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■オープニング本文 街を歩いていた少女は、あるものを見てふと足を止めた。 ……最近、よく見ますわね。 幸せそうな笑顔を浮かべる男女とそれを祝福する大勢の人々。結婚式だ。 ここ6月に入ってから結婚式をやっているのをよく見かけるようになった。 不思議に思って、ある時参列者の1人に何故かを聞いてみたことがある。 「あぁほら、あれよ。ジルベリアじゃ6月に結婚したら幸せになれるって風習があるんだろ? それに乗っかったんだよ」 「確かにそういう風習はありますが……」 ジルベリア出身である少女にとっては聞き馴染みのあるものだ。 とはいえ、それはあくまでもこの時期のジルベリアは気候が安定し式を行うのに相応しいという面が大きい。 梅雨のある天儀ではあまり向いてない……ように思える。 そんなことをつい口を滑らせてしまったら、相手は大笑いしていたのを覚えている。 「がっはっは! まー、そうかもしれんけどな。でもどうせならより幸せになるかもしれない手を試してみたくなる。そういうもんなんだよ」 「そう、なのでしょうか」 結婚には縁遠い自分にはいまいちピンとこない。 「あとはほれ。どういう理由にせよめでたいことがあれば、儲けになるだろ?」 「……あー」 そっちの理由はすんなり納得できた。全く、天儀の商売人は商魂逞しいものだ。 何にせよ、結婚という人生の節目を笑顔で迎える人々を見て、少女もつい顔を綻ばせる。 騎士であり開拓者でもある彼女はこの笑顔を見る為に戦ってきたのだ。 今でも各地でアヤカシとの戦いは繰り広げられている。その災厄から人々を護る為にもより頑張ろうと思える。 ……それにしても。 少女は肌身離さず持っているサイズの合わない指輪を太陽に照らしながら考える。 「私も……いつかこの指輪を男性に贈る日がくるのかしら」 滅んでしまったジルベリア貴族ロードロール家に伝わる指輪。少女、ローズにとっては形見となる品だ。 サイズからして男性用のものだ。となれば、結婚する際に相手に贈るのが相応しいか。 ……その時は。 「私もあの人たちみたいに笑って、大勢に祝福されたいものですわね」 ――と、ここで終わればイイハナシダナーで終わるのだが。 そうは問屋が卸さないのであった。 「キャー! 結婚式荒らしよー!?」 「!?」 式場からあがる悲鳴。何事かと見やれば、そこには奇妙な格好をした半裸の男達がいた。 上半身は裸で、下はパンツ一丁。顔全体を隠すマスクを被っている、見るからに怪しい男達。 ある者は料理を食い荒らし、ある者は参列者を亀甲縛りにし、ある者は新郎新婦のコスプレをして式の流れを完全にジャックしていた。 「な、なんなんだお前らは!?」 当然、式を滅茶苦茶にされた新郎は怒ってマスクマン達を問い詰める。 だがマスクマンは新郎の怒りを介することなく。新婦のコスプレをしていたマスクマンが代表として名乗りを上げる。 「我々は幸せな結婚を許さない――マリッジデストロイヤーマスク……略してマスク!」 「確かに略せてはいるが、こう、もうちょっとさぁ!?」 いや、そんなことはどうでもいい。 「なんでこんなことをする!」 「なんでだァ……? そりゃ、お前の為に決まってるだろう」 「俺の為、だと!?」 「あぁ! こんなタイミングで幸せな結婚式なんてしたら戦いで死ぬに決まってるからな!!」 「結婚を先延ばしにする方が死ぬわ!!」 どっちもどっちだと思う。 と、今まで黙っていた新婦がわなわなと震えながら刀を抜く。何故結婚式に刀を持ってきているかは分からないが。 「く、くくく……。ともあれ、貴様らが私達の結婚式を滅茶苦茶にした事実は……変わらないな?」 「ひぃっ、凛さんが今までに無いレベルでキレてる……!」 新郎がドン引くレベルでキレる新婦を目の当たりにしながら、しかしマスクリーダーは爽やかに答える。 「あぁっ、妬ましかったからな!」 理由は全く爽やかではなかった。 「ふざけるなァァァ! 一生の一度の晴れ舞台をォォォォ!!!」 