復興の為に駆けるお嬢
マスター名:刃葉破
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: 普通
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2010/07/08 02:58



■オープニング本文

 ジルベリアはとある場所。
 開けた場所に、いくつかの家々のようなものが建っていた。
 正確に述べるのならば焼け崩れた家の残骸だ。
 よくよく見れば、畑の跡のようなものも所々あるが、やはりぼろぼろになっている。
 ここは村だった場所である。先の戦いにより焼けてしまった結果がこれだ。
 今や住人はいない‥‥と思いきや、よくよく見ればあちこちにテントや簡単に組み立てられた小屋があるのが見える。
 テントの入り口が開き、中から少女が姿を現す。
「んんー。今日も絶好の作業日和ですわ」
 伸びをしながら天を仰いで天気を確認する銀髪の少女。彼女の言う通り、空には雲ひとつ無い。
 彼女の名はローズ・ロードロール、騎士だ。
 それからしばらくして他のテントや小屋からも人々が姿を見せる。
 彼らもローズも、今や廃墟となってしまった村に住んでいた者だ。彼らが未だにここに滞在している理由は1つ。
「さて、今日も村の復興を頑張りましょう!」

 村が焼けて住めなくなった場合、多くの者は移住という選択をする。
 だが彼らは選ばなかった。ローズを含め、村に強い思い入れを抱くものが多かったからだ。
 その為にとある悪事に手を染めた事もあったが、今ではそのような事はせず復興に向けて働いている。
 やらなくてはいけない事は未だ多い。それでも村の住人達は挫けずに日々頑張っていた。
 しかし、村人達には懸念が1つあった。
「お嬢ー。商人の人達が来ましたよー」
「分かりましたわ。って、お嬢と呼ばないでください!」
 村の入り口の方にいる男から呼びかけられて、そちらに向かうローズ。
 到着してみれば、数人の商人と荷車の姿があった。
「ヒャッハー! 注文の品を届けにきたぜぇー!」
 ちなみにモヒカン、半裸鎧、トゲのついた肩パッドという奇怪な姿だが、これでも商人だ。
 彼らが運んできたのは家を作る為に必要な道具だ。材木などは周囲の森から伐採すればいいとして、それ以外の材料も含まれている。
 ローズが代金を商人のリーダー格に渡す。
「こちらが代金ですわ」
「確かに受け取ったぜぇー! で、こいつはどこに運べばいいんだい?」
「あぁ、私が運びますからお気になさらず」
「へ? 運ぶってこの量をか‥‥?」
 戸惑った様子のモヒカン商人を余所に、ローズは荷車へと近づいていく。
 載せられた荷は大きな木箱に詰め込まれており、大の男でも運ぶのに苦労しそうな代物だ。
 だが彼女はそれに手を伸ばすと、いとも簡単に持ち上げてしまった。
「それでは失礼しますわ」
 ローズは楽々とそれを運びながら村の中心部に向かって歩いていく。
 残されたモヒカン商人は唖然としながら見送るばかりだ。
「はぁ‥‥あの嬢ちゃん、志体持ちなんすねぇ」
 商人は気を取り直して、同じく入り口付近にて突っ立ったままの村人へと声をかける。
 それに対する村人の表情は苦笑。
「いやぁ‥‥村の中で唯一の志体持ちだからね。お嬢本人もやる気十分だから色々頼ってしまっているんだが‥‥」
 どうにも歯切れが悪い。
「何か気になることでもあんのかい?」
「あー、ちょっとお嬢を見れば分かると思うよ」
 言われて、商人達は視線をローズへと移す。
 荷を運び終えた彼女は、そのまま走ってどこかに行ってしまった‥‥かと思うと、材木を背に担いで戻ってきた。
 家を建てる手伝いをしたかと思うと、畑を耕す手伝い。木を切って材木の加工もしていた。
 鍋やら食べ物を運んでいることから料理の手伝いもするのだろうというのが推測できる。
 そんなローズの様子をしばらく観察していた商人は素直な感想を言う。
「なんつうか‥‥三面六臂の大活躍じゃねぇか」
「そうなんだよなぁ‥‥」
「んで、これが問題なのか?」
「問題‥‥っていうかどうかはまた怪しいんだけどな‥‥」
 困ったように苦笑を浮かべたまま村人。彼の話によると、村の復興を始めてからローズは毎日こんな感じらしい。
 積極的に動き、人の手伝いをする。休みは最小限で、仮設の小屋も人に譲りテントで寝る。
 その上、村の復興に使う資金の多くは彼女の財産から出ているのが現状だ。村人の多くの財産は村が焼けた時に無くなってしまったので仕方がないのかもしれないが。
 その話を聞き、モヒカン商人達は合点がいったと頷く。
「つまり、嬢ちゃん1人に色々負担させて心苦しいってことか?」
「そんなところだなぁ。休めといっても中々休もうとしないし‥‥困ったもんだ」
「あんた達は休ませたい‥‥嬢ちゃんは働きたい‥‥。つまり、挟み撃ちの形になるな」
「何がだ」
 そんな村人のツッコミを無視して、モヒカン商人はある提案をする。
「ヒャッハー! そうだな、あんたらの持ってる物を適当に買い取ってやってもいいぜぇー!」
「んん? いきなり話が飛躍したな」
「それであんたらが得た金で、村復興の手助けを依頼するってのはどうだい!?」
「む‥‥」
 商人に言われて、手を顎に当てて考え込む村人。
 一般人の自分達に出来ることには限界がある。だから唯一の志体持ちのローズに負担がいく形になっている。
 そこで開拓者に復興の手助けをしてもらえれば、ローズを休ませることができるのでないか‥‥と。
「ちょっと待っててくれ。他の奴らとも相談してくる」
 村人は商人をその場に残し、他の村人たちへと声をかける。勿論ローズ以外だ。
 そしてその結果は、

