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■オープニング本文 冬の気配が近付いてきた開拓者ギルド。外に出ればはく息は白く、通りを歩く人も身を厚着に包み足早に歩いている。一人、道を歩く男に人々の視線が集まる。大きな笠を目深にかぶり、獣の毛皮で作った上着を着込んでいる。足元は泥で汚れた藁靴。普段は快活であろうその男を今は異様な雰囲気が包んでいた。 男はギルドの中に入ると、笠を背中にかけ小さく周りを見渡した。暖かな施設の中、男の周りだけ冷たい空気が流れる。周りの好奇な目線も気にせず、男は受付にまっすぐ歩を進める。 受付の職員は、男の風貌に目を見開いた。まるで何かに取りつかれているかのように沈んだ瞳。目元は隈で黒く、頬は痩せこけ髭が無造作に生えている。 「おらの妹を一緒に探して欲しんだ」 唐突に男は言葉を口に出した。右手には大切そうに小さな草鞋を握りしめている。 不可解な男の様子にギルド職員は事情を詳しくきくことにした。 男の名は、茂助。亡くなった両親から継いだ土地で妹と二人静かに暮らしていた。茂助たちのいた山は、夏は短く、冬は長い場所だった。あっという間に実りの秋は過ぎ去り、初雪がちらちらと降り始めていた頃だ。 その日、些細なことで妹と喧嘩をした。今となってはもう原因も思い出せない。いつもと変わりないただの口喧嘩。 妹は怒ったように捨て台詞をはいて、山頂へと続く道へ登って行ってしまった。妹はいつもそうだ。何か気に入らないことがあると、道の途中にある山小屋にこもってしまう。そうして茂助が迎えに行くのをじっと待っているのだ。 腹が立っていた茂助は少しの時間妹を放っておくことにした。妹も幼い年ではないのだ。反省してすぐに戻ってくるだろう。茂助はそう考えていた。 だが、その日の夜になっても妹は帰ってこなかった。山小屋には少ないが食料もある。我慢強い妹のことだ。茂助が迎えに来るまで帰ってこないつもりかもしれない。心配な気持ちと意地を張りたい気持ちが交錯する。 運の悪いことに翌日から大雪が降り始めていた。 茂助は顔を青ざめる。迷っているうちに大変なことになってしまった。これでは妹は自力でなど帰ってこれるわけがない。この大雪だ。もう自分一人の力ではどうしようもできなくなってしまった。 茂助は家にある少ない財産をかき集め、急いで出かける準備始めた。 開拓者ギルド。そこに行けば力を貸してもらえるかもしれない。茂助の頭の中にある唯一の希望の光だった。 茂助の依頼は無事受理され、開拓者ギルドにある一つの依頼が並んだ。 その依頼にひそむ小さな矛盾に気づくものはまだいなかった。 |
■参加者一覧
朧楼月 天忌(ia0291)
23歳・男・サ
鬼島貫徹(ia0694)
45歳・男・サ
相馬 玄蕃助(ia0925)
20歳・男・志
斑鳩(ia1002)
19歳・女・巫
箱屋敷 雲海(ia3215)
28歳・女・泰
神鷹 弦一郎(ia5349)
24歳・男・弓
早乙女梓馬(ia5627)
21歳・男・弓
辺理(ia8345)
19歳・女・弓 |
