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■オープニング本文 雛祭りが終わった日のこと――。 とある山を根城にしている山賊達は、川の下流に来ていた。 「おお、あるぞあるぞ。今年も大量に流れてきたな」 山賊達の目的は、三月三日に行われた流し雛人形だった。 流し雛とは紙や粘土で雛人形を作り、それで体を撫でて、竹の皮や稲の藁を編んで船を作り、雛人形を乗せて川に流すという行事。雛人形には体を撫でた人の厄災を背負ってもらい、それを川に流すことで厄払いをする意味がある。 「だがここに来る時にゃあボロボロになってんのも多いな」 「しかし中には乾かせば来年売れる物もある。貧乏な庶民共は喜んで買っていくからな」 そう言ってニヤニヤ笑いながら、流れてくる雛人形を回収していく。 「おおっ! 見ろよ、この雛人形。立派なもんだぜ!」 小さな船に乗ってきた雛人形を見て、山賊達は喜びの声をあげる。小さくも立派な船には、雛人形全てがそろっていた。 「この川の上流には貴族達の家があるからなぁ。こういうのは高値で売れるんだ」 得意げに山賊が語るように、次々に立派な雛人形達が流れて来る。山賊達は夢中になって、雛人形達を集めていた。 しかし草の生い茂る所に絡まっていた一体の女雛に、異変が起きていた。女雛の中に瘴気が入り込み、一体のアヤカシに成ろうとしていたのだ。 女雛の目に怪しい光が宿り、その体が宙に浮く。そして瘴気を放ちながら、どんどん大きくなり、やがて人間の大きさにまでなった。元は貴族が流した女雛なだけあり立派な人形であったが、今では恐ろしいアヤカシと化してしまった。 その様子に気付いていない山賊達の一人の背後に、音もなく女雛は立つ。そして‥‥。 「ぅっぎゃあああっ!」 仲間の絶叫で、他の山賊達は慌てて振り返る。 「なっ何だこりゃあ!」 山賊達の目に映ったのは、人間の大きさにまでなった女雛が山賊の一人を後ろから抱え込み、その首筋に牙を立てている姿だった。捕まった山賊の口は大きく開き、血の泡を吐き出している。そして白目を向き、首からは大量の血を流していた。 女雛は音を立てながら血を啜り飲み、やがて山賊の体は色が失せ、しぼんでいった。全ての血を啜り終えた女雛は息絶えた山賊の体を放す。軽い水音を立て、死体は川に沈んだ。 「ひっひいいいっ!」 「あっアヤカシだあ!」 「逃げろおっ!」 山賊達は集めた雛人形をそのままに、逃げ出した。 女雛の体からよりいっそう濃い瘴気が立ち上る。顔を上げた女雛は口をパカッと開く。中にはビッシリと牙が生えており、口は耳まで裂けた。 女雛は山賊達を追いかけようとしたが、一瞬その体勢を崩す。しかしすぐに立ち直し、山賊達を追い始めた。 「緊急の依頼です! 東房王国と冥越に流れる川の下流で、女雛に瘴気が取り付き、アヤカシとなりました!」 東房王国のギルドで、受付の職員は慌てて同僚達に声をかける。 「犠牲になったのは山賊達ですが、そのうち一人は全身の血を啜られ死亡。その後、二人の山賊がアヤカシに捕まり、こちらは食い殺され死亡が確認できました。生き残った一人がこのギルドへ駆け込んで来たわけですが、急を要します!」 職員は書類に目を通しながら、緊迫した表情で説明を続ける。 「人形は流し雛に使われた物だと言う話です。山賊の話では流し雛の集まる所でアヤカシは生まれたそうですが、元より汚れを背負った流し雛ですからね。瘴気を受け入れやすい器になっていたのかもしれません」 そして冥越が近かったのも原因の一つだろう。山賊達はあまりに無防備過ぎたのだ。 「女雛は人間の大きさになったということです。どうやらまだ女雛の中の瘴気が安定していないらしく、動きが遅いのが唯一の救いでしょう。ですがこのままでは人々が犠牲になってしまいます。すぐさま、討伐の開拓者を集めてください!」 |
