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■オープニング本文 神楽の都の開拓者ギルドの個室では受付職員をしている野衣が、幼馴染の偲那と困り顔で依頼の打ち合わせをしていた。 偲那は近所にあるジルベリア帝国の貴族の屋敷にメイドとして働いており、そこの主人と奥様から依頼を持ち込んでくることもある。今日もその一件なのだが、今回は真面目な空気が流れていた。 「えっと…、偲那の雇い主の依頼は『傷付いた人々をクリスマスパーティーに呼んで、癒してあげたい』って話だったわね」 「…うん。アヤカシに襲われた人とか天災に見舞われた人を集めて、屋敷の大広間でパーティーを行いたいらしいの。で、せっかくだから開拓者の人達にも協力してもらいたいって言っているワケだけど…」 「やること、多いのね」 「うっうん…」 クリスマス用の料理やお菓子を作ること、サンタクロースやトナカイの格好をして客をもてなすこと、楽器や歌を披露すること。また大広間は広いので相棒を呼ぶのも良いらしい。 「まあ料理の方は得意な人がいるだろうし、サンタやトナカイの格好をしてプレゼントを配ったりするのも良いでしょう。…問題は歌の方ね。開拓者は確かにいろんな国出身の人が多いけど、だからこそクリスマスらしい歌を知っている人もいれば、全然知らない人もいるわよ」 「う…ん。だからウチの奥様は、どうせなら作詞と作曲をしてもらうのも面白いかもって言ってたんだけど…」 「簡単に言ってくれるわね…。んん〜、でもまあ確かに知っている人が知っている歌を披露するより、作ったクリスマスらしい歌を披露した方がウケるかもね」 野衣は複雑な顔をしながら依頼書を書いていく。 何せやってもらうことが多い上に、ギルドとしても動くことがある。偲那の雇い主が言った『アヤカシや天災で傷付いた人々』を集めてこなければならないのだ。しかしそういった人々は身も心も深く傷ついている為、説得するのに苦労するのが目に見えている。 「だけど放っておくのが一番ダメ、か…」 野衣は疲れたようにため息を吐きながら、ボソッと呟く。 天儀では近年、クリスマスを楽しむようになってきた。周囲が浮かれているのに、取り残されたままでは余計に心は荒むだろう。 「プレゼントの方はこっちで用意するけれど、開拓者達の方でもあげたい物があれば出してもらっても構わないわ。子供達を多く招待するつもりだから」 いろんな事情で親がいない子供達を呼ぶ手配を、偲那達は行っているらしい。 「…はあ、分かったわ。とにかく楽しいクリスマスを過ごせるように、開拓者達には頑張ってもらうから」 |
■参加者一覧
鈴木 透子(ia5664)
13歳・女・陰
十野間 月与(ib0343)
22歳・女・サ
リィムナ・ピサレット(ib5201)
10歳・女・魔
松戸 暗(ic0068)
16歳・女・シ
草薙 早矢(ic0072)
21歳・女・弓 |
■リプレイ本文 ☆クリスマスパーティーへのお誘い 「すみませんね。パーティーの招待客に、声をかけて回るのまで手伝ってもらって…」 「寒い中歩き回りますけど…その格好で大丈夫ですか?」 野衣と偲那は屋敷の者が用意してくれた女の子用のサンタクロースの衣装を着ているが、自前のサンタ衣装を着て来た十野間月与(ib0343)の姿を凝視している。 うさぎの耳付きの衣装はなかなかに露出が激しく、しかし月与の美しい白い肌と豊満な体付きには良く似合っていた。 「平気さ。確かに肌が見えている部分は多いけど、このコートが暖かいんだ」 確かにコートは分厚く、前をしめれば暖かいだろう。しかしその下には、思春期の青少年が見たら真っ赤になって鼻血を出すような衣装になってる。 