【四月】神聖もふら帝国
マスター名:姫野里美
シナリオ形態: イベント
危険
難易度: 普通
参加人数: 26人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2010/04/19 12:48



■オープニング本文

 4月のある日。神楽の都。
「もふ! もふもふもふ!」
「もふもふもふもふ!」
 聞きなれた鳴き声が、都の入り口からやってきた。
「うわぁぁ、なんだあれ!?」
「も、もふらの大群だぁぁぁ!」
 見れば、真っ白い大小さまざまなもふらさまが、地を覆いつくす大波のなって押し寄せてきていた。その数、数万である。あっという間に神楽の都は大パニックだ。
「目が赤い!? まさか、攻撃色か!」
「んなわけねぇだろう!」
 地に潜るもの、空に浮かぶもの。色々逃げ回ったが、元々もふらさまは平和主義の精霊様なので、とりあえず各家を占拠して、あっという間に主になってしまうだけで終わった。
「今日から、神楽の都は、もふら帝国の首都もふ!」
「帝都って言うもふよ!」
「かぐらのみやこじゃなくて、もふらのみやこに改名するもふ!」
 あんまり喋っているのを見たことのないもふらさまは、ぺーらぺらと喋り倒した挙句、ちょうど開拓ギルドの位置に、もふら印の旗を立ててしまった。そして、力強く宣言する。
「きょうからここは、神聖もふら帝国もふ! 皆、もふらを敬うもふよ!」
 いや、普段から敬っているだろうと言うのはさておき、各家でふんぞり返っている他は、食べるご飯も着る物も、さほど大差ないので、はじめのうちは問題なかったのだが。
「皆、村の32歳以下の男子で、顔の良い男を連れてくるもふ」
 ギルドに居座った、一番立派なもふらさまがそう言い出した。見れば、頭に王冠をつけている。きっとこのもふらさまが、もふら帝さんなんだろう。
「ははー。一体何をするので?」
「脱がすもふ!」
 人間様の目が点になった。ともあれ、もふらさまの頼みと合っては、むげにするわけにもいかないので、人々は若い衆をもふらのやかたへ連れて行ったところ。
「恥ずかしいので見ちゃダメもふ」
 扉が閉められた。そして、数時間後。何故だか妙にケツをもぞもぞさせた若い衆が出てきた。しかも、どういうわけかもふらの着ぐるみを着ていたり。
「一体何が‥‥」
「えと、色々ちょっと‥‥。トイレどこですか?」
 覗けば、もふら様がいた場所に、何故か人間の若い衆が一人いて、半裸で寝台に横になって、ぷはぁと煙管を吹かせちゃったりなんかしている。まるでどこぞの廓みたいだと、覗いた奴曰く。
「きっと、生気を吸って人間になっているんだ」
「で、吸われた方がもふらに‥‥? なんて恐ろしい」
 その噂はあっという間に広がり、ギルドを訪れる者がいなくなってしまった。豪を煮やしたもふら帝様は、こう号令を発する。

『人間狩りだもふ! 若い男を残らずひっ捕まえて、人間になるもふ!』

 こうして、もふらと人との追いかけっこが幕を開けるのだった。

 ※このシナリオはエイプリルフールシナリオです。実際のWTRPGの世界観に一切関係はありません


■参加者一覧
/ 蘭 志狼(ia0805) / 鬼啼里 鎮璃(ia0871) / 氷海 威(ia1004) / 天河 ふしぎ(ia1037) / 輝夜(ia1150) / 王禄丸(ia1236) / 巴 渓(ia1334) / 懺龍(ia2621) / 安達 圭介(ia5082) / 倉城 紬(ia5229) / 神楽坂 紫翠(ia5370) / 風鬼(ia5399) / ガルフ・ガルグウォード(ia5417) / バロン(ia6062) / からす(ia6525) / 只木 岑(ia6834) / 和奏(ia8807) / 以心 伝助(ia9077) / 向井・奏(ia9817) / エシェ・レン・ジェネス(ib0056) / エルディン・バウアー(ib0066) / ラムセス(ib0417) / 壬護 蒼樹(ib0423) / 不破 颯(ib0495) / ブロント(ib0525) / 岩宿 太郎(ib0852


