森のきのこ採取
マスター名:藤城 とーま
シナリオ形態: ショート
危険
難易度: 易しい
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2011/06/11 23:12



■オープニング本文

●春のジルベリア

 長い冬も漸く終りを告げ、緩やかながらジルベリアも過ごしやすい陽気となってきた。
 あたたかく柔らかな陽射しを受け、芽吹く草木。日々目に優しさを与える風景に人々の心にも和やかさを与える。
 微かでも緩やかな平和を――とも言っていられなかった。
 最近、妙な話題で賑わっているのである。

『山歩き中に山菜を取るのが春の流行!』という触れ込み。
 ジェレゾより東。とある山村では、不思議なキノコが取れているという。
 ジルベリアも山や谷など多いが、キノコは世界中どこでも生える。
 春先にキノコ‥‥? とあまりピンと来ない方はも多いだろう。
 だが、春先こそキノコが多く生える季節でもある。いわばキノコシーズン真っ只中。
 ジルベリアにも当然その恩恵はあるわけだ。

 前置きが長くなったが、そのキノコ。味の方は絶品であるという。

 ただ、困ったことを言えば――毒キノコなのかもしれない、というところだった。
 かもしれない、というのも、食べてから暫くすると気分に様々な変調があるという。
 妙に説教臭くなったり、陽気になったり、しんみりしてしまったり。そう、酒に酔ったような症状を一時的に引き起こすらしい。
 その他身体に影響も出ないため、山も好きだが噂のキノコがどんなものかと好奇心に駆られて山に分入る人が増えているというのだ。
 それを重く見た村長は、キノコ学者に相談を持ちかける。
「確かに気になるんですよね、そのキノコ。ボクも食べてみたいです」
「‥‥そ、そういうことではなくてのぅ。このままではなにか良からぬことがあるのではないかと‥‥」
 村長はケモノなどもいるわけだから安易に山へ入るというのは良くない、そして得体の知れぬキノコだが、乱獲のおそれもあることから環境保護も必要なのだと訴える。
 なにより、そのキノコのせいで各地から人がやってくることも考えられる。村が騒々しくなるのは好きではない。
 学者は学者で、やはりキノコの生態的に興味があるので研究したい。どういう状況下で発育するのかということや、村のためになるのだとすると美味であれば、商業的にも何かできるかもしれないと言う。

 双方の思惑もあるが、兎も角として――キノコである。
 実のところ、人々が持ち帰っているのは『どんなキノコなのか』というのが良くわかっていない状況なのだ。
 なので、これはと思うキノコを持ち帰って学者に見て研究してもらう必要がある。
 ただ―― 学者とはいえ何千何百というキノコを発見できているわけではないし、図鑑に記されているわけではない。
 そこで、長い時間かけて学者と村長は話し合う。
 出た結論というのは‥‥知識提供と安全確認のためにも、割と頑丈な開拓者に頼んでいくつか取ってきてもらい、調理してみようという事になった。

 勿論、試食して安全かどうかを確認するのは――開拓者であるようだが‥‥

 そして、開拓者ギルドに依頼が出されることになった。

『山に入って安全の確認・話題のキノコを採取して、試食してみる簡単なお仕事です! 未経験者可!』


■参加者一覧
詐欺マン(ia6851
23歳・男・シ
マテーリャ・オスキュラ(ib0070
16歳・男・魔
マーリカ・メリ(ib3099
23歳・女・魔
禾室(ib3232
13歳・女・シ
リンスガルト・ギーベリ(ib5184
10歳・女・泰
オルカ・スパイホップ(ib5783
15歳・女・泰
ピアナ・スパイト(ib6608
14歳・女・砂
フィロ=ソフィ(ib6892
24歳・男・吟


■リプレイ本文

●きのこ狩りinジルベリア!