「HAHAHA☆ 一生に一度とは限らないじゃないか」 「私がこの男以外と添い遂げるわけが無いだろう!!」 「凛さん……!」 新婦の言葉に思わず涙を流して感動する新郎。尤もその新婦はマスクに思いっきり斬りかかっているのだが。 だが志体持ちだろう新婦の攻撃をいとも容易く避けるマスク。 「ふぅー、怖い怖い。まるで鬼であるな、これは。ともあれ、目的は達せられたな、ハッハッハ!」 リーダーが指をパチンと鳴らすと、それを合図としてマスク達は方々に散らばっていった。 「ああああああああああ! あいつら! 絶対! 殺す!!」 怒り狂った花嫁の咆哮が、青空へと突き抜けていくのであった……。 「な、なんでしたの……今のは……」 常識を凌駕したあまりの事態に、ローズはただただ呆然と見ていることしかできなかった。 そんな彼女の意識を引き戻したのは、同じように事態を見物していた人の言葉だ。 「あー……またか。これで4件目かのぅ……」 「また……?」 話を聞くところ、どうも同じ集団が結婚式を荒らしまくっているらしい。理由は彼らの言を信じるなら『嫉妬』だろう。 勿論、そんなことを聞いて黙っていられるローズではない。 「ゆ、許せませんわ……!! 神聖な儀式である結婚式を滅茶苦茶にするだなんて! 私が成敗してさしあげますわ!!」 そして奴らを舞台に上げるのは容易い。 「結婚式をしますわよ!!」 |
■参加者一覧
羅轟(ia1687)
25歳・男・サ
リンスガルト・ギーベリ(ib5184)
10歳・女・泰
ファムニス・ピサレット(ib5896)
10歳・女・巫
フランヴェル・ギーベリ(ib5897)
20歳・女・サ
草薙 早矢(ic0072)
21歳・女・弓 |
■リプレイ本文 ●結婚式? どこまでも突き抜けるような青い空。照りつける太陽の日差しが夏の到来を感じさせる。 雨の気配は一切無し。まさに今日は結婚式日和といっていい。 結婚式場で白いタキシードに身を包んだ人物が、芝居がかった動きで手を天に翳す。 「天も僕達の結婚を祝福しているようだね。素敵な結婚式にしよう♪」 タキシードの花婿、フランヴェル・ギーベリ(ib5897)はそのまま振り向いて後ろに控えている花嫁に手を差し出す。 ちなみにフランヴェルは女性だ。もちろん花嫁も女性だ。つまりそういうことだ。 「はい! フランさんと結婚式……囮なのは分かってますけど嬉しいです」 差し出されたフランヴェルの手をそっと取るはファムニス・ピサレット(ib5896)。 1枚の布を巻きつけるように着るドーリア式キトンと白のヴェールを身に着けており、さしずめ希儀の花嫁姿といったところか。 このやり取りだけを見るならば、同性ながらも仲睦まじい新郎新婦に見える……のだが。 フランヴェルは更にファムニスの背後に控えている人物にもう片方の手を伸ばす。 「ハァハァ……リンスも可愛いねぇ♪」 「むぐ〜! んん〜!」 尤もその人物は控えているというより、縛られた上で猿轡をかませられているのだが。 どう見ても拉致されたようにしか見えない、一応ウェディングドレスを着ている少女の名はリンスガルト・ギーベリ(ib5184)。フランヴェルの姪である。 ……な、何故こんなことになったのじゃ!? リンスガルトにはこうなった経緯がまるで分からない。気づいたら今の状況になっていたのだ。 そうだ、最後の記憶は確か―― ――あ、あやつ! 妾の茶に盛ったな!? 「んんー! んんうー!!」 ……これは拙い状況じゃ。 リンスガルトにしてみればフランヴェルは稀代の変態。そんな彼女に何をされるのか……ろくでもないことなのは確かだろう。 姪に襲い掛からんとするフランヴェルを見て、花嫁衣裳を着た草薙 早矢(ic0072)が傍らの少女に声をかける。 「あの……本当にいいんですか、あれ?」 「やっぱりフランヴェルは変態クソ女だな」 身も蓋もないことを言うはナキ=シャラーラ(ib7034)。バラージドレスを着た花嫁の1人だ。 こんな変態は放置してはいけない、とナキは自分に言い聞かせるように呟く。 