そんな月与の少し後ろには相棒でからくりの睡蓮がいるが、こちらは野衣と偲那と同じ衣装だ。 「しかし偲那さんのご主人達には感心するね。傷付いた人々の為に、クリスマスパーティーを行うなんてさ。世の中捨てたもんじゃないね。ささやかな手伝いしかできないかもしれないけどさ、悲しみや痛みに塞いでいる人達に少しでも温かな気持ちになれる一時を過ごしてもらいたいもんだね」 「そう言ってもらえると、主人共々わたしも嬉しいです」 「すでに招待客達のリストは作ってありますので、回って行きましょう」 野衣は偲那の雇い主に言われた通りの条件に当てはまる人々を、すでに見つけ出している。 「遮那王、あたし達も頑張りましょう。しっかり仕事をしましょうね」 野衣達と同じサンタ衣装を着ている鈴木透子(ia5664)は、相棒で忍犬の遮那王に言い聞かせるように話しかけた。 遮那王は応えるように、元気よく鳴きながら尻尾を勢いよく振る。 「私達が回るのは主にお年寄りや子供がいる家族の家です。アヤカシや天災のせいで、元いた村や町にはいられなくなってこちらに移住しています。なので住んでいる人々はまとまっているので、一軒一軒声をかけていきましょう」 「そうだね。あんた達の言うように、心身共に傷付いた人々をそのまま放っておくのが一番ダメだからね。元気に明るく声をかけていこうじゃないか!」 茶目っ気たっぷりに片目でウインクをして見せる月与を見て、緊張していた野衣と偲那の表情に笑みが浮かぶ。 そして野衣の案内で、パーティーに招待する人々の家を回って行く。野衣と偲那は招待状を渡しながらパーティーの説明をし、月与と睡蓮は持ってきた甘刀・正飴やもふらさまのオーナメント・クッキー、そして自費で三千文購入してきた菓子を配る。 「パーティーには美味しい料理やお菓子もたくさん用意してあります。怪我などで動けない方がいても、お迎えの人が来るので安心してくださいね」 「サンタクロース達からプレゼントを貰えます。それにクリスマスならではの歌や楽器の演奏を聞けたり、歌ったりもできます。遮那王と一緒に歌ってくださいね」 透子は遮那王を紹介しながら、人々に声をかけていった。 ☆クリスマスパーティー用の料理とお菓子作り 「パーティーに参加してくれる人達に、楽しんでもらえるようにがんばろー! まずは料理を頑張ろうか」 リィムナ・ピサレット(ib5201)は屋敷の調理場で、パーティーに出す料理を作り始める。 「まずはオリーブオイルをたっぷり使った鶏肉のソテー。やっぱりクリスマスといったら鶏肉だよね! そして生クリームたっぷりのクリスマスケーキ! 大きなイチゴ入りだよ♪」 楽しそうに鼻歌を歌いながら作っていくリィムナの近くでは、松戸暗(ic0068)がまな板の上に置いた山鳥をじっと見つめていた。 「クリスマスといえば七面鳥の丸焼きだが……作り慣れていないから山鳥を七面鳥の代わりとして、丸焼きを作るというのはアリだろうか?」 「良いと思うけど…その大量の山鳥、どうしたの?」 暗の調理台の上には山積みの山鳥があり、リィムナはソレを指差しながら問いかける。 「相棒で忍犬のまろまゆと一緒に、山でとってきました」 山鳥猟には犬の存在が重要。そして高い身体能力が必要とされるものの暗はシノビである為に、大量の山鳥をとってこれたのだろう。 「菓子の方は…こちらも作り慣れていないが、ケーキを作ろう。でもおはぎも作りたいな。あまりクリスマスに合わないだろうけど、どちらも甘味だし大丈夫だろう」 ブツブツと呟きながら、暗は作り始める。 リィムナは何か言おうとしたものの、一生懸命に作る暗の姿を見て、口を閉ざした。 