「ヒャッハー! 商談は消毒だ〜!」
 よく分からないが、これがモヒカン商人にとって商談成立を示す言葉らしい。


■参加者一覧
佐久間 一(ia0503
22歳・男・志
羅轟(ia1687
25歳・男・サ
ルオウ(ia2445
14歳・男・サ
アルクトゥルス(ib0016
20歳・女・騎
ザザ・デュブルデュー(ib0034
26歳・女・騎
ルンルン・パムポップン(ib0234
17歳・女・シ
ハッド(ib0295
17歳・男・騎
禾室(ib3232
13歳・女・シ


■リプレイ本文

●説得
 ローズが復興をしているという村に、開拓者達が向かっていた。
「今日の行き先は戦場じゃない。楽にして、茜姫」
 佐久間 一(ia0503)が声をかける対象は開拓者ではなく、炎龍の茜姫だ。
 気が立っていたのか少々荒れていた茜姫だが、一の宥めにより落ち着きを取り戻す。
 今回の依頼は村の復興手伝いということで、開拓者達は力になりそうな朋友を同行させていた。
 同行している朋友の多くは龍の為、中々壮観な光景といえる。
 そこに1人の少女が走ってくるのが見えた。ローズ・ロードロールだ。
「龍の姿が見えましたから何事かと思って来たのですが‥‥え、えぇと、何事ですの?」
 ローズとしてはこのような辺鄙な場所に朋友を連れた開拓者達が来るのは異様な事態なのだろう。非常に困惑しているようだ。
 そんな彼女に事情を説明するは、顔見知りでもある一だ。
「頑張っていると噂を聞きまして、手伝いにやって来ました。お久し振りです」
「‥‥成る程、確かに今日お手伝いの方が来るというお話がありましたね」
 村人から聞いた話でも思い出したのだろう。ローズは納得した様子で開拓者達の姿を眺める。
「私はローズ・ロードロールです。皆さん、よろしくお願いしますわ」
 彼女の挨拶を受けて、ルオウ(ia2445)を始めとして開拓者達も順番に挨拶をする。
「俺はサムライのルオウ! よろしくな」
 こうして挨拶を終えたところで、ローズが口を開く。
「ここで立ち話もなんですし、早速村に行きましょう」
 彼女の案内についていって村へと向かうのであった。