■参加者一覧
風雅 哲心(ia0135)
22歳・男・魔
ルオウ(ia2445)
14歳・男・サ
此花 咲(ia9853)
16歳・女・志
フレイア(ib0257)
28歳・女・魔
リィムナ・ピサレット(ib5201)
10歳・女・魔
ラティオ(ib6600)
15歳・女・ジ |
■リプレイ本文 風雅哲心(ia0135)とルオウ(ia2445)は生き残った山賊から聞き出した、アヤカシ女雛が誕生した山に来ていた。 「災いを払う女雛が災いの種になるとは、何とも皮肉なもんだな。とにかくこれ以上、被害を出すわけにはいくまい」 「だな。見過ごしたらやべぇし、慎重にいかねぇとな」 険しい表情を浮かべながら、二人は山の下の方から村や集落の周囲を中心に探し始める。 二人とは反対側の山の麓には此花咲(ia9853)とフレイア(ib0257)、そしてリィムナ・ピサレット(ib5201)が、真剣な眼差しを山に向けていた。 「穢れを流すはずが、この様な形で戻ってくるとは‥‥何とも皮肉なものです」 沈鬱な表情で俯く咲の肩に、フレイアが優しく手を乗せる。 「何の罪もない人形が業を背負わされるのは悲しいことです。せめてこれ以上、凶行をする前に、無に還しましょう」 「アヤカシ女雛が村や集落に向かうのも時間の問題‥‥。急がないと!」 リィムナの一言で二人は表情を引き締め、山に足を踏み入れる。 麓の村や集落は平和なもので、特に異変はなかった。それを確認しながら、山深くへ歩みを進める三人。やがて霧が出てきて、視界が悪くなってくる。 「【心眼】を使用しますね。生き物とアヤカシの区別はつきにくいですけど、視界がきかない場所では役に立ちます」 咲はスキルを使用しながら、先頭を歩く。 ふとフレイアが地面に視線を向けると、突如眼をつり上げ、立ち止まった。 「この血の付いた足跡‥‥。もしかしたら近くにアヤカシ女雛がいるかもしれません」 土道につけられた足跡はまだ新しい。フレイアの言葉に二人は立ち止まり、周囲を見回す。 すると【心眼】を使用している咲が気配を察し、そちらに視線を向けた。そこには人間と同じ大きさの女雛が歩いている後ろ姿を発見する。咲が黙ったまま二人に手で合図すると、三人は同時に素早く近くの木々に身を隠した。 アヤカシ女雛は三人に気付いていないようで、フラフラしながら歩いていく。しかしその体や顔には、おびただしいほどの血が付いていた。歩くたびにボタボタと血が滴り落ちるほどに。 眼に映るその姿が小さくなるほどの距離をとった後、リィムナは咲に視線を向ける。咲は頷き、狼煙銃の銃口を空に向けて撃った。 パァーンッ! 「あっちかっ!」 「急ぐぜぃ!」 哲心とルオウは狼煙銃が上がった場所まで、走って行く。そして血まみれのアヤカシ女雛の姿を見つけ、ぎょっとし、立ち止まる。そしてアヤカシ女雛の向こうに、隠れている仲間三人の姿を見て、ほっとした。 だがルオウはふと視線をそらし、気まずそうに顔をしかめる。 「おい、哲心。ここでは戦えねぇぞ。近くに集落がある」 「なに?」 ルオウの視線の先を追うと、小さな集落がこの位置から見下ろせる場所にあった。