大蛇と眼鏡踊り
マスター名:姫野里美
シナリオ形態: ショート
危険
難易度: 普通
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2010/05/17 01:47



■オープニング本文

 その事件が起きたのは、踊りの準備をしている矢先だった。
 舞台となる村では、眼鏡をご神体として奉っているのだが、ある事件の後、たくさんの眼鏡を手に入れた。その時に関わった開拓者達の勧めで、その眼鏡をかけて踊ると言う事になった。踊りその者は単純だし、村人も踊り方の指導等をして、稚拙ながら村人以外の者も楽しめるよう、計画していた。
「えぇと、眼鏡の配布場所はここで‥‥。村長、返却箱もこっち?」
「うむ。中で綺麗に拭いて、また貸し出し用に並べるから、一緒にしておいてくれ」
 四角い盆のようなものに、眼鏡が置かれていた。しかし、度やガラスが入っているわけではなく、あくまでもフレーム部分のみだ。それを、巫女姿の女性陣が、丁寧に並べている。
「眼鏡の神様。どうか踊りに人がきますよぉに」
 男衆は、外で片付けと掃除だった。メイン会場は、大きな眼鏡の奉られた神社なのだが、不要そうなものを退けて、落ち葉や埃を掃い、水吹き‥‥と言ったところである。踊り参加者への炊き出しグッズを運ぶのも、仕事のうちだ。
「どうでも良いけど、これ眼鏡の女神様とかお呼びした方が良いんじゃないかなぁ」
「だなぁ。その方が見栄えがするし」
 今はまだ、眼鏡がぽつんと鎮座しているだけの神社である。しかし、やはりそれでは花がないので、村の男衆としては、それに相応しい女性を女神様役としてお立てするのを、切望しているようだ。やれどこそこの娘が良いとか、あそこのおかみさんがいいとか、好き勝手に言い始めている。
 ところが、会場となる村の神社で、問題が起きた。
「上はだいたいOKだなぁ。じゃ、そろそろこっちに手をつけるか」
「ちょっと怖いけどな」
 村人が、だいぶ入り口の広くなった洞窟に下りて行く。社の裏手にあるその穴は、眼鏡を奪われた事件の折、社の下に洞窟が見つかったものだ。
「まぁでも、アヤカシさえいなければ、ただの倉庫だしな」
「灯りとかつけた方が良いよな。すすって売ったら結構な儲けになるみたいだし」
 墨の材料として取引される品は、蝋燭によって作られると聞いていた。今はまだ、村の倉庫や臨時の宿泊場所みたいな扱いだが、ゆくゆくは何か別な事に使っても良さそうな広さである。ともあれ今は、村の大工の指示を受けつつ、客人がきちんと横になれる部屋を作って行く。
「これは不吉だから、とっぱらっちまった方が良いよな」
 奥にあったかつての事件の名残。まがまがしい祭壇を、村人達はせーので取り壊した。ところが、その奥に、またもや空洞があった。今度は、子供くらいしか通れなさそうな通風孔だ。
「って、おわぁぁぁ!?」
 驚く村人。さもあらん。ひょこ、と言う感じで顔を覗かせたのは、大きな蛇だ。
「しゃげぇ」
 こんにちは、と言う態度でぺこりと頭を下げる大蛇。しかも何故か、幾匹もの蛇を引き連れてきており、どいつもこいつもしゃげぇと牙を剥いている。
「大変だ! 奥に大蛇が出た! アヤカシだ!」
 もはやお祭りどころではなくなってしまった。おまけに蛇たちの隙間からは、瘴気がしゅるしゅると吹き出ており、あっという間に周囲を包み混んでしまう。慌てて逃げる村人達。
「あれ? 出てこないぞ」
「ホントだ。もしかして、光がダメだとか?」
 が、蛇達は、どういうわけか洞窟から出てこない。ためしに足を踏み出す村人もいたが、その瞬間、牙を剥いた蛇達が、身を乗り出してくる。
「しゃげぇ!」
「うわっ、違うみたいだっ!」
 どうやら、出てこれないわけではなさそうだ。見れば、瘴気が村の外までは気流の関係で出てこないようで、蛇達はその中に居座っている。しかし、そのまま塞いで大宴会と言うわけにはいかない。

