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■オープニング本文 「雛奈ちゃん、こっちよ」 「野衣さん、お待たせしました」 神楽の都で開拓者ギルドに受付担当として勤めている野衣と雛奈は、ギルドの相談室で待ち合わせをしていた。 「これから来る依頼人って、私の幼馴染でメイドをしている偲那に…」 「わたしの幼馴染の春香です」 以前二人には頭が痛むような依頼をされた事もあり、野衣と雛奈は険しい表情を浮かべる。何故だか分からないが、面識が無かったはずの偲那と春香の二人一緒に依頼があると言われ、野衣と雛奈はこの場を用意したのだ。 「…何かイヤーな感じしかしないのよね」 「わたしもです…。特に春香は地元で行われる祭りのまとめ役をしている家の娘ですから、今回もその辺りの気がするんですよね」 暗い顔をしている二人とは正反対に、明るい調子で依頼人達はやって来た。 「野衣ちゃん、お待たせー」 「雛奈、良い依頼を持ってきたわよぉ」 底抜けに明るい二人の笑顔の光を浴びて、二人はよりいっそう暗くなる。 「…で、何で偲那が雛奈ちゃんの幼馴染の春香ちゃんと知り合いなの?」 「だぁって今回の依頼、春香ちゃんのおウチの力がないとはじまらないんだもの」 偲那の答えを聞いた野衣の全身に、鳥肌が一気に立つ。とんでもない依頼をされることを、察してしまったのだ。 「春香っ! アンタ一体どんな依頼を引き受けたのよ?」 「やぁねぇ。あたしはあくまでも中継ぎの役目をするだけよ。実行するのは開拓者達の方」 サーっと血の気が引いた雛奈は思わずふらつくも、何とか机にしがみついて体勢を直す。 「それで二人とも、今日はどんな依頼なの?」 思いっきりイヤ〜そうな顔をする野衣に、二人は声を合わせて依頼を告げる。 「「開拓者達でハロウィンパレードをしましょーよ!」」 「帰れーーーっ!」 すぐさま雛奈が立ち上がり、二人に怒鳴りつけた。 野衣は手で眼を覆い、がくっと項垂れる。 少々気の弱い偲那は、春香の後ろに隠れるように身を潜めた。 「なっ何で怒るの?」 「良いじゃない! 大通りを開拓者とその相棒が仮装してパレードするの!」 「しかも相棒込みっ!?」 春香の言葉に、再び雛奈は衝撃を受ける。 何も言えなくなってしまった野衣と雛奈に、偲那はおずおずと説明を始めた。 「あっあのね、ウチの旦那様と奥様が言ってたことなんだけど…」 異国ではこの時期、ハロウィンパレードを行う。しかしこちらの国ではあまりハロウィンを楽しまないので、少々寂しい気持ちになっていた。そこへ偲那が、 「それならば開拓者ギルドに依頼するというのはどうですか? それも相棒付きで。きっと派手なパレードになりますよ」 と言ったところ、笑顔で乗り気になったという。 そして地元の許可も得られなければならないということで、偲那が春香の家に行ったのだ。そこで開拓者ギルドの話題で盛り上がり、お互い受付担当者に幼馴染がいることを知ったらしい。 「でもハロウィンって確かかぼちゃの提灯を作って、夜に仮装した子供達が近所の家を訪れてお菓子を貰うというお祭りでしょう? パレードって何か違うんじゃない?」 「野衣ちゃんはやっぱり物知りだね。確かに本当のハロウィンパレードは子供達がやるけど、こっちの国では知っている人は少ないでしょう? だから開拓者の人達が仮装して、都の大通りを相棒を連れて歩くだけってことにしたの」 「ハロウィンパレードの宣伝はあたしの方でやることになったの。この神楽の都には開拓者ギルド本部があっていろいろな人が集まるし、多いでしょう? きっと盛り上がるわよ〜」 偲那の説明を春香が引き継ぐも、雛奈は眉を寄せる。 「…でも下手すると、百鬼夜行に見えるんじゃないの?」 雛奈はパレードの光景を想像してみたものの、仮装した姿の開拓者にその相棒達が大通りを歩く姿は、どうやっても百鬼夜行しか思い浮かばない。特にパレードを行うのが夜のせいもあるだろう。 「あっ、何ならスキルを使って、パレードを見に来た人達を喜び驚かせるっていうのも良いんじゃない?」 