■リプレイ本文 ●定まらぬ焦点 待合室となっているギルドのロビーで、茂助は全く微動だにせず椅子に腰掛け待っていた。依頼を引き受け集まった開拓者らを見ても、その様子は変わらない。まるで、魂の抜かれた人形のように、ただ淡々と行動するのみ。 「取り急ぎ、その妹とやらの名前と年齢。出て行った時の服装などを教えられよ」 依頼を受けて早々に、茂助にそう尋ねたのは鬼島貫徹(ia0694)だった。小屋にいなかった時の事も考えて、基本情報を問質す。 「妹の名は、小春といいます‥‥歳は十五‥‥服は‥‥ふく、は‥‥」 覚えていないのか、そこで言葉に詰まった茂助が気にかかり、一歩前に出たのは早乙女梓馬(ia5627)である。茂助の状態を間近で見取って、梓馬は息をのんだ。目の下の隈は尋常ではなく、薄ら開いている瞳に光が宿っているようにはみえない。 「おい、本当に大丈夫なのか?」 問いかけながら、梓馬は茂助の肩に手をかける。 「お気遣いなく‥‥」 それに少しだけ視線を上げて答えると、茂助はまた首を戻す。 (「冷た過ぎる」) 蓑越しに捉えた肩が思いの他冷たく、それは人なのかと疑いたくなる程だ。触った手を開閉しながら、黙り込む。 「どうかしましたか?」 その様子に気付いたのは同じ弓術師の神鷹弦一郎(ia5349)だ。 「あっ、いや‥‥なんでもない」 どう答えていいか判らず、素っ気無い返事を返す梓馬。 (「何なんだ、一体」) そして――他にも不審に思っている者達がいた。 (「やっぱりおかしいです‥‥あの草鞋の大きさ‥‥」) 茂助が始終握り締めている草鞋を見取って、辺理(ia8345)が判断する。茂助が握っている草鞋は、思いの他小さい。どうみても五、六歳用のものと推測される。けれど、茂助の証言では妹の歳は十五だとか――。 「なんとも腑に落ちません」 茂助に聞こえぬように配慮しつつ、以前他の依頼で知り合った斑鳩(ia1002)に言う。 「そうですね。十二月の半ばに初雪というのも解せません。話では冬が長いとおっしゃっていたのに‥‥」 「それは同感だ」 すると、その話を聞いていたらしい相馬玄蕃助(ia0925)も会話に加わった。 ――が、なぜだか彼の視線はあらぬ方向に向いているようだった。室内であるから、まだ二人はきっちりと着込んでおらず、身体のラインが露になっている。そんな二人のある一点を見つめて、玄蕃助が一人ごちる。 (「全くたまらんのぉ〜」) うっかり妄想モードが発動し、だらしなく鼻の下を伸ばす玄蕃助。 「いいかげんにしろっ、二人が困っているだろう」 それに、喝を入れたのは隣で警戒していた箱屋敷雲海(ia3215)だった。彼とは見知った仲らしく玄蕃助をこつんとこづいて窘める。 「御坊〜、ひどいのぅ」 そう言って振り向いた玄蕃助の鼻からは、一筋の朱――。 「あぁ〜言わんこっちゃない」 「全くもっていつもすまぬな」 ちり紙を差し出す雲海に照れながら受け取って、鼻血を拭い視線を前に向ければ質問も終盤を迎えているようだ。 「最後に、ひとついいか?」 朧楼月天忌(ia0291)が尋ねる。 「妹が出て行ったのってどの位前だったんだ?」 その質問に男は一週間前だと答えたのだが、茂助の状態からしてそれは嘘ではないかと思う一行だった。 ●吹雪の向こうに 兎にも角にも、手早く準備を終えて一行は茂助と共に例の山小屋を目指し突き進む。 ギルドのある都から少し歩くと、景色は一変した。目の前に広がるのは吹雪く真っ白な大地。 都とは比べ物にならない程の積雪量に皆、唖然とする。都からそう遠くは離れていないのに、雲泥の差だ。 「ええい、腕の力に頼り過ぎだ。膝と腰を使えい!」 先頭を行く貫徹が若者二人を叱咤する。隊列は、力のある貫徹を筆頭に天忌・玄蕃助が率先して雪掻きを行い、中衛で梓馬と弦一郎が道を踏み固め、女性陣が後ろから進むというものである。茂助は中衛に属して、道案内を担当。小屋の屋根は見え始めているものの、なかなか前に進めない。