティーがはじまった後もしばらくは調理室にいたものの、他の料理人達からパーティーに顔を出した方が良いと言われ、抜けることにした。 何も知らない影蘭は薬が満ちるホールの中を歩きながら、改めて自分の姿を見る。 「うふふっ。思い切って冥越八禍衆の一人、大アヤカシである生成姫の仮装をしてみたんだけど、注目の的になっているわね。本当は魔女か堕天使にしようかとも思ったんだけど、生成姫にして良かったわ。この衣装を作ったり、特殊メイクをするのに手間がかかったけれど、せっかくのハロウィンパーティーですもの。楽しまなくちゃ損よね」 しばらく歩いたところで、影蘭は自分の体に変化が起きていることに気付く。 「アラ? 何だか胸が苦しいわね」 首を傾げながら胸元に視線を向けると、胸の詰め物の下から本物の胸が膨らんできているのを見て、メイクよりも真っ白な顔色になった。 「なっ何で本物が生えてきているのぉ?! ……あっ、二階席にいるのは美島先生?」 美島は白いマスクをして、ホールを険しい表情で見つめている。 影蘭は急ぎ足で階段をのぼり、美島に声をかけた。 「美島先生っ! 一体このパーティーで何が起こっておるのじゃ? わらわにも分かるよう、説明してたもれ! ……って、言葉遣いまで変化が起きているっ!?」 「すみません! わたしにも上手く説明ができないんです!」 叫ぶと同時に美島は走り出し、影蘭でも追い付けない早さでホールを出て行ってしまう。 「美島先生、逃げ足が早いのじゃ……」 下のホールでは、新たな騒ぎが起きていた。 女の子用の天狗のミニ衣装を着た八塚小萩(ib9778)が変身薬を吸い込んでしまった為に、自分が本物の天狗であると思い込んでしまったのだ。 「わーははっ! 我は天狗姫の八塚小萩じゃ! 今日はハロウィンゆえに、人間どもに恐怖と混乱のイタズラをするのじゃー!」 背中に生えた翼を動かして宙に浮くと、手に持った羽団扇を振るう。 すると丈の短い衣装を着ていた女子生徒達や女教師達から悲鳴が上がり、男性達からは喜びの声が上がる。 「見たか! これこそ天狗姫の力よ!」 ニヤッと意地悪く笑うと、両手を動かして何かをかぶるような仕草をした。すると次の瞬間、小萩の姿が見えなくなる。 天狗が所有すると言われている隠れ蓑をまとって姿を消した小萩は、そぅ〜っと下におりた。 そして和奏が作ったしゃべって動ける人型クッキーを一つ捕まえると、眠っている竜のルオウの口を開き、投げ入れる。 「んぐっ!? なっ何かが口の中で暴れていやがるっ!」 クッキーは口の中でも動き回り、ルオウは驚いて飛び起きた。 しかし小萩の姿は見えない為に、何が起きているのか理解できずに戸惑うばかり。 「くくくっ……! これだからイタズラはやめられんのじゃ」 「くふふっ、さすが天狗姫。やるねぇ。でもイタズラに関しちゃあ、あたしも負けないよ!」 派手な魔王少女となったリィムナ・ピサレット(ib5201)は、パーティーの男性参加者達を下僕にして上機嫌だった。 魔力を持つ魔王のリィムナは気に入った男性達に、魅力的なウィンクをして見せる。すると男性達は眼をハートにし、リィムナの前に跪く。 「そこのアンタ、体付きが良いね。あたしのイスになってちょうだい。そっちのアンタは犬みたいな顔しているから、ペットね。さあさあ、あたしに料理やお菓子を運んできてちょうだい。お腹が減っているのよ!」 リィムナの一声で、男性達は一斉に料理やお菓子を取りに行った。 男性達に小さな体をマッサージさせながら、機嫌良く食べたり飲んだりを繰り返していたが、腹がいっぱいになったところで小萩に視線を向ける。 「あの天狗姫、あたしの子分にしたら面白いかな?」 そう言って背中のコウモリのような赤い羽を動かし、リィムナは宙に浮いている小萩の所へ移動した。 「ねぇねぇ、天狗姫〜。あたしと勝負しない? 負けた方が、勝った方の言うことを何でも聞くってことで」 「面白い! 我に勝てると思うなよ! チビッ子魔王!」 「んなっ!? 天狗姫の方があたしより身長低いクセにぃ! もう怒った! 