【勿恋】花言葉は聞こえない
マスター名:藤城 とーま
シナリオ形態: ショート
危険
難易度: 普通
参加人数: 4人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2014/06/07 03:21



■オープニング本文

●今更の事。

「……あんたに、謝らなけりゃいけないことは山ほどある……」
 仕事の事があったとはいえ――人の人生を狂わせてしまった。
 その犠牲者であるローラを避け続けていた咲崎は、まだきちんとその女性の眼を見ることができないまま、謝罪を口にする。
 ローラが何も言わずに咲崎の姿を、顔をじっと見つめていると……やがて咲崎は、すまなかった、の一言と共に首を垂れた。
 その謝罪には、様々な想いが込められているのだろう。だが、2人の間には重い空気が漂っている。

「咲崎さん」
 ローラが、静かに相手の名を呼ぶ。瞬間、咲崎の身体がピクリと動いた。
「貴方が謝罪する必要はないと思います。屋敷にいたのはお仕事なのだから……仕方が無かったのでしょう」
「仕事だから、というのを盾にすりゃそうだ。だが……俺はあんたの親父さんたちにも飼われていた。
主人へ戦が起こることになると分かっていても忠告をしなかった」
 あんたに近づいたのも、情報を引き出すためでもあったんだ、と言う咲崎へ、ローラも同意の意味を込めて小さく頷いた。
「仮に忠告していただいたとしても、私や父は……あの生活が一変するとは考えられなかったに違いありません。
あのまま何も変わらなかったと思います」
 だから、貴方のせいでは無いのですと言って、ローラは寂しげに微笑んだ。
「私は……貴方が、こうして生きていてくれてよかったと思っています」
「死んでくれていた方が良かったと思わなかったのかい? 俺が憎くはないのか?」
「――……仇討ちをしようとは考えてもいません。今も、未来も」
 だが、と言葉を重ねようとした咲崎を見て、ローラは首を横に振ると席を立った。
「お互いに、色々なことがあれからたくさんあったんです……。
辛いことが無かったわけではないです。でも……苦しいばかりでは、ありませんでした。
もっと、たくさんお話ししたいと思ったのですけど……ごめんなさい。今の咲崎さんには……きっと、分かってもらえません」
 過去の事はもうお互い辛い事。縛られずに忘れてください、と言って……ローラは店を出ていった。
 理解できないといった表情で、咲崎は彼女が座っていた席をぼんやりと見つめている。

 花瓶に活けられた勿忘草は、何かを物語るかのように、ひっそりとそこに咲いていた――。

●それから数日後。

 再び、君たちは開拓者ギルドで咲崎の姿を見かけた。
 ばっちり目が合ったと思ったが最後、咲崎は君らの方へと向かってくる。
「……よぅ。ちょっと相談が」
 前にもこんなやり取りがあったなと思いつつ、嫌な予感を抱えながら話を聞いてみる。
 すると、どうしちまったのかね俺ァ、と愚痴りながらも――こう答えた。
「相談ってのはさ、何、ほら女心というか。あんたならどうする? とかそーゆーハナシよ」
「どうって……」
 やっぱり聞くんじゃなかったと思っても、咲崎は逃がしてくれそうにない。
「俺は、彼女に詫びたいんだよ。何をしたら許してもらえるかとか、彼女のためには何ができるかとか。
だが、あのお嬢さんは俺が理解しないだろうからって……」
「仕事辞めて、一生影日向となってお嬢さんを護ってあげれば?」
 君たちは半ば冗談で言った事だったのだけど、咲崎はうーんと唸り『それも考えてる』と言い放つ。
 驚いた君たちは、互いに顔を見合わせて……詳しい話を聞いてみなければわからないと、静かに話の出来るところへ移動したのだった。 



■参加者一覧
九竜・鋼介(ia2192
25歳・男・サ
レグ・フォルワード(ia9526
29歳・男・砲
羽流矢(ib0428
19歳・男・シ
ソウェル ノイラート(ib5397
24歳・女・砲