体力だけが失われていくようで、もどかしい気持ちが皆を包む。 「おっさん、張り切り過ぎだ。必要最低限で構わないだろうが」 先に何があるかわからないだけに、出来るだけ力は温存したい天忌である。 「フンッ! このような作業‥‥張り切っているうちに入らんわっ」 貫徹の余裕の返しに、深くため息をつく天忌。 「あぁ〜そうかよ。そりゃ失礼しました」 半ば投げやりに、返事をして再び円匙を動かす。ちらりと後ろの茂助を見やれば、やはりぼぉとしたままだ。その後ろを歩く斑鳩、辺理も茂助を気にしている。斑鳩に至っては、定期的にアヤカシがいないか瘴索結界を発動させ、辺りの検索も行っている。 (「全くどこまで信用できるんだか」) 始めから、謎の多い依頼だった。分っていた事だがそれでも引き受けた以上は最後までやり遂げるつもりなのだが、依頼人があんなでは話にならない。 わずか一キロの道のりに、三時間を要して辿り着いた小屋の前――。 扉に手をかけた雲海を斑鳩が制止した。 「どうした?」 神妙な面持ちの斑鳩を見て、問う。 「中に、何かいます。人とは違う、何かが」 用心深くこまめに瘴索結界を張っていた斑鳩の言葉に、皆、中を警戒する。窓からは残念ながら曇っていて、中の様子がわからない。 ぎぃぃ だがしかし、警戒する開拓者の気持ちとは裏腹に、扉は開かれた。茂助だ。いつの間にか扉の前に行き手をかけている。 「ダメだ、茂助殿!!」 中に何がいるかわからないのに、危険過ぎる。けれど、至近距離にいても茂助の耳にはその言葉は届いていないようだった。ふらっと中へ入っていく。仕方なく追いかけて、開拓者は目撃する。中には、大きな氷柱と一人の女がいた。茂助はその女の下にふらふら近付き振り返る。女はそんな茂助を後ろから抱きとめ、耳元で何やら囁いていた。 「よくできました、兄さん」 「なにっ?!」 その言葉を聞き取って、誰もが動揺した。目の前にいる女はどうみても、二十歳を越えており、茂助より年上である。肌は白く着ている着物も冬には似つかわしくない、肩を出した純白のもの。それを身に纏った女は――普通なら朱の紅を引く筈のそこに、紺色が引かれている。人の形をしているが、アヤカシの類である事は明らかだった。 「魅了されているのか? はたまた操られているのか? どちらにせよ、まずは茂助殿を助けねばっ!!」 そう言って、雲海が駆ける。距離を詰め疾風脚を繰り出した雲海だったが、女は茂助を連れたまま軽がると空中に逃げ空振りに終わる。――と、その拍子に二人によって隠されていた氷柱が露になった。そして、そこには――。 「なんてことだ‥‥」 その中には少女が氷付けにされていた。出口の方に手を差し出した形で恐怖に怯えた表情がなんとも痛々しい。 「おまえがやったのか」 氷柱を見やって、怒りを押し留めて天忌が問う。 「あぁ〜それね。綺麗でしょう? 表情が何とも言えないものねぇ‥‥その恐怖に歪んだ顔‥‥本当に見飽きないわ」 艶のある唇で、女は続ける。 「それにね、その子は恐怖だけじゃないのよ。兄に裏切られた絶望も抱えてるから‥‥だから一層美しいの」 「えっ?」 女から紡がれた言葉に、再び動揺が走る。 「ふふふっ、驚いた? この男は見捨てたのさ、実の妹を。自分が助かる為に‥‥ここへ妹置き去りにして。けど、人間は愚かだねぇ〜置いて行ったにも関わらず、後になって気になりまた戻ってくる‥‥だから、私は利用してやったのさ、この男を」 抵抗することなく、抱きしめられたままの茂助。光の宿らぬ眼には何が映っているのだろうか。 