そこに住む人々は異変に気づかず、普通に過ごしている様子が見える。 「とりあえずここから移動するぜ。【咆哮】を使うから、耳塞いどけ!」 ルオウが大きく口を開くのと同時に、仲間達は耳を手で力いっぱい塞いだ。大地を響かせるほどの大きな雄叫びが周囲に轟く。 アヤカシ女雛も体を何度も痙攣させたが、【咆哮】が止むとルオウに視線を向け、動き出す。しかしすぐに体勢を崩し、駆け出すのに失敗する。 「行くぞ!」 「ああ!」 哲心とルオウが走り出す。続いてアヤカシ女雛が、その後ろでは三人が気配と音を消しながら動き出す。アヤカシ女雛は時折体勢を崩すものの、十二単を着ているとは思えないほど動きが早い。 後ろを見ながら走っていたせいで、ルオウがつまずいてしまった。 「しまった!」 すぐにアヤカシ女雛がルオウに飛びかかってくるものの、咄嗟に【剣気】を使用し、アヤカシ女雛が怯んだ隙に再び走り出す。 やがて人気がないほど深く森の中に来た哲心とルオウは、走るのを止めて振り返る。続いてアヤカシ女雛と、三人も立ち止まった。 アヤカシ女雛はぎこちない動きで首を回し、後ろにいる三人の姿を見つける。すると天を仰ぎ、口を開いた。尖った牙が生えそろった口の中は、赤黒い血の色で染まっていた。そして両手を上げると、その爪が掌と同じ長さに伸びる。静かに瘴気が立ち上る姿を見て、五人は息を飲む。 「この山から漂う瘴気を取り入れ、女雛の中の瘴気がだんだんと安定してきたようですね」 「これ以上、存在させては女雛も可哀想です」 「ここで決着をつけなきゃね!」 咲・フレイア・リィムナの三人は緊迫した面持ちで身構える。哲心とルオウもそれぞれ武器を手に取った。 最初に動いたのはルオウだ。 「こんなもんがうろついてちゃあ、おっかなくって夜も眠れねぇもんな。俺が退治してやるぜぃ! いっくぜぇ!」 アヤカシ女雛はルオウに向き直り、伸びた爪を首元を狙って突き出す。しかしルオウは【剣気】を再び使用し、動きを止めさせた。そして脇差・雷神を使って【タイ捨剣】を使用する。 ――が、アヤカシ女雛は袖を振り、後ろに飛び退いた。 「ちっ!」 ルオウの攻撃は袖を切り裂いだだけにとどまってしまう。振り上げられた袖で視界を塞がれたルオウに、アヤカシ女雛が襲いかかろうとしたその時――。 「ルオウさん、お下がりくださいっ!」 霊刀・虹煌を両手で握り締め、咲がアヤカシ女雛の背後から後頭部を貫こうとした。だがアヤカシ女雛はもう片方の腕を上げ、伸びた爪で刃を弾く。 「くっ‥‥!」 その間にルオウは一旦、アヤカシ女雛から距離を取った。そして武器をピストル・アクラブに持ち替え、胴体を狙って撃つ。弾は命中したものの分厚い帯に阻まれ、その体勢を崩したまでだった。 咲はもう一つの武器である剣・斬鉄を使い、【銀杏】で同じく胴体を狙うも、アヤカシ女雛は体を捻り、再び爪で弾く。その勢いのまま咲に向けて爪が襲ってくるも、【雪折】を使用して攻撃から逃れた。 だがもう片方の手が咲の心臓目がけて突き出され、咲は再び刀を戻し、続けて【雪折】を使う。アヤカシ女雛はこれらの攻撃を、僅かな動きで避け続けた。そして口を大きく開き、咲を頭から噛み付こうとした時、ルオウが【咆哮】を使ってその動きを止めた。 【咆哮】の威力を感じながら、咲はフレイアとリィムナの所に走り戻る。 「思った以上に‥‥動きが早いです」 咲が息も切れ切れに言うと、二人はその表情に焦りの色を浮かべる。 ルオウと咲の攻撃は素早いもので、普通の人間ならば動きが眼で追えないほどだ。