『このままでは眼鏡踊りが出来ない。このはた迷惑な大蛇を退治して、地下空洞を掃除して欲しい』

 困った村人は、再びギルドに連絡を取るのだった。


■参加者一覧
水鏡 絵梨乃(ia0191
20歳・女・泰
剣桜花(ia1851
18歳・女・泰
水津(ia2177
17歳・女・ジ
只木 岑(ia6834
19歳・男・弓
マリー・ル・レーヴ(ia9229
20歳・女・志
コルリス・フェネストラ(ia9657
19歳・女・弓
雪切・透夜(ib0135
16歳・男・騎
ルンルン・パムポップン(ib0234
17歳・女・シ


■リプレイ本文

「よろしくお願いします。ってなんですかこれは‥‥」
 挨拶を済ませたコルリス・フェネストラ(ia9657)が、まず遭遇したのは、剣桜花(ia1851)の演説だった。
「この仕事を引き受けた者は、すべからく眼鏡の魅力をわかっていると言うことだ! すなわち同志! と言う事で、今回は同志って呼ばせて貰いま‥‥である」
 踏ん反りかえってそう言う彼女。普段は少しばかり大きすぎる胸に悩む、ごくごく礼儀正しいお嬢さんなわけだが、今回は眼鏡の精霊さまにあやかろうと、そんな事を言い出しているらしい。途中で口調まで直していた。
「そういえば、眼鏡をかけるのは確か今回が初めてだな‥‥」
「とてもよく似合うぞ。同志絵梨乃」
 心配そうに眼鏡を手にしている水鏡 絵梨乃(ia0191)さん。しかし、桜花の見立てによれば、知的な感じのおねいさんになったようだ。
「そうか。よかった。ならちゃっちゃと蛇倒して、皆で眼鏡踊りをとことん楽しもう」
 一安心、と言った様子の絵梨乃さん。他の面々と共に、村の神社へと向う。頭を下げる村人達に、色々と状況について確認する事になったのだが。
「わぁ、眼鏡の神様なんて、正に東洋の神秘です!」
 どういうわけかルンルン・パムポップン(ib0234)、あちこちに飾られた眼鏡の装飾品を見て回っている。どうみても蛇とは関係ないところを、観光客が記念の姿絵をこさえるが如く、雪切・透夜(ib0135)に描いてもらっていた。
「私も♪ 眼鏡の天使光臨なのですわ♪」
 マリー・ル・レーヴ(ia9229)も、胸の谷間から眼鏡を出して、上目遣いに微笑んでから、その眼鏡をかけてみせる。そのままくるりと回って、ジルベリア風に膝を落として挨拶している姿を見て、水津(ia2177)がぐっと拳を握り締めつつ、お空の眼鏡審様に語っていた。
「眼鏡は素晴らしいです‥‥。他者との壁となり奥ゆかしさを感じさせる作り‥‥。かすかな知性と神秘性を感じさせる風格‥‥。視力の弱い方にとっては人生の友であり伴侶‥‥。また、その人の性格や趣味‥‥人が顔を飾る上で最もその人を表すと言っても過言ではない存在です‥‥」
「もし‥‥もしであるがアヤカシ退治に失敗するような事があれば、それは眼鏡主義に対する自己啓発が不足しているせいであり、ジルベリアの眼鏡再教育収容所にて再教育を受ける事を甘受せねばならない!」
 で、それに呼応するように、ながながと語る桜花。2人の背中に『大天儀眼鏡主義』とか言うスローガンが見えたような気がした。
「あー、すみません。これちょっと頂いて良いですか? 蛇にぶっ掛けたら、酔ってくれそうな気配がするので」
 ルンルンが聞きだした所によると、伝説にあるような手段も有効かもしれないと、只木 岑(ia6834)は2人の演説の間に、お祭用に用意された御酒をひょうたんに詰め込んでいるのだった。