「偲那さん、良い考え! 確かにスキルって魔法みたいに見えるものね。じゃ、人に見せる為のスキルの使用もありってことで」 「勝手に決めないでよ、春香っ!」 「ひっ雛奈ちゃん、落ち着いて!」 勝手にサクサク話を進める二人に、雛奈の怒りは頂点に達した。それを何とか野衣が宥めて、改めて話に戻る。 「はっ話をまとめると、開拓者にやってほしいのはパレード。仮装した姿で、しかも相棒付きのスキルの使用ありでってことね」 「うん!」 「そうです!」 笑顔で偲那と春香は頷くも、野衣は苦笑し、雛奈は難しい顔をした。 「まあ悪い依頼じゃないと思うわよ? こういう企画に開拓者の相棒を参加させるのは楽しそうだし、開拓者の中にはこの国以外の出身の人だって多くいるでしょう? だから喜ばれると思うわよ」 「…春に桜祭り、夏に夏祭り、秋にハロウィンね。……まっ、野衣さんが良いと言うのなら、引き受けましょう」 渋々ながらも、春香は依頼書を書き始める。 |
■参加者一覧
リィムナ・ピサレット(ib5201)
10歳・女・魔
ルゥミ・ケイユカイネン(ib5905)
10歳・女・砲
Kyrie(ib5916)
23歳・男・陰
ナキ=シャラーラ(ib7034)
10歳・女・吟 |
■リプレイ本文 ●ハロウィンパレード開催前 「…で、雛奈ちゃん。何で私達、こんな格好をしているのかな?」 「それはね、野衣さん。あの二人が勝手にわたし達をこの依頼の担当者にしたからですよ」 夜、開拓者ギルドの前で、ギルド職員であるはずの野衣と雛奈は何故か、ハロウィンパレードの関係者用の和服を着て働いていた。関係者の仕事は開拓者達の準備の手伝いをしたり、パレードの調整をしたりと何かと忙しい。二人も参加者の名前と人数を確認して回り、ようやく職場へと戻ってこれたのだ。 数日前から準備に追われており、二人はぐったりした表情でため息をつく。 「二人して、そんな顔してどうしたの?」 「今日はせっかくのパレードよ? 大勢の人が見に来ているんだし、明るい顔しなさいよ」 同じく関係者用の和服を着た偲那と春香が来たが、二人は明るい顔をしている。この二人はパレードの準備に専念できていたが、野衣と雛奈はその上にギルドの仕事もこなしてきたので疲れがたまっているのだ。 すでに文句を言う気力もない二人に、偲那と春香は続ける。 「そろそろ時間だし、打ち合わせ通り二人はパレードをする開拓者達に付き添って歩いてね」 「一応、道と観客達の間は縄で区切ってあるけど、飛び出す人がいないとは限らないしね。それにパレード中に何が起こるか分からないし、ちゃんと開拓者達をサポートしてよ」 「分かっているわよ…」 「それじゃあ行ってくるわね」 今更グダグダ言っても始まらないので、野衣と雛奈はトボトボと持ち場に向かうことにした。 ●ハロウィンパレード開催! パーンッパパーンッパンッ! 開催の合図の花火が派手に上がる。パレードは開拓者ギルドの前から始まる為、大勢の人が密集している中、野衣と雛奈は開拓者達と共にゆっくりと歩き出す。 まずKyrie(ib5916)がパートナーである土偶ゴーレムのザジに縦長の荷車を引かせ、荷台には洋楽器や大きなカゴを乗せている。荷台の外観には黒いレースを飾り付け、中には黒い布を敷き詰めていた。 楽器の演奏組は列の後方にいて、Kyrieもそこにいる。 「さあ、楽しいパレードに致しましょう」 荷台に置いてあるエレメンタル・ピアノの前のイスに座り、Kyrieは演奏を始める。まずは開演ということもあり、明るく楽しい曲を弾く。 Kyrieの仮装はスーツ・ナイトロードを着て、顔にはゴシックメイクをし、紅い唇からは付け牙が見えている吸血鬼の姿になった。 ちなみにザジはいつも道化師の姿なので、今日もそのままの格好で参加している。Kyrieの演奏を聞いて、楽しそうに小刻みにリズムをとりながら荷車を引いていく。 Kyrieは今のクラスは巫女であるが元は吟遊詩人だっただけに、楽器の演奏は玄人並み。楽しそうに、素晴らしい演奏をする。 「おおっ! 凄く大勢人が集まっているねぇ、チェン太。