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■オープニング本文 サムライの開拓者、音宮櫻は路地裏で看板を見ていた。 内容、お尋ね者の手配。 (脱走犯二名。志体持ちにして泰拳士然、サムライ然の男。武器を奪って現在も逃走中‥‥) 彼女は人相を暫く見て‥‥視界からそれを外した。いずれ、追走がギルドから依頼として発注されるだろうか。 「そこの女‥‥」 「な――」 櫻は声の方向に振りむけばそこには看板に載っていた泰拳士が、目の前に。 「お前は手配中の!」 櫻は身構える。 「知っているなら話は早い‥‥俺を突き出して報奨金を受け取れ」 しかし男は身構え無かった。 「何やて?」 「その金で、あんたに依頼したい事がある」 だらりと下がった男の腕は、己が流血で真っ赤に染まっていて、凡そ構えられる状態ではなかった。 とある牢の中に、強盗の罪で捕らえられた二人の志体持ちがいた。 ある日二人は見張りの隙をついて、脱走。武器を奪い追手を蹴散らしながら、山中へ逃れた。冗談混じりにお互いの幸運を称え合った最中に、それは現れた。 泰拳士の男は瞬く間に両拳を砕かれ、サムライの男は嬲られた後に‥‥連れ去られた。 泰拳士の男は血の跡を辿ると、洞窟の入り口までたどり着いた。入口には数体の小鬼がうろついている。更に洞窟内には‥‥何が居るか分からない。 「それで惨めに人里に逃げ帰って来たわけだ。無論、あいつが生きているとは思っていない。だが、俺の代わりに敵を討ってほしい」 男は自嘲気味に言った。櫻は、何とも言い難い表情のまま。 「人の事を言えた義理じゃあないが‥‥あいつは死んで当然の人間だ。仲間を仲間とも思わない酷い性格だった。それでも‥‥それでも俺にとっては、仲間だったんだ」 「その鬼の、特徴は」 櫻は無感情な声で言う。 「火の様な赤色の目で、胸に大きな傷が有った」 「赤目の‥‥胸に傷を持つ鬼‥‥」 何の偶然か、時を同じくしてギルドに依頼が張り出された。過去、鉱物採掘用に作られた洞窟に住み着きし、鬼の退治がその内容である。 ばきん。 窟内で何か噛み砕かれた音が響いたのちに、小さく声が漏れた。 「しまった。まぁ奴らも、ハナから生きているとは思っていまい」 |
■参加者一覧
北條 黯羽(ia0072)
25歳・女・陰
鷲尾天斗(ia0371)
25歳・男・砂
ナイピリカ・ゼッペロン(ia9962)
15歳・女・騎
ザザ・デュブルデュー(ib0034)
26歳・女・騎
ルシール・フルフラット(ib0072)
20歳・女・騎
雪切・透夜(ib0135)
16歳・男・騎
ルンルン・パムポップン(ib0234)
17歳・女・シ
五十君 晴臣(ib1730)
21歳・男・陰 |
■リプレイ本文 結論から言えば、開拓者達が企てた両脇突撃からの挟撃展開は失敗に終わった。 突進時の要点である機動力と言う面において、今回の様な舗装状態の悪い道では、幾分かそれが削がれる。 ことり。 何て事は無い、ただの小石が崩れる音‥‥彼女でなければ、誰もそう思っただろう。 「ルンルン忍法ジゴクイヤー‥‥あの角の向こうで敵の動く音が! 黯羽さん!」 「承知っ」 ルンルン・パムポップン(ib0234)に言われ、北條 黯羽(ia0072)は、物音の方向へ松明を向けると、今まさに岩陰から出てきた小鬼がいた。 「アヤカシの計を見抜けぬ程に落ちぶれておらぬわ、ゆくぞ! ルシール!」 