 さて、しばらく時間が経過した後、開拓者達は大蛇退治の為の品を、色々と揃えていた。清め塩にお神酒。んでもって水津の充填度120%の愛が注ぎ込まれた眼鏡。色んな色の眼鏡が、伊達そうじゃないものも含めて大枚34本もある。
「なるほどー。これだけあれば、洞窟も明るく照らし出せますわね。えい」
 マリーがそう言って、眼鏡を手にした。村人に洞窟の広さと奥行きを聞いていたマリーは、その眼鏡を重ね合わせると、かがり火の焔を、洞窟の中へと招き入れる。光は洞窟の中に反射、収束し、暗かったその壁を照らす。
「わ、明るくなった」
「これこそ、眼鏡いりゅ〜じょんなのですわ♪」
 感心した様にそう言うルンルンに、にっこり笑顔でその本流の中をくるりと回ってみせるマリー。ここが天儀本島でなく、ジルベリアだったら、そこはさながら演劇の舞台と言ったところか。
「さて、ちょっとした遺跡みたいな感じですし、神社とかそこら辺はスケッチして纏めておきましょうか。それと、眼鏡の女神さまも描いておきたいですね」
 その姿を、透夜が絵に描いていた。見れば、神社のたたずまいや、村の風景等が描かれている。だが、そこに眼鏡党の幹部達が注文と言う名の添削をしてきた。
「眼鏡はもっと神々しく書くのだ。あと、この辺に万歳とか付けとくとよしですね」
 何故か上の余白部分や、台座の部分に、桜花がスローガンや標語を書かせようとしてくる。良い絵と言うのは、中々難しいようだが、それでも一行は話を聞き終えると、眼鏡で輝く洞窟へと足を踏み入れていた。報告書では、穴をふさいでいた蛇だったが、先ほどの眼鏡効果か、奥の方へ引っ込んでいるらしく、すんなり入る事が出来る。ルンルンの提案で、皆揃って進む事になった。
(はぐれないように全員纏まって行動した方がいいかもな)
 松明片手にそう思う絵梨乃。不意打ちを警戒し、拳を握り締めている。後ろに目が付いているわけではないのだが、気は配っているようだ。アヤカシ達が出る前に、古酒を飲んで居るのがその証だろうか。 
「眼鏡踊りは後で参加するとしまして、まずはアヤカシ退治からはじめますか」
 後ろの方から付いてきていた。コルリスが鏡弦で、アヤカシの動向を確かめている。その結果、洞窟内にはあちこちに小さな蛇型アヤカシがいることが分かった。数は射程内に3匹いるらしい。
「どんな音も見逃さない‥‥ルンルン忍法ジゴクイヤー!」
 さらに場所を絞ろうと、超越聴覚でもって、耳をそばだてるルンルン。
 と、程なくしてしゃげしゃげとこちらへ向ってくる蛇の音が聞き取れた。程なくして、洞窟のあちこちから姿を見せる蛇達。
「えぇと、数と位置はこんなものですね。先に番人になっている方を倒した方が良かろうと思いますが」
 再び鏡弦を使ったコルリスがそう言った。どうやら蛇達は、途中から4匹増えて、合計7匹でこちらへ向って居るようだ。
「北に3、西に4です。どうやらそっちにまとまって居るようですね」
 コルリスがそう言いながら弓を撃つ。と、「しゃげぇぇぇ」と空気を震わせるような音がして、ひょこりと顔を出す蛇達。前に進み出る絵梨乃。
「ここで出来るだけ駆逐していた方が良いと思います。まずは、蛇を何とかしましょう」
 同じ考えを、透夜も持ち合わせていたらしい。いや、彼ばかりではない。既に弓を構え、狩射を射掛けているコルリスも同じ考えのようだ。
