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■オープニング本文 ともすると忘れがちだが、一応大体の村には、中央と連絡の取れる術がある。伝令だったり風神器の機械だったり、定期的に訪れる商人だったり。 その全てを賄わされている御仁が、理穴のとある町にいた。 「って、なんでお前は俺の居場所を把握してんだよ!」 どういうわけか、村の風神器が鳴り、そして何故かその相手として呼び出されているリー船長がいた。 『暁ちゃんは地獄耳なのだー。んと、今理穴だよね? ちょっと調べてきて欲しいんだ』 「お前、相変わらず人の話きかねぇなー。出張旅費は割り増し請求だぞ」 相手は、よく万商店にいる暁嬢のようだ。が、彼女はまったく耳を貸さずに、一方的に言いたい事だけを口にする。 『んとねー。その辺に、村を一瞬で焼き尽くす宝珠が眠ってるって話なんだー』 「ガセだろそれ」 船長が信用していないのもお構いなしだ。 『真っ赤できっと綺麗だよ。まぁ理穴の女王様、魔の森焼き尽くしたいって評判だしねぇ。ちょっと行ってきて確保してきて。あ、もう先方には言ってあるから。よろしくねー』 「‥‥ぜってぇ見つからない方に300文」 がっちゃりと風神器が切れる。本当に人の話をききやがらねぇなと思いつつ、船長は村の御仁に詫びの一言でも入れようと、村長宅に赴く。 「ああ、伝説の焔ですな。暁さんから聞いておりますが、確か、ご先祖様が森の奥の祠に封印したとか何とか聞いております」 で、この村長も暁と同じ様に、自慢の伝説とやらをぺーらぺらと語り始めた。 「マジでお宝眠ってんのか‥‥」 「とは言え、もう百年単位で使わないですし。だいたいあるかどうかも定かじゃないですがな。ただ、その代わりに1つお願いが」 いぶかしげな表情を見せる船長に、村長はそう言って、窓の外を指し示した。と、森のほうからどごごごごと響く足音。 「あん?」 「実は‥‥お願いと言うのは、あれなんです‥‥」 目を凝らすと、土煙の向こう側に、高速疾走する大きな4つ足の塊がいた。 「たいへんだー! 暴れ馬が出たぞーー!」 村の一人が、半鐘を鳴らして警告を出している。慌てて家の中に引っ込む人々。見れば、町の大通りを全力疾走している馬がいた。しかも‥‥肉は付いてない。 周囲を見回す限り、馬を飼育できるほどの上級な町ではない。せいぜい村長の家に牛がいるくらいで、後はもふらさまが日々の仕事をこなしている程度の豊かさだ。 「何でこんなところに骸骨馬が‥‥」 「あれは、うちのひいひいじい様が、ご領主様をお泊めになった時、お代としていただいたってぇ伝説の馬なんですよぉ」 なんでも、ご先祖様が亡くなった後、同じように町の廟に葬られたらしい。だれがあんな馬の骨にしちゃったんだかと、村長は嘆いていた。 「‥‥誰かがアヤカシにしちまったか。一緒にいるのは、そのご先祖の骨か?」 お供をするように、数人分の骸骨がうろうろしている。動きは村人と同レベルから、明らかに兵士のものまで様々だ。いや、中にはまだ肉の付いた屍人までいる。 「たぶんそうかと。しかし、あの上に乗ってる生身の人は、いったい‥‥?」 中心となる馬の上には、貴人の衣装を纏った青年‥‥しかも、世が世ならどこかの旅芸人一座で花形を勤めていそうなくらいの上玉だ‥‥が、あれこれと指示を飛ばしていた。 「ふはははは。大殿には、礼をしなければな。行くぞ松風丸。存分に暴れるがいい」 しかも、喋っている。どうやら、馬の骨の名前は松風丸と言うらしい。 「やれやれ、こりゃあ思ったより面倒な事になりそうだ‥‥」 頭をかかえる船長。そして、風神器を通じ、神楽の都へと連絡するのだった。 『宝珠探しに行ったら、どこかの馬の骨が邪魔しやがるんで、手伝えお前ら』 なお、馬の骨のテリトリーは村の墓場から森まで、広範囲に及ぶらしい。 |