「はい、ナイ姉様!」 ルシール・フルフラット(ib0072)は、言葉言い放ちながら踏み込む。槍先が小鬼を貫くと、動きの止まった対象にナイピリカ・ゼッペロン(ia9962)が手早く抜刀した片手剣で斬りこむ。 そろり、そろり‥‥ぴたっ。 開拓者一行の後列へ迫っていた小鬼。その忍ぶ足が止まったのは、足元が照らされ露わになったから。 「背中には目が無いとでも?」 小鬼としてはそう思っていたのだろうが、ザザ・デュブルデュー(ib0034)が松明を持ち、後方の闇にも灯りを向けていた。 鈍器を振り回してきた小鬼であったが、攻撃は音宮櫻に受け流され、空いた側面には既に右から鷲尾天斗(ia0371)、左から雪切・透夜(ib0135)が攻め入っている。 (他に潜んでいる敵は、いないかな) 五十君 晴臣(ib1730)は符を構えながら、片手の松明で暗がりを照らす。隠れている敵は、いなそうだ。 そうして前後列、共に小鬼を塵に返すにそう時間は要しなかった。 槍をくるりと一回転させ、穂先に纏わる瘴気の残りカスを払う天斗はもう片手で頭を掻き、億劫そうに言葉を漏らした。 「めんどくせぇ上に弱くて面白くねぇなぁ‥‥」 「まぁまぁ、そう言わず」 晴臣は周囲への警戒をしつつ、苦笑気味に言う。 周囲は暗がりの岩に包まれた洞窟は、途中に浅い枝別れがある程度で直線を作りの基本としている。元は人の手にあった場所ならば当然地形図は有る。ルンルンや透夜が気を利かせてその地図を事前に手配してある為、迷子になる心配は無い。 洞窟に入る前も、特段不順な動きも無かった。本依頼の参加開拓者は、ある程度の経験を積んだ者達。まず入り口付近をルンルンが先行偵察し、見張りの位置を確認してから前衛職で一気に攻勢をかける‥‥彼らが小鬼を蹴散らし洞窟に入る事くらい造作も無い事だった。 「退屈退屈、こーいう時は美少女を拝んで目の保養をばー」 顔を緩めきっている天斗だがその後方、ザザは対照的に厳しい表情。彼女は耳打つ位の声量で黯羽に言う。 「鷲尾殿が言う様に、これまで順調‥‥いや、順調過ぎる」 「ああ。お楽しみがあるとしたら、これからだろう。油断せず征こうぜ」 櫻経由で開拓者達も首領格の存在については聞いていた。元より誰も、木偶を殴り倒す様な単調楽勝に終わる依頼とは思っていない。 「胸に大傷を負っている鬼‥‥」 「音宮殿、どうした?」 「い、いや何も‥‥ザザはんの言う通りで、傷を残す鬼となれば過去に何かあるかもしれへん」 「ふむ。首領はどういう経緯を取ったものなのだろうか、気になる所ではある」 「もしかしたら――」 櫻の言葉は、語尾を以って完結するに至らなかった。 黯羽の持つ松明、その灯りに照らされて開拓者達の瞳に映ったのは、飛礫――いや、砲丸、岩塊‥‥形容のし方など、どうでも良い。 飛来する人の頭大の岩石に一同は身構える。 投げろ、投げろ、あの明るみだ。 「先です。このまっすぐ先から、声が聞こえます!」 ルンルンは、松明が照らす先の暗闇を指差す。 「採掘跡なら弾は腐る程に‥‥く、小賢しい!」 「安心しな、小賢しいだけさ」 「?」 黯羽はナイピリカへ応えないままに、ザザに向けて手を振り何かの合図を送る。ザザの方も無言で頷く。 洞内の端の方へ、ザザと黯羽の松明が投げられた。偶然だろうが、そこには暗がりに潜んでいた小鬼が一匹。 開拓者達へ投げ込まれていた岩々は松明が照らす方向へと標的を移し、やがて小鬼の頭蓋が粉砕された。 