■リプレイ本文

 風鬼(ia5399)と言う、夢の語り手いわく。
 もふら帝国が樹立された頃、まず最初に通りを出歩くのは女と年寄り、それに気恥ずかしげにもふらのきぐるみを着た若い男達だけになったと。
 さて、そのもふらさま。神楽の都中にいるわけだが、悪さをするわけじゃないので、いろんな人に大人気だった。
「ねえねえお兄さん、あのね、ちょっと一緒に来て欲しいの☆」
 ちょっと小首傾げて、おねだりしているエシェ・レン・ジェネス(ib0056)。どうやら、かっこいいお兄さんを連れて行けば、ふかふかのもふら様と思いっきり遊べる、と思っているようだ。無論、悪意などこれっぽっちもない。そう、困った事にこれは「善意」なのだ。
「奇妙な事態になっていると聞いたゆえ、様子を見に来たのだが、本当にすがすがしいほどもふらさまだらけだな」
 感心したような声を上げる蘭 志狼(ia0805)。そこへ、先ほどのエシェがもふらさまと一緒にやってきた。色々あったが、根は勤勉実直と言う名が相応しい志狼、少女ともふらさまの頼みとあらば、むげにはできない。
「ふむ。俺も年齢制限内のようだ。労働でもさせられるのか?」
「わかんないけど、一緒に来て欲しいの」
 エシェが訴えると、志狼は頷いて、何の疑いもなく案内のもふらさまについて行ったのだが。
「む、何故そのようなあからさまに胡散臭い部屋に案内するのだ? しかも中央の人物は、どう見てももふらさまではないのだが‥‥」
「細かい事は気にしちゃいけないもふ」
 そう言って、もふらさまちょいちょいと手招き。導かれるまま、お布団に転がされる志狼さん。しかし、その後ろで扉がぴしゃりと閉まった。灯りが落とされてしまったので、これ以上は知る由もないっつーか、報告書には記載できなかったりするのだが、ともあれ、出てきた志狼さんは、他の男集と同じように、お尻をもぞもぞさせて出てきた。
「…此処で経験した事、この蘭志狼の身命かけて漏らす訳にはいかん。着ぐるみ位いくらでも着よう。だが何が起きたかは聞くな…あと後ろに回るな!」
 で、どういうわけか機嫌が悪い。そんなわけで、各所でこんな阿鼻叫喚が繰り広げられていた。
「お、もふら様だ。可愛いな〜♪」
 運悪く、肝心な所を思いっきり聞き逃しちゃったガルフ・ガルグウォード(ia5417)、町中に溢れかえっているもふらの1匹を抱きかかえ、なでなでもふもふしていた所、後ろにいたもふらさまがずずいと距離を詰めてくる。慌てて逃げる他の人。
「って、あれ?何で皆逃げるんだ?」
 哀れガルフさんだけ気付いていない。いや、どちらかと言うと、意味分からないまま、くるりと回れ右。
「と、とにかく逃げりゃ良いんだな!?」
 釣られて、全力疾走で逃げ出すガルフ。だが、うっかりそのままもふらさまを抱えていたのが運のつきだった。
「え、ちょ、何す…ギャアアアァァァっ!!!!!」
 合掌。やっぱり朋友と言う名の本体がいないとあかんのかもしれない。
「今日はこの格好の方が、何だか安全な気がするんですよね」
 まるごともふらの背中に春風の羽を背負って、ほてほてと街中を歩いている鬼啼里 鎮璃(ia0871)。その最中、もふらさまに取り囲まれながら、宮殿へと連行されるのを見かける。興味を持って、後をついていく彼。
「もふ? お前どうしたもふ?」
「いえ、ただの付き添いですよ」
 さすがに見咎められて止められる。だが、そう言うともふらさまはあっさりと通してくれた。しかも、ご丁寧に案内もふらまでついている。
「えぇと、ここで待っていれば良いんですか?」
「そうだもふ。そのうちもふらさまがくるもふよ」
 もふらにもふらさまと言うのもどうかと思うが、あんまり気にせず待っていると、そのうち一回り大きなもふらさまが現れた。怪訝な顔をしている鎮璃。その後に待っているのは、お約束のコース‥‥のはずだったのだが。
「あれは着ぐるみだったんですね。ああほら、脱いだらちゃんと服着ましょうね」
 本人が天然ボケだったせいもあってか、ぽっと頬染めてお尻をもぞらせているのは、人間になったほうのもふらさまだったりする。どうやら余り深く考えてはいけないようだ!