本気でヤルよ!」 「望むところじゃっ!」 「トリックオアトリート! お菓子をくれなきゃイタズラしちゃうわよ♪ ……なーんちゃってね。悪魔やモンスターにはお菓子をねだるけど、年下と可愛い子にはハグと共にお菓子をあげるわよ」 ユリア・ヴァル(ia9996)はエンジェルハープを手に持った天使の仮装をしており、腕にかけているカゴには色とりどりのフルーツキャンディがたくさん入っている。 参加者達と話をしたりステージでハープの演奏をしたりと、しばらくの間は様々な人々と楽しく過ごしていたが――。 ドカーーンッ! 「きゃあっ!? 何事?」 慌てて音がした上空を見てみると、天狗になっている小萩と魔王になっているリィムナが戦闘中だった。 「まあ! こんな楽しい夜に、争いなんていけないことを!」 変身薬を吸い込んでしまった為に、ユリアの背には純白の天使の羽が生えている。 ユリアは床を蹴って飛び上がり、まずはリィムナの背後に回った。そしてハープを両手に持ち、思いっきりリィムナの頭に振り下ろす。 「いたぁ!」 次は小萩の前まで飛んで移動し、再びハープで頭を叩く。 「おごっ!?」 「ケンカはいけません! 争いを起こす人はどんな理由があろうとも、両成敗です!」 リィムナと小萩は頭を手で押さえながら、フラフラと床に落ちる。 ユリアも続いて床に着地し、両手を腰に当てて説教をした。 「いい? 二人とも。天国の門は良い行いをした人の前だけに開かれるものなの。ジャック・オー・ランタンになった人のように悪しき行いをしていたら、いつまで経っても天国へは行けなくなるのよ」 「あたし、魔王だから天国には縁がないんだけど……」 「……我は天使がハープを凶器にしたことがショックじゃ」 ★変身薬の効果が終わり…… そろそろハロウィンパーティーが終わるという時に、クードは眼を覚ます。 「……んあ? ああ、また寝ちまってたか。何か変な夢を見てた気がする」 クードは仮装の姿に戻ったが、本物だった時のことは夢だと思っていた。 「まあハロウィンならではの夢だったな。さて、家に帰って寝なおすか」 背伸びをして欠伸をすると、ホールを出て行く。 調理室で和奏は自分が作ったお菓子が動かず・しゃべらずになったのを見て、首を傾げる。 「お菓子、静かになりましたね。残った分は家に持ち帰って、食べましょうか」 他の人はお菓子を気味悪がって捨てるように言ったが、それでも和奏は包んで持ち帰った。 ルオウは竜としてしばらく暴れていたが、薬の効き目がきれるとふと立ち止まる。 「アレ? 何かさっきまでと感覚が違うような……ああ、疲れたんだな。パーティーも終わることだし、着替えて帰るか」 人間に戻ったルオウはため息を吐くと、竜になっていたことを不思議に思わずホールを出た。 「あふぅ〜。何だか疲れちゃいましたぁ」 サイズが人間に戻ると同時に、ルンルンは巨大貧乏神から人に戻る。 「みなさんもお疲れのようで……。着替えて早く帰りましょう」 近くにいる人々がグッタリしている原因が、自分であることを気付かないルンルンは大きな欠伸をした。 「う〜ん……。何だか夢でも見ていた気分ね」 薬の効き目がきれたことに気付いた影蘭は仮装を脱いで、男の体に戻ったことを知る。 「でもまあ誰のイタズラかは知らないけれど、なかなか面白かったわよ」 窓から星空を見上げ、影蘭は失笑を浮かべた。 「およ? どうやらそろそろ、パーティーはお開きみたいじゃな」 「えっー! じゃあ急いでお菓子とお料理、食べなくちゃ!」 ユリアに仕置をされた後、小萩とリィムナは二人でパーティーを楽しんだ。 そんな二人の姿を、ユリアは微笑みを浮かべながら見つめている。 「『仲良きことは美しきかな』ってね。……さて、パーティーと共に体に起きていた変化も終わるようね。まあこんな楽しい体験なら、もうしばらくやっていたかったわね」 くすっと笑いながら、ユリアは窓の外に視線を向けた。 赤い満月が浮かび、数多くの星がきらめく中、<ジャック>と<しにがみくん>の追いかけっこはまだまだ続くのであった。 |