相手も、正確に見えている訳ではない。ただ灯りに向けて投擲しているだけ。付け入る余地は、有る。 ザザは、既に次の松明の準備をしていた。 「ザザの着火を合図に前線を展開、一気に距離を詰めその勢いのまま突貫して挟撃へ持っていく、準備はいいか!?」 昂ぶっているのは、声を上げている黯羽だけではない。皆、脈動は早まり掌には汗が浮かんでいる。心の臓辺りでは、何か淀みの様なものが浮き沈みを繰り返し、己が武器を握りしめる指に万力の力を与える。 戦闘、こと命の殺り獲りの場で、真の意味で冷静でい続けられる者などいない。 「それって、前列をこの石の雨の盾にして進むって事やろ!? そんな――」 「女子に心配されるのは嫌な気持ちじゃあないが、心配は無用だぜ櫻」 天斗は何時もの様に飄々と‥‥いや、その面は段々と色を変えている。 「ならうちも前にっ!」 「前衛の被弾は、治癒符で回復させながら進む。ただ、後衛だからと言って、敵地で完全に背中を無防備に出来るほど私も肝は座っていないよ」 だから君に背中を守ってほしい、諌める口調でそう晴臣に言われると、櫻も強情にはならなかった。 そして天斗の隻眼はもはや‥‥狂気で満ち満ちている。 「待っていたぜ。こんな――命の削り合いをな!」 火が、灯された。 一斉に駆け出すと、洞内はより騒々しさを増した。脚、脚、脚、脚、足が砂利を弾きながら加速する。投擲は、急接近する灯りに標的を変える。正直精度は低いが、数とその一方性が厄介だ。一刻も早く、灯り照らし剣届きうる距離に近づかなくては。 早く! 早く! 早く早く早く速く! 時間とは不思議なもので、悄らしい女子とお話する一時間は一分に感じ、囲炉裏の中に手を突っ込んだ一分間は一時間に感じる。どんな学者も納得の理論だ。 開拓者達はそれ程長い距離を進んではいなかったが、石の雨を受けながらの進行は、まさに万里の行軍に感じられた。 が、終着の無い行軍など無い。 見えてきたのは数体の‥‥鬼。『小』鬼では無い。特にその中央にいるのは人の身体の二倍はあろうかという巨躯、巨躯に比してはあまりに小さく見える鉞を片手に持ち、その身体に残る傷と地獄の業火の様な赤色の眼。これが、首領。 打ち合う刃と刃。 見上げる天斗の狂笑、見下ろす首領も同じく口の端を歪めている。 「今度の人間は脆く無さそうで良い」 「俺はお前が幾ら脆かろうと構わんぜ」 天斗は槍先を捻り相手の刃を弾くと、もう一度踏み込んで刺突を繰り出さんとする。 「悪くない腕だ」 首領は再度、片手で天斗の槍を防ぐ。首領は歪んだ笑みをより深くした。 しかし天斗とて、目的を忘れて突出した訳ではない。ましてや鬼と相引きの趣味等も無い。 「ジュゲームジュゲームパムポップン‥‥ルンルン忍法ファイヤーフラワー、その憎悪と一緒に燃え尽きちゃえ!」 岩壁を蹴り、何とか敵横列の背後に回ったルンルンから火遁が放たれる。見ればこの首領格の鬼、袖や胴など、部分的に鎧を着ている。首領を致死に至らしめる威力は無いが、炎は皮や紐に燃え移り、周辺を照らした。 鬼達に、足音が迫っていく! 「騎士の皆さん、かましてやれぇ!」 「やああああぁぁぁぁ!」 駆走の勢いとオーラの威力を穂先に乗せ、ルシールが吶喊すれば槍は一撃を以って首領鬼を貫く。 また、ほぼ同タイミングで透夜の攻撃が首領の左隣の鬼へ迫っていた。低い姿勢で疾駆していた透夜は鬼の懐に入ると、左足で地を蹴る様にして上体を起こし、運動エネルギーをそのまま腕へと流し伝えて戦斧を振るう。