■リプレイ本文



「あんたっておっさんは……」
 羽流矢(ib0428)は疲れたような声音で呟くと、面目なさそうな様子の咲崎を睥睨する。
「そういうけど、お前さんならどうすんだよ」
「…………」
 口を尖らせたいい年のおっさんにそう聞かれた羽流矢は、口を開きかけたがその問いには答えず視線を外す。
「――とりあえず、話ができるよう部屋を借りようか」
 困り果てる咲崎を連れ、4人は小ぢんまりとした部屋へ移動して対話を続けることにした。
「鍵、貰ってきてくれるかな。おっさんの身の上相談なんだから、それくらいやってくれよ」
「……へーい」
 羽流矢にぴしゃりと言い放たれた咲崎は、肩を落としながらギルド受付へと向かっていく。
 初回の緊迫した出会いはなんだったのだろうかと、羽流矢は僅かな悲しさを覚えた。
 咲崎が退席している間に、ソウェル ノイラート(ib5397)にローラがいた宿の場所や咲崎の経緯をかいつまんで教えておく。
 ソウェルはじっと話を聞きながら、何か思うところがあったのか……僅かに憂いのある表情を見せた。
「あの人たちにそんなことが……」
 独り言のように呟き、戻ってきた咲崎を『ご苦労さん』とねぎらうレグ・フォルワード(ia9526)をじっと見つめている。
「ん? どうしたんだ、ソウェル」
 視線に気づいたレグが、肩越しに振り返るとソウェルに明るい口調で訊ねた。
「……ごめん、先に済ませておかなくちゃいけない用事があって。すぐ戻るから、先に行ってて」
 そう言いながら席を立ったソウェルに、そうか、と軽く言いながら、レグは羽流矢の方を振り返る。
 羽流矢もレグを見据えて僅かに首肯し、レグはなんとなく――羽流矢がソウェルへ何か依頼したことを察した。
「ま、気を付けて行けよな。部屋は、廊下出て右の一番奥のとこな?」
「……わかった。また後で」

 ソウェルが立ち去った後、移動を開始する男4人。
 一人離れてソウェルが向かった先は、ローラの滞在している宿であった。


●思い出の中の君
 
「ローラ、いるかな?」
「あ……ソウェル、さん……!」
 宿の女中に案内された先には、荷物をまとめているローラの姿があった。
「よかった、間に合ったみたい……あの、今から話し合いがあってね。ローラさんにも違う場所で聞いてもらいたいって思ったから呼びに来たんだよ」
「え……それは、わたしに関係があること……なのでしょうか」
 困惑するローラに、頷きを一つ返すソウェル。
「咲崎が、私たちに相談に乗ってくれって言うんだ。ローラお嬢さんのことで、ね」
「……」
 自分の足下に視線を落とすローラ。
「顔を合わせる必要はないようにするけど……難しい、かな?」
「……わかりました。連れていってください」
 ローラが深々と頭を下げて、ソウェルはありがとうと礼を述べた。
「私も、ローラや咲崎に、聞いて貰ってもいいかな話があるんだよ……」