 こうして、風鬼が語るところによると、やがて開拓者の間から、もふらのきぐるみが流行になり、そしてその着ぐるみが高値で取引される事になっていたそうだ。
 それを持ち合わせていない輩がどうなったかと言うと。
「はぁ…春めいてきてお茶もおいしいですね…」
 茶店で、まったりと茶を飲んでいる安達 圭介(ia5082)。その視界の隅に、土煙を上げて迫るもふらさまの姿が!
「って…誰かもふら様に追いかけられて…ってこっち来るー!?」
 しかも、その目的地は、まちがいなく自分のいる茶屋だ。驚いた圭介は、慌ててお茶と菓子を手にしたまま、全力疾走で逃亡開始。気がつくと、菓子を持ったまま、どこかの路地裏に隠れていた。同じ様に逃げ惑ったらしい只木 岑(ia6834)が、泣きそうな顔をしている。
「ととりあえず追っ手対策を考えないと‥‥」
 説明の上助けて下さいようと嘆く圭介に対し、只木はなんとかしてもふらの攻勢から抜け出そうと策を巡らせる。正直、体力には全く自信がない圭介なので、せめてもの抵抗とばかりに、2人で顔を付き合わせる。2人とも、もふらに擬態出来るようなモンは持っていない。
「対策と言うと」
「例えば、こう隠れている間に仲良くなったら、邪魔しないんじゃないかとか‥‥」
 頭を抱える圭介の持っている大福を、2つに分ける真似をする只木。
「そうか‥‥。じゃあ、将棋でも指します?」
「道具がないから、これにしましょうか‥‥」
 とりあえずその真似した通りに、大福を分ける圭介。2人してもふもふと大福をツマミながら、とりあえず地面で五目並べなんぞ始めていると。
「見つけたもふ」
「しまったもふー!? たぁすけてぇぇ」
 ひょいとツマミ上げられる圭介。あっさり捕まっちゃった彼が運ばれていくのを尻目に、只木はとっとと回れ右。
「そこの人はもふが相手もふ。さぁ、頭巾を取るもふ」
「いいいいや、酷い傷があるので遠慮いたしたく〜」
 が、そこにはもう1匹もふらさまがいた。後ずさる只木に、もふらさまは「気にするなもふ」とにじり寄ってくる。
「えぇい、こうなったらいらないくず鉄で〜!」
 只木がそう言って、手元にあったくず鉄を投げつけるが、元が力持ちのもふらさま、あっさりたしっと受け止めて、投げ返してきた。
「しまった。これではくず鉄キャッチボール‥‥」
 どっちかって言うと、ボウリングのような気もしないでもないが、もふらさまは転がっていた木を手に、鉄くずノックを開始する。つい乗ってしまう只木さん。
「って、こんな事してる場合じゃなかったもふ」
「うわぁ〜可愛がられたり、もふもふされるのは苦手だぁ」
 我に帰ったもふらさまにひんむかれ、覆面の代わりにまるごともふらさまを被らされてしまったのは、それから間もなくの事だった。
 一方、別のもふらさまが向ったのは、いかがわしい宿屋の立ち並ぶ辺りだ。2階建てが軒を連ねるその辺りの窓べに、よく見ると神楽坂 紫翠(ia5370)。どうやら、男だけが狙われているので、女物の衣装を身につけている。深いスリットの入った黒いチャイナドレスに、羽扇。見た目だけなら、昼時に喧騒を見下ろす有閑まだむと言った雰囲気だったのだが。
「そこにいるのは、男の娘もふね!」
 1階部分から、びしっとおてての先を突きつけられるチャイナな紫翠さん。黙っていれば綺麗なお姉さんなので、じっと黙って微笑んでいると。
「可愛いもふよ☆」
 もふらさま、2階に上がってきて口説き始めた。放っておくと、ぺろっと化粧したほっぺを舐めてくる。しかも、紫翠が黙ったままなので、スリットから覗いたおみ足をなでなで。それでもなお、紫翠が喋らないので、もふらさまのおててがだんだん上のほうに伸びてきた。
「って言うか。ばれましたか?・・ではまた・・」
 何がどうやっぱりなのかは、推して知れって奴だが、男だとバレちゃったので、紫翠はもふらさまを思いっきり付き飛ばす彼。そのまま逃走する紫翠の前に現れたのは、もう一匹のもふらさま。まさか挟みうちにされるとは思わなかった紫翠が、思わず立ち止まり、悔しげに唇をかみ締める。