しかしあのアヤカシ女雛はそれらを最小限の動きでかわしている。 「【咆哮】は成功したならば使用者の元へ敵が向かうというもの‥‥しかし、念の為に」 ルオウは走り続けた後すぐに戦闘に入ったせいか、疲労の色が顔に出ていた。 フレイアは【フロストマイン】を使用する。万が一の為の保険であったが、【咆哮】が響き終わった後、アヤカシ女雛はぎこちなく体を動かし、そしてその視線をフレイア達に向けた。 そして突如走って来たが、先程フレイアが仕掛けておいた【フロストマイン】が発動し、猛烈な吹雪にアヤカシ女雛は襲われ、足を止める。 フレイアは二人を庇うように前に出て、【アークブラスト】をアヤカシ女雛に向けて放つ。咄嗟にアヤカシ女雛は右腕を上げ、【アークブラスト】はそこへ命中する。 ガッシャンっ‥‥! まるで陶器が割れたような音がして、アヤカシ女雛の右腕は粉々に砕かれ、そこから瘴気が立ち上る。 今度はリィムナが【アイヴィーバインド】を使用し、アヤカシ女雛を魔法の蔦で絡めとる。続いて【ララド=メ・デリタ】を使おうとしたが、詠唱の合間にアヤカシ女雛は爪と口の牙を使って蔦を千切ってしまう。 リィムナはそれらの行動を見ていたが、そのまま【ララド=メ・デリタ】をアヤカシ女雛に向かって放つ。しかし動き出したアヤカシ女雛の左頭部を破壊するだけだった。 「調子に乗るのもそこまでだ。‥‥轟け、迅竜の咆哮。砕き爆ぜろっ、【アイシスケイラル】!」 アヤカシ女雛の背後から哲心が【アイシスケイラル】を放つ。その場に激しい冷気が発生し、視界が悪くなる。 「手応えはあったと思うが‥‥」 哲心は険しい表情で、冷気を発する場所を睨み付ける。――が、突如冷気が飛び散り、中からボロボロの衣装を身にまとったアヤカシ女雛が飛び出て、哲心に向かって来た。 「そちらへは行かせません!」 いち早く反応した咲は【雪折】と【銀杏】を使って、アヤカシ女雛から哲心を護る。 その間に哲心はその場から遠ざかり、リィムナは再び【ララド=メ・デリタ】の詠唱を始める。そして咲がアヤカシ女雛から距離を取った時、【ララド=メ・デリタ】を放った。 反応するのに遅れたアヤカシ女雛はまともにくらってしまい、右胸から腰までを灰と化してしまう。壊れた所から漏れ出る瘴気は薄くなり、動きもよりいっそう鈍くなった。 これを好機と見た哲心は武器を手に持ち、アヤカシ女雛と向かい合う。 「こいつで決めるぞ。――閃光煌めく星竜の牙、その身に刻め!」 刀・鬼神丸を使い、【白梅香】と【秋水】の合わせ技、奥義・星竜光牙斬を使う。 パキンッ‥‥ ブワァァァーーーっ! アヤカシ女雛は頭から真っ二つに切られ、そこから大量の瘴気が勢い良く溢れ出す。そして霧散し、消滅した。 「ふぅ‥‥。流石に今回は肝が冷えたな」 刀を鞘におさめる哲心の元へ、四人が集まって来た。みんなの視線が地面に向く。そこには普通の雛人形に戻ったが、ボロボロになってしまった女雛がある。 「今の技には瘴気を浄化する作用がある。もうこの女雛は安全だ」 「でも元はアヤカシだったんだし‥‥灰にしちゃう?」 そう言ったリィムナの顔は笑っていたが、眼は真剣だ。その表情を見て、慌てて咲とフレイアが止める。 「りっリィムナさん、それは流石に‥‥」 「この女雛には罪はないのですから、ここに埋めてあげましょう」 「はぁーい」 素直に頷いたリィムナを見て、二人はほっと胸を撫で下ろす。 その後、ボロボロになった女雛を土に埋め、全員で手を合わせた。 