一方で、篠崎早矢(ic0072)はパンケーキ作りの途中で悩んでいる。 「ふむ…、このままケーキを焼くのもつまらないな。どうせなら小判を入れて、焼くというのはどうだろう? それでケーキを切り分ける時に、当たった人に贈るというのを…」 「あんまりオススメできませんね」 そこへ声をかけたのは偲那だ。招待状を配り終えたのでメイド服に着替えて、開拓者達の様子を見る為に調理場に入って来た。 「天儀の人には馴染みのないことは、あまりやらない方が良いと思います。クリスマスというイベント自体、あまり知られていませんしね。奇抜なことをしても、驚くばかりで引かれる可能性があります」 冷静な偲那の意見を聞いて、早矢はがっくりと項垂れる。 「…そうか、良い考えだと思ったんだがな。ではこの家に栗の甘露煮はあるか? できれば丸ごと栗一つ使っているもの」 「ええ、ございます」 偲那が料理人に目配せすると、棚の中から瓶入りの栗の甘露煮を取り出し、早矢に渡した。 「ではこの栗をパンケーキの中に一つだけ入れて、当たった人に何かプレゼントするというのはどうだろう?」 「そうですね。当たった方が欲しい物をプレゼントするという形にしましょう」 「ああ。その方がクリスマスらしいか」 偲那の意見に賛同した早矢は、早速ケーキ生地に栗を一つ入れて焼き出す。 そして着替えた月与と睡蓮が、調理場に入って来た。 「さぁて、次は料理とお菓子作りを頑張ろうかね。睡蓮、手伝っておくれ」 睡蓮は心得たと言うように、強く頷いて見せる。 実家が小料理屋兼民宿を営んでいる月与はローストチキン、シチュー、ミートローフを手際よく作っていく。そしてお菓子はホールケーキにブッシュドノエル、ジンジャークッキーにクリスマスプティングを作っていった。 「生クリームケーキはすでに作っている人がいるし、あたいはチョコクリームやマロンクリームのケーキを作ることにしよう」 こうして続々と、料理とお菓子が出来上がっていく。 ☆クリスマスパーティー、開催! パーティーがはじまる時間が近づくにつれ、大広間には次々と招待客が訪れる。最初は不安そうな表情をしていたものの、開拓者達が頑張って作ってくれた料理やお菓子を食べたり、屋敷の人達が呼んだ演奏家達の明るいクリスマスの曲を聞いているうちに、徐々に打ち解けていった。 再びサンタ衣装に着替えた月与と睡蓮は、屋敷の者達が用意したプレゼントを白い袋に入れて、担いで大広間に入って来る。 「睡蓮、次はクリスマスプレゼントを配るよ!」 笑顔の月与に同意するように睡蓮は頷き、二人は人々にプレゼントを配っていく。 大広間の入口近くでは、月与と引けを取らないぐらいの露出の激しい女性用のサンタクロース衣装に着替えた暗と、頭にトナカイの角を付け、体にはトナカイの毛皮を着たまろまゆがいる。 「この屋敷にトナカイの毛皮があって良かった。角は作り物だが、良く似合っているぞ」 まろまゆは嬉しそうに鳴くと、尻尾をフリフリした。 「本当は私がトナカイの格好をして、まろまゆにサンタの格好をさせても良かったんだが…」 そして四つん這いになって子供達を背に載せる、というところまで計画していたのを聞いて、仲間達は『絶対に逆の方が喜ばれるから』と止めたのだ。 確かに暗のシノビとして均整のとれた体型には派手な女性サンタ服が良く似合っているし、まろまゆもトナカイの格好が良く似合っていて可愛い。 「まあどんな格好をしようとも、やることに変わりはない。さて、プレゼントを配りに行こうか」 暗は天儀酒、花札、薔薇の花、薬草、横笛、毛皮の手袋など、贈り物を持参していた。それらを偲那達が綺麗にラッピングしてくれて、まろまゆが引くソリの上に置かれたプレゼント袋の中に全て入っている。 