「バロン様が知恵を授けてくれたもふ。もふ達だってバカじゃないもふよ。そんな子はお仕置きもふー」」
 なんでも、もふら帝のところにいるバロン(ia6062)が、対象年齢範囲外なのを良い事に『もふら帝よ、神聖もふら帝国の為、おぬしに力を貸してやろう』と言う事になったらしい。その後、紫翠がどうなったかは誰も知らない。
「くう。もふもふ…甘美な響きに釣られてきたら、まさか俺がもぞられるとは」
 そんなもふらさまに釣られて参上した岩宿 太郎(ib0852)、そのまま気ィ失っている紫翠に、顔を引きつらせている。ぷはーと煙管吹かしている人型もふらさまに、彼はふっと達観したような表情になる。
「いかにトキメキナマモノとはいえ、奴らも獣ということか…。世の中ってこわいよね」
 誰に行っているのかは知らないが、それでもまるごともふらさまは着て見たいし、中で何やっているかは、とても気になる。
「何かあるに違いない。突撃あるのみじゃ〜!!」
 行くしかないと心に誓い、そのもふらの館へと向う岩宿。同行者は品の良さそうな金髪エルディン・バウアー(ib0066)だ。と、その前にもふら達が立ちふさがる。しかし、岩宿はもふると言う魅力に取り憑かれてるせいか、じりっとその歩みを前に進める。俗に言う生贄とか身投げとか、特攻の体勢と言う奴だ。
「俺とてただではもぞられぬ! 俺の心が折れるまで思う存分もふらどもをもふってくれる!」
 そう宣言すると、目の前の捕獲用もふらさまにだだっと跳び乗っていた。
「勝負だ胸キュンアニマルども! 最後に至福の微笑と共に立っているのはこの俺だーーーっ!!」
 まるでどこぞの格闘漫画である。かくして、もふらさまと岩宿は上になり下になり、お互い何とかも振り倒そうとどたばたしている。
「貴方の尊い犠牲は忘れません。必ず助けますから」
 その隙に、エルディンはさっさともふり屋敷へと向ってしまった。だが、見張りのもふらは多いようだ。さすがに本職のシノビではないのは、そのままのようで、あっという間に見つかってしまう。
「こんな事もあろうかと、切り札は用意していたんです」
 そう言うと、エルディンはすかさず懐の眼鏡を取り出し、装着する。視界がクリアになり、あろう事か目つきがちょっと悪くなる。
「ふ…。人間をどうしようってんだ? あぁ??」
「さ。さすが眼鏡もふ。鬼畜もふ」
 根性的にはけっこうヘタレなもふらさま。強気に出られて、あっという間に後ろへ下がる。その背中が、どんっと何かに当たった。みれば、ブロント(ib0525)である。ぱっともふらの顔が明るくなった。
「きたもふ。メイン縦きたもふ。これで勝てるもふ」
 何がどうメイン縦なんだかはさておき、もふらはそう言うと、ブロントの後ろに回り込んで、ブロントをエルディンに突き飛ばした。おかげで、アタックする格好となったブロントは、勢い余って、エルディンの眼鏡を落とさせてしまう。
「あ、あれ!?私は一体何を…?」
 ご長寿の方や近眼の方が、眼鏡を探すが如く、うろうろとするエルディン。どうやら、眼鏡が外れて元に戻ってしまったようだ。今がチャンスとばかりに、もふらさまがえいやっと押し倒す。
「ちょ、や、やめ…、そんなところを触らないで…」
 もふもふもふもふ。いけない何かに目覚めそうになりながら、歯を食いしばっているエルディンさん。ぽとっと薔薇が落ちた音がした。
「くう、俺の煩悩が有頂天だぜ」
 で、そのもぞられたエルディンを見ているうちに、何か覚醒しちゃったブロントさん、もふらさまを着せられているエルディンをガン見している。
「俺は別に自ら生贄になる事をアッピルなどしてはいない」
 要約するとイエスと言うことらしいので、もふらさまはそれっとばかりにブロントを捕獲しに行った。ぽっと頬を染めているブロント。どうやら体験を決意したようだ。
「・・・おいィ? もふらさま・・・お、俺を自由にもぞって・・下さい・・・」
 世の中、奇特な御仁もいるわけである。