●小部屋内

「……でさ、咲崎のおっさんは何を一番したいんだよ」
 開口一番、羽流矢に睨まれる咲崎。
「何していいかわからねーつか……だから恥を忍んで聞いてるだろーが!」
「おお、逆切れして開き直っている」
 九竜・鋼介(ia2192)が皆に茶を淹れながら咲崎の一挙一動を観察し、どこか感心したように述べた。
 しかし、羽流矢も怯まない。
「何していいか分からないって、なんだよ、それ。
第一本当に謝りたいなら、必要ないと言われたって土下座しても謝り続けるだろうし、何より仕事辞めて付き添えって言われたらそうする……とかいい加減すぎだろ」
 渋々ついて来られたらお嬢さんの方が迷惑だし、赤辰団だって怒るだろうと羽流矢は説教モードに入っている。
「俺ァ、仕事は仕事って割り切ってる……と思ってたんだよ。だが、時折、水色の髪を見かけると、胸の片隅がチクッとするんだわ。罪悪感かねぇ」
「詫びる必要も無ければ……許してもらう必要すらないと思う」
 鋼介が真面目な顔で言い、咲崎は納得できないような顔をする。
「なんでだよ?」
「あんたの話を聞くに、ローラは一切償い等を求めてはいないそうじゃないか。
それなのに、どうしても会いたかったのは……仇討の為ではなく、別に理由があったから、だと俺は思う」
 別の理由と聞いた咲崎は、顎に手を当て、天井を睨みながら何か記憶を探っている。
「何だろなあ……」
「……しっかりしてくれよ、おっさん……自分の事なんだぞ」
 羽流矢は多大な疲労を感じつつ卓上の茶を手に取って口に運び、ため息を漏らす。

「……ちょっと相方がいない間に、言わせて貰って良いか?」
 レグが戸口をちらりと見た後、サングラスの下で照れたように笑った。
「同席されてると言いにくくてな。
見てりゃわかる部分もあったかも知れねぇが……俺とソウェルは恋仲だ。
ただ、その、俺が黙ってあいつの前から居なくなった時期があってな……割と、おっさんの話は他人事に感じられない部分もあるんだわ」
 その時のことは、今でも申し訳ないと思っていると言って、落ち着かない気持ちを和らげるかのように湯呑みを手の中で弄ぶ。

「再会したのはつい最近なんだが…その、当然だけどすげぇ怒られた。
ただ、同時にすげぇ悲しい思いさせたんだろうなってのも伝わってきてな。
これには流石にまいった。俺も堪えたよ」
「悪い奴だなぁ。女を泣かせるなんて」
「……咲崎、あんたが言うな」
 鋼介にジロリと睨まれ、ヘタレのおっさんは口を閉ざす。
「だから、悲しませたぶんを何とかして返さねぇとって思った。
多分これを聞いたらあいつはそんな必要ねぇってまた怒るんだろうがな……」
 ぴん、と湯呑みを爪ではじいて、レグは怒った顔をするソウェルを想像し、自分でも気づかないうちに微笑みを浮かべていた。
「ただ、返そうと考えたのはその時だけだ。今は返す以上に……あいつを幸せにしてぇって思ってる」
 静かだが決意の見える言葉に、頷く面々。
「……時間ってのは確かにでけぇ。あんたがしたことも大変なことなのかもしれねぇ。ただ、大事なのは『今』だってことだな。
あんたと同じ……とは言わねぇが、似たような男の馬鹿な経験と惚気だ」
 参考になればいいんだがな。と言ったところで、ソウェルがガラリと戸口を開けたため、レグは必要以上に大きな声を出して驚いていた。
「……どうしたの?」
「い、いや、聞いてねえなら、なんでもねえ。それよか、用事ってのは済んだのか?」
 変な汗が背を伝うのを感じながらも、レグは努めて冷静にソウェルへ訊いた。
 怪訝そうな顔をしつつ、まあねと曖昧に答えて、レグの隣へ座る。
「どんな話してたの?」
「幸せになりたいってさ」
「おいおっさん、余計なこと言うんじゃねぇよ。倒すぞ」
 ソウェルの質問に勝手に答えた咲崎へ、威圧するような声で言うレグ。それを手でまぁまぁと宥める鋼介。
 すると、ソウェルの目の前に座っている羽流矢が、どうだった、という意味合いを込めた瞳を向けてきたので、ソウェルは障子に隔てられた隣の部屋にそっと視線を向けた。
 羽流矢だけでなく鋼介もそちらの方をちらりと見て、理解したような顔をしたし、レグも特に動じたりはしない。
 鋼介はソウェルも来たことだし、あらかたの説明はレグに頼んで咲崎への話を続けようと言い、ローラのことを口にした。
「確かローラは、髪色を好きだと言ってくれたあんたの言葉が、心を重責から解放してくれたことを、嬉しそうに話してくれた」
「ッあーーー! 言ったわ! 俺多分普通に言った! そしたらお嬢さんが困った顔をしたから、やっちまったって思ったんだっ」
 人から指摘されるほど恥ずかしいものはなかったのだろう。咲崎は言葉にならない悲鳴を上げながら、頭を抱える。
「……本音を伝えた相手が予想しえない反応するのって、こっちが恥ずかしくなるよな」
 同じような経験があるのか、羞恥心に苛む咲崎を見ながら、レグは小さく唸って頬を掻いた。
「――話を続けたいんだが、いいだろうか」
 咳払いを一度して場の空気を整える鋼介は、一同を見渡すと小さく息を吸った。
「ローラからすれば、折角探していた人物と再開して色々と話が出来る……と思ったら、憎いだの仇だのと過去や償いの事ばかり。相手の事を見ていない」
 痛い所を突かれた咲崎は、ぬぬ、と小さい声を上げた。
「あんたがしてやれることは……過去の出来事をどうこう言うのはやめて、改めて……ローラ自身と向き合ってやることだろう」
 それを彼女も望んでいるのなら、尚更だと結んだ。
「過去って……そんなに必要じゃないのかねぇ。割り切れる奴もいるだろうけど、俺ァそんな人間ばっかりじゃないと思うんだよ」
 しかし、考えさせられる部分は大いにあったらしく、うんうん唸り始めた。