 さて、村に到着した開拓者達はローズにある事を告げる。
 それは、
「私に仕事をするな、ですって!?」
 というものだ。ローズの驚きようから察するに、手伝いが来る話を聞いていても、それが彼女の休暇の為だとは聞いていなかったのだろう。
 その事についての彼女の答えは、
「お断りしますわ! せっかくの作業を進める機会ですのに、この日に働かなくてどうするんですの!」
 拒否だ。頑固な彼女らしい答えといえるだろう。
 その様子を見て、ザザ・デュブルデュー(ib0034)はローズについて考えを巡らせる。
(ふむ、自分がやらねばって、頑張りすぎている上にその事に気付いていない感じかね?)
 ザザの推測は概ね正しいと言えるだろう。先程のローズの言動から考えるだに、自分が頑張るのは当然‥‥といったものか。
 羅轟(ia1687)が抱いた感想も同じようなものだ。
(‥‥外れ‥‥かけた‥‥道‥‥戻せた‥‥か。が‥‥今度は‥‥張りきり‥‥過ぎ‥‥か?)
 そんなローズだからこそ休ませてやりたいと村人が依頼を出したわけで、彼女の言い分を認めるわけにはいかない。
 アルクトゥルス(ib0016)はローズの前に立つと、諭すように語り掛ける。
「お嬢はお嬢なりに村や村の皆の事を想っての事なんだろうが、『上の者が休まないと下の者が気楽に休めない』っていうのがあってだな、上の者かどうかは兎も角として、な」
「別に上というわけでは‥‥。というか、お嬢と呼ばないでください!」
 ローズの抗議もどこ吹く風。アルクトゥルスは飄々とした様子で話を続ける。
「率先垂範大いに結構、しかしながら自分1人で何から何でもやっちまおうっていうのはいただけない。周りを当てにしていない風にも取れる訳だからな」
「なっ‥‥!?」
 それを聞いたローズは、何かを言おうと口を動かすが言葉らしいものは出てこない。
 村の者を信頼している彼女としては、そんな風に取られるとは夢にも思わなかったらしい。
 ショックを受けている彼女を見て、畳み掛けるのなら今だと判断したのだろう。羅轟が静かに声をかける。
「復興‥‥頑張る‥‥良いが‥‥今‥‥村‥‥支え‥‥貴殿」
 それはローズが村にとって掛け替えの無い存在であるという言葉だ。
「近況‥‥他より‥‥聞いたが‥‥過労‥‥なると‥‥アヤカシなど‥‥有事‥‥際‥‥対応‥‥困難‥‥ゆえ‥‥ほどほどに」
 だからこそ、
「それに‥‥我らも‥‥心配」
「‥‥心配?」
 意表をつかれたような反応をするローズ。
 まさか自分が心配されているとは思っていなかったのだろう。
 禾室(ib3232)も彼女への説得を始める。
「出来る力があるから率先してやる、それはとても素晴らしい事じゃ。だがの、大事な人が頑張りすぎると周りはすっごく心配になるのじゃぞ」
「私は‥‥心配させていましたの‥‥?」
「たまには休む事も皆の為になるのじゃ」
 しかしローズは首を縦に振る事も横に振る事もしない。頑固な彼女だから迷っているのだろう。
 その様子を見て、禾室は仕方ないと言いながら、神威人の証である狸の尻尾をふりふりと動かす。
「おぬしには特別に、わしの耳・尻尾をモフモフする権利をやろう」
「そ、そんな権利いりません!」
「そうか? 思わず動いたその手は何だったのかの〜ほれほれ」
「ぬぐぐぐ‥‥!」
 なんだかんだで禾室も楽しんでいるように見える。
 禾室とローズのやり取りを見て、ハッド(ib0295)がニヤニヤ笑ってしまうのも仕方なし。。
(ほほ、ローズ‥‥中々面白そうな娘だの)
 他の者達に見られている事を意識したローズが咳払いをひとつ。そこに一も休息を促すよう声をかける。
「少しは自分を労わって下さい、休むのも仕事のうちですよ」
「しかし‥‥」
「休まないとお嬢って呼び続けるぞ」
 アルクトゥルスが笑いながら言い放った言葉。それを聞いて、ローズは周りの者達が何としても自分を休ませたいという事を理解したのだろう。
 諦めた様子で息を吐きながら返事をする。
「分かりまーしーたー。皆さんの言葉に従って、今日は休むことにしますわ」
 言ってから、じろりとアルクトゥルスを見るローズ。それの意味するところは約束は守れ、といったところか。
 何はともあれ、今日は休むという約束をローズにさせたということで、開拓者達は村の復興に向けての打ち合わせを始める。
 今はまだ納得がいかない様子の彼女だが、そのうち分かってくれるだろう‥‥と。
 ルンルン・パムポップン(ib0234)がハーブティーを淹れながら、彼女に微笑みかける。
「体壊しちゃったら、元も子もないです、今はこれでも飲んでゆっくり監督してください!」
「はぁ‥‥そうさせてもらいますわ‥‥」
 ローズはハーブティーを飲みながら、禾室の尻尾の手触りを楽しむのであった。