 再び風鬼いわく、かくして暗い路地裏に金貨と血刀が行き交い、一夜にしてもふらのみやこは魔都と化した。
 が、女性と子供、もふら着ぐるみ着用の面々には、そんな事欠片も関係なかったわけである。
「すごいデス! どこもかしこももふら様だらけデス。可愛くてモコモコデス〜」
 神楽の都中に溢れるもふらを見て、目を輝かせるラムセス(ib0417)。お外は言うに及ばず、何故かおうちのなかにももふらさまが居座っていたのだ。
「あれ? ご飯とお水を用意している間に知らない男の人を残して消えちゃったデス」
 だが、わくわくしながら朝起きたら、代わりにお布団で転がっていたのは、おとうさんの壬護 蒼樹(ib0423)だ。しかも、何故かお尻をもぞもぞさせている上、丸ごともふらさま姿。さらに隣には既に終了済みの人型もふらがいたり。
「もふらさま、どこにいったんでしょう?」
「わからないです。この人はどなたなんでしょう」
 男の人はまだねぼすけさんだ、なので、壬護は知らない人よりも、自分の息子をかまう事にした。
「まるごともふらさま、僕の分も欲しかったデス…」
 しょぼんと肩を落としながら、うらやましそうに白いもふらを掴んでいるラムセス。とりあえず、自分が着ていたまるごともふらさまを着せてみるが、体格が合わない。
「家のもふら様。どこに行っちゃったでしょ〜? お布団でゴロゴロはとっても気持ちいいデスけど、お日様一杯浴びないと病気になっちゃうデス…」
 で、仕方なくラムセスくんは、もふらだらけのお外に出てみた。そして、周囲を見回すと、こう言い出す。
「そうだ偶像の歌で歌って見るデス。お日様ぽかぽか気持ちいい♪ お散歩とっても素敵デス〜♪」
 歌に釣られて寄って来るのは、もふらさま捕獲大作戦の適用範囲外な子供達。その姿を見て、おとうさんの顔がほころぶ。しかし、顔の部分から除いているのは、お父さんの顔なので、子供は誤魔化されないようだ。
「やっぱり駄目ですか…」
 しょぼんと肩を落とすおとうさん。だが、ラムセスくんは、そんなきゅーんとまるまった着ぐるみお父さんを慰めるように、その膝の上に座り込む。
「でもかわいいから良いデス…」
 その笑顔で、壬護おとうさんがとても癒されたのは言うまでもない。

 さて、その頃表では。
「ひとーつ 人の世のお尻をすすり、ふたつ ふわふわ悪行三昧、みっつ みみっちい野望のもふを、しばいてくれようもふ太郎」
 ってな句を、特に深い意味もなく口ずさみながら、おなじみ焼きネギ屋の屋台を引いている輝夜(ia1150)。漂う香ばしいネギの匂いに、人型もふらさままで集まってきた。確かに焼きネギをつまみにするのは、それはそれで美味いモンなわけだが、この場合、ネギの使い方が違っていた。
「現れたな人型もふらどもめ。これでも食らうが良い!」
 中には、普通にネギを食しにきたおっさんもいるわけなのだが、人型もふらと確信している輝夜の勘は歪みない。その手に握られたのは、何故か「精神注入」と書かれたぶっといネギだ。
「って、何しやがるーー!」
「えぇい、だまれもふ帝の手先め!」
 もちろん、間違いなんてあり得ないので、手加減なんてしていない。それゆえに、ネギ屋の周囲には次々とネギ尻の被害者が出来上がっていた。
「面白い事になってるね」
 その光景を、くすりと微笑みながら見下ろすからす(ia6525)。都の中でも、一際高い場所にある見晴台だ。だが、からすはしゅたっとその見張り台から、優雅に下りてくると、予め設えられた茶席へと滑り込む。そして、傍観を決め込んでしまった。
「いえ、私達は敵意はありませんよう」
 それは、倉城 紬(ia5229)も一緒だ。両腕を広げていた彼女の手には、お菓子の袋が握られている。それは、からすの茶席も同じだった。
「お菓子もアルから、のんびりするといいよ」
 元々雑食のもふらさまなので、お菓子に釣られてよってきてしまう。さらに、遊び道具も何故かたくさんあるので、もふらさまは興味深々だ。そんなもふらたちを、からすはそのオモチャで、あっという間に懐柔してしまった。