今日は頑張ろうね♪」 先頭の方にいるリィムナ・ピサレット(ib5201)は炎龍のチェンタロウの背に乗りながら、観客達の多さを見て喜んだ。 リィムナは南瓜の被り物を被り、聖十字の鎧を身につけた騎士の仮装をしている。 しかしはしゃぐリィムナとは対照的に、チェン太は浮かない顔をしていた。 「そんな顔しないで、チェン太。後でちゃんと洗って綺麗にしてあげるからさ」 暗雲を漂わせるチェン太に、リィムナは何とか機嫌を直してもらおうとする。 何せ今のチェン太は、リィムナが作った大きなオレンジ色のかぼちゃの被り物を被らされ、胴体にも大きなオレンジ色のかぼちゃの張りぼてを糊で体にくっつけられているのだ。 つまりチェン太の頭にはオバケかぼちゃ、胴体は二本の足と尻尾が出たかぼちゃの張りぼてとなっている。翼のある腕は張りぼての中に入れられており、それが不満そうでもあった。 開演の音楽が終わりに近づいている事に気付いたリィムナはチェン太の頭によじ登り、頭上に立つ。そして聖剣・シーグルを抜くリィムナを見て、Kyrieはトランペットのキャヴァリエを手に持ち、勇ましい音楽を吹き始めた。 音楽を聞くと、リィムナは小さく咳を一つした後、聖剣の切っ先を空に向ける。 「諸君、私はかぼちゃの精霊の使者、かぼちゃ騎士である! 皆に精霊の祝福をもたらす為に、やって来たのだ!」 声高らかに叫ぶと、【ホーリーコート】で聖剣に白色の光をまとわせた。 「大地に実りを!」 次に【ホーリーアロー】を地面に向かって撃つ。そして【ホーリースペル】で体を光に包み、天に向かって手を伸ばす。 「皆に祝福を!」 と、【ホーリーアロー】を三回連続、空に向かって放った。 「祝福はなされた! 精霊は諸君と共にあるぞ!」 観客達から大きな歓声が上がったものの、チェン太はブスっとしている。頭上でバタバタされた上に、度重なるスキルの光のせいで眼がチカチカしているのだ。よりいっそう不機嫌になるチェン太だが、観客達に向かって笑顔で手を振っているリィムナは気付いていなかった。 「リィムナちゃん、立派だったね! あたい達も頑張ろう、ダイちゃん!」 ルゥミ・ケイユカイネン(ib5905)はパートナーの霊騎・ダイコニオンに跨りながら、笑顔で声をかける。 ルゥミはまるごとすけるとんを身に付け、ダイコニオンには黒い布に馬の骨格を白い染料で描いた物を被せていた。そして小柄なカカシに赤い染料で血まみれにした物を二体、ダイコニオンの体の両脇に紐でくくりつけている。 「あたいとダイちゃんでホネホネコンビだ! 血まみれカカシはそんなあたい達に捕まった哀れな犠牲者ってことで。今回も血まみれカカシ、上手く作れたよ」 ルゥミは上機嫌で二体のカカシを交互に見た。 「さっ、ダイちゃん。今度はあたい達が見せる番だ!」 バヨネットを付けた鳥銃・狙い撃ちを、後ろにいるKyrieに見えるように上げる。そして思いっきり息を吸い込んだ。 「おーっ! おおーっ! おおおーっ!」 騒がしい中でも聞こえるように、大きく声を張り上げる。 そしてダイコニオンの腹を軽く蹴り、嘶かせて走り出させた。前にいる仲間達の隙間を走り抜けたり、また【高跳び】で飛び越えたりする。【ロデオステップ】を使って、素早い足さばきで障害物を避けながら前へ駆けて行く。 その光景を見た観客達の間から、驚きと喜びの声が上がる。 顔には笑みを浮かべながら、ルゥミはこっそりダイコニオンに話しかけた。 「ダイちゃん、誰かにぶつかったり、踏んだりしないように気をつけてね」 ダイコニオンは視線を前に向けながらも、軽く頷いて見せる。 ルゥミを励ますように、リィムナの【ホーリーアロー】が三発ほど夜空に上がった。 「おお、盛り上がっているぜ! うっしゃ! いっちょ楽しませてやるぜ!」 ナキ=シャラーラ(ib7034)は観客達の様子を見て、張り切る。 ナキは三段カボチャの帽子を被り、蝙蝠外套の下にバラージドレス・ファラーシャを着た魔女になっていた。 浮遊するパートナーの鬼火玉の近藤・ル・マンにはハロウィンのかぼちゃ柄の布を被せて、眼の部分には穴を開けている。 