■参加者一覧
井伊 貴政(ia0213)
22歳・男・サ
鷲尾天斗(ia0371)
25歳・男・砂
葛切 カズラ(ia0725)
26歳・女・陰
孔成(ia0863)
17歳・男・陰
柳生 右京(ia0970)
25歳・男・サ
天河 ふしぎ(ia1037)
17歳・男・シ
柏木 万騎(ia1100)
25歳・女・志
赤マント(ia3521)
14歳・女・泰 |
■リプレイ本文 理穴の国は本来、森と緑の多い国だ。その為、今回向った村でも、その大半は緑に覆われている。 「アヤカシは、森と村を行ったり来たりしてるのか‥‥」 赤マント(ia3521)がそんな村で、話を聞いてきた。時間はバラバラだが、ある程度暴れて犠牲者を出すと、それをつれて森へと向っているらしい。と、いつのまにかノイ・リー(iz0007)こと船長からぷらぁとを確保して抱きしめていた柏木 万騎(ia1100)が、首をかしげている。 「馬の骨の上の人は一体何がしたいのでしょう‥‥? 理由を聞いたら解決策がでてくるかもしれませんね‥‥」 片方のこぶしが、根拠のない自信とともにぎゅっと握り締められる。そこへ、町内を見回っていた鷲尾天斗(ia0371)が戻ってくる。 「あんま広くねぇな。こんなんで火攻めなんかやったら、村まで燃えちまう。森は広いが、瘴気だらけで大問題だ」 彼は窓の外を指し示し、おーざっぱに説明している。彼が使うは長槍「羅漢」。振り回せる広さの戦場が欲しかったが、どうやらそれには村の大通りが向いているようだ。もっとも、火攻めにしないので、宝珠は後から取りにいけるのだったが。 「かと言って、森で戦いたくはないですね。無理なら、墓場でも良いと思うのですが‥‥」 孔成(ia0863)が状況を逐一書き取りながら、そう答えた。力が増すと分かりきっている森に誘導したくはない。それなら、多少増援が増えても、そこそこ広い墓場のほうがましだと考えたらしい。 「位置関係はこうであってるかしら?」 葛切 カズラ(ia0725)が、街と魔の森と、墓場の位置関係を地図に描いていた。周囲には民家もある。騒ぎが大きくなる前に、中の人々には避難してもらわなければならないと思ったが、そのあたりはノイ・リー船長に頼めばよさそうだ。こうして、打ち合わせと偵察を終えた開拓者達は、それぞれの手段で、アヤカシ達を待ち受けるのだった。 囮組が陣取ったのは、赤マントの提案で、墓場の入り口になった。ここなら、現れたアヤカシにも馬にも対応できると思ったらしい。 「後は戦うだけ‥‥」 ぐびり、と酒を飲み干す天斗。そうしていると、ぼこぼこと、墓場から生える手。殆どは骨だが、中には皮や肉がついたままの遺体もある。人間、骨になるまで一ヶ月はかかるそうだがら、その間に亡くなった者達だろう。しかし、そんな死者を蘇らせた張本人である馬上のアヤカシは、つまらなそうにその光景を見下している。 「人間どもめ。怯えて隠れたか。もう少し気概のある奴はおらんのかー!」 ぱからぱからと、馬の足音だけが妙に生々しい。外見とあいまって、まるでジルベリアにいると言う騎士みたいだなと思いながら、井伊 貴政(ia0213)がこんな事を言い出す。 「馬といっても骨だけかぁ。松風って肉料理なのに何とも料理のし甲斐がない‥‥あ。自分で言っててつまらなかったな、今の」 彼にとっては、アヤカシとその馬は、料理の対象にならないようだ。と、その反対側の家の2階から、びしぃっと弓の鏃をつきつけるふしぎの姿が見えた。 「まてっ!