【AP】快楽の世界
マスター名:藤城 とーま
シナリオ形態: ショート
危険 :相棒
難易度: 普通
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2012/04/18 01:57



■オープニング本文

※このシナリオはエイプリルフール・シナリオです。オープニングは架空のものであり、ゲームの世界観に一切影響を与えません。

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 影絵のようなモノクロの世界に浮かぶ影ふたつ。
 ふたりは仲睦まじくダンスを踊っている。
 クルクルクルクル――――‥‥

『貴方が見る夢は甘くて美味しいのかしら? もっともっと欲望をちょうだい。甘くて蕩けそうな砂糖菓子のようなあっま〜い夢を』

 少女のような愛らしい声が、星型にくり抜いた夜空に響く。

『きみの望みはなんでも僕が叶えてあげるよ。だから言ってごらん? 悪夢なんて見やしないよ。だってきみがこれから見る夢はぜんぶきみの望んだものばかりなのだから』

 濡れたテノールの声が、星型にくり抜いた夜空に響く。

『さあ、曝け出して』

『貴方の欲望が』
『きみの夢が』

 愛らしい声とテノールが淫靡なユニゾンを奏でる。

 僕の、
 あたしの、

 お腹を満たしてくれるのだから。

―― 一体、ここはどこだろう。
 気がつけば、男は白い空間に居た。そこには何もなく、自分が座っている床にあたるであろう部分は、ふかふかしていて心地良い。
 立ち上がろうとすれば、足は床に沈んで歩きづらくて、ズブズブと沈む。
 ぬかるみに足を取られたように重くなるのだが、
 力加減が効かない分余計にバランスが取りづらい。
 両足がもつれて、顔面から床に激突してしまうかと思いきや――横合いから何者かがやって来て、むにゅりと顔になんとも柔らかいものが当たる。
「うふふ‥‥ようこそ、お兄さん? 貴方の隠した心のト・ビ・ラ‥‥開いてみせて?」
 蜂蜜色のくすみのない金の髪。肌はシミひとつなく、大きく張りだした尻と胸は少し揺れるだけで気を引いた。
 背には蝙蝠の翼のような黒く大きな羽がある‥‥
 アヤカシだ、と男は身構えるが、女から敵意は感じられない。
 それどころか、腰まである長い髪をかき上げて、
 胸の谷間から自分を見上げる男の顔をにこやかに見つめていた。
「あたしは夢魔なの。夢の世界のことなら何でもできるのよ。
 ねえ、あなたにもなにか願望があるんでしょう? どんなものなの? 叶えてあげても‥‥いいわ」
「ぼ、ボク‥‥は‥‥好きな子がいて‥‥その子はボクが嫌いなんだけど、
 逆にこっちがウザいくらいその子に好かれたい‥‥!」
 しどろもどろに答えるくせに、胸からは退こうとしない男。
 それでも女は愛おしそうにその頬を撫でて、そう、と笑った。
「その子との夢、見せてあげる‥‥結末はアナタ次第の、ね?」
 そうして額にキスをすると、男は脱力し、夢の世界に旅立った男の身体をそっと床に寝かせる。
 男の顔は非常に安らかで、すぅすぅと寝息を立てていた。

「いい夢を見せてあげるから――あたしも、愉しませてもらうわね?」
 そうして、男の顔に自身の顔を近づけると、すぅ、と寝息を吸う。
 キラキラと銀の粒子が男の唇から流れて、女の唇に吸い込まれた。
「‥‥ああ、美味しい‥‥でも、まだ足りないわ‥‥」
 自分の願望に近ければ近い夢であるほど、純粋な結晶が彼女を満たす。
 しかし、満足行く量は得られていない。

 誰かがここへとやってきた。女は立ち上がり、違う男の前にやってくると手を差し伸べた。
 突然ボンテージ姿のナイスバディがやってきたため、男も驚いたのだが――女は気にしない。
「ねえ、あなたもなにかが足りないんでしょう? あたしを満たして。キモチよくなりましょう‥‥?」
 秘密は誰にも喋らないわ、と甘く囁き、男の願望を聞き出すのだった‥‥


■参加者一覧
海月弥生(ia5351
27歳・女・弓
猫宮・千佳(ib0045
15歳・女・魔
八条 司(ib3124
14歳・男・泰
御調 昴(ib5479
16歳・男・砂
郭 雪華(ib5506
20歳・女・砲
フランヴェル・ギーベリ(ib5897
20歳・女・サ
ラグナ・グラウシード(ib8459
19歳・男・騎
アナ・ダールストレーム(ib8823
35歳・女・志