右下から放たれた逆袈裟の一閃は、鬼を大きくよろけさせるに至った。 そしてナイピリカが飛び込んで首領右隣の鬼を切りつけた時、それに気が付いた。 いずれの鬼も、致死には至っていない。挟撃の為に彼女は敵後方へ抜けようとするも、鬼の攻勢に塞がれる。 側を駆けようとする透夜も、鬼に道を遮られた。怪力から繰り出される衝撃に、透夜の体は少し宙に浮く。 「透夜ぁ!」 「っく‥‥大丈夫、です!」 ナイピリカの声に、透夜は苦しげに返す。咄嗟に翳した斧で鬼の攻撃を受け、彼はそれを防いでいた。 首領と、その脇を固める鬼も、道中の雑魚とはまるで違う。 首領は傷口から瘴気を洩らしながらも今まさに、ルシールに鉞を振り下ろさんとする。 ルシールは‥‥首領の動作に反応はするものの、カミエテッドチャージの反動でまともな防御姿勢がとれそうにない。 透夜のダーツが首領の足に刺さるが、攻撃動作を制するには至らない。 その時だった、ナイピリカが首領に雑言を投げつけたのは。 「待たぬか、相手の萎靡に機を見んとするこの愚か者め!」 人目を引く青い刀身を突き付けながら、彼女は首領に捲くし立てていた。 「吠えるな小娘、お前も次には挽いてやる」 「吠えるな矮鬼! ほざくのは。わしの無双コナン流と立ち合ってからにするのだ!」 「‥‥そんなに、先に死にたいなら止めんさ!」 迫る凶刃。ナイピリカはシザーフィンを構え、攻撃軌道を捉える‥‥が、速度と膂力、どれも首領が勝っている。 小柄なナイピリカだからこそ尚、その出血は大袈裟に見えた。目の前で飛び散る、友の鮮血。ルシールの声が、洞窟内で響いた。 見下ろす首領の瞳は歓喜に染まりそして次の瞬間には‥‥疑問の色を灯していた。 たった今斬り裂いたはずのナイピリカの傷が、癒えていくのだ。 「呆けてんじゃない。それとも頭脳まで筋肉で出来ているのかい?」 ナイピリカの挑発に匹敵する程の皮肉を込め、呟いたのは黯羽だった。彼女の手からは符が飛んでいき、式を成してはナイピリカの傷を治す。彼女は予め治癒符を放つタイミングを伺っていた。 「やっぱり一番厄介なのは首領格か‥‥」 晴臣が呟くとその刹那、首領に向けて飛翔して行ったのは一羽の白隼。首領はそれを手で払おうとするも、隼は戯れる様にして首領の周りを飛び回り、それが何であるか気が付いた時、同時に首領はその身の動きを縛る拘束感を覚えていた。 呪縛符、こちらも陰陽師の式。 「まさか私達の存在、忘れたとは言うまいね?」 言いながら晴臣は更に火輪を飛ばし、ルシールに襲い掛かろうとした鬼を牽制する。 首領は不審がって後方へ視線を向ける。開拓者の後ろから、潜ませておいた鬼が攻撃しているはず‥‥それなのに開拓者の後衛陣が何故こちらに注力出来るのか。 答えは童にも分かる程に単純。後方から来た敵はザザに止められ、そして櫻に切り伏せられていたのだ。 「長巻を持つ、あの女は‥‥」 「隙ありです! ルンルン忍法、シュリケーン!」」 再び三角跳で跳躍し、死角からサクラ形手裏剣を投げるルンルン。 「鬼さんこちら、手の鳴る方へ」 「チッ」 投擲による傷は正直浅いが、首領の気は彼女の方に向いた。そうして意識がおざなりになった首領の脚に、透夜の流し斬りが見舞われる。 「はっ、鬼ごっこも悪くないですね。手を鳴らすのが礼儀ですが、お手てが塞がってるので御容赦を」 「お前らいい加減に――」 「いい加減にするのは、お前の方だ‥‥」 天斗の長槍は紅炎に包まれ、そして天斗の碧眼は殺意に彩られていた。 