そして傷だらけになった仲間達を、フレイアとリィムナが【レ・リカル】を使って癒す。戦っている時は夢中で気付かなかったが、緊張が解けた瞬間、体のあちこちで負傷した部分が痛んだ。 その後、ギルドの受付職員から渡されていた地図を頼りに、例の川の下流まで移動した。 「本当にたくさんの流し雛がありますね‥‥」 川にたまった流し雛を見て、咲は驚き目を丸くする。 「おっ、言われた通り、山賊達が残していった背負う籠があったぜぃ。ボロボロだが布もあることしだし、コレに入れて帰ろうぜ」 ルオウが山賊達が残していった物を見つけ、仲間達の目の前にまで持ってきた。 「でも気をつけて回収した方が良さそうですね。今ある雛人形達が、先程のアヤカシのようにならないとは限らないのですから」 「フレイアの言う通りだとあたしも思うよ。どうせなら全部集めて、全部灰にしちゃった方が早いと思うんだけどな」 「リィムナはさっきからそればっかだな。そんなに力、有り余っているのかよ?」 ルオウがからかいがちに言うと、リィムナはムッとした。 「ルオウもまぁだ余裕があるみたいね。その元気であたし達の分まで雛人形を回収してきたら?」 「おうよ! よしっ、そんじゃ回収しちまおうぜぃ!」 ルオウは元気いっぱいに返事をして、足袋を脱ぎ、素足で川に足を入れる。するとルオウの動きがピタッと止まった。 「どうかしたの? ルオウ」 「‥‥リィムナ、まだスキルが使えんなら、一つ頼みを聞いてほしい」 「えっ? なに?」 さっきとはうって変わって真面目な声を出したルオウはゆっくりと振り返り、仲間達の顔を見てから、顔を思いっきりしかめて叫ぶ。 「冷たーいっ! ここ、山の川の水なだけに、すっごく冷たい! 霜焼けになる! 凍傷にもなるぅ!」 「‥‥ああ、雪解け水も入っているんだろうな」 哲心は冷静に、川に手を入れてみる。確かに一瞬で手が冷えるほどの冷たさだった。 「だからリィムナ、雛人形を全部回収したら、【レ・リカル】で霜焼けを治してくれぇい!」 川の中でバチャバチャと暴れるルオウを見て、リィムナは深くため息を吐く。 「分かった分かった。じゃあとっとと回収しようね」 続いて四人も冷たい川の水の中に入る。そうして全ての流し雛を回収した後、リィムナの【レ・リカル】で全員の霜焼けを治した。 「これで全部か。これはどこに届けるべきなのかな」 哲心が集めた流し雛を入れた籠を見ながら聞くと、咲が答える。 「とりあえず東房王国のギルドまで持ってきてほしいそうです。そこで一斉に処分するみたいです」 「処分する役目は向こうで専門の人達を雇っているそうなので、私達の仕事は届けるまでですね」 続いてフレイアも答えた。 「あ〜、そんでもってもうこういうことが起きないように、来年からは流す川を指定するみたいだぜぃ。流された雛人形もすぐに回収して、処分されるみたいだし」 ルオウもギルドで聞いた話をする。 「なぁんかちょっと可哀想だけど‥‥アヤカシに成るよりはマシだしね」 リィムナは少し落ち込んだ様子で、肩を竦めた。 哲心は改めて流し雛を見た後、深く息を吐いた。そして籠を背負い、仲間達を振り返り見る。 「暗くなる前に山を下りよう。このまま話し込んでも、風邪をひくだけだ」 「おっと、いけねっ!」 「そうですね。ギルドで待っている方達もいらっしゃいますし」 「暗い山の中は、それこそ危険に満ち溢れますし」 「早く帰ろう!」 そして五人は山を下り始める。 誰も何もなくなった川の上に、僅かな瘴気が流れてきて、そして風に乗って消えた。 【終わり】 |