「賛成だ。いくぞ」
 一番素早い絵梨乃が、そう言って軽く地を蹴った。泰拳士の身軽さで振り上げられたおみ足が、蛇の脳天を直撃する。別の蛇がしゃげぇと牙を向くが、それは受け止めずに、ひらりと回避する。
「接近戦に持ち込む!」
 まるで酔っ払っているような動きだが、何故か優雅とも思える仕草で、ふわりと避けていた。いわゆる乱酔拳の技だ。だがそこへ、子分達には任せておけぬと言わんばかりに、小蛇達の間へ割り込む用にして、祭壇から大蛇が姿を現していた。
「そこから先は立ち入り禁止ですよ! 捕まえた!」
 只木が、そう言いながら弓から鎖分銅へと持ち替え、投げつける。大蛇を洞窟から出さないように、動きを封じようとするが、蛇はぶんぶんと鎌首をもたげて逃れようとする。分銅が今にも外れそうなので、只木は急所を狙う為に再び弓へと持ち返る。
「ニンジャカッターは岩砕くなのです‥‥シュリケーン!」
 その間に、ルンルンがすかさず風魔閃光手裏剣を投げつけていた。どこがニンジャなのか、かけらもシノビっぽくないが、技そのものはシノビらしい。
「一気に敵を殲滅するのです!」
 その間、水津が松明をかがり火がわりに、眼鏡踊りをダンシング。その効果で刀の切れ味が上がって居るのは、その眼鏡踊りに、神楽舞い・攻の力が付与されているせいだろう。若干トランスしているのは、きっと気のせいだ。
「同志水津総書記長を失望させることは、完全なる罪悪である!」
 で、さらにその横で同じ様にあおっている桜花。彼女も一応は巫女なので、応援と言う名の支援に徹しているようだ。前衛で傷を負ったものに、次々と閃癒が使われる。
「眼鏡びーーーーっむ!」
 水津の方がもっと派手だったが。何しろ、眼鏡がきらんと輝いた演出つきだ。
「すみませんね。ですが、此処は大事な場所ですのでッ」
 まぁ言い分はともかく、子分の蛇をなぎ払う透夜。武器の重さで、いやんな音が立っているが、混戦状態の洞窟では見ないふりだ。
「前にいると危ないから、後ろで舞ってて下さい」
 鷲の目で視界を確保し、狩射で順次子分を仕留めていたコルリスが、巫女組にそう注意していた。その間、ホーンボウを発射したマリーだったが、外してしまう。と、そこへ桜花がパゥワァを授けるようにこう言い出した。
「同志マリーよ。眼鏡を使うのだ!」
「わ、わかりましたぁ。眼鏡パワァ‥‥めーいくあーーっぷ♪」
 ちゃきっと眼鏡を装着すれば、視界もすっきりはっきりクリアになる。心眼を使って視界をクリアにしたらしいが、見た目には眼鏡パウワァで正確な射撃が出来るようになった様に見えた。
「おお、眼鏡主義万歳!」
 桜花がそう言う中、きらーーんっとその弓に炎の力が宿る。いわゆる炎魂縛武の技だ。そこへ、水津が眼鏡の舞いの力を授けてくれる。
「眼鏡の舞いの力で、食らえ! 12連撃!」
 神楽舞・進をかけてもらった絵梨乃が、泰練気法弐を繰り出した。只木もまた、強射「繊月」を急所と思しき眉間に射掛けている。
「いまだ必殺、ルンルン忍法ニンジャドライバー!」
 同じように素早くなったルンルンが、そう言いながら必殺の飯綱落としをかけた。
「貴様は既に、死んでいる‥‥‥‥なんてな」
 しゅたっと地面に着地した絵梨乃がそう言った刹那、大蛇はどーーんっと地面にひっくり返るのだった。

