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■オープニング本文 ジルベリアの伝説曰く。 その日は、乙女から手に菓子折りを持ち、殿御に愛の告白をしても許される‥‥らしい。 まぁそれがいつから天儀に定着したかは定かではないが、地方によっては、意中の方に愛を告げるお祭りもある。ので、需要を見込んだ天儀の商売人の一部から、それ用の菓子が取引されていても、なんら不思議はなかった。 「うっし、今日も商売繁盛っと」 その菓子を運搬するべく、今日もリー船長は中古の飛空船を操り営業中。 「さて、そろそろ時間なんだが‥‥。お、あったあった」 その船長、誰かと待ち合わせいていたらしい。港の一画にある取引用の建物へと上がりこんで行く。商売上必要な寄り合いをしたり、金額を決めたりする場所なのだが、数多く並んだ立て屏風の内側へと、船長は陣取っていた。 「と言うわけで、これが該当区域の空地図です」 「なるほど、さほど遠くはないなー」 向かいには、依頼人と思しき商人の姿があった。そして、この辺りの地図と、預けた荷物の大福帳を手に、行き先の説明をしている。それには『冷却品』だの『熱気、火気厳禁』だのと記されたものが、ずらりと並んでいた。 「ようするに、空止めで納期に間に合うか微妙だから俺にって事だな」 「その通りです。こことここに湯治場がありますが、さすがに荷物1台の為に営業を止めて暮れとか言うのは無茶な話ですし」 何でも、本来使うはずだった定期船が、故障か何かで飛ばず、船長に代理を頼んだらしい。しかし、正規ルートでは間に合わず、なおかつ遠回りのルートでは、熱に弱い品の為、蒸気が噴出すような湯治場は、うかつに通れないらしい。 「寄せなきゃいいってわけでもなさそうだな」 「ええ。実は‥‥もう一本のルートには、空アヤカシが出ていましてね。何しろ、甘いものの匂いにでも誘われてくるのか、もう何台か生贄になってるんですよ」 頭を抱える船長。遠回りに一気に突っ切ると言う手段は使えないようだ。それでも、片道3日も掛からないのが救いだと言えば救いだが。 「お願いできますでしょうか?」 「まぁ何とか面子を集めてみるさ」 とりあえず様子を見てみようと、ぷらぁとをつれて出立する船長だった。 さて、空の上。 「ぷらぁと、あんま食いすぎるなよー」 「もふー」 偵察に向うと言うので、おすそ分けとしてもらったお菓子を、ぷらぁとがもふもふ言いながらぱくついている。売り物にならない品だそうなので、船長も廃品処分と割り切っていた。 「っと、いたいた。あいつがチョコ狙いの奴だな」 見張り台を兼ねた操舵室。そこから、やたらと大きな天道虫のようなアヤカシがぶんぶんと飛び回っている。 「もふ‥‥」 怯えて後ろに隠れるぷらぁとに、船長は「お前は船倉にいな。しかし、また面倒そうな奴だなぁ‥‥」と、その天道虫の裏側へと回り込もうとする。だが。 「きしゃああああ!」 天道虫が叫び声をあげた。気付けば数匹がこちらにむかっている最中だ。普通の天道虫なら、この時期は寄り集まって冬眠中なはずなのだが、この天道虫アヤカシは、まるで太陽を目指すが如くこちらへと群がってくる。その鼻息は、火を噴出しそうに荒い。そう。まるで真っ赤に染まった外骨格のように。 「ったく、こいつもかっ。逃げるぞっ!」 「もふー!」 あわてて回れ右をする船長だった。 で、何とか色々やった結果、その天道虫を除去る事になった。 「っつう訳だ。このアヤカシをぶっ飛ばす面子を募集中なんでよろしく」 「いらっしゃいませ〜。それで、龍はいかがしましょうか?」 横幅がもふら様くらいありそうな女性受付が、脳みそから出ているような声で、受付表を持ってくる。 「飯が食わせられるほど向こうも豊かじゃないんでな。それに、港自体もそこまで広くない上に、食品を扱ってるわけだから、下手に動かれてツマミ食いされても困る。まぁメシなんざいらねぇってんなら、持ち込みも可能だが」 「はいっ、かしこまり〜」 くるっと一回転して依頼表を張り出す受付さん。なお、足場は一応船長の船を使う予定。 |
