怨念洞窟を解放せよ!
マスター名:hosimure
シナリオ形態: ショート
危険
難易度: 普通
参加人数: 6人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2012/12/27 16:50



■オープニング本文

 神楽の都の開拓者ギルドで受付職員をしている京司と京歌の兄妹は、微妙な顔で依頼調役達が調査を終えるのを待っていた。
 場所は山の中にあるとある洞窟で、ここは有名な観光の場となっている。理由はこの洞窟は特殊な岩石で出来ており、中は太陽や月の光が入って明るい。そして岩石は鏡のようになっており、通り過ぎる人々の姿を映し出していた。その為、多少寒くても幻想的で不思議なこの洞窟を訪れる人々はいたのだ。…が、それも数日前の話である。
 開拓者ギルドで上司から話を聞いた時、正直、京司と京歌は半信半疑だった。しかし洞窟に入った数人の調役達が次々と悲鳴を上げながら飛び出して来るのを見ると、信じるしかない。
「…兄さん。洞窟に入って、自分の目で確かめてきたら?」
「ヤダよ。何で自分の素っ裸を見なきゃいけない?」
「正確には下着一枚の姿よ。大丈夫よ、奥に行かなきゃ怨霊にも会わないわ」
「そう言う問題じゃないだろう」
 そう。この洞窟は奥に行くほど、映る姿が下着姿になっていくのだ。
 しかも複数の怨霊が出没し、人々を襲っている――が『襲う』と言っても怪我人は出ていない。大人の頭ぐらいの白く丸い怨霊には、悲しそうに開く黒い両目と口があり、人間を見つけると体当たりしてくるのだが、その衝撃はポカっ!と叩かれた程度しかない。ただ動きは早いのでどつかれまくってコケた人はいるが、今が冬で厚着をしていた為に無傷だったのだ。
 ここは元々、恋人達が多く訪れていた場所なだけにその話はあっという間に広がり、ギルドまで届いた。
 流石に女性が中に入って調べるのは躊躇われた為、男性達が先に入って調査したのだが、誰もが奥に行くにつれて自分達が映る姿が下着一枚になり、怨霊も複数いて襲われたのだと口々に言う。そして洞窟は岩石で出来ている為に、洞窟中に自分達の下着一枚姿が映ってしまい、嫌なものを見たという顔になっている。
「あ〜、一応あたしの方で調査してみたんだけどね。どうやらこの洞窟、昼間は恋人とか見物人達が多く来るみたいなんだけど、夜になるとここで嘆く男性が多く来ていたみたい」
「何で男が集まるんだ?」
 京司の問いかけに、京歌は顔を引きつらせた。
「…何でもここは恋人達の間では評判の場所だったみたいで、それを妬んで独り身の男達が人気のなくなった夜にここに来て、悪口だか嘆きだかを吠えていたんですって。で、一通り叫ぶとスッキリするってことでも評判だったみたいで…」
「つまり恋人や奥さんのいない男達が、恋人を妬んで叫んでいたってわけか。しかも洞窟は声が響くし通るから、言った後はスッキリしたんだ。そして?」
「……で、吐き出した怨念がこの洞窟に溜まったから、例の下着一枚の姿に見える現象を引き起こし、更には怨霊まで生み出したんじゃないかって話」
「はあ…。でも怨霊は分かるけれど、下着姿は何でだ?」
 京司の疑問に京歌は肩を竦めたものの思いあたることがあるのか、顔をしかめた。
「…ここからはあたしの想像。冬って着込むじゃない? だから体型ってある程度、自分で作れるのよね」
 例えば女性であれば胸の部分を膨らませたり、本当は細身の男性は体格良く見せたりと、服の着方次第で体型が誤魔化せるのだ。
「それで本当の体型を知ったらどうなるか? …ってのを、やってみたかったんじゃない? つまり、恋人の仲を引き裂きたいのが目的かもね」
「…涙ぐましい目的だ」
 そう言う京司の目には、本当に涙が浮かんでいる。
「まっ、どんなアホな目的でも怨念が溜まっているのは放っておけないわ。今でこそまだあの程度の怨霊だけど、もしかしたらアヤカシになるかもしれない」
「まあ確かに否定はできないな」
「開拓者達にはとりあえず、怨念の核となる物が洞窟のどこかにあるはずだから、それを捜して破壊してもらいましょう」
「でも洞窟の奥に行くと、下着姿が洞窟中に映るんじゃあ…」
「我慢してもらいましょう」
「うえっ!?」