「……あ、あたしが監視しねえと何するか分からねえからな」 だから、 「けけけ結婚してやらあ!」 彼女の真っ赤に染まった顔は、先の理由がただの言い訳だと察するに十分であった。 「……本当にいいんですね」 なかなか倒錯した関係だなぁと感心する早矢。ちなみに彼女はフランヴェルと結婚するわけでなく、囮として花嫁役になっているだけだ。 「皆……綺麗だ」 思い思いの衣装を着た花嫁達の美しい姿に恍惚とするフランヴェル。 花婿の彼女は花嫁のエスコート……と称して、リンスガルトをお姫様抱っこする。 「むう〜! んっんんー!」 荒縄で縛られているせいでそうでもしないと移動できないからなのだが。 そんな様子を参列客に紛れて見ていたローズは溜息を漏らす。 「……う、うーん、これが幸せな結婚式……でしょうか……?」 いや確かにフランヴェルは当然として、ファムニスもナキも幸せそうなのだが。 リンスガルトが視線で助けを求めている気がする。 ……助けてはあげたいのですけども。 だが、ここで自分が乱入しては元も子も無いとローズは申し訳なさそうに目を伏せる。 「ええと、本当に危なそうでしたら介入しますわ……!」 「むむー!?」 もう危ないんじゃー、というリンスガルトの心の叫びは……届かない。 ともあれ、縛られた花嫁と共に結婚式は進んでいく。 「――その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか?」 「誓うよ」 「むむー!?」 「では、誓いのキスを……」 「あの、リンスさん明らかに拒絶してますけど進行しますの……?」 ツッコミもむなしく、フランヴェルは縛られたリンスガルトの顎に手を当てて上向かせる……が。 「ああ、猿轡していては興醒めだな」 「んむ!?」 猿轡を外すのか……と思いきや、何故かフランヴェルの手はリンスガルトのドレスに伸びる。 「では唇と同じ淡いピンク色のこっちにキスしよう♪」 「んんんー!?」 ドレスの肩紐がするりと腕を抜け、リンスガルトの肌が次第に露になっていく。 その様子を自分のことかのように顔を火照らせて見守るファムニス。止める気は無いようだ。 落ちていくドレスを追うようにフランヴェルの顔は喉、肩、胸へと降りていき――。 ――あああ生暖かい息が肌を徐々に……誰かこやつを止めてくれー! リンスガルトの声が天に届いたのか。 ついに救いの主が現れた。 ●乱入者か救い主か 「ちょっと待ったー!!」 会場に響くは野太い男の声。 「その幸せな結婚式……幸せな結婚式、でいいんだよな……?」 「いいよ♪」 「そ、そうか。では改めて、その幸せな結婚式、ぶち壊させてもらうぞ!!」 声の主はパンツ一丁のマスクマン。結婚式ブレイク集団マスクだ! 「来ましたわね……!」 待ちに待ったマスクの登場ということでローズが立ち上がる。 その手には武器は無い。だが、彼女がぱちんと指を弾くと、ヒュルルルという風切り音と共に飛来した巨斧が地面に突き刺さった。 「いい仕事ですわ」 ローズは斧を引き抜くと、飛来した方向……斧を投げ飛ばした張本人へと視線を向ける。 建物の屋根の上。そこには人……とは断言しにくい何かが立っていた。 熊だ。 何故か熊が腕組みをして立っていた。 マスク達の視線が熊に集まったのを確認して、熊は何事か書かれた立て札を取り出す。 『僕は風の熊三郎! さあ、幸せになろうとする人たちを邪魔する悪い子なみんな! 僕が相手をしてあげるよ!』 熊の正体はまるごとくまさんを着込んだ羅轟(ia1687)。 ――同じ……独り身として……思う……所が……無い訳では……ないが。お前たちに……似合いの……姿で……相手……してやる。 とのことらしい。変人を相手するなら変人が一番というやつなのだろうか。 熊は屋根の上から飛び降り見事に着地! しかもよりによってマスク達の陣のど真ん中だ。 マスク達も明らかに怪しい新手に警戒の色を露にする。 「……おい、こいつ動かないぞ」 「結構な高さだったし……。衝撃で足痺れたとか?」 『ぎくっ』 「おい図星みたいだぞ! 今のうちに潰せ!」 「ああああ、もう、何やってますの!?」 