■参加者一覧
天津疾也(ia0019)
20歳・男・志
氷(ia1083)
29歳・男・陰
ルオウ(ia2445)
14歳・男・サ
斉藤晃(ia3071)
40歳・男・サ
高楼 夜歌紗(ia5311)
25歳・女・弓
白蛇(ia5337)
12歳・女・シ
滋藤 柾鷹(ia9130)
27歳・男・サ
そよぎ(ia9210)
15歳・女・吟 |
■リプレイ本文 小さな港だった。周囲にいくつも工房があり、その荷を運ぶ為の道と、へばりつくように開港している。水路と井戸は、菓子作りに欠かせないものだろう。白壁の続く工房の先に、依頼代表者の荷出し場があった。 「ふむ、アヤカシも甘いもんが好きなのがおるんやな。まあ、おかげで面倒を引き起こしてくれるのには困ったもんやがな」 やれやれと肩をすくめる天津疾也(ia0019)の足元にぷらぁと。こいつも甘いモノは嫌いではないらしく、くんくんと鼻を動かしている。それを見て、そよぎ(ia9210)が目を輝かせた。 「きゃー、ちっちゃいもふら様かわいいの。ぷらぁと、はじめまして。よろしくなの」 小動物は大好きらしく、ぷらぁとを抱き上げている。ぷらぁと、もふもふとその頬を舐めてくれた。 そんな中、待ち合わせた斉藤晃(ia3071)は、茶を運んできた店の女将に事情を尋ねていた。 「ところで女将、余り思い出したくないかもしれんが、あの虫共をぎゃふんと言わせるために協力してくれや」 「はい、それはもう。それで、一体何をご協力すれば良いのでしょうか?」 断る理由はないようなので、女将はそう言って応じてくれる。 「どういうものが狙われ易かったか‥‥なんだが」 安いものなら用意をしようと計画している斉藤。と、女将は首を横に振りながら残念そうに言った。 「襲われた船に共通するのは、バレンタイン祭にあわせた品ばかりです。ここらでは、都心とは違う菓子を作るので、中心部からの発注も多いんですが‥‥その荷が狙われたらしいんです」 上のほうにいる御仁達が、季節の品として発注したものもある。それは決して安いものばかりではない。だからこそ、赤字を恐れて依頼を出したそうだ。 「ふむ。天道虫だけに甘いものによってくるのかね」 「いえ、狙われたのは必ずしも甘いものばかりではないんです。せんべい屋の菓子折りが積まれた船や、服や化粧道具が積み込まれてても襲われているので‥‥」 味は関係ないようだ。 「まさにおじゃま虫のアヤカシというわけか」 「天道虫も…人恋しいのかな…。けど…この甘味は…別の子達に贈られるべきものだから…、諦めてもらうしかないよね…」 そんな斉藤とは対照的に、控えめな発言をする白蛇(ia5337)。 「虫も贈り物が欲しいのでしょうか・・・・? いやいや、そんなはずは無いですね」 「アヤカシのくいもんって生きモンのはずだからなぁ」 高楼 夜歌紗(ia5311)にそう答える船長。一般的には、人や獣等が【食われる】対象である。一通り話を聞いていた滋藤 柾鷹(ia9130)は首を捻るばかりだ。 「うむ。いと面妖な話ではあるが、いずれにせよ、倒すべき存在である事に変わりなし。すべて倒せるよう尽力しよう」 「ともかく、現地に行ってみるのが正解じゃろうな。ああそうだ。囮の荷を少し調達して欲しいんだが」 斉藤がそう申し出ると、既に女将は運びだしてくれている事を告げる。いや。 