「民の為に身を挺して毒見役を務めるは、騎士として当然の事!!」
 この大義、仰せつかる! ――とリンスガルト・ギーベリ(ib5184)が息巻いている後ろでは、
「うまいキノコがあると聞いて!」
「うん。たくさん探して食べるぞー?」
 オルカ・スパイホップ(ib5783)とピアナ・スパイト(ib6608)が『うまいキノコ』の話で盛り上がっていた。
 特にピアナはジルベリア自体が珍しいらしく、キノコ以外の興味も多々あるようだ。彼方此方を指しては『何?』とパーティーメンバーに聞いていた。
 そして近くでは(自称ではあるが)『愛と正義と真実の使者』詐欺マン(ia6851)が神妙な顔をしている。
「時としてその名を変えねばならぬ時もある‥‥そう、キノコ狩りの男、詐欺マン!!」
 なのでおじゃる、と力強く言い放った言葉は、木霊として『‥‥おじゃる‥‥』『‥‥じゃる‥‥』と森に響く。
 どうやら肩書きが変わることを嘆いたようだが、この依頼が終われば元に戻していただいて良いので頑張ってほしい。

 キノコ取りに来たものの、急な段差を緩和する目的で作られたであろう補強された土階段は――木材が脆くなって危なっかしい部位が幾つかある。
「あ、ここもグラついているな‥‥よし、これで」
 フィロ=ソフィ(ib6892)が抜けかかっている杭を発見し、マーリカ・メリ(ib3099)の手助けを得ながら力を入れて土へ押し込んだ。
「む? 割と数が多いのぅ‥‥」
 ロープを所持していたものと交換して手直しを行ったが、開拓者の手のみでは修繕しきれそうにないとリンスガルトは表情を曇らせた。
 危険な箇所は出来る限り修繕し報告するとして、どうするかは村長に委ねておこう。
「想像していたよりも多い入山なのか‥‥?」
 だとすれば、村長の懸念は現実になるかもしれないと思いながら見たことのない植物の様子などに目を留め、観察するフィロ。
「しかし、斯様な場所に例のキノコがあるのでおじゃるか? 何処を探せば良いものか‥‥」
 詐欺マンがふむ、と樹の根元などを探しながら漏らせば、マテーリャ・オスキュラ(ib0070)が注意すべき事として上げてくれた。
「基本的にはキノコにはそれぞれ生え方に特徴がありますから、その辺も含めて採取時に記録しておくのがいいでしょうね。
 樹の幹や倒木、それに地面。地面に生えてる場合は更にその根元を掘ってみるといいかもしれません」
 素晴らしい模範解答だ。
「ふむ。ではそのセオリーに従い、捜索するのじゃ!」
 聞きながら、禾室(ib3232)は日陰などジメジメしているあたりを探す。
 山野草などを愛でるのもよし。しかし、目的はキノコだー! と言っていたオルカはすぅっと目を細めて第六感(的なアレ)を高める。
「野生のカンを頼りに‥‥! これ!」
 と、生えていたキノコへ手を伸ばす‥‥!!
 掴んだキノコはかさの部分が穴だらけで、開いた穴部は形容しがたい不思議な色をしている。
「‥‥これ? ま、いいか‥‥とったど〜!」
 先ほどとはニュアンスが違う同じ言葉を口に出し、妙に長いキノコも採ってから籠に収めるオルカ。
「やっぱり綺麗なもののほうがいいなぁー‥‥」
 と言いながらも、採取する前に場所や状態の記載を行なっているマーリカの発言には、幻キノコがどうだという根拠はない。
「小さくって、つぶつぶしてるとかわいいですね♪」
 状態の記載が終わると、好みの形や色のキノコを抜いていく。ついでに周辺の地味キノコなども、おまけとばかりにポイポイっと抜いては籠に。
 だが、ピアナは山へ入る前に幻のキノコを見たらしい人から話を訊いてきたようだ。
「なんか、意外に地味で、亀の甲羅っぽくひび割れてることがあるとか」
 と、その情報を元に探しているようだが‥‥待って欲しい。『見た』のと『食べた』のは違う気がする。
 鼻歌でも唄い出しそうな機嫌の良さで、ピアナは該当する特徴を持ったキノコを籠に入れた。