●建築
 復興作業の為に、開拓者達だけではなく村人達も村の中央に集まっていた。
 そこに甲龍のかめに乗ったハッドが上‥‥空から降りてくる。
「よしよし、こんなものかの」
 かめから降りた彼が村人達に1枚の紙を広げて見せる。空から見下ろすことで作成した村の地図だ。
 ちなみにかめは仕事を終えた時点で適当な場所に移動して、日向ぼっこを始めてしまった。
 村人達は地図を見て、これでどうするのかとハッドへと問う。
「こいつは?」
「見ての通りの村の地図ぞよ。どこに何を作るかに役立つと思っての」
 それに、と言葉を続ける。
「具体的な達成目標を決めて作業をした方が良いに違いない。だから、まずは復興計画を表にして作ることを勧めるぞよ」
「なぁるほどなぁ‥‥」
 納得した様子の村人達はここに家を、ここに畑を、ここに集会所を‥‥といった風に相談を始める。
 それが概ね終わると、どの作業を優先するかの打ち合わせになる。
「住環境‥‥整備‥‥」
「家の確保は急務じゃと思うが、食の確保も同じくらい大事なのじゃ」
 といった開拓者達の言葉に反対する者もおらず、家の建築と畑の整備を優先することになった。
 こうして、各々の作業分担を決めてから、実際の作業に移るのであった。

 さて、こちらは家の建築の携わる者達だ。
 家の建築といってもするべき作業は多岐に渡る。
 まずは木材とするべく木の伐採からだ。村の者と共に、近くの森へと向かう。
「切って‥‥良いか‥‥?」
 ここらの木は切っても大丈夫かという羅轟の問いに、村人達は可と答える。
 それを聞いたルオウは、村から借りた材木切り出し用の斧を構えて、一発気合を入れる。
「よっし、やるぜぃ!」
 強力を発動させて、木に斧を入れるルオウ。木を切る技術だけでいうと本職の木こりには敵わないかもしれないが、その力は圧倒的だ。
 あっという間に1本の木が切り倒される。それを分割してから荷車へと乗せ、また別の木を切る。
 これらを繰り返し、荷車の上にある程度木が載せられると、それをしっかり縄で結び、ルオウの相棒である炎龍のロートケーニッヒに牽引させる。
 また、軽めの木は別の荷車に乗せ、村人達に運搬を頼むことにしたのであった。
「いくぜロート! 頼むぜ、あんちゃん達!」
「おうよ、任せな!」
 さすがは龍といったところか。普通の人では運ぶのに相当梃子摺りそうな量でも難なく運んでいく。
 羅轟も同じように切り出しと運送を甲龍の太白と共に行う。
 こうした作業を何回か繰り返し、木材がある程度確保できたと判断できるぐらいの量になっただろうか。
「ここ‥‥任せる‥‥」
「あいよ! んじゃ、俺は切るのに専念するかな」
 木の伐採をルオウに任せる事にして羅轟は家の建築の方へと向かう。
 また、木の運送に関しても村人とロートが慣れたのか、ルオウがつかなくても大丈夫になった為、更に効率は上がっていた。
 運ばれた木を、建築に適した木材に加工するはハッドの指揮する村人達だ。
「そうだの。この大きさのものを‥‥これぐらい作ればいいぞよ」
 計画表を元に、建材をどれぐらい作ればいいのかを把握して、自分も加工しながら指示を出していく。