「ん〜、やたらとベタつくけど、結構うまいなコレ」 氷(ia1083)がツマミ食いしているのがそれらしい。 「すまねぇな。失敗作とか型崩れ品でいいいんだけどさ」 「うむ。他の荷を使うわけにもいくまい」 結構な数のあるそれの値段を気にするルオウ(ia2445)と柾鷹。さほど余分な費用をかけるわけにもいかない。 「そうやな、こちらもただでとは言わへん。こないな条件でどうや?」 その辺は、商売人の天津がそろばんをはじいてくれた。だいたい定価の7割引と言ったところだ。 「あと、船に乗る重さと大きさの水に浮くものがなんかない?」 「発送用の木箱があります。輸送の都合上、多少の水を被っても濡れぬよう細工してありますから、そちらをご融通しましょう」 ルオウの申し出に、そう答える女将。商売上、水濡れ厳禁のものもあるで、目の詰まった空箱を用意してくれた。 「んじゃあ、色々と落ちないようにしねーとな」 「ただの鎧のまま海に墜ちたらさすがに死ぬからな。万が一に備えておかんと」 斉藤、皮袋を利用して鎧に浮き袋をつけている。 「船の方は任せた。命づなはこのあたりでいいか?」 柾鷹は操船の邪魔にならないよう、命綱をつけていた。それは、他の開拓者達も同じだ。 「空での昼寝ってのもまたいいね……zzZ」 氷なんぞは、命綱をつけながら、水を枕にお昼寝ちう。 「働けYO!」 「そう叩き起こすな。アヤカシが出るまでは、拙者が見張りをしているから」 面白いオモチャでも手に入れた気分なのか、おもむろにツッコミを入れる船長に、柾鷹がそう言って苦笑するのだった。 しかし、アヤカシはどういうわけか息を潜めていた。 「中々現れへんなー‥‥」 船長の船の甲板には、貰ったおためし品のチョコが、山積みされている。良い匂いだが、不ぞろいのそれに、天津は『もしかして』と首を捻った。 「上物の方がいいんやろうか‥‥」 だとしたら、贅沢な天道虫である。 「甘いもの、好きじゃないのかしら‥‥」 苦手な匂いが周囲に漂い、軽く頭痛を引き起こしながらも、もしかしたら天道虫も同じ症状なんじゃないかと、白蛇が言い出す。 「むやみにうろうろしても駄目なのかもしれへん。やり方を変えてみたい。ちょっと材料が要るんやけどな」 そう答えた天津が用意してきたのは、いくつかの棒だ。それを人型に組み合わせ、着物を着せる。 「って、これはいったい?」 「これなら目立つやろ。おびき寄せる餌や」 そう言って、天津はその着物のあちこちに押し込む。その様子に、そよぎがとててっと寄ってきて、にこりとこう言った。 「おまんじゅう持ってきたけど、ぷらぁとの食べてるチョコもおいしそうなの」 人形の上には、何故かぷらぁとが乗せられている。そのぷらぁとがかじかじしているチョコに、興味津々と言うか、おめめがきらきら輝いている。 「齧りながら待ってたら、そのうち天道虫が寄って来ると思う…」 白蛇、そんな彼女に持参した菓子を差し出した。甘いものはあまり得意じゃないので、ちょうど良いようだ。うっかりお茶会モードになっているが、そこは気にしない方向で。 「それだけじゃだめだな。釣りは忍耐が大事だけど、餌も重要だ」 ルオウが上から下まで見下ろして、そう言った。そして、持っていたチョコレートを、やっぱり持参したもふらさまのぬいぐるみに押し付けている。それに荒縄を結び、棒の先へくくりつける。 「なるほど。試してみる価値はあると思いますよ」 先輩の考える事は参考になるなぁ‥‥と、船の外に放り込むルオウを見ている高楼が、感想を口にする。 「もふらさまかわいそう‥‥」 船とは言え、常に水に浮いているわけではない。白い毛玉が、吊るされてゆらゆらしている仕草は、そよぎの憐憫の情を、とっても誘ったようだ。 