「ああ、皆さん‥‥キノコが群生している場合は根こそぎ採らず、半分くらいは残しておくようにお願いします」
 マテーリャの指摘は尤もで、根こそぎ採ってしまうと翌年からはその場所にキノコが生えてこないのだ。マナー云々よりも、自然環境に配慮したことなのである。
「のをっ!? 見よ、崖の上にもキノコらしきものが生えているではないか!!」
 禾室が指差す断崖に、ペラペラしたキノコのようなコケのようなものがくっつくように生えている。
 三角跳も使用し、身軽にその場所までたどり着いた禾室。吹けば飛びそうなキノコを注意深くペリペリ剥がし採り、幾つか持って皆のところへ戻ってくる。
「皆で採取すると、色々なものがあって楽しいですね〜」
 いっぱいになった籠をのぞき込みながらオルカが嬉しそうに微笑む。
 毒々しい色、黒とか茶色の地味なもの、虫食いが激しいものなど、多様。
「‥‥こうやってちょっと採っただけでも相当な種類だね〜美味しそっ‥‥」
 既に気持ちは調理のほうに行ったのだろう。ピアナは顔をほころばせ、舌なめずりしそうな様子だ。
「フフ、それじゃあ‥‥街に戻って始めると致しましょうか」
 幼少より培ってきた知識と経験上、安全であると分かっているものを優先して調達していたフィロ。
 皆に柔らかな笑みを向け、早速村に戻ろうと籠を手に取った。


●いざ試食!

「おお‥‥皆様、ご苦労様です。準備は出来ていますよ」
 キノコなどを抱えて街へ戻ってくると、キノコ学者は開拓者たちの帰還を心待ちにしていたようだ。
 人懐こい笑みを浮かべて‥‥いるのだが、根暗そうなので爽やかさとは無縁の笑みに映ることと、目は開拓者たちの持っているキノコへと向けられている。
「まずは、食べても大丈夫なものから選別しましょうかね。山道を歩いてお腹も空いてますよね?」
 早速調理してみようというのだろう。目の前に並べられたキノコを図鑑を手元に置きながらテキパキと仕分ける。
「そうそう、珍しいものも一杯だったけど、山の中って結構冷えるんだよね〜」
 と、ピアナが腕をさする素振りを見せる。
「それでは、わしが主食の準備をしようかの?」
 禾室は所持品の中から幾つかの食料品を取り出すと、マーリカが軽く泥などを洗い落としたキノコなどを食べやすく切って鍋の中に放り込む。
「お湯だけは学者さんが既に沸かしてくれていたので、素茹でキノコから楽しもうと思いますよー!」
 ぐつぐつと煮えたぎる鍋の中にぽちゃりと落としてみただけの、シンプルなキノコ料理をマーリカは提案。
「中毒症状が出る可能性もありますから、よく熱を通してくださいね〜?」
 いくら効能を調査する機会であるとはいえ出来れば安全に行いたい。学者がそう指摘すると、素直な了承が帰ってくる。
 茹でキノコに使われたのは、カサがやや開いた茶色いキノコ。それを適当に縦に裂き、口にするマーリカ。
 こりこりとした食感。味は‥‥あまり特徴がない。
「味付け次第では幾らでも楽しめそうですね〜味は普通、っと‥‥」
 キノコの味に普通とかあるのか分からないが、食の安全を知るにはこういう地道な努力も必要なのだ。‥‥多分。
「出身が違うと、料理の方法も違っていますね〜うん、すっごく美味しい!」
「うむ。これはなかなかに美味でおじゃるな。懐かしい味でおじゃる」
 禾室の作ったキノコ料理に舌鼓を打っているオルカと詐欺マン。
 そうして次々に選別し、調理したものを戴く中、学者は開拓者のメモに幾度も賞賛の声を上げた。なんといっても、知らなかった種類も数点書いてあったのだ。
「ジルベリアにキノコ学者は少ないので、これは貴重な資料ですよ」
 キノコの選別を終わらせて、早くそのメモを見たいのだろうが‥‥人命もかかっている。猛毒キノコの選別から、『効果があるのかよく分からない』というグレーゾーンに漸くさしかかった。
「‥‥臭い、普通。傘色、派手‥‥」
 傘が派手なものって皆食べたがらないので分かりにくいんですよね、と恐ろしいことを言いながら、学者は『食べられるかもしれませんが――‥‥中毒があるかも?』という怖い判断で開拓者の顔を伺う。
 そんなことを言えば誰も食べたがらないのは明白だが、猛者がひとり居た。
「モノは試しで、調理してみよう!」
 学者の言葉を聞き終わらぬうちに、ピアナが仕分けたグレーゾーンキノコを幾つか掴んで串に刺すと火にかける。
「ふふ‥‥どうなるんでしょうね‥‥?」
 先程から皆の様子を観察しているマテーリャが、意味ありげな笑いを浮かべつつメモをとっていた。