どこの馬の骨だか知らないけど、これ以上の悪事は、僕、天河天河 ふしぎ(ia1037)が許さないぞ」 アヤカシが振り返る。そこへ、ふしぎは躊躇うことなく、矢を放つ。もっとも、弓術師ではない彼では、その矢は注意を引くだけにしかならないのだが。 「どこの馬の骨さんだか、その上の方だか存じ上げませんが、どうしても暴れたいのならほかの場所でいっしょに‥‥ね?」 一階部分から見上げている万騎。にっこりと笑顔で、もふらさまのぬいぐるみ抱えながら、そう誘いかけている。 「速そうな馬だね。ちょっと僕と速さ勝負してみない?」 その間に、馬の正面へ回りこんだ赤マント、松風丸の通り道をふさぐようにして、背を伸ばした。 「なるほどな。人がいないと思ったら、そう言うことか‥‥」 どうやらアヤカシは、周囲に現れた3人を見て、村に志体の持ち主が来ていることを悟ったようだ。 「ちょっと、もしかして舐められてます?」 だが、その口元には、ニヤニヤと気味の悪い笑みが浮かんでいる。こっそりとふしぎに尋ねる万騎士。どう見ても、色町でおねえちゃんを物色する悪い人と同じ笑みだったから。 「舐めるように可愛がってやろうじゃないか。こんなべっぴんが3人も揃ってるんだからな」 しかも、思いっきり女の子扱いされるし。 「僕は男だっ!」 「あん? だからどうした。こっちにとっちゃ、それも好都合なんだぜ」 どうやらアヤカシさんの中には、性別なんてもんは明後日の彼方に放り捨ててしまった奴が、少なからず存在するらしい。 「ふはははは。手下にゃならないが、充分美味そうだな。花嫁にしてやってもいいぜ!」 くるりと松風丸を回頭させるアヤカシ。しかし、赤マントがそうはさせなかった。 「そんな事、させてたまるかっ」 速さなら誰にも負けない。そう思った彼女、その自慢のおみ足で走り出し、松風丸の前へと立ちふさがる。確かに松風丸には負けていない。しかし、その突撃を防ぎきれているとは言えなかった。早さでは負けないが、その外套は、松風丸の脚の威力を防ぎきれるようには出来ていない。 「やれぇい!」 ぱちんと、馬上のアヤカシが指を鳴らす。ぼこぼこと現れた凶骨と言う名のアヤカシ達が、赤マント達を取り囲む‥‥筈だった。 「いっちょこーい!」 井伊の咆哮が、墓場に響いている。気の抜ける叫びだが、効力だけはあったらしく、凶骨達はそちらを向いてしまっていた。 「さぁ! お前等の罪の数を数えろ!」 どっかの絵草紙のノリで、なんちゃら童子と書かれた墓石の影から現れた天斗が、そんな凶骨達に羅漢を振り下ろす。文字通り粉砕される凶骨。ガチロリぱぅわぁは今日も健在だ。 「ふん、別働隊か。小ざかしい真似を!」 それでも、馬上のアヤカシは動じない。それは、天斗が粉砕した凶骨達だけではなく、他にも大量に蘇って居るせいだろう。 「‥‥宴の時間だ」 柳生 右京(ia0970)の腰から、すらりと珠刀「阿見」が抜き去られる。が、その周りを凶骨達がずらりと囲んで居るのを見て、少し離れた墓の上から見ていた井伊がこう言った。 「やっぱり数が多いな。被害を気にしてられるほどでもなさそうだ」 そして、馬のほうを気にしながら、距離を測る。せめて、大通りに出られれば、ちったぁ戦いやすくなりそうだが、墓の下からざくざく現れる凶骨達を見る限り、結構難しそうだ。 「あんまり近づきたくないんですがね」 孔成も、あまりこの場で戦い続けるのは、気が引けるらしい。と言うより、馬上のアヤカシが気になるようだ。 「よし、このまま大通りに行くぞ」 墓場で戦っても、街中で戦っても被害が変わらぬなら、戦いやすい方がいいだろう。そう判断する井伊。 「心得た。だがその前に、数を減らす‥‥。