 建築予定場所には、一が石材を運んでいた。
「これとか‥‥使えますかね?」
「おぉ、いけるいける。いいもん見つけ出すじゃねぇか」
 一が見つけた石材は元々廃墟にあったものだ。それの解体撤去作業を行いながら、再利用可能な素材を確保しておいたのだ。
 それらの素材を見て、家を建てる指揮をする本職の大工である村人は大喜びだ。
「まだ他にも使えそうなのがあるかもしれませんし、そちらを当たりますね」
「へへっ、任せたぜ」
 村人の期待を背に受けて、一は茜姫と共に廃墟へと向かう。

 こうして、次々に建築の為の素材が集まっていく。
 事前に村人から話を聞いたのだろう、また村にやってきた商人達も追加で建材を仕入れてきたのもあって、準備は万端だ。
 と、そんなモヒカンの商人達を見て、ルンルンがあーっと声を上げる。
「わぁ、山賊です、私この間ので憶えちゃいました」
 このモヒカン商人。以前にとある村を襲おうとしたらアヤカシに返り討ちにあったという過去を持っているのだが、それを覚えていたのだ。
 とはいえ、既に改心しているモヒカン商人は慌ててそれを否定する。
「人聞きの悪い事を言うんじゃねぇ!? 俺達ゃ、真面目な商人様よ!」
 村人達からも補足が入り、ルンルンは自分の勘違いに気付き、しゅんとなって素直に謝る。
「今度は、ジルベリアの部族さんだったんですね‥‥私の忍法もまだまだです」
「今度はって何だよ!? あと商売でこっちに来てるだけでジルベリアの人間じゃねぇ! それから忍法で分かるもんなのかよ!?」
 商売人としての手腕だけでなく、随分とツッコミの腕も上げたように見受けられる。
 そんなモヒカン商人達を珍しいものでも見るかのように禾室が見る。実際、珍しいものだが。
「‥‥どうでもいいが、おぬしら鶏の獣人なのかぇ? 初めて見たのじゃ」
「んなわけねぇだろ! 消毒されてぇのか!」
 モヒカンが鶏のトサカのように見えても仕方ない‥‥のか?

 建材が集まった事もあり、大工の村人の指示の元、建築作業が始まる。
「パックンちゃんGO!」
 とジライヤのパックンちゃんを呼び出すはルンルンだ。その力を活かして、普通では大の男が2人以上必要な作業も軽々とこなしていく。
 羅轟も力仕事を主に担当しながら、大工に事前に話した工夫をこなしていく。
 それは、木を差し込んだり組み合わせることで釘を節約するというものだ。
 そこまで上手く加工する技術できるかどうかは大工の村人にも怪しいものなので、簡単だろうと思われる場所だけに行うこととなった。
 それでも釘が節約できるのは確かであるし、余裕が無い村にとってはありがたいことだろう。
 建築作業が進んでいくと、高所での作業を行う必要性も出てくる。そこでもルンルンが名乗りを上げる。
 三角跳で一気に登って‥‥と考えたのだが、よくよく見ればしっかりとした足場になる壁などが周囲に存在しない。建築途中の柱や壁などを使うのは明らかに危険だ。
「梯子で登ればいいんじゃねぇか?」
「‥‥はい。でもでも! 高い所の作業なら、ニンジャにお任せなんだからっ!」
 そんなこんなで建築作業は進んでいく。