「私の話が役立つかどうかわからないけどさ……私、子供の頃に幼馴染が居たの。商家の跡継ぎってこともあって博識だったから憧れてたんだよね……」
 ぽつぽつ昔話をし始めたソウェルに、レグが危うく飲んでいた茶を噴きそうになって、慌てて口を押さえた。
「……ほう。それで」
 なんとなく誰のことかを察知した鋼介は、静かな相槌を入れてソウェルを促す。
「本当に急な話だった。ある日突然、その人が死んだって告げられて……能天気な私も流石に落ち込んだよ」
 レグは頭をかきながら、何も言えずに視線をさまよわせる。
「時間も必要だったけど少しずつどうにか立ち直って……こうして着物好きってことも高じて天儀へ渡ってきて、開拓者になって、それなりに依頼もこなしていったの」
 そしたらさ、と、ソウェルは小さく肩をすくめた。
「依頼で知り合った人の中に、死んだはずの幼馴染に似てる人がいたんだよ。最初は驚いたけど、死んでいるはずだから、まさか当人だとは思わないし、普通に友人としてつきあってたんだよね」
 その時を思い出したらしく、ふふっとソウェルは笑った。
「でも、幼馴染本人って分かった時は、怒りや悲しみ、喜び……色々な感情が出たよ。幼馴染も、私に危害が行くかもしれないから名乗れなかったって。私は砲術士として開拓者登録してるのに、ね?」
「おかしな幼馴染だなぁ」
「おっさん、マジで張っ倒すぞ」
 恥ずかしさと怒りに震えるレグが、咲崎にドスの聞いた声でそう告げた。
「あのさ……ちゃんと『今』のローラを見てあげてほしい。私の幼馴染が思ったように、咲崎も『相手はあのころのまま』って考えてるところがあったりするんじゃないかな。でも、それは違うと思う」
 人は変わる。自分は成長し、開拓者となってこうして戦う術を手に入れているのだ。
 ローラもそれは同じ。彼女も様々なことに耐え、戦って乗り越えて、開拓者にもなっている。自分の力でここまできたのだ。
「最初はお互いに感情の折り合いがつかないかもしれない。でも、お互いに歩み寄れるときが……きっと来るよ」
 ソウェルの言葉に、咲崎以外も考えさせられた者がいるようだ。