「間違って酒を子供にあげないように、気をつけながら渡さなければな」 暗は愛想笑いを浮かべると、早速まろまゆと共に人々にプレゼントを渡しに行った。 そして早矢もまた、相棒の霊騎のよぞらにトナカイの格好をさせている。よぞらも作り物のトナカイの角を付け、毛皮を着せられていた。 「よぞらサイズのトナカイの毛皮がこの屋敷にあって良かった。よぞら、子供達に指をさされながら笑われるかもしれないけれど、今夜はクリスマスだ。これも一興と思い、決して怒ってはいけないぞ」 よぞらは承知したと言うように、ブルルっと鳴く。 「よしよし。無事にパーティーが終わったら、ニンジンを貰ってやるからな」 大好物のニンジンと聞いて、今度は前足でまえがきをする。おねだりの仕草だ。 「ニンジンが欲しいなら頑張ろう。まずは屋敷の人から預かったこのプレゼントを配っていこう。私の準備も万端だしな!」 しかし早矢のその一言で、ふとよぞらは冷静に戻った。 今の早矢の姿は自分自身に金色の星柄の緑色の包装紙や、赤いリボンを巻き付けたプレゼントの格好になっている。 「サンタクロースの格好をした者は大勢いるし、私はプレゼントの仮装でいく! 人々に引かれるのもまた一興というもの!」 それは何か違う――と頭の良いよぞらはツッコミたかったものの、早矢の怒りを買うことを恐れて黙っていることにした。 張り切って歩き出す早矢の後ろを、よぞらはプレゼント入りの白い袋を載せたソリを引きながらのそのそと歩き出す。 透子は用意してもらった女の子用のサンタクロースの格好をして、大広間の空いている所に子供達を呼び集めていた。 「これからこの遮那王と、追いかけっこをしてください。遮那王を捕まえることができたら、咥えているプレゼントを差し上げます」 遮那王は綺麗にラッピングされた、プレゼントのリボンの端を咥えている。 しかし子供達は犬の遮那王を少し怖がっているらしく、その表情には不安な色が浮かんでいた。 「あっ、遮那王は噛んだりしませんよ。撫でてもらうことが大好きな、人懐っこい犬です」 証明するように透子が頭を撫でると、気持ち良さそうに目を細めて甘えた鳴き声を出す。 「もし危険な行動をした場合は、素早くあたしがしばくので大丈夫です」 その一言で子供達はほっとした表情を浮かべるも、遮那王は衝撃を受けた顔付きになった。 しかし透子は無視して、こっそり遮那王に耳打ちする。 「分かっていると思いますが、逃げても最後はちゃんと捕まってくださいね」 遮那王はコクコクっと首を縦に振った。 「では、はじめてください」 こうして数人の子供達が、遮那王を追いかけ始める。 ちなみにプレゼントの中身は透子が持ってきたうさぎのぬいぐるみと、もふらのぬいぐるみだ。それらを屋敷のメイド達が、綺麗にラッピングしてくれた。贈り物を白いプレゼント袋に入れて、透子は担いで持ってきたのだ。 遮那王は身軽で機敏な動きで子供達から逃げるものの、突然つまずいたり、またはよそ見をしているうちに、というような方法で子供達に捕まっていく。 そして子供達全員にプレゼントは渡ったものの、遮那王は荒い息を吐きながら床に倒れてしまう。 「普通に走り回るよりも疲れましたね。とりあえず、お疲れ様でした」 遮那王の頭を、透子は優しく撫でる。 そんな仲間達の姿を中庭に出ているリィムナは窓越しに見て、新たに気合を入れた。 「みんな頑張っているし、あたしも頑張ろう!」 屋敷の人達に用意してもらったプレゼント入りの袋を肩に担ぎ、相棒の所へ向かう。 中庭にはリィムナの滑空艇のマッキSIが置かれており、近くには上着を羽織った野衣と数名のギルド関係者がいる。 