首領は反射的な速度で対象を天斗に定め鉞を振う。天斗はそれを避けず―― 「シャァァァァァ!」 ――否、避けようともせず、平突を繰り出す。蟀谷を削り、肩を抉り、足を裂いては腹を爆ぜさせ、両者は互いに殺意をぶつけ合う。狂気の沙汰と言うに相応しい風景。 まだ防御姿勢が整いきらないルシールに鬼が襲い掛かるが、彼女は先駆けて動く。まず袈裟に放つ一撃、これは浅いが続くポイントアタックは相手に直撃する。先に透夜が一撃を加えていた事もあり、喉下を貫かれた鬼は絶命寸前となる。 が、あと一歩のところで鬼は踏み留まった。横殴りの殴撃を繰り出すべく、棍棒を構えルシールとの間合いを詰めようと鬼は踏み込む。 しかし鬼の攻撃が彼女に届く事は無かった。 黯羽は先の回復のタイミングに見て分かる様に、前列の状況を見ながら動いている。鬼がルシールとの間合いを詰め切る前に、斬撃符を放って鬼を屠る。 「お嬢、大丈夫か!?」 「ええ‥‥何とか」 もう一体、生き残っている鬼はナイピリカに向かう。傷こそある程度癒えているものの、血を多く出し過ぎたせいか、彼女の足元は安定していない。舌打ちしながら、黯羽はそちらにも斬撃符を撃つ‥‥が、まだ倒れる気配は見られない。 しかしこれには透夜がフォローに入り、半月の軌道を描きながら戦斧で斬り上げ、大きく鬼を怯ませる。鬼の反撃に対しては、斧の位置を素早く手元に戻し、それを弾く。 ルシールのカミエテッドチャージの反動からくる敵の攻勢を予見して、前衛は予め彼女のフォローを念頭にいれていた。それが必然か偶然か、互いの距離間隔を縮め、結果的にはそれぞれ前衛同士をカバーし易い位置取りになっていたのだ。 「五十君殿‥‥援護を頼んだ!」 「ああ、承知している」 オーラ纏いしザザの一閃と、炎纏い式が白翼が交差すれば、その交点の鬼は膝を着きそして霧散する一つの躯に成り果てた。 「鷲尾殿!」 まだこの戦いは終っていない、とザザは意識を天斗へと移す。両脇の鬼に注力できたのは、彼が首領の意識を引いているからに他ならない。 そうしてザザの視界に映ったのは、片膝を床に付ける天斗だった。首領は‥‥。 「待ちやがれ!」 全身に傷を残す天斗だったが、首領も満身創痍。故に首領は、撤退していた。鉞を側にぶち当てると、武器の破損を代償に壁に穴が‥‥逃げ道が出来上がった。もしかしたら元から脱出口だったものが、壁に偽装されていた可能性もあるが。 「こんな武器では貴様を殺しきれんだろう。隻眼鬼。機会があればまた殺し会おうじゃないか」 穴から、手下の鬼達が逃げていく。完全殲滅は叶わなかったが依頼としてはこれで及第―― 「行かせるかぁあ!」 怒声と、敵へと向け走る人影。黯羽は反射的にその肩を掴む。 「――櫻!? 何している、あの数が見えるだろ!」 輪郭が鮮明ではないが、逃げている敵は小さくない鬼がかなり多い。首領も、残存勢力を温存していたらしい。 「あいつをここで、見逃せへんのや!」 「どうしたんだ音宮殿、冷静になれ!」 黯羽を振り切る勢いに、ザザも彼女を制する。 「あの傷跡、あの目、間違いない! あいつはうちの‥‥うちの父さんの仇なんや!!」 櫻の叫びに応える事も無く、鬼達は逃げて行き、そして首領もその場を去って行った。 開拓者達は帰路の途中、出来る分の傷の手当をしながら思っていた。アヤカシの手に掛かって散っていった人々の無念、いつかそれは晴らしてやらなければならないと。 |