「……俺、この人に仕えられたら、って高望みして……いろいろあった結果、もう二度と顔向けできないと思った人が居る」
 羽流矢が急にそんな話をし始めたので、咲崎は目を丸くして彼の表情を見つめていた。
「何時でも顔を出せ、って言ってくれたけどな。
 その点では、あの人もローラさんと同じように、俺を許してくれているのかもしれない」
 眼を閉じれば、浮かんでくる面影。
 羽流矢は胸に湧いた感情を無理に押し留め……その結果生じた痛みに眉を寄せる。
「何時か――何年かかっても、もう一度訪ねてもいいかもしれない、と漸く最近思うようになったよ。
俺の事は時間が何とかしてくれる。だが、おっさんのは……そうじゃないだろ?」
と、羽流矢は真摯な眼差しを向けた。その視線に射すくめられる咲崎。
「何話していいか分からない、なんて……それ位でめげずに、今までの事でも何でもいいから話しに行けよ。気が変わらないうちに、な」
 咲崎は、4人の顔をしげしげと見つめる。
 真剣に彼らは自分の考えや経験をぶつけてくれて、咲崎を応援してくれたのだ。
「……そうだな。俺ァ、ちょっと過去ばっかり考えすぎてんだろうな。やっちまった事は消えるものじゃないけど、これからどうしたいか、って新たな気持ちは必要だよな」
「そうだけど、どういう気持ちで、どうしたいかはちゃんと考えた方がいい。
でもさ、他にも似たような仕事なんかはあったはずだ。
何故あのお嬢さんにだけ其処まで感じるのさ」
 羽流矢の指摘に、咲崎はそうだなあ、と暢気に告げた。
「引け目とかじゃねーかなあ。家族がみんな死んじまって、年頃のお嬢さん一人残しちまったから、危ない目に遭ってねーかなとか、気になって」
 ずずっとお茶を飲む咲崎に、ソウェルが柳眉を寄せる。
「……それだけ、なの?」
「んあ?」
「その……例えば好意、とか――」
 とんでもない、と顔の前で手を大仰に振る咲崎。
「俺なんかじゃ、あの人を幸せにできないぜ。もっといい男に見初められるさ」
 ソウェルは額に手を置き、障子の向こうのローラを思ってため息をついた。
 それは、ほかのメンバーも同じらしい。
「……よし、決めた。俺ァ少し頭を冷やして、お嬢さんと向き合う努力してみるわ。意見ありがとな!」
 湯呑みを置き、膝を打って立ち上がると片手を大きく皆へ掲げて、咲崎は足早に帰っていく。

 取り残された面々は、何と言っていいか分からないといった表情で、竹が描かれた爽やかな障子の向こう側を見つめる。

 心を落ち着けたソウェルが立ち上がり、そっと戸を開けた。

 そこには、悲しげな表情をしたローラが座っていて、目は若干涙で潤んでいる。
「……ローラ……あの」
「大丈夫です、心配いりません。ただ、相手を想う気持ちが、一つの形とは限らないって、分かって……いたん、ですけど……」
 ソウェルに笑いかけながらも、途中で言葉を詰まらせたローラ。
 だが、すぐに向こうの部屋をのぞき込みながら、みなさんもありがとうございます、と礼を述べた。
「咲崎さんも、みなさんの説得で考えを変えてくださったみたいです。わたしにはできなかったことだったので、驚きもありますけど……彼がいい方に変わることができたら、わたしはそれで嬉しいです」
 尚も心配そうな表情を浮かべる開拓者たちに本当ですよと言って、ローラはフードを目深にかぶる。
「明日、ジルベリアに戻ります。私もたくさん、お世話になりました……ありがとう」
 それでは、としずしず部屋を出ていくローラ。

「……おっさん、どこまでダメ男なんだよ……」
 ローラがいなくなり、羽流矢が毒づく。
「仕方あるまい。感情は個々にあるものだし、依頼者には満足してもらえた」
 そうは言っても鋼介ですら、渋い顔をしている。
 咲崎にはとても良い結果をもたらしたようだったが、
 開拓者の胸中には、手放しで喜べるものを残してはくれなかったようだった。