●畑作業
 ところ変わって、こちらは畑作業班だ。
 まずは畑の土壌作り‥‥ということだが、その前に問題がある。
「一体何を栽培するつもりなんじゃ? 最低でも何を植えるつもりかわからんと手が出せぬ」
 とは禾室の問いだ。それを聞かれて、村人はどうしたものかと悩み始める。
「何を植えるか‥‥なぁ。これからの季節考えねぇといけねぇしな‥‥」
 そこに助け舟を出すのは、何か荷物を抱えてやってきたアルクトゥルスだ。
「そうだな‥‥そこそこ短期間で収穫でき、それなりに収穫量があって長期保存が利くじゃが芋辺りは有望そうだが」
「じゃが芋か‥‥」
「あぁ、気は早いかも知れないが、これから来る冬に向けて備蓄した方がいいだろうしな」
 村人達としても、じゃが芋は良い選択肢に思えたのだろう。相談の結果、最終的にじゃが芋を植える畑とする事が決まった。
 相談が終わってから、ある村人がアルクトゥルスの抱えてる荷物に気付く。
「ん、そいつはなんだ?」
「こいつは廃材だ」
 彼女の話によると、それを用いて腐葉土の下地を作るなり、焼いて肥料にしたりするといいとのことだ。
「細かい理屈は知らんが作物の育ちがよくなると氏族の爺様連中が時々竈の灰を畑に撒いていてな」
「ほぉ。‥‥前に会った時も思ったが、騎士にしちゃ随分とそういうの詳しいんだな」
「そういう家だからな」
 騎士の氏族にも色々ある、ということだろう。
 もう1人の騎士であるザザは余った木材を利用して、プラウ‥‥馬などが引く鋤を作っていた。
 簡単なものではあるが、無いよりはある方がいいということで、複数‥‥更に大型のものも製作しておく。
 それを引くのは、
「お願いするよ、イフィジェニィ」
 彼女の相棒である甲龍のイフィジェニィ。このような農作業はイフィジェニィとしては不本意なのか、少しふてくされているように見える。
 ザザが何とか機嫌を取ることで、渋々とプラウを引き始める。
 力強い龍が耕すことで、普通の馬や男が耕すよりも、遥かに効率がいいといえる。
 その様子を見て、村人達も声を上げる。
「むむ。笹錦よ、こちらも負けてられないのじゃ」
「プラウなら余ってるから、使うか?」
「かたじけないの。よーし、頑張るのじゃ」
 禾室の相棒である笹錦も、プラウを引いて畑を耕し始める。
 こちらはイフィジェニィと違い、嫌な素振りは見せず、競うように引いていく。
「‥‥あまり広げすぎても意味ないからな」
 そんなアルクトゥルスの忠告を聞こえたのか聞こえなかったのか。
 彼女の相棒、アスピディスケもプラウ引きに加わり、甲龍3体による壮観な開墾作業が繰り広げられるのであった。
 こうして、畑もどんどんと形になっていくのであった。

●休暇と仕事
 作業している村人や開拓者達を少し離れたところで眺めるはローズ。
「‥‥むむ、歯痒いですわ」
 皆が働いているというのに、自分だけが休んでるというのが歯痒いのだろう。
 だから、
「少しぐらい‥‥作業に混じってもいいですわよ、ね?」
 と、そそくさと作業場に移動しようとしたのだが‥‥そこをハッドに見つかる。
「休めといって聞く娘とは思わなかったが‥‥のう」
「な、何ですの!? 私は十分に休みましたわ!」
「あー、分かった分かった。では汝に仕事を与えるとするぞよ」
 それを聞いたローズの顔がぱーっと明るくなる。
 そこに、村の子供達を連れた一がやってきた。子供達は木でできたブーメランや彫り物などを持っている。
 余った時間に一が廃材で作った遊具だ。
「では、子供達と遊んでくれませんか?」
 わーい、とローズの元に集まっていく子供達。やはり、というかローズは子供達からも好かれているようだ。
「ちょ、ちょっとどういうことですのー!?」
 納得してない様子だったが、根が他人想いのローズ。結局、子供達に振り回されながら遊ぶことになるのであった。