「近藤、そんじゃあやるぜ!」 ナキが後方で演奏をしているKyrieに手を振って見せると、今度は蛇使いの曲を吹き始めた。 「アル=カマルからかぼちゃ魔女がやって来たぜ!」 声高く言うと、ナキは鞭・フレイムビートを手に持って【マノラティ】で近藤を絡み付け、コマを回すように引き寄せると近藤はクルクルッと空中で回転する。 「アハハっ! 近藤の高速回転、なかなか面白いな!」 と、ナキは楽しそうに笑うものの、近藤は眼を回してフラフラし始めた。 「おわっ!? 近藤、大丈夫か?」 近藤はしばらくフラフラしていたものの、数分後には何とか正気に戻る。 「悪い悪い。今度は違う見せ方をするから、安心するんだぜ。ホラ、あたしの手の甲に乗りな」 少し警戒しながら、近藤は横に伸ばしたナキの手の甲にちょこんと乗る。するとナキはその手を上げ、体を傾けた。近藤は重力に導かれるままナキの腕・背中・反対側の腕を転げて、最後には逆の手のひらの上に乗る。 「ホレ、これならゆっくりだっただろう?」 しかし転がることには変わらないので、再び近藤の眼は回っていた。 「ぬわっ!? 何でだ!」 またしばらくして正気に戻った近藤だったが、流石にお怒りだ。 「あっあの、ナキさん。よろしければこのクッキーを、近藤さんにあげてください」 「ああ、ありがとうだぜ」 近くにいた野衣からかぼちゃのクッキーを貰い、近藤に食べさせたらご機嫌になった。 「よっよし! 次は別々に動くから、大丈夫だぜ!」 イマイチ自信が持てなかったナキだが、再び鞭を手に持つと地面に向かって打つ。 「さあ、行け! 近藤!」 近藤は【飛跳躍】にて地面を強く蹴って跳躍する。続いてナキも【ナディエ】を使って跳躍し、近くにあった建物の屋根に飛び乗った。 その様子を見たKyrieはトランペットを吹くのを止め、再びピアノの前に座る。そして大きな音を出しながら、激しい曲を弾き始めた。 ナキはパレードの列からKyrieの荷車を見つけると、再び【ナディエ】で向かいの建物の屋根の上に飛び移る。荷台には大きなカゴが積んであり、その取っ手を【マノラティ】を使って引き寄せながら【ナディエ】で高く跳躍しつつ、カゴを逆さまにした。 するとカゴの中に入っていた大量のキャンディーが観客達に降り注ぎ、「わあっ!」と歓声が上がる。 「やっぱ、ハロウィンと言ったらお菓子だぜ!」 再び屋根の上に下り立ったナキは、向かいの屋根にいる近藤に手を振って見せた。 すると近藤は【飛跳躍】を使って屋根から跳んで、ナキも【ナディエ】で跳び上がって空中で近藤に抱き着いて地上に下りる。 「ふう…。練習していたとは言え、やっぱり緊張するぜ」 歩き出したナキの頭上で、リィムナの三発の【ホーリーアロー】がまるで喜ぶように輝きを放ちながら空へと飛んでいった。 「ふふっ。皆さん、頑張っていますね」 ナキの見せ場が終わったので、Kyrieは演奏を止める。 そこでふと、観客達の中から十五歳ぐらいの少女が熱っぽい眼差しを向けてくるのに気付いたKyrieは、【愛束花】を少女に向かって投げた。 「幻の花束ですが、少しでもあなたの癒しになれば幸いです」 そう言ってにっこり微笑みかける。 しかしその様子を見ていたザジがジト目になるのを見て、Kyrieは首を傾げた。 「何ですか、その眼。…まさか『荷車を引くのを交代しろ』と言っているんですか?」 ザジは『そうだ!』とでも言いたそうに、荷車の持ち手をバンバンっと叩く。 「お断りします。そもそもあなたは疲れを感じない体ですし、私は楽器の演奏をしなければいけませんから…」 そこまで言って、Kyrieはザジが何やらポケットをゴソゴソいじっていることに気付く。するとザジは銀の十字架を取り出し、Kyrieに向かって見せつける。 Kyrieはおびえるような表情を浮かべ、後ろに引く。 「うっ…! 吸血鬼に銀の十字架を向けるとは……分かりました。交代しましょう」 ザジは満足そうに頷くと荷車を止めて、十字架をポケットに入れた。 そしてKyrieが荷台から下りて、持ち手を掴む。