■リプレイ本文

「さて、誰の願望から覗いちゃおうかしら?」
 夢魔は八条 司(ib3124)の上に跨がると額同士をこつんと合わせた。

 広い室内を照らすのはランプの薄暗い光だけ。
 陶器の香立てから立ちのぼる花のような香りは、暗い室内に満たされている。
 彼の視界の先には女性ばかり。見知った顔も中にはあった。
「なんでもいいから願望を、って言うから‥‥! 僕だって男なんですもん!」
 誰に向かってか、恥ずかしそうに弁解する司の側に、女性がやってきて手の甲で司の頬を撫で上げた。
「あなたは‥‥隣の家のお姉さん!」
 知らない人よりも知っている人がいいという彼の願望は、身近な存在を見せてくれたようだ。
 踊るように腰を妖しくくねらせ、するりと上着を脱いだ。思わず『おおっ‥‥』と声を上げた司の左から、手が彼の首に絡みつく。
「ひぃっ、こんな事期待してごめんなさ‥‥ああっ、知り合いの若い人妻さんっ!」
 ビビりまくる司に、妖艶な笑みを浮かべた人妻はふぅと耳に息を吹きかける。
「うぁ、耳は弱くてっ‥‥でもなんか嬉しい!」
 そんな彼に、夢魔は後ろからやってきて耳打ちした。
「ここはアナタの好きになさい‥‥? それが許されるのよ‥‥」
 ぞくりとする声に導かれるように、司はお姉さんの上着をたくしあげると胸の険しい渓谷に飛びつく!!
 太ももをまさぐりつつ、お姉さんの上に覆いかぶさった。しかし、彼の周りにはまた違う美女が群がってくる。
「まって、順番だから‥‥ね?」
 幸せそうな顔で、司は女性たちに声をかけた‥‥

 夢魔はその様子に笑みを見せ、銀の雫を受け取ると――美味しい――と口元を拭う。

 次に歩み寄ったのは、ラグナ・グラウシード(ib8459)の夢だった。
「アナタ、何か望みはないの?」
「私の、望み‥‥?」
「そうよ」
 ぼうっとしていた彼は口を開く。
「私は‥‥私を愛してくれる、ただ一人の女性が欲しい!」
 その純粋で可愛らしい願いに、夢魔はクスッと笑って『お安い御用よ。どんな子?』と、迂闊にも尋ねてしまったのがいけなかった。
「優しくて、愛らしくて、私のことだけを見ていてくれて!」
 ぐっと拳を握って力説するラグナ。夢魔もうんうんと優しい表情で聞いている。
「で、料理がうまくて、私が何か愚かなことをしても『うふふ、ダメねぇ』みたいな感じで優しく諭してくれて!」
「ちょっ‥‥もう少し簡潔に言ってよ」
「すらりとしていて、強く抱きしめたら折れてしまいそうな柳腰! できれば胸は大きい方がいい! しかし大きすぎは嫌だっ!」
 随分好みに煩いが、ラグナに彼女はいた事など無い。居ない歴イコール年齢だ。
「ねえ、あたしの話聞いてる?!」
「ぎゅっと握れば手のひらからこぼれるくらいのしっかりした、それでいて清楚な感じの!」
――あーもー、めんどいなあ! 
 と、逆切れしたい気持ちを懸命に押し留め、また後で来よう、未だ説明途中であるラグナを置いて立ち去った。