「えと。新茶なのですが、如何でしょう?」
 紬の差し出したお茶とお菓子を一緒に食べてくれるもふらさま、そこに、紬はこう言って問いかけて見た。
「えと。何故、32歳以下の外見の男子なのでしょう?」
「何でも、昔助けてもらった人が、それくらいの若い人だったみたいもふ」
 もふら帝じゃないとわからないが、どうももふら帝は別に悪い事をしたくて、人間狩りをしているわけではないようだ。
「ふむ。人間になった気分はどう?」
 からすの問いに、首をかしげる元もふらさま。こうして談笑しつつ、仲良くなったもふら達から現在の情報を収拾したからすは、こう頼んでいた。
「よければ、また情報を集めてきて貰える? あ、こっちは鍋の追加材料の買い出しをお願いする。鍋の準備して待ってるよ」
 食べ物の為なら、この程度朝飯前だろう? と言わんばかりのからすに、あっさりと頷くもふらさま。どうやら、敵意ばかりではないようだ。それは、もふ帝一派じゃないもふらさまも同じだった。
「今こそ、このまるごともふらを活用する時っ☆ どうです、似合いますか?」
 家に居座るもふらさま―以下、おうちもふ―の前で、片足上げて見せる和奏(ia8807)。と、おうちもふはもふもふしながら、目をにっこりと細くさせる。
「似合うもふ☆ かわいいもふよ」
 なでなで、もふもふ。ひとしきり褒めてもらった和奏は、その膝の上にちょこんと座って、大きなもふらさまの顔を見上げる。
「ところで、もふら帝さまってどんな方なのかご存じですか〜?」
 おうちもふは庶民なので、位の高いもふらさまの事はわからないようだ。庶民が貴族の事はよく分からないのと一緒である。
「そうですか。自分はもふら帝さまより、おうちもふのが可愛いと思いますけど…」
 ぽっと頬を染めるおうちもふ。
「でも、どうせなら、おうちもふにも人間になってもらいたいな〜。そうしたら、このまるごともふらを着せてあげられるのに…きっとお似合いですのに…」
 和奏の申し出に、おうちもふはぺろりとほっぺを舐めてくれた。和奏も狩られるのは嫌なので、ぎゅっとそのもふらさまをもふもふする。
「ふふ、選ぶ権利を主張してよかったです☆」
 満足げな彼。そう、きぐるみを着ていれば、若い男でも人間狩りの対象外なのだ。その上、きぐるみーずや女子供の聞きこみの結果、悪いのはもふら帝だと言う話になったようだ。
 そうなれば話は早い。もぞられちゃった被害者各位は、ベッドなりお布団なりで転がしておき、もふら帝捕獲にやっきになっているのは、対象外とされた女性陣だった。さりとて、群れる無数のもふらさまと戦っても、拉致はあかないし、そのふわもこを殴る蹴るってのは、あんまりよろしくないわけで。
「ともかく、ボスに肉薄しないとな。外見が若い男ってんなら、俺も通用すんだろ」
 巴 渓(ia1334)、性別は間違いなく女性なのだが、見かけは男っぷりが激しい御仁だ。体型を隠してしまえば、どうにかなるだろう。
「うふふふふ、もふらさま、あんたの大将がどこに行くか教えて欲しいの。いいよねぇ?」
 その頃、優しそうな笑顔で持って近付く懺龍(ia2621)。ぎりぎりと足元が踏まれていた。
「教えてくれなければこうよー」
 で、力のゆがみまで使い出す。ぐんにょりと曲げられて、めそりと凹むもふらさま。無理やり聞きだされたもふらさまが、もふ帝の居城まで案内させられたのは、言うまでもない。
 見れば、何をどう間違ったのか、もふられ受付が出来上がっていた。ブロントや不破の姿もある。巴は、他の掘られ志願者達に混ざって、もふら帝の宮殿と言う名の天幕へと近付いていた。
「ふむふむ。もふら帝は、人間狩りをしては違うって言ってるんだな」
 そこでは、不破 颯(ib0495)がもふら帝から話を聞きだしていた。信用される為に、世間話から話を聞きだしていた。そこへ、力の歪に追いかけられたもふらが、不破の後ろ側に逃げ込んでくる。大慌てのもふら帝様。
「何するもふ! もふはご恩を返す御仁を探してただけもふー」