 焼きあがったキノコを垂涎しつつ見つめるリンスガルト。先程から旨いと評判のものは既に腹中である。
 というか、だいたい旨かった――ので、彼女のガードは少し緩んだ様子。
「わ、妾が身を持って確かめるゆえ、説明はいいのじゃ! 早う寄越すのじゃ!」
 学者の説明を制し、横から奪うとパクッ! と白い斑点のある薄灰色のキノコを一気に頬張る。わかり易い表現では、本占地茸に白い斑点が付いていると思っていただければいい。
 何度か咀嚼した後、刮目!!
「う‥‥!?」
――なんだ、毒があったのか!? 思わず顔が強張る学者。見守る仲間たち。
 だが、リンスガルトの口から飛び出した言葉は――悲鳴や苦痛のものではなかった。
「う、美味い! うみゃいのじゃあああ!」
 簡素な調味料で味付けされただけなのに、素材自体の味がふわっと口の中に広がる‥‥などと、美食家のように解説をし始める。
 その解説に、心動かされるオルカ。もきゅっ、と口に運び‥‥一緒に極上の笑みを向ける。
「これがその『幻キノコ』でしょうか? ああ、幸いまだいくつか残っていますね」
「ほう。噂通り美味なキノコゆえ、他の調理法も調べて試食するでおじゃる」
 詐欺マンは幻キノコを頬張りながらほのぼのしたことを言うが、皆の様子がおかしく無いかを探っているようだ。
「酒に酔ったような効果があるとか‥‥酒を飲まずして気持ちよく酔えるのならば、嬉しいことではあるけれどね」
 それだけならば良いのだけど、というフィロの予言じみた言葉。
 そう、暫くあれも旨いこれも美味しいと和んだ雰囲気で試食を続ける開拓者達。時間が経つにつれ彼らの様子が――なんだかおかしくなってきていた。
「魔術師としてはやっぱりきのこの毒には精通していなければなりません! ‥‥ってこの依頼でアツく思いました。なので勉強です。実技です」
 そーですよねー、マテーリャさんもそう思いましたよね!? と、マーリカはキノコ片手にマテーリャへ詰め寄る。
「ええ。実に僕向けの依頼だと思いまして‥‥研究者としての血が滾りますよ」
「はいっ! アヤカシと正面切って戦う仕事ばかりじゃなく、ひっそりといなくなって頂く方法も考えると――」
 そう肯定したのにもかかわらず、ほんのり顔が上気しているマーリカの熱い持論は延々続く。
「成程、これが件の酒酔いに似た症状を呈するキノコですか‥‥どれ、折角ですので僕も試しに‥‥」
 今まで傍観していたマテーリャも漸くそのキノコを口にする。味のほうも申し分ないものだったらしく、感嘆の声を上げて力強く頷くとメモに記載していた。
「なんだかホワホワしてきたのぅ‥‥」
 ほぅ、と切ない溜息を吐いた禾室。だが、急に彼女は料理を作らせろと叫び、キノコを大雑把につかむと調理開始――だが、避けてあった毒キノコも入ったような‥‥気がしたが、大丈夫だろうか。
「寂しいと死んじゃうけど、今はシャチになりたい〜!」
 シャチ好きのウサギさんは耳をぴこぴこと揺らしながらお尻も振ってシャチになりたいと悶える。
 その耳を見たピアナは――ブバッと味噌汁を噴き出して笑い始めたではないか!!
「うははははは、ウサギの耳がみょーんと、うはははははは!!」
 妙にツボった様子でお腹を抱えて笑い転げている。まあ、そういう年齢にしても笑いすぎではないだろうか‥‥?
「あ、これ、ワライダケ食べちゃったみたいですね」
 学者がバター焼きの具材を指しながらマテーリャに伝える。
「なるほど、これはワライダケの一種ですか‥‥いや、知識というのは素晴らしい」
 少し呂律が怪しくなってきたマテーリャ。キノコの他博物学についての知識を、学者に向かって語り始める。
 しかもこの二人、割と話が弾んでいるようだ。