「リィムナさん、準備は終えましたが流石にここら辺は住宅地であるので、出来るだけ控え目でお願いしますね」 「アハハ…。まっまあ努力するよ」 リィムナはミニスカートのサンタ衣装を着ており、それに合わせてマッキSIもクリスマス用に飾り付けをされていた。 中庭にいる野衣達が大広間の中に入るのを見た後、リィムナはマッキSIに乗って起動させ、空に上がる。 その間に野衣は、偲那にリィムナがマッキSIに乗り込んだ事を耳打ちした。すると偲那は頷き、招待客達に向かって声をかける。 「皆さん! これから中庭で良い光景が見られますよ。少々お寒いですので、こちらの毛布を羽織って外に出てください」 屋敷の使用人達から毛布を借りて、招待客達は寒空の下に出た。中庭には大きなクリスマスツリーがあり、その上でマッキSIが飛んでいる。 「みんな、出てきたみたいだね。よぉーしっ! 白、橙、赤、青、緑の五色の照明弾、連発だぁ!」 夜空に色とりどりの照明弾が光り、まるで花火のように見えた。 「さて、次の動きで神楽鈴が綺麗に鳴ってくれると良いなぁ」 そう言いつつ、リィムナは見事な曲技飛行を披露する。急反転を使うと、マッキSIに付けていた神楽鈴が良い音色を出す。 屋敷の敷地内でならば飛行することを許されたリィムナは、中庭から見える範囲で曲技飛行を続けた。そして急下降したかと思うと途中で空中静止し、そのままゆっくりと中庭に降りてくる。 クリスマスツリーの近くにマッキSIを着陸させ、プレゼント袋を担ぎながら降り立った。 「天儀のみなさーん! ジルベリア帝国のサンタクロースがプレゼントを運んできました!」 元気に笑顔で言いつつ、子供達に近付く。そして袋からプレゼントを取り出し、子供達に配っていった。 ☆クリスマスソングを歌おう! そして全員で歌を歌う時間になる。 睡蓮と歩いていた月与は暗が演奏者席に行き、太鼓の準備をするところを見つけた。 「おや、暗さんは楽器を演奏するのかい?」 「ええ。シノビは芸人に扮する事が多いので、一応演奏できます。まろまゆ、お前も歌に参加するんだぞ」 暗の近くにいるまろまゆは、了解したと言うように高く鳴く。 「洋楽器の中で、和楽器の演奏があるというのも面白いな」 そこへよぞらを引き連れた早矢がやって来る。 「私とよぞらは歌う側に回る。月与さんは?」 「あたいも歌う事にするよ。暗さん、演奏頑張って」 「はい」 透子は子供二人になりきり魔法使いセットを着せてあげ、また一番幼い子供にはねこみみ頭巾をつけてあげた。他の子供達にもブレスレット・ベルを貸してやる。 「パーティーの最後の催し物ですからね。最高に盛り上げる為に、頑張りましょう。みなさんの元気な姿を見れば、大人達は元気になりますからね」 子供達が元気に返事をしたのを聞いた後、遮那王に向き直る。 「遮那王も練習したことですし、元気に歌いましょう」 この時の為に歌う練習をしてきた遮那王は、元気に鳴いた。 「歌も盛り上げるぞー! 鈴の音を出しながら、あたしは歌うよ!」 リィムナは神楽鈴にホーリーコートをかけ、白色の光をまとわせる。そして聖鈴の首飾りを付け、準備完了。 「さあ! みんなで元気に歌おう!」 笑顔は素敵な魔法だね 何も無くたって 笑顔を見ればあったか気分♪ 皆で笑えば 幸せな気持ちが広がってくよ だからスマイル♪ 手と手を取り合って そうさスマイル♪ 辛く苦しい時だって 笑い合おうよ 笑顔は最高のプレゼント♪ 誰もが皆 サンタクロースになれるんだ♪ スマイル ハッピー クリスマス♪ ☆パーティー後 「皆さんをお見送りしたいところなんですが、参加してくれた方々を家まで送り届けなければいけませんので…」 「ああ、分かっているよ。