 働く者は働き、休む者は休み、遊ぶ者は遊ぶ‥‥そんな日の夜。
 星の下、廃材に座りながら村の様子を眺めるローズのもとに、酒を携えたザザがやってきた。
「どうだ、飲まないか?」
「‥‥頂きますわ」
 ザザから杯を受け取るローズ。
 言葉もなく、どれだけ飲んだ頃か‥‥ザザが口を開いた。
「なぁ‥‥なんでそんなに村の復興の為に頑張るんだ?」
 故郷の為に頑張る気持ちは分かる。だが、ローズの頑張りようはそれだけじゃ納得できないこともある、と。
 しばらくの無言。
 ローズが、ぽつりと言葉を洩らす。
「私の本当の家族は‥‥もういませんの」
 天を仰ぐ彼女は何を見ているのか。ただ言葉を続ける。
「分かっているのは、ロードロール家という貴族の生まれという事だけ‥‥」
 それから話されるのは彼女の過去。
 彼女は物心ついた時にはこの村で暮らしていた。だが、他の子供達と違い、自分には両親といえる存在はいなかった。
 ただ、子供の頃から肌身離さず持っていたサイズの合わない指輪が、ある事実を示した。
 そこに刻まれた紋様は、既に滅びた貴族‥‥ロードロール家を示すものだと。
 何故滅びた筈のロードロール家の自分が生きているのか。何故この村にいるのか。疑問はある。
 だが、
「そんな事は‥‥どうでもいいんですの。血の繋がった家族はいないとしても‥‥この村の皆が、私の家族ですから」
 親のいない自分を育ててくれたのは、村の大人達の愛情。
 その愛情を一心に受けたからこそ、今の彼女があるのだ。
「だから‥‥。この村は‥‥絶対に滅ぼさせませんわ‥‥!」
 話を聞いて、ザザは理解した。
 ロードロールという家が滅んだ過去を持つ彼女だから‥‥自分を育ててくれた村を強く愛しく想い、また村を失う事を恐れているのだ、と。
「ならさ、分かるんじゃねぇかな」
 2人の後ろから声がした。そちらに振り向けば、立っているのはルオウだ。
「聞いていましたの?」
「わりぃ。ローズの姉ちゃん強いって聞いてたから挨拶しようと思って‥‥そしたらな」
 ルオウはぐるっと、村を見渡してから、またローズに顔を向ける。
「ここって皆住んでた場所なんだろ? すげえよな! こんなに荒れちまっても皆残ってるって。そんだけ楽しい思い出がいっぱいあったんだろうな!」
 ローズと同じく、村の皆にも。
「だからさ。皆にもその楽しい思い出を直せたって頑張ったんだって実感あった方がいいだろ? 何もしてないとは思ってないだろうけど、やっぱ実際やって疲れてみないとピンと来ないと思うしさ。‥‥俺ガキだし間違った事言ってるかもしんないけどそう思う」
 村を想っているのは‥‥ローズだけではない。
 村の皆も村を想っているし――
「――ローズ殿も、想われているのだから」
 ザザの言葉に、ローズがまた天を仰ぐ。
「‥‥ありがとうございます」
 ぽつりと呟いたその言葉は、一体誰に向けてのものか。
 ローズは立ち上がると、背を2人に向ける。
「まったく、お酒のせいで変な事言ってしまいましたわ。明日も作業があるんですから、早くお休みになられた方がよろしいですわよ」
 そして振り向き、
「私は休ませてもらうんですからね」