「後でお供えモンでも用意するさ。さて。釣れッかな―」 ルオウがそう言って、もふらんぬいぐるみをゆらゆらさせた直後だった。 きちきちきちきち‥‥。 カミキリムシが顎を打ち鳴らすような音が聞こえてくる。 「来た!」 ぎゅっと竿と言う名の棒を握り締めるルオウ。むきょっと両腕の筋肉が強力の効果で盛り上がった。 「準備は大丈夫よ‥‥」 「こっちもだ」 自身と船とを、ぎゅっと結びなおす白蛇。天津も既に武器を抜き放っていた。 「うっし。引き上げるぜ! しっかり押さえててくれよ!」 「わかりました。お手伝いします」 罠を作っているわけではないのだが、高楼が竿に手を添える。弓術師なので、ルオウほど体力はないが、彼女と息をあわせ、タイミングを計って合図する。 「せーの」 「とりゃああああああ!」 荒縄がぴぃんと張り詰めた。抵抗する感覚が走るが、ルオウは負けない心で思いっきり引っ張り上げる。直後、急に抵抗がなくなった。 きしゃああああ!!! 怪物の叫び声を上げて飛び上がったのは、目を不気味に輝かせた巨大な天道虫。しかも、あちこちにトゲトゲが生えており、より凶暴な姿を見せている。 「何あの大きいてんとうむし! かわいくない!」 そりゃあアヤカシなので、可愛い姿とは限らないのだが、そよぎはその姿を見て、ようやくこれが戦う依頼だと思い出したようだ。手にした舞傘が、くるりと回ってぱさりと開く。 「・・・・残念ながら、虫にあげるお菓子はありませんよ?」 同じ様に弓を構える高楼だった。 つりに引っかかったのは、一匹だけだったようだ。他は血の匂いをようやくかぎつけたのか、上空と足元から船に取り付いていた。 「かかってこいやぁ!」 不動の構えで珠刀を構えるルオウ。その刃で貫こうとするが、突っ込んできた天道虫の方が引いた。しかし、彼の方が動きが早く、刀を掠めさせる。もう一匹が続く斉藤に向ってきた。 「くっ。さすがに固いだけあって効くね」 船での戦闘は揺れる。その為、あまり動けない斉藤は、その身で天道虫の爪を受け止める羽目になっていた。 「天道虫っつったって、カブトムシとかの仲間やしな」 天津がそう答える。鎧に傷をつけた天道虫は、カブトムシとは全然違う身軽さで、くるりと反転してきた。 「虫の親戚ごときが生意気な。大きく振りかぶってフルスイング!」 斉藤は体当たりを見越して、巨大な斧を両断する様に振り下ろす。がきょんと金属を思いっきり叩いたような音がなって、塵風と名付けられたその刃が示すとおり、一匹が海に落ちて行った。 「これで、勢いが弱まれば良いんだけど‥‥」 水しぶきを上げる中、次に白蛇が水で出来た蛇を天道虫へと襲わせる。避けた天道虫が、白蛇へと向ってきた。 きしゃああ! 叫び声を上げたそこに、白蛇の手裏剣が飛んできた。しかし、硬い表皮にはじかれる。おまけに、上へと回りこまれてしまう。 「上から‥‥、帆に‥‥気をつけて‥‥!」 「天道虫だけに、空を目指すと言うわけやな‥‥。けど、それがお前さんの弱点やで」 そこへ、理穴弓を撃ち込む天津。近付かれてなるものかと、葛流を使い、その精神を研ぎ澄ます。視界の鋭くなったその力は、矢を確実に命中させていた。その羽根へ、今度は白蛇の流星錘が投げつけられた。 きちきちきちきち! 2匹目の動きが封じられる。気付けば、残った天道虫のうち、2匹には呪縛符が張り付いていた。どうやら氷の仕業らしい。 「あー、動きは縛っとくから、あとよろしく〜」 が、正直けっこう適当だ。片手にチョコの残りまである。それを、柾鷹がひょいとつまみあげた。 「もらうぞ」 「あー、俺の菓子がー」 氷の文句は聞かないふりだ。柾鷹はそれを矢の先にくくりつけ放つ。ちょうど鏑矢を放つのと同じ音を響かせ、天道虫の群の中に命中するが、その程度では引っかかりもしない。 