当然の如く袋叩きにあう羅轟。ローズが斧を振り回しながら突撃したことでなんとか難を逃れたり。 こうした騒ぎのどさくさに紛れてリンスガルトはようやくフランヴェルの手から逃れることに成功していた。 「大丈夫ですか……?」 ファムニスに荒縄を切ってもらうと、彼女の言葉に答えることもなくリンスガルトは怒りの叫びを上げる。 「貴様! 今度という今度は許さぬ! 叩き殺してくれるわ覚悟せい!」 「待ってください! 理由があるんです!」 「理由じゃとぅ?」 今にもフランヴェルをぶちのめさんとするリンスガルトをファムニスが何とか抑え込む。 だがリンスガルトの視界に入ったのは、 「ちっ……いいところだったのに」 と本気で悔しがっているフランヴェルの姿であった。 「理由じゃとぅ?」 「ふ、フランさん!」 「じゃない、引っかかったなマスク共!」 慌ててマスク達を指差すフランヴェル。とってつけた感は否めないが、とりあえずポーズとしては成立している。 改めてファムニスが結婚式潰しをするマスクのことや、その為に囮として結婚式をしたことの説明を行う。 「成る程の……。結婚式をぶち壊そうとは不届きな奴等よ!」 事情をようやく飲み込めたのかリンスガルトは一先ず怒りの矛先をマスクへと向けることにする。その手にはファムニスから渡された愛刀の秋水清光もあった。 「相当酷い怪我でも私が癒します。だから死なせない程度にやって下さい」 ファムニスの残酷な通達を切っ掛けとして、戦いが始まった。 ●マスク狩り 会場にいるのは開拓者とマスク達。協力者の一般人達はナキの避難誘導で既にこの場を離れている。 「結婚式をぶち壊す者には死を!」 既婚者として許し難いのか、怒りに燃えた早矢が隠していた弓で矢をがんがん連射する。 ずばーんずばーんずばーんとその辺のものを破壊する強大な威力の前に、マスクもたまらずテーブルなどを盾にして隠れることを選択する。 「ふぅ、とりあえずはこれで一安心……うん?」 ちょっと食い込んでしまったパンツを修正しようとしたマスクがあることに気づく。 「なにィ!? 手がテーブルにくっついて離れない、だとォ!?」 『引っかかったようだね!』 意外、それはとりもち! 羅轟が事前にテーブルや床などに仕掛けておいたのだ。 『ハイ、逃げても無駄!』 身動きの取れなくなったマスクに、羅轟が巨大な槌で一撃をお見舞いする。 だが全てのマスクがとりもちに捕らわれたわけではない。 矢もとりもちも避けきった1人のマスクがファムニスに迫らんとしていた。 「近寄らないでくださーい!!」 ローズウィップが振るわれ、マスクの剥き出しの素肌にバシーンと叩き付けられる。 「ンヒィー!?」 素肌に直接鞭を叩き込まれたらたまったものではない。うずくまるマスクの体に見事なミミズ腫れができる。 それを見たファムニスは、 「赤く浮き出た鞭跡って綺麗です……。もっと叩いてあげます!」 「アヒィ!」 何かに、目覚めた。 ぱしーんぱしーんぱしーん マスクの体にできる痛々しい赤い跡。激しい動きでファムニスの服が捲くれあがってるせいで、そういうプレイに見えなくもない。 だが。 ファムニスが何かに目覚めたのなら、マスクもまた……何かに目覚めた。 「オフゥン……! もっと……!!」 「えっ」 打たれ続けていたマスクは止まることなく、更にファムニスへと近寄る。 これは予想外だったのか、ファムニスはパニック気味にローズウィップを手放してしまう。 「いや! 来ないでー!」 マスクを突き飛ばそうと伸ばした彼女の手が、男の大事なところを、掴む。 「ひゃぅ!?」 そのまま、零距離からの白霊弾連射! 「アフゥゥゥゥン!!!?」 悶絶し、口から泡を吹いて膝から崩れ落ちるマスク。 『なんと、むごい……』 「……そんなに辛いの?」 ローズの素朴な疑問に、羅轟は視線を逸らすだけで答えない。男にしか分からないものなのだ……。 男の大事なものへの攻撃といえば、リンスガルトも同様であった。 彼女が刀で斬るのはマスク達のパンツ。 そして彼女は晒されたアレを見て、こう哂うのだ。 「――はっ、随分と粗末なものじゃのう?」 