■参加者一覧
神町・桜(ia0020
10歳・女・巫
天河 ふしぎ(ia1037
17歳・男・シ
水月(ia2566
10歳・女・吟
蓬仙 霞(ib0333
22歳・女・志
リィムナ・ピサレット(ib5201
10歳・女・魔
エメラダ・エーティア(ic0162
16歳・女・魔


■リプレイ本文

●女だらけの開拓者達?
「まったく…。何と言うか、変な怨念が集まった洞窟じゃのぉ。まっ、今回は女性だけだし、平気じゃろう」
 神町・桜(ia0020)は洞窟の中で襲ってくる怨霊達を、少剣・狼で切り裂きながら前に進む。
 しかし怨霊がまるで豆腐を切るような手応えで倒せることに、思わず呆れ顔になってしまう。
「…数は厄介じゃが本当に弱いのぉ、こやつらは。やはり怨念の元が残念だからじゃろうか?」
「だが人に害をなす怨霊には変わりない。荒ぶる怨念は、ボクらの手で鎮めよう。安らかに眠るといい」
 蓬仙霞(ib0333)は真面目な表情で両手で殲刀・朱天を握り締め、最小限の動きで怨霊を斬りまくる。
「んっ…。恋人さん達の為…頑張る…」
 エメラダ・エーティア(ic0162)は魔導書・年代記書を両手で持ち、襲ってくる怨霊をポンポン叩いて消しながら、周囲をぐるっと見回す。
「…でもこの洞窟…とても幻想的…。評判になるのも…納得。怨霊がいなければ…もっと良さそう…。残念…」
「うん、そうだね。でもこの洞窟、本当に奥に行くにつれて薄着に見えてくるんだね」
 リィムナ・ピサレット(ib5201)は霊力が込められた千早・如月を着用しており、袖を振り回して怨霊を叩き潰していく。
「みんながどんな下着をつけているのか、興味津々だよ! …ん? 何か顔が赤いけど大丈夫?」
 リィムナは霊剣・御雷と妖刀・血刀をそれぞれ手に持ちながら、怨霊を斬っていく天河ふしぎ(ia1037)に声をかける。ふしぎの顔は奥に進むにつれ、どんどん赤く染まっていく。
「だっ大丈夫! 恋人達の憩いの場を荒らすなんて、正義の空賊としては絶対に許せないんだぞ! …べっ別に変な期待なんかしていないんだからなっ!」
「ほんとに迷惑な話もあったものなの。恋人さん達の為にも、この洞窟を綺麗サッパリにするの」
 水月(ia2566)は真剣な顔付きになりながら、闘布・舞龍天翔を操り怨霊を倒していった。