雑魚如きに邪魔はさせん」 右京も、障害物の多い墓場では、自身が不利になると思ったのだろう。凶骨達の攻撃を何とか避け、時には食らいながら、刀を振るう。 「援護します」 孔成が短くそう言って、懐から2枚の呪符を取り出した。それを、右京の戦う凶骨へ向って、同時に投げつけると、手順どおりに燃え尽きた符は、地面から骨の腕を呼び出す。それは、まるで意思を持った手のように、凶骨達の足を掴んでいた。 「一刀‥‥両断!」 そこへ、右京が両断剣を用いて、一機に蹴散らして行く。動きの鈍くなった凶骨達は、何とか抵抗を続けて居るが、あまり意味のないものだった。 「とりあえず土に還ってて下さい」 咆哮を使ってしまった井伊に、錬力の余力はあまりなかったが、それでもいい機会である事は変わらない。身を守る術の代わりに、彼もまた両断剣を振るう。 「だいぶ離れたみたいだね。それじゃ、馬の方に行くとするかな」 どうやら、ここは3人に任せても大丈夫そうだ。そう判断した孔成は、馬の方へと向うのだった。 さて、その馬の方はと言うと。 「これからが本当の勝負だっ!」 将を射んとすれば、まず馬からと言うわけで、ふしぎは持ってきた弓矢で、松風丸を狙っていた。が、相変わらず殆どあたらない。 「ふふふ。意気の良い子だ。ますます手に入れたくなってきたぞ!」 「うるさいっ。最近やっと想いが通じたんだ…お前の方こそ、馬に蹴られろなんだからなっ!」 人の恋路を邪魔するのは何とやらと言う奴である。ひさしの上をぴょいぴょいと逃げ回るふしぎだが、そのうちバランスを崩して、地面へと下りてしまう。そこへ迫る松風丸の足。 「急ぎて律令の如く成し、万物尽くを斬り刻め!」 が、そんな松風丸に、横から飛んできた細い触手。カズラの操る呪縛符だった。 「ほらほら?「らめぇ」って言って悶えなさい「らめぇ」って」 四肢を拘束しようとするカズラ。が、馬上のアヤカシは、絡み付いてギリギリと引っ張るそれに、ふんと一瞥をくれる。 「ふん。この程度では、啼きもせんな」 「きゃっ」 確かに見かけは妖艶なお姉さんだが、その分パワーがあると言うわけではないらしい。簡単に、引き倒されてしまう。 「ああんもう。ねぇ、こんな事して、何が目的?」 最近のアヤカシ達の動向には、疑問が残る。ただの嫁取りとは思えなかった。 「知りたいのなら、確かめてみるが良い」 「きゃっ」 触手が引きちぎられる。その様子に、赤マントが割り込んだ。既に、泰練気胞壱を発動している。狙い済ました拳は、その手に空気の力を乗せて、松風丸に横合いから一撃を入れた。 「これが僕の持つ最大の速さ…!」 その姿、赤き疾風の如し。松風丸に食らわされた衝撃は、カズラの触手とは比べるべくもない。勝利を確信した赤マントは、にやりと笑う。 「さあ、勝負に勝ったから教えてよ、大殿様とやらの名を」 が、1つだけ誤算があった。松風の腹には、大きく穴が開いたが、流石に不死のものだけあって、そう簡単には倒れてくれない。 「なるほど。赤い疾風と言わんばかりの速度だな。だが、一手足りないぞ!」 「何ッ」 その上のアヤカシもまた然り。落馬する気配はまったくなく、逆に手数の付きた赤マントを抱え上げてしまう。だが、そこへ凶骨達をひきつけていた囮班が駆けつけてきた。 「えぇい、可愛い女の子は全部俺のだっ。アヤカシなんぞにわたすかっ!」 多少語弊のある物言いながらも、天斗が羅漢に炎の力を纏わせる。 「食らえ! 紅蓮羽!」 どぉんっと流すように斬り付ける天斗。その衝撃で、ようやく赤マントはアヤカシの腕から脱出する事が出来た。 「どれ程の実力か知らんが‥‥語って貰う」 そこへ、今度は右京が自分の持つ技を自身の腕に込める。