「気を取られているわけではなさそうだな。時間稼ぎにはならなさそうか」 足止めとして利用するつもりだったが、そう上手くはいかないようだ。ならば、と次なる矢を番える柾鷹。攻撃を集中させなければ鳴るまいと思い、天津と共にその矢を一匹に集中させる。外皮は硬いが、牽制にはなっていた。 「あたしに見とれてないで虫をやっつけるのよー」 ようやくおいついたそよぎが、やや調子の狂った神楽舞を舞う。海風を受けて、力を与えるその舞に、氷が「誰も見てねぇっつーの」とツッコミを入れるが、本人、自分がおかしいことに気づいていない。 「援護は大事だ。拙者の後ろで舞っていると良い」 「はぁい」 柾鷹に言われ、その彼が守り易そうな位置へ、とてとてと移動するそよぎ。 「うー、だってベテランばっかりなんだもん。それに、天道虫もこう見ると堅そうだなぁ…腹側の方が斬り易そうか?」 その数本の矢を腹に受けて、1匹が落ちた。が、まだまだ元気な天道虫に、氷は不満そうに文句を垂れる。 「拙者とてべてらんと言うわけではない。余裕があるなら撃っておけ。牽制にはなる」 「ほいほい。数は減ってないけど、仕方がねぇやなっと」 練力には、まだ少し余裕があった。なので、口調は軽いが、唱え結んだ印と符は、魂を食らう術だ。 「ゆーれーるー」 ぐわんっと大きく揺れ、広げた傘を落とさないよう、しがみつくそよぎ。 きしゃしゃしゃしゃしゃ。 そこへバカにした様に天道虫が割り込んできた。 「しっかり捕まっててね‥‥。落ちたら大変‥‥」 三角跳びの要領でそよぎの所に駆けつける白蛇。 「これ持ってろ。浮き代わりにはなるだろ」 ルオウが念の為、荒縄をくくりつけたもふらのぬいぐるみを投げて寄越す。 「あいー。がんばってー」 ふっかふかでちょっぴりチョコのにおいが染み付いたもふらさまを抱っこして、そよぎはごきげんだ。 きちちちち! 残りは3匹。血に狂っているのか、逃げる気配はない。それどころか、逆に船の本体に取り付いてさえいる。 「やっぱり船を狙ってくる奴は要るようね‥‥。あまり壊れるのは、かわいそう‥‥」 「船が行き来する場所なので、船を傷つけないように注意しないと‥‥」 何とか甲板に上がられないようにしていた矢先。白蛇は帆に上ろうとしている天道虫を見つける。攻撃が中々通らないらしい高楼は、手数で勝負と言ったところだ。 「気ぃ使うな。あれくらいの奴なら避けられるっ」 「そう。なら‥‥遠慮はなしかな‥‥」 そう言って、白蛇が取り出したのは‥‥焙烙玉。 「って、焙烙玉はやめとけーーー!」 「冗談」 天道虫までの距離が短すぎる。そう思って、玉をしまう白蛇さん。そんな周囲の状況に、高楼がこう口にする。 「・・・・そういえば敵を海に落とすというのも手でしょうか?」 「思うなら、やってみな」 助言する船長。考えるなら、行動を。彼はそう助言したいようだ。 「虫アヤカシは溺れるのでしょうか? 実験です!」 物は試し、と高楼は無言になって、矢を放つ。 「蒸気や熱の影響は受けているみたい‥‥。水引っ掛ける‥‥」 それにあわせて、白蛇が温泉の方向に、水遁の術を放った。逆方向に向った天道虫は、急いで熱い方向すなわち蒸気のある方向に戻ろうとする。 「これでしまいじゃ!」 その刹那、ちょうど回り込むようになった形で、そこへ斉藤が咆哮を使う。 「不動直閃!」 待ち構えたルオウが貫き、とどめとばかりに無数の矢が突き刺さる。 ぎちちちちちちち!!!! どぉんと水しぶきがあがり、天道虫は陽を離れ、暗い水の底へ沈むのだった。 なお、チョコ代はその後訪れた湯治場で、天津が売りさばき、出した分は回収する事が出来た。余ったチョコは、土産の形に変わり、参加者に配られたと言う。 |