ザジはガッツポーズをしながら嬉しそうに、荷台に乗り込んだ。 「では、行きますよ。ふんっ!」 しかしKyrieは一歩も前に進めなかった。ザジの体重と楽器の重さを含めると三桁のキロ数になる荷車は、Kyrieの力では動かないのだ。 なのでKyrieは黙って持ち手を地面に下ろし、回れ右をしてザジに向かって頭を下げる。 ――こうして再びザジが荷車を引き、Kyrieが荷台に乗って楽器の演奏を再開させるのであった。 二人はふと光を感じて空に視線を向けると、リィムナの放った【ホーリーアロー】の三本の光が弧を描きながら空へと上っていった。 やがて終わりが近付くにつれ、パレードもよりいっそう盛り上がっていく。 リィムナはチェン太から下りるとかぼちゃ提灯を手に持ち、ルゥミもダイコニオンから下りる。そしてナキと合流し、歌いながら踊り始めた。荷車を野衣と雛奈に預け、Kyrieは【月歩】を使いながら歌い踊り、ザジも共に踊る。 最後はパレードの参加者全員で、ハロウィンの歌を歌いながら踊った。 『ハッピーハロウィン♪ トリックオアトリート! イタズラ、大好きー! でもお菓子はもっと好きーっ! 今日はこわーいオバケがやって来る日 だからこわーいオバケかぼちゃを作ろう おかしな顔のかぼちゃ達、オバケも怖くて逃げ出しちゃう! ハッピーハロウィン♪ オバケになって、こわーいオバケを驚かそう! あまーいお菓子で元気いっぱい! こわーいオバケなんて怖くない! 楽しい音楽がボク達に勇気をくれるよ 怖い夢を見たのならば この歌を思い出して あふれる勇気がキミの味方さ 大丈夫! ボク達が側にいるよ 楽しい夜の夢を、見続けよう――』 そして歌い終えると同時にリィムナは【ホーリーアロー】を四発、空に向かって放った。 ●パレード終わりに… パレードが終わると、開拓者達はそれぞれ片付けを始める。そんな中、四人は偲那が勤める屋敷の主人に呼ばれ、お邪魔することにした。 「チェン太、お疲れ様。今日は疲れたね」 リィムナは屋敷の使用人達に手伝ってもらいながら、庭でチェン太を洗っている。しかしチェン太はぐったりした表情をしており、リィムナの笑みも少し苦しいものになってしまう。 「ダイちゃんの為に美味しい草まで用意してくれるなんて、良いおウチだね! このかぼちゃを使った料理とお菓子も美味しー!」 庭に置いてあるテーブルには数多くのかぼちゃを使った料理とお菓子が並び、イスに座りながらルゥミが笑顔で食べていて、側ではダイコニオンがバケツいっぱいの草を喜んで食べていた。 「ナキさん、大丈夫ですか?」 「ああ、大丈夫…だぜ」 ルゥミとは別の席で、ナキがKyrieに【解毒】で治療してもらっている。 その様子をKyrieの背後に立ちながら見ていたザジは、ナキがこうなった時のことを思い出す。 パレードが終わりになり、皆の気が緩んでいる時だった。 ふとイタズラを思いついたナキが【ナハトミラージュ】を使って姿を薄くし、効果が切れる時間を見計らって近くにいた青年の足の間をくぐり、笑顔で姿を見せたのだ。 「ばあっ! 驚いただろう? やっぱりハロウィンにはイタズラもしないとだぜ!」 ナキは驚く人々を見て、楽しそうに笑った。 しかし背後から暗雲を背負う野衣が、ゲンコツをナキの頭に落とす。 「ナキさん! お下品ですっ!」 よりにもよって仕事に対して厳しく真面目な野衣に見つかり、ナキは眼を回しながら倒れた。 その後、気絶したナキを、Kyrieが背負ってここまで連れて来たのだ。 「ったく…。あんな可愛いイタズラ、今日ぐらい許してくれればいいのにだぜ。なあ、近藤?」 ナキは同意を求めるように近藤がいるテーブルを見るが、近藤はかぼちゃ料理を夢中になって食べている。パレード中、さんざん眼を回されたのでちょっとすねていた。 「ちぇー、何だよ。もういいや! 料理とお菓子、早く食べるぜ!」 「ですね。せっかく用意してくれたんですし、美味しくいただきましょうか」 ――こうしてハロウィンの夜は更けていく。 ふと街の方を見ると、ジャック・オー・ランタンのあたたかな光があった。 【終わり】 |