錬力は盛大に消費しているが、相手は首領格。出し惜しみはしていられない。 「この一刀にて‥‥その命、捧げるがいい」 刀を振り下ろす。ガツンと言う大きな手ごたえがあった。が、馬上のアヤカシに、蚊尾をゆがめる気配はない。見れば、赤マントが砕いた骨の破片で、刀を受け止めていた。 そして。 「お前、血の匂いがするな」 右京を評して、そう言い出す。ぎりぎりと力が拮抗する中、彼はこう続けた。 「美味そうな匂いをふりかけてやがる。大殿の元にはせ参じれば、その血、もっともっと降り注ぐだろうなぁ」 おおとの、と言うからには、さらに上のアヤカシなのだろう。人間のように喋るアヤカシに、興味を抱いた孔成は、そんな彼に会話を試みる。 「また、その名前‥‥。大殿とは一体何者ですか?」 「いいだろう。教えてやる。大殿とは、大アヤカシの事。今頃は町でも暴れているだろうよ。エンラの名を冠した者達がな!」 馬上のアヤカシが、右京を跳ね飛ばした。だが、孔成にとっては、その名前のほうが気がかりだった。 「炎羅だって‥‥」 「知ってるの?」 カズラが尋ねると、彼は首を縦に振る。 「ええ。書物で読みました。確か、大昔からいる大アヤカシの名前です」 その背中に、冷たいものが走った。多分、この人はその辺にいるアヤカシ達とは違う存在だと。 「そんな大変なアヤカシに、ぷらぁとちゃんを狙わせるわけにはいきません。えいっ!」 「こっちも元気なお嬢さんだ。だが、柔らかい」 物陰から近づいた万騎が、そう言って巻き打ちを食らわせる。しかし、当たりはすれども、避けられない。弾き飛ばされてしまう。そうしている間に、墓場の方から凶骨達が追いついてきた。 「ガードなんて無駄よ無駄無駄ァッ!」 その間を縫うようにして、砕魂符がうねうねと一本の太い触手が馬上のアヤカシへと迫る。が、狙ったように人の口に届くわけではない。 「どうしても転ばせたいか。だが、だからと言って、有利に働くと思うな!」 触手を掴まれた。握りつぶされて、白煙を上げる。 「やっぱり、強いね」 孔成がそう言いながら、足元へ呪縛符を放った。骨の手が、馬の足を掴む。動きが、少しだけ鈍くなった。 「炎の御魂よ。我に力を。えぇい!」 「炎精招来、燃え尽きろっ!」 そこへ、万騎と、武器を持ち替えたふしぎが、炎の刃を両側から振り下ろす。前足を折られ、バランスを崩す松風丸。流石に下りるハメとなったアヤカシの青年。が、ただでは起きない。 「よかろう。その馬、欲しいならくれてやる。が、代価は貰って行くぞっ」 捕まったのは避けそこなった万騎だ。がりっと首筋に痛みが走る。急激に、力が抜けて行く。きっかり3秒。へたり込む彼女を置き去りにし、彼は森へと飛び込んでしまう。その奥に広がるのは瘴気の霧。追いかけるには、自分達に消耗が激しすぎていた。 「‥‥松風丸、もう安らかに眠って」 その後、倒された松風丸にそう言いながら、その際に使ったショートソードを何事も無かったかのように素早く鞘へと収めるふしぎの姿があるのだった。 その後、皆で探した結果、宝珠は森の入り口にある何でもない祠から、あっさりと見つかった。だがそれは、万商店で売ってる強化宝珠の色違いにしか見えない。 「これ、あったかいですよ」 孔成が受け取って、じっと監察してみる。と、その周囲の空気がほんわりと暖かくなっている事に気付いた。 「見てくださいな。こうするとよく似合いますわ」 万騎がその暖かい宝珠を、まっしろなもふらさまの首に取り付けると、とても可愛い。不思議そうに首をかしげるぷらぁとを、そのままお持ち帰りしようとする彼女。 「よぉし。秘宝、ゲットだっ!」 「お前のじゃねぇけどな」 天斗のツッコミは、聞こえていないに違いない。 |