●透けていく服装
 京歌と依頼調役達の報告から、怨霊や現象を発生させている核が洞窟の奥にあるだろうと予想を立てて進んでいた六人だが、洞窟に映るその姿はそろそろ下着に近付いている。
「ふぅむ…。やはり奥に行くにつれ、怨霊の怨念濃度が濃くなっていくのぅ」
 桜は剣に魔祓剣をかけ、怨念濃度をはかっていた。
「ううっ…! 洞窟を傷付けないように慎重に戦っているが、壁や床に薄着姿の自分が映っているのを見ると……う〜!」
 霞の顔は真っ赤になっており、羞恥心と使命感の間で揺れ動いているせいか、刀が微妙に震えている。
 エメラダも恥ずかしそうに頬を赤く染め、そわそわしていた。
「んっ…。少しずつ…薄着になっていく…。ちょっと、恥ずかしい…。でも…女性だけで、良かった…です。みなさん、平気そう…。すごい…です」
「本当に服が透けて見えるんだね。あはっ! 千早・如月も巫女装束だから透けちゃうんだね。見えない武器で戦うってカッコ良い!」
 リィムナは両手を振ってみる。自分自身を見てみれば確かに服は着ているが、洞窟の壁や床に映るのは薄着の姿でその違いが楽しいらしく、はしゃいでいた。
「うおおーっ! 見てないっ、僕は見ていないんだからな!」
 ふしぎは自分以外の仲間達の姿が薄着になっていくのを見ないように、先頭で戦う。
 そんなふしぎの姿を見て、水月はきょとんとする。
「恥ずかしいの、かな? 実際に服が消えるわけじゃないから寒くもないし、あくまでも映る姿が薄着に見えるだけだから、わたしは別に恥ずかしいとかは全然ないけど…」
「水月は強いな…。ふしぎもボクも見習わないといけないな」
 モジモジしながら戦っている霞は、感心するように水月を見つめた。
「お仕事受けた開拓者なら、こんな事ぐらいじゃ動じたりはしないの。えっへん」
 水月が自慢げに胸を張った時だ。
「みんなっ! 怨念の核のような物が奥にあるぞ!」
 ふしぎが洞窟の最奥で、大人の男性の拳一つ分の大きさの石を見つける。地面に転がっているだけの石だが、その表面には悔しそうに怒り泣きをしている男の顔が浮かび上がり、そこから怨霊が次々と生まれていた。
 ふしぎの言葉を聞いて五人は一斉に走り出し、最奥の場に入ろうとする。
 しかし先頭のふしぎが先に入り、床に映る自分の姿を見て後ろに下がった。
「ダメだっ! 下がって!」
 突然ふしぎが後退したものだから五人は次々と互いの背中に激突して、その場に尻餅をつく。
「向こうに出ると、とうとう下着一枚になってしまうみたいだ…! 怨霊も大量に出ているし、みんなはここで怨霊を倒してほしい。僕があの核を破壊してくる!」
「何を言うておるのじゃ! 一人で無事に済むと思っておるのか? 下着姿になることなら、女性ばかりじゃし気にはせぬのじゃ。…まっまあ流石に下着一枚の自分の姿を見るのはアレじゃが……しっしかしここで気にしていては依頼達成にならぬのじゃっ!」
 桜がふしぎの背にぶつけた鼻を手で押さえながらも、必死で止めようとする。
「そっそうだぞ、ふしぎ! ボクは下着はその…ショーツのローズレッドしか着ていないけれど、こっここで逃げ出したりはしない!」
 霞は恥ずかしそうに顔をしかめながらも刀を握り締め、必死に訴えた。
「下着一枚の姿…映っていると思うと恥ずかしい…。でも女性だけだし…」
 エメラダも覚悟を決めるように呟くも、ふしぎは何か言いたげに戸惑っている。
「いっいや、そういう意味じゃなくて…」
 そこへ水月がふしぎの所へ行き、腕をぽんっと叩く。ふしぎをじっと見つめる水月は、視線でこう語る。
「(ふしぎさんなら下着姿になっても、男の人だってバレないと思うから…。堂々としていれば大丈夫だよ)」
 そしてこくっと頷いて見せるものの、ふしぎの表情は引きつった。
「そっそんな純粋な眼で僕を見ないでくれー! よっ邪な心なんて僕には無いっ! 無いんだぁ!」
 頭を抱えながら叫ぶふしぎを見て、水月は不思議そうに首を傾げる。
「…何か問題があるのかな?」
 続いて桜、霞、エメラダもふしぎが騒ぐ意味が分からず首を傾げるのを見て、リィムナはアハハと苦笑した。
「う〜ん…。こうすればみんな、分かるかな?」
 リィムナはスタスタと前に出て、悶えているふしぎの背中を思いっきりどんっと押す。
「うわぁっ!? リィムナ君、いきなり何をするんだよ!」
 ふしぎは最奥の場に出ながら、五人と向かい合う。
 しかし水月とリィムナ以外の三人は、ふしぎの姿が映っている壁や床を見て硬直している。
 ふしぎは女性向けの下着のようなローライズ一枚の姿になっていた。細身の体に、胸の膨らみは全くなく、しかも明らかに下半身は女性ではない証拠があった為に、一気に桜、霞、エメラダは顔を真っ赤にして大声で叫ぶ。