「ふふ、皆楽しそうなので‥‥そんな顔を見ていると、私も楽しくなってきました」
 フィロもニコニコしながら空いた皿を片付けたり、料理をモリモリ作る禾室の手伝いにと動いている。
「ほほ。けしうはあらず、におじゃる‥‥!?」
 割と楽しく食べたりしていた詐欺マンに、異変が起きた。手が痺れ、持っていた箸を取り落とす。
 心臓の鼓動も早くなっているようだが、ただの痺れ茸なら――いや、なんか目の前が暗くなる。
(そう、まろは検証のため‥‥我慢でおじゃる)
 しかし、これはそのレベルを越えている気がしないでもない。
 まだこれからだというのに‥‥流石に死毒の出番かと思いきや――なんということか。スキル所持していないぞ! 詐欺マン!
「アハハハ、詐欺マンさんがへばっちゃって‥‥面白いっ」
 ピアナの笑いは詐欺マンに向けられている。まろは面白くもないのでおじゃる!! と言えず、ぐったりしていく詐欺マン。だが安心して欲しい。学者いわく、そのキノコは痺れて眠くなるだけだそうだ。
 マーリカの『向いてる向いてないじゃなくて、いろんな可能性を――』と未だ振るわれる弁舌やピアナの笑い声を聞きながら意識を手放す詐欺マン。
「ぐすっ‥‥ごめんなさい‥‥もう粗相した下穿きをベッドの下に隠すのは止めるのじゃ‥‥使用人を鞭で打ったりしないのじゃ‥‥」
 罪悪感に苛まれたリンスガルトは泣きながらフィロに罪を告白しており、聞き上手らしいフィロも頷いている。

 急に笑い出したり、泣き出したり。既に収集つかない状態になりつつある学者の家だが――その日は夜遅くまでこのような騒ぎとなったが、
 翌日には綺麗すっきりキノコの副作用も消えたようだ。

 山の安全やキノコの生体についての情報も多数更新でき、何より幾つかの毒キノコや幻とうたわれたキノコの情報や形・効能も入手できたのである。
 学者は非常に喜び、皆に頭を幾度も下げてはまたよろしくお願いしますと丁寧に礼を述べる。

――しかし、毒は抜けても記憶は抜けていない。恥ずかしい告白をしてしまったリンスガルトは、
「よいか、妾はもう粗相などしておらぬ! 半年も前に治ったのじゃ!」
 と、誤解を解いて回ったとか――
「あ、あれ? みんな〜? なんでこっち見てくれないの〜?? ‥‥おーい? ねえってばー!」
 その逆、記憶がスッポ抜けているオルカは、皆が微妙に自分と目線を合わせないことに疑問を抱いているようだった。