行っといで」 「あたし達の事は気にしないでください」 申し訳なさそうな顔をする偲那に、月与と透子は優しく微笑みかける。 パーティーは大成功で終わったものの、すでに夜遅かった。このまま招待客達を帰すのも気がかりだと奥様が言うので、屋敷の使用人達が家まで送ることになったのだ。 「使用人さん達はパーティーの後片付けもあるんでしょう?」 「我々には相棒がいますし、勝手に帰りますから」 「報酬はちゃんとギルドに払っておいてくれ」 リィムナ、暗、早矢に次々と言われ、偲那はほっとしたように笑みを浮かべる。 「今日は本当にありがとうございました。皆さんも良いクリスマスをお過ごしください」 頭を下げた偲那は、野衣と共に招待客達の所へ行った。 ☆パーティー帰り 「いやぁ、盛り上がったパーティーだったね、睡蓮。あたいの作った料理やお菓子も喜んで食べてもらえたし、良いクリスマスだったよ」 帰り道、睡蓮と共に歩く月与は満足気な表情を浮かべる。そんな月与の少し後ろを歩く睡蓮も、どこか嬉しそうな表情を浮かべていた。 「今日は仕事をこなしたけど、明日は家族の為に働かなきゃねぇ。本当に年末年始は忙しくてまいっちまうよ」 そう言いながらも楽しそうな月与を見て、睡蓮はかすかに口元に笑みを浮かべる。 「今日はいろいろと忙しかったですけど、楽しかったですね」 透子は疲れて眠っている遮那王を抱きかかえながら、夜道を歩いていた。 「でも最後の歌で、ちゃんと遮那王も歌えて良かったです。本当はパーティーの後片付けもお手伝いしたかったのですが…」 パーティーが終わった途端、遮那王がウトウトしてきたのを偲那が見て、やんわり断ったのだ。 透子は幸せそうに眠る遮那王の顔を見て、優しく微笑みかける。 「今日はよく頑張りましたね」 「おぉ! 天儀もクリスマスだと夜景が綺麗だね〜!」 マッキSIに乗りながら帰ることにしたリィムナは、都を見下ろしながら夜景を堪能していた。 「いつもはプレゼントを貰う側だけど、あげる側になるのも楽しかったなぁ。やっぱりイベントは大勢で楽しんだ方が良いよね!」 明るく言うリィムナの頭の中にふと、姉妹達の姿が浮かぶ。 「…でもあたしはまだ、家族と一緒に過ごす方が良いな」 ぼそっと照れ臭そうに呟きながら、家を目指すのであった。 「まろまゆ、どうした?」 暗は不意にまろまゆが立ち止まり、空を見上げていることに気付く。同じように見上げれば、闇色の空から白い雪が舞い降りてきた。 「ああ、雪の匂いがしたのか。…天からのクリスマスプレゼントか」 まろまゆが嬉しそうに吠えるのを見て、暗は笑みを浮かべる。 「明日、積もったら雪遊びをしようか?」 暗の言葉に、まろまゆは尻尾を大きく振って喜びを現した。 「犬は雪が好きだからな。明日は相棒孝行しよう」 早矢はよぞらと共に歩きながら、帰り道を歩く。 「よぞら、私が作ったパンケーキの中に入れた栗は、若い青年に当たったんだ。何でも巨大な台風のせいで村が壊れてしまったらしくてな。こちらに引っ越してきてもなかなか仕事が見つからないと困っていたのを屋敷の主人が聞いて、今度紹介することになったらしい。…ふふっ、こういうのも良いものだな」 よぞらも早矢と同じ気持ちだと言うように、頷いて見せる。 「クリスマスに誰かの為になることをするというのは気持ちが良い。…たまには戦いではなく、こんなふうに人の為になることをするのも良いな」 嬉しそうに笑顔になる早矢を見て、よぞらは顔をすり寄せた。 「そうか、お前も同じ気持ちか。きっとみんなも、同じ気持ちだろうな」 白い雪は一晩中降り続き、翌朝には都を真っ白く染める。 そして雪を喜ぶ人々の声と笑顔が、都中に満ちた。 【終わり】 |