「「「きゃああああーーーっ!」」」
 
 ――その叫びは洞窟内に大きく響き渡り、咄嗟に耳をふさいだ水月とリィムナだったが顔をしかめ、ふしぎは後ろに引っ繰り返り、怨霊達も動きを一時停止した。


●核への攻撃は…
「…とりあえず確認しとくのじゃ。下着は何を着ておる? わっわしはまさか男がいるとは思わなかったから、白褌しか着ておらん」
 桜は恥ずかしいのを誤魔化すように咳を一つし、改めて作戦会議をすることにする。
 ちなみにふしぎは霞が目をそらしながらもこちら側に引き戻した後、今まで性別を黙っていた罰として、桜、霞、エメラダから一発ずつ頭にゲンコツを落とされた為、俯せで床に倒れていた。
「ボクはさっき言ったけど……ショーツ一枚」
「わっ私は…紐ショーツ…」
 霞とエメラダは頭から湯気が出そうなほど恥ずかしさに震えながらも、答えてくれる。
「わたしはぱんつだけだけど、恥ずかしくないから大丈夫」
「あたしは桜染めのさらししか着てないよ。狭い洞窟の中でも、戦いやすくする為にね」
 水月とリィムナの答えを聞いて、三人の女性達は困惑気味な顔付きになった。
「本人が気にせぬと言っても、ふしぎはそうはいかんじゃろう」
「ここはやはり、ふしぎに核を破壊しに行ってもらって、ボク達は襲ってくる怨霊達を倒すという方法をとった方が良いだろう」
「そう…ですね。ふしぎさんには…核だけを見てもらって…、私達は怨霊に…集中しましょう」
 桜、霞、エメラダは勝手に決めて、うんうんと頷き合っている。
 水月とリィムナは同情する視線を、倒れているふしぎに向けた。
「…とみんな言っているけど、大丈夫?」
「まあそれ以外の方法は三人が納得しないだろうね」
「ううっ…、分かったよ。元からそうするつもりだったしね」
 頭の痛みに顔をしかめながらも、ふしぎはゆっくりと起き上がる。


●そして核の破壊へ
「行くよ!」
 ふしぎは剣と刀を手に持ち、最奥に出た。そして核に向かって走るも、大量の怨霊が襲ってくる。
「させない…!」
 エメラダが威力を抑えたサンダーを放ち、ふしぎの目の前まで来ていた怨霊を倒す。
「ふしぎっ、怨霊の方はわしらが引き受ける! その間に核を破壊するがよい!」
「分かった! 桜君、みんな、頼んだよ!」
「じゃが後ろは見るではないぞっ!」
 強く叫んだ桜と他の四人の女性達は互いに顔を見合わせると、覚悟を決めて同時に最奥の場に出た。
「くぅっ…! 映る自分の姿が気になるが、そうも言ってられんのぉ!」
 桜は月歩で怨霊の攻撃を回避しながらも、剣や蹴り技を使って倒していく。
 普段は中性的な外見のせいで性別を男の子に間違えられやすい桜だが、その肌はきめ細かく、女の子独自の白い肌が美しい。
 しかしうっかり白褌一枚の自分の姿を見てしまうと、恥ずかしがって動きが素早くなる為にかなり良い動きで怨霊を退治していった。
「ふしぎは絶対に振り返るなよ! ううっ〜! まさかショーツ一枚の自分の姿を見ながら戦うことになるとは…! …しかも上半身は何も着けていないし。あともう少し…もう少しでこの戦いが終わるから、頑張んなきゃ…!」
 霞は片腕で胸を隠しながら戦うも片手で刀を扱うのは難しく、体のバランスを崩しがちだ。
 壁や床には霞の豊満な体付きと白い肌がはっきりと映っており、下着一枚で戦う姿を自分の眼で見てしまうたびに頭の中で何かが切れていく音がする。
「こっこうなったら、射程距離があるスキルの精霊剣で核をっ…!」
「だっダメですっ…、霞さん…! 洞窟が…崩れてしまいます」
 紐ショーツ一枚の姿で魔導書を手に持ちながら、顔を真っ赤にしてモジモジと戦うエメラダに止められ、霞は冷静になった。
 エメラダは細身の体で雪のように美しい色白の肌をしているが、今は恥ずかしさのせいで桃色に染まっている。
 恥ずかしいのは自分だけではないことに気付き、霞は反省した。
「すっすまない、エメラダ。動揺していたようだ。あっ、恥ずかしいのならボクの後ろに隠れるといい」
「でっでも…」
「後ろを守ってくれる人がいると、ボクは戦いやすいんだけどな」
 弱々しく微笑む霞を見て、エメラダも柔らかな笑みを浮かべる。
「んっ…、分かり…ました。霞さんの背中は…私が守ります…!」
 霞とエメラダは互いに背中を預けながら戦うも、水月とリィムナは平然と戦っていた。
 水月はシナグ・カルペーを発動させて回避能力を上昇して怨霊の攻撃を避けつつ、闘布でイムヒアを使って舞うように怨霊を倒していく。
 リィムナはホーリーコートを使って攻撃力を上げ、袖で怨霊を打ち払っていった。
 しかし二人はふしぎを守るように近くにいる為、ふしぎの顔は湯気が出るほど熱くなっている。
「水月、リィムナっ! キミ達には恥じらいというものがないのかっ!」
 見かねた霞が大声を上げるも、二人はキョトンとして振り返った。
 水月は色白の素肌が見えており、ぱんつ一枚で戦っている姿が壁や床に映っている。
 リィムナは胸にさらしを巻いているものの下は何も履いていない為に、スクール水着型に日焼けした肌がくっきりと映っていた。
「だって、ふしぎさんを守らなきゃだし…」
「あはっ、本当に丸見えだねぇ」
「リィムナ! 腰を振ってセクシーポーズをするなっ!」
 霞に怒られ、リィムナは肩を竦める。
「はいはい。ふざけている場合じゃないしね」
 顔では笑いながらも、その眼は真剣に大量の怨霊を見ていた。
 しかし水月は核に映っている顔を見て、少し悲しそうな表情を浮かべる。
「あの核に浮かぶ顔、とても悲しそう…。悲しみを鎮めてあげたい…」
 水月は静かに心の旋律を、ローレライの髪飾りを使って唄い始めた。
 すると核から生み出される怨霊の数が減ってくる。
「今がチャンスだっ!」
 ふしぎはその隙を逃さず核に向かって走るも、すでに生み出されていた大量の怨霊が襲ってきた。
「邪魔はさせないよ! 喰らえっ! 光纏円舞!」
 リィムナはすかさず怨霊達の前に出て、両腕を伸ばし、体を回転させて袖を振り回しながら倒していく。
「今のうちに核を破壊して! あたしの目が回る前に!」
 確かにクルクルと回り続けていれば、いずれは目も回るだろう。
「リィムナ君! すまない!」
 こうしてふしぎは核へ一気に近付き、剣と刀を交差させて十文字に斬った。