「あんたらもそうさ。まんまとこいつに騙されて‥‥私の餌になる為に」 微笑を浮かべたままかっと目を見開いて、女は片腕を前に突き出す。 すると、手の甲から冷気が発生。瞬時に尖った氷の欠片となり、皆に降り注ぐ。 「いきます!!」 その氷の欠片目掛けて、弦一郎他弓術師が弓を構え射撃。打ち落としにかかるが、数が間に合わない。 「わしが切り開く!」 玄蕃助はそういって、欠片を気にすることなく自ら女に体当たりをしかける。女は茂助を捨て、再び上に舞い上がった。 「大丈夫ですか?すぐ手当てを」 防盾術を発動していたとはいえ、身体には無数の欠片が刺さっている。 「ここは、俺にまかせなっ」 「俺が滅してくれるわっ」 斑鳩が玄蕃助に神風恩寵をかけている隙に、天忌と貫徹が前へ。床を踏みしめ跳躍する。 「サポートします」 弓術師の三名が、二人を庇うように矢を放つ。 「鬱陶しいっ! 開拓者だったのか!!」 止まぬ矢の雨に、さすがの女も対応しきれないようだ。着物の袖で振り払い、冷気の風で壁を作って入るがそれにも限度はある。しかも、小屋の中だ。そう広いスペースではない。 「いくぞっ、若造!」 「おうよっ、おっさんっ!」 女の前に飛び込んでまずは、貫徹が大斧で横凪に――その後を追う様に天忌が業物を振り下ろす。 「ぐぁあああああああああ〜〜〜」 女は、獣じみた悲鳴を上げ、床に落ちる。そこで勝負はついていた。 血は流れていないはずなのに、着物が徐々に朱に染まっていく。虫の息のその女が見つめる先――そこには茂助の姿があった。 「なんで‥‥なんで、置いてった‥‥‥」 弱弱しい口調で女が呟いている。 「わたし‥‥信じてたのに‥‥にいさんは‥‥にげた。この女におそわ‥‥れるわたしを‥‥おいて‥‥」 その様子がさっきの女のモノと明らかに違い、一同はその言葉に聞き入ってしまう。 「うっ、うぅん‥‥」 ――と、今まで放り出されて床に転がっていた茂助が目を覚ました。相変わらず、顔色は悪かったが、女の力から解放されたのかどこか雰囲気が違う。 「にい、さん‥‥」 女は茂助に向かって確かにそう言い、手を伸ばす。消えつつあるその腕がゆっくりと茂助の方は伸びていく。しかし、 「ひっ、この女はっ!!」 無理もなかった‥‥姿は妹のそれではないのだから。怯える茂助に女は表情を歪める。だが、それを見て茂助ははっとした。その表情があまりにも氷柱の妹に似ていたからだ。 「‥‥まさか‥‥こ、こはるなの、か‥‥?」 茂助の言葉に、僅かに表情を緩める女。けれど、そこまでだった。身に受けた傷は深く、力を失なった身体は徐々に瘴気に戻り消えてゆく。 「小春! 小春!!」 茂助が近付いて声をかけたが、結局そこには何も残らない。 (「さよなら‥‥にいさん‥‥」) 消えゆく唇で、女はそう呟いたようだった。 そして、残されたのは戦闘を終えた開拓者らと未だに氷柱の中にある少女の遺体のみ。 いつの間にか吹雪く雪は止み、小屋を静かな沈黙に覆われていた。 ●弔い そして――その日のうちに、茂助は開拓者と共に小屋を後にする。 氷柱の中の妹は取り出すことができず、取り出せたとしてももう息をしていないのは明白であり、それならばと小屋ごと火葬する事を決断したのである。幸い、雪は止み、火を放つのに苦労することはなかった。煌煌と燃え崩れていく小屋を見つめて、茂助は謝罪の言葉を何度も何度も繰り返し、全てが灰になるまで、茂助はそこを動かなかった。 「色々ありましたが、ありがとうございました」 山を下りて、茂助が深々と頭を下げ言葉する。