幼い少女に嘲笑されたとはあっては男としてのダメージは相当なのか。男達は三角座りをして泣き出してしまうのであった。 尤も、「むしろご褒美です!」と罵倒を受け入れる者もいたが、そのような者にはしっかり五神天驚絶破繚嵐拳を発動した蹴りを叩き込んでいた。股間に。 ――だが。 「……むぅ!?」 マスクのリーダーと思われる男のパンツを斬ったリンスガルトは驚愕する。 これは……例え嘘でも嘲笑うことができない代物である、と。どのようなものかは描写する必要が無いと思われるので割愛する。 「ハーッハッハ! どうしたのかね?」 ――こやつは、格が違う! やはりリーダーということか。 ならばと、ついにフランヴェルが動き出した。 「ふ、そろそろボクの出番か。ファムニス、ぱんつをボクに……」 他の者がドン引きするのも構わず、ファムニスは己が履いていたぱんつを脱いでフランヴェルに手渡す。 「ああ…脱ぎたての体温っ! 染みひとつない純白! ボクを想う純粋な心が表れている!」 そんなことを言いながらぱんつを顔に被るフランヴェル。恐らく……というか間違いなくこの場にいる者で変態が極まっているのは彼女だ。 「フォオオオオ! 私は正義の仮面貴族エル・パンツーラ! 君達にマスク剥ぎデスマッチを申し込む!」 「受けて立とうではないか!」 エル・パンツーラとなったフランヴェルが跳躍し、マスクリーダーの前に立つ。 武器は使わず素手で掴みかかろうとするフランヴェルを、マスクリーダーは諸手で受け止めんとする。 「今だ!」 だがフランヴェルは掴みかかるのではなく、腕を組んで頭から敵に突っ込むことを選択した。 天歌流星斬を発動してのチャージ。だが、マスクリーダーは不敵な笑みを浮かべて迎え撃つ。 「ふ、しかしその程度受け止められんとは思ったか!」 「甘い――!」 「何ィ!?」 マスクリーダーはただの頭突きだと思っていた。だが、違う。その頭突きには角があった。 正確にはフランヴェルが被っているぱんつ――蜜蜂は針が仕込まれたぱんつだったのだ! 「秘技! ユニコーン・パンツァー!」 「グワァァァァ!!!?」 突撃を食らって真上に吹っ飛ぶマスクリーダー。物理法則を無視している気がするが、気にしてはいけない。 そのまま地面に叩きつけられたリーダーが起き上がることはなく、フランヴェルはリーダーのマスクを剥ぐ。 「ボク達の勝ちだ!」 「そんな馬鹿、な……!?」 残っていたマスク達も、これを受けて抵抗をやめるのであった。 『こんな先の事もどうなるかわからない情勢なんだから幸せになる人たちの邪魔をしちゃいけないよ!』 もっともである。 ●幸せに? マスク達が連行されていくのを見届けながら、開拓者達は事件を解決した喜びに浸る。 特にテンションが高いのはフランヴェルだ。 「さてこれで式の続きを――アバーッ!」 だが彼女の言い終わるより先にリンスガルトの拳がフランヴェルに叩き込まれまくっていた。 「事情はどうあれ、妾に不埒な行いをしようとしたのは事実じゃし、それに以前、下着と寝間着盗んだであろうが!」 当然の制裁であった。 「はぁ、やれやれですわ」 この様子では今日は結婚式の再開はないだろうと、ローズは溜息をつく。 そんな彼女の背後に、いつの間にかファムニスが立っていた。何故か手をわきわきさせて。 「うぅ、感触が消えません……」 感触、というのは男のナニを握った感触だ。 だから、 「ローズさん、お願いします。貴女の胸の柔らかさで悍ましい感触を消してくださいい!」 「はいぃ!?」 むにゅぅ。後ろから手を回して、ローズの大きくはないがしっかり柔らかい胸の膨らみを鷲掴みするファムニス。 「あ、あんっ、何を、んぅ、するんですの……!?」 当然、振りほどくローズ。だがファムニスは止まることなく。 「お願いします!」 「ひっ、一体なんなんですの〜!?」 目を爛々と輝かせて追いかけまわすファムニスから必死に逃げるローズなのであった。 その様子を見て、羅轟がしみじみと呟く。 「ローズ殿も……早く……良い人と……出会えると……良いな」 無理じゃないかなぁ。 |