 ――オオオオォォォォォォ!

 声にならぬ男達の絶叫が響いたかと思うと、斬った石から大量の黒い煙が出てきて、そしてすぐに消える。煙が消えると同時に怨霊達も消え去り、洞窟に映る姿は服を着用している姿のままになった。


●怨念は払われたが…
「まったく…。とんでもない依頼じゃった」
「んっ…。騒ぎ…疲れました…」
 桜とエメラダはグッタリした表情で、洞窟から出てくる。
「あたしはなかなか楽しかったよ♪ 女の子達の体をいっぱい見られたしね!」
「ボクは酷い目にあったと思う…」
 満足げに微笑むリィムナと、うんざり顔の霞も続いて出てきた。リィムナは軽く笑い飛ばしながら、霞に声をかける。
「何言ってるんだよ。その服装から見える体型と、下着一枚の時の体付き、どっちもあんまり変わんなかったよ?」
「…つまりそれは、ボクの露出が激しいと言いたいのか?」
「その通り!」
「よっ余計なお世話だぁ!」
 騒ぐ二人の後ろからは、やや落ち込み気味のふしぎと、そんな彼を心配そうに見つめる水月がいた。
「水月君はその…僕に下着姿を見られて、恥ずかしいとか思わないのか?」
「んー…。今回はお仕事だったから……ごめんなさい」
「いっいや、謝らなくてもいいよ」
 口ではそう言うものの、水月に異性として意識されていないことにちょっと傷付くふしぎであった。
 しかしチラッと彼女の方を見れば、純粋な瞳がまた自分を真っ直ぐに見つめていることに気付き、再び心にダメージを負う。
「へっヘタな怨霊よりも、手強いんだぞ…」
 水月の無垢なる思いに、ヤられそうになるふしぎだった。


【終わり】