 2人の目が点になる中、もふら帝さまはこう言い出す。
「正直言うと、もふ達は人間の顔は、人間が犬さんや猫さんを見る時と同じくらいしか、細かい顔立ちが分からないもふ。だから、とりあえず似てそうな人間様を集めてるもふ」
「じゃあ俺違うね。これは返して貰うよん」
 ひょいっともふら帝に足を引っ掛け、持っていたお洋服を奪い取る不破。もふら帝がすぐ側に居た巴に抱きついてくる。しかし、それこそが巴の思う壺。
「はっはっは、そんなに吸いたきゃたっぷり吸いやがれーっ! ただし女のだがな!!」
 抱きつかれたもふら帝に、自分の胸を押し付けている巴お姉さん。
「えーと、これはこれでぷにぷにもふ」
「このスケベもふらめ! 大人しく観念して、街を開放しやがれ」
 もふら帝、両刀だったらしくて、胸に顔を押し付けてくる。そのせいで、巴の逆鱗に触れ、懺龍の掘った5m級の穴に顔を突っ込んでしまう。
「そこの姉さん、なんだったら一緒にこのはた迷惑なもふらさまを埋めた方が良いんじゃないかな」
 不破と巴、そして懺龍が反乱と言わんばかりに、もふら帝を埋めてしまう。
「ふむ。これは夢に違いない。つまりは、私も自由にしていいと言うことだ」
 それを見た王禄丸(ia1236)、これを機に好き勝手行動するのを決定していた。とたん、狩猟対象年齢ギリアウトな牛仮面の巨体が、埋められているもふら帝を遠慮なく攻撃する。
「お前らは哀れだ、だが許せぬ。実を結ばぬ烈火のように散るがいい」
 そう言って、両手に持った翠と黒の刀で叩き切っている姿は、どう見ても人牛型のアヤカシがもふらを襲っているようにしか見えない。しかし、その光景を見ていた、黒ローブの御仁が、バルコニーへと進み出る。
「ふふふ。どうやらここが潮時のようじゃな。
 そう、軍師のていで杖を掲げるバロンだ。そう言うや否や、何故か背中についてるチャックを開けて中から白いヒゲの生えたもふらが出現し、こう命じている。
「もふらたちよ。今こそ覚醒のとき。集いて腐海を滅ぼすのだ!」
 と、精気の塊となったはずのもふらさまが再び凝り、以前よりも巨大なもふらさまへと形成される。
「あれはもふらさまの攻撃色! すごいぞっ。あの人の言っていた伝説は本当だったんだ!」
 どういうわけか。青い衣を身に纏った天河 ふしぎ(ia1037)が、金色の毛皮の上に降り立っている。が、この場合ふしぎの年齢性別が災いした。そのままもふらの塊に押し倒されてしまう。
「わわ、楽しそうに見てないで助けてよ…。見てるだけなら、もう抱きゅさせてあげないんだからなっ!」
 助けを求めたのは、屋根の上でニヤニヤしながらふしぎを追いかけ、その様子を見ていた向井・奏(ia9817)にである。
「しょうがないでござるなぁ。ハグ出来ぬのは一大事でござるしー」
 両手に木の枝を構えて、もふらさまの目の前に降り立つ奏さん。何とかもふらの塊から引きずり出し、くるりと振り返った。見れば、もふら帝は、血走った攻撃色で、巨大もふらの上に乗り、そこいら中を蹂躙している。その混乱を沈める為、奏と声を合わせ、王冠を奪うふしぎ。
「行くよ奏、今こそ王冠の力を…」
「バルスっ!」
 その刹那、もふらに特攻されて、ギルドがガラガラと崩れた。瓦礫がびょんびょんと降り、土煙がもうもうと上がる。その中を、奏はふしぎを横向きに抱え上げ、いわゆるお姫様だっこで全力疾走だ。
 そこに現れたのは、ケツにネギ刺した男達を引き連れた風鬼。
「ああ。もふら帝どの。こちらに今日の納入品がある。受け取られよ」
 そう言って、恭しく差し出す彼。そのとたん、まるで何かに導かれるように巨大もふらの動きが止まった。
「人になったもふらを、人として献上すれば、我らの安泰は守られる。そう言うことでさ」
 マフラーに覆われた表情をうかがい知る事は出来ないが、どうやらもふらたちはそのからくりに気付いていないようだ。
 かくして、もふらたちは共食いを繰り返し、3日もたつと、人間の若者は平安を取り戻したのだった。