「何とか倒したようですね。あんまりたいした事はなかったようですが」
 鏡弦を使い、残っている蛇が周囲にいないかどうか確認していたコルリスがそう言う、射程内にはいないので、もしいたとしても逃げてしまった後だろう。
「眼鏡の女神よ。どうかこの瘴気を清め給え‥‥」
 最後に、充満した瘴気を晴らすべく、お清めした塩と御酒と伊達眼鏡を、あちこちに置いている水津。只木も、それを手伝っていた。
「せっかくなので、眼鏡踊りに参加して見たいのですが‥‥。踊り方を教えてくれませんか?」
 コルリスも、踊りを堪能していくつもりのようだ。もっとも彼女の場合、自分の視力は悪くないので、貸し出し用の伊達眼鏡をかけている。これで、踊りの最中ふらつく事はなさそうだ。
「お祭ですから、楽しまないとね。いろんなフレームを試してみるのも楽しそうですね」
 只木がそう言いながら、複数の伊達眼鏡を吟味していた。その1つを手にとっていると、横から絵梨乃も眼鏡試着会に加わる。彼女が選んだのは、星型眼鏡だ。
(普通のでもいいんだが、それだとインパクトがない気がするんだよな)
 そう思って、奇抜な形のフレームを選んでいたのだが、どう見ても宴会仕様である。お祭なので、構わないと言えばかまわないのだが。その様子を、透夜が村人から踊り方の手順を習いつつ、せっせと絵筆を走らせている。
「眼鏡を出して、そっとかざして目に当てて‥‥デュワッ」
 ルンルンも、ゴーグルを天にかざしてから目に装着していた。踊りそのものは、盆踊りに毛が生えた程度なのだが、天儀出身ではないマリーにとっては、奇異にうつったらしく、しきりと「不思議な踊りですわ〜」とか言いながら、楽しそうに踊っている。そんな中、透夜がこう言い出した。
「折角眼鏡を祭ってるのなら、それで名物でも作っては如何でしょう? 例えば、眼鏡型の小さなお守り。或いは、お菓子とかね。やりようはあるかと思いますよ」
 と、目を輝かしたのは、眼鏡党総書記長さんこと水津である。
「少しでも多くの方に、眼鏡の素晴らしさを知ってもらいたいと思いますので‥‥。村の女性、私達を含めて最も眼鏡への愛に溢れた方にやってもらいたいです‥‥」
 ずらりと並ぶ伊達眼鏡に、只木が感心したように耳を傾けてくれた。
「凄いですね。その熱意には感動すら覚えますよ」
「ありがとうございます。コレクションした甲斐がありましたわ」
 賞賛してくれる只木に、水津が礼を返している。その只木の手に、緑の単眼鏡が握られているのを見て、水津は「それは?」と問うた。
「ボクには、この緑の単眼鏡しかないです。でも、これは、とても大切なものです。なくしたり、壊れたりすることなど、考えられません。これに力をもらってます。傷つけないように大切に護らなきゃ‥‥今改めて思いましたよ」
 そう言って、大切そうに胸に閉まう只木。
「全ての眼鏡にそれぞれの個性と素晴らしさがあります‥‥。その緑の単眼鏡も、眼鏡は眼鏡。ああ、眼鏡って人類が生み出した最高の奇跡ですよね‥‥!!」
 どうやら、眼鏡の熱意が只木に通じたらしい。そう判断した桜花、力強く村人達に宣言していた。
「眼鏡主義は人類が真に進むべき道である! よって、眼鏡を具現化する同志水津総書記長によって、強力な指導が行われなければならない!」
 と言うわけで、水津ちゃんを眼鏡女神にしてほしいと言うのが、桜花さんのご主張である。もっとも、村人も見た目可愛い巫女さんのお申し出を断る気などなく、ましてやアヤカシを追っ払ってくれた開拓ギルドの人なので、その案を受け入れてくれるようだ。
「だそうです。よろしければ従者何かどうですか?」
「光栄です。だったら、お払いのこれ、持っていた方がそれっぽいですね」
 その水津、従者として只木を選んでくれた。礼を言った只木、梓小弓を持って、それっぽく後ろにしたがっている。こうして、水津には女神を現す『娘々』の称号が贈られ、只木にはその従者や弟子をあらわす『公主』の称号が贈られたそうな。なお、性別は気にしないでくれとの事である。わーっと盛り上がっている一部村人達と、眼鏡の女神様になった水津を絵姿に描き止めつつ、透夜はふと感傷に浸るようにこう言った。
「にしても、精霊、か‥‥。もし、それのお姫様がいるとするなら、また逢えれば‥‥」
 そこまで言って、はたと気付く。
「‥‥また? 多分にロマンチシズムに毒されたものです。ふふっ」
「眼鏡村は眼鏡を愛好する者達によって奉られ、眼鏡踊りが奉納されましたと。天儀は本当に奇妙なお話ばかり。ヘンですの♪」
 そんな不思議な村の人々と、不思議な開拓者達の様子を、記録に書きとめるマリー。そう言う割には、とても楽しそうに書かれている記録書には、『天儀ふしぎ日記』と題が付けられているのだった。