まだ、茂助の中では整理がついていないようだったが、ひとまず依頼は完了である。依頼人としての勤めを果たそうと、涙を堪えている。 結局、あの女の言ったことは本当だったようだ。 「喧嘩をしたのは本当です。小春が山で雪女をみかけたとかで‥‥けど、おらは間に受けなくて‥‥それがいけなかった。あいつは証明するっておらを無理矢理引っ張って山に入って。その日は見つからなかったけど、妹は小屋で待つと言い出して‥‥次の日、迎えに行った時、小春は襲われていた。そう、あの女が雪女だったんだ‥‥扉を開けたら逃げ惑う妹がいて…おらは腰を抜かして。武器も持ってなかったし、どうやって戦えばいいのかもわからなくて‥‥あなた方開拓者なら別だろうが、おらはただの人間だ。思わずその場を逃げ出して、おらは助けなかった。いや、助けようともしなかった。小春を置いて気付いたら下山してた。今でも覚えてる‥‥背後に聞いた妹の悲鳴。冷気が駆け抜けて一度振り返った時、そこには氷付けになった小春がいた‥‥」 「なんで、その後すぐにギルドに行かなかったんだ。その時ならまだ間に合ったかもしれないのに」 黙っていた梓馬が尋ねる。 「わかりません。ただ恐くて、逃げ帰った自分を知られたくない一心で‥‥そんな自分に嫌悪を抱いて、気持ち悪くなって‥‥おら家に篭ってしまった‥‥」 「篭ってしまっただと? 大事な妹が襲われたのにか、理解できんな」 ため息をついて貫徹がいう。 「そう、ですよね。けど、おらには無理だった‥‥次の日からおらの耳にはあの時の悲鳴が耳鳴りのように木霊し出して。起きていてもそれは聞こえるようになって‥‥気付いたら、耳元で言うんだ。おまえは人殺しだって‥‥実の妹を見捨てた凶悪犯だって。それでおらはわからなくなって‥‥‥気付いたら、あなた方と小屋の中にいた‥‥」 話し切って、茂助が一層肩を落とす。 「都合良過ぎますよね‥‥自分だけ助かって」 苦笑しているようだが、うまく笑えていない。 「しかし、なんで無意識の中で依頼を出せたのか? あの女が操っていたのなら、敵である我々開拓者を呼ぶはずないのに」 腑に落ちない点を言葉にし、弦一郎に投げかける。 「それは‥‥今となってはわかりませんが、一つの答えとして茂助さんの潜在意識が罪悪感を感じていて、助けたいという気持ちがギルドに向かわせたとかではないでしょうか?」 「あるいは、小春さん自身の魂が助けを、求めていたのかもしれません。アヤカシになってしまっていたようですが、最後に言葉してたのも、小春さんのようでしたし」 斑鳩と辺里が呟く。草鞋の件にしてもそうだ。なぜ小さい頃の草鞋を握っていたのか、茂助自身もよくわらかないという。 「何にしても、全ては闇の中か。これから辛いだろうが‥‥死ぬなよ」 梓馬が茂助の肩に手を置き、励ます。 「折角助かった命だ。後追いなんてしてみろ、また妹が化けてでるぞ」 「そうだぞ、若造。死んだらそれまでだ。おまえは生きる道を選んだ。理由はどうあれ、選んだのなら最後まで生きろ。でないと俺も許さん!」 「‥‥‥えらそうだな、おい」 それを聞いていた天忌がぼそりと呟く。――が、貫徹には届いていないようだ。 「まぁ、とりあえずちゃんと天に昇ったはず。これからずっと監視されてると思って、馬鹿な事は考えないことですね」 弦一郎も言う。 「はい、なんとか頑張ってみますだ‥‥」 それにぎこちなく笑う茂助―― 自然な笑顔が出来るようになるには、まだまだ果てしない時間がかかりそうだった。 (代筆:奈華綾里) |