 次に、幸せそうな寝顔の猫宮・千佳(ib0045)の夢を拝見。

「わーい、綺麗なお姉ちゃん達一杯にゃ♪ よろしくにゃ〜!」
 自己紹介しつつ、親愛の情と抱き心地チェックを一人一人に行なっていく千佳。ふかふか感を探るのに、胸に顔を埋めるのも重要だ。
「だきゅだきゅにゃ♪ うに、柔らかくて気持ちいいにゃ〜♪」
 そうしてほお擦り。女の子であることを最大限に生かした羨ましい処遇である。
「今日のお膝はお姉ちゃんに決めたにゃ♪」
 今抱きついた銀髪女性を気に入った千佳は、彼女の膝の上へちょこんと座る。その両脇に、千佳ご指名の女性を座らせた。
 次々運ばれる飲み物や食べ物。
「にゃ、あーん、して食べるにゃ〜♪」
 お姉ちゃんたちよろしくにゃ、と大きく口を開けた千佳の可愛らしい仕草に、お姉さんは頭を撫でながらプリンを口に入れてあげた。
「飲み物も欲しいにゃ〜」
 口についた生クリームを舐めてもらい、千佳はイチゴミルクを要求。もう一人の女性が口移しで飲ませる。
「んふ〜‥‥格別の美味しさにゃ♪」
 もふっ、とお姉さんの胸に飛び込むと、千佳の服は脱がされていく。
「何するんだにゃ?」
 背中にお姉さんの胸の感触を味わいながら仰向けに寝転がされ、胸に透明な液体がかけられる。
 冷たさに身を震わせ、不安そうな表情を浮かべた。
 胸を大きくするためのマッサージと言われ、上機嫌になった千佳は一転『おっきくしてにゃっ!』と顔を輝かせた。
 艶かしい手の動きと人肌の温もりに包まれ、心身ともに気持ちよくなりながら‥‥夢のなかでもうっとり気分で眠ってしまった。


 郭 雪華(ib5506)の夢には、友人が出ていたようだ。
 しかし、その雰囲気は――仲睦まじいとは言いがたいものだった。
 クロエの服はいつものではなく、女性の色気を強調する、詰襟の泰国製ドレス。スリットが深いタイプのものだ。臍も丸出しで、服を着替えさせられたことに気づいたクロエは太ももをすりあわせつつ、キッと雪華を咎めるような顔をした。
「‥‥さてはあの茶に一服盛ったな!? 何をしようというのだ!」
「おや‥‥仲良く楽しもうとしてるだけなのに、睨むなんてひどいなぁ、クロエ殿‥‥」
 ひどいのはどちらだ、と眉を吊り上げていたクロエを、己の唇で塞いで黙らせた雪華。ちゅ、と唇を吸って、ゆっくり離す。
 頭の芯が痺れるような感覚がクロエを包む。
 艶かしく見える雪華は、いつもより妖しくクロエを見つめる。
「ああ‥‥やっぱり僕の目には狂いは無かったようだ‥‥。とても似合っているよ、クロエ殿‥‥」
 熱い吐息をクロエの耳に吹きかけ、羞恥で赤くなった首筋に舌を這わせた。日頃の雪華からは想像もできない。
「は、破廉恥だぞ、セツカぁ‥‥」
 涙声で訴えるクロエに、痛いことはしないから大丈夫だと言い聞かせ――ベッドの脇に置いたゴスロリのフリルドレスに手をかけた。
「次はこれに着替えてみよう‥‥可愛い僕のお人形さん‥‥」
「セ、セツカが、一緒に着替えるなら‥‥」
「ううん‥‥お人形さんのクロエ殿には、言葉は要らないね‥‥」
 再び優しく口を塞ぐと、クロエの胸に手をかけた。

「‥‥プッハァ〜! うんまあぁいっ! いいわよっ、楽しくなってきたじゃないっ!」
 エールジョッキをあおった後のように口元を腕でグイッと拭い、勢いづいた夢魔は寝返りをうったアナ・ダールストレーム(ib8823)へ馬乗りになる。

 豪奢なドレスにその身を包み、宮殿の中庭でアナはのんびりと紅茶を飲んでいた。
 視線の先には一糸纏わぬ少女たちの沐浴姿。ここは女王アナの許可無くては誰も入れない。つまり、彼女たちは許された者である。
「今日連れてきた少女たちは、皆可愛いわね‥‥」
 彼女たちは無理やり連行されたわけではない。弱きを助け、慈悲深く。
 貴族の鑑とされているアナは、庶民にも慕われている。それゆえ少女たちは自らの意思で、敬愛するアナ女王についてきたのだ。
 アナはドレスに手をかけてそれを脱ぎ去り、愛用の鞭を手にして少女たちの元へと近づいていく。
「誰から可愛がってもらいたいのかしら?」
 そう尋ねただけなのに、少女たちは黄色い声を上げながら、アナの褐色の肌へと群がる。
 腰に抱きつき、腕に胸を押し付け、甘えた声でアナを呼ぶ。
「そうね‥‥皆に愉しませてもらおうかしら?」
 木陰に連れていくと、鞭で手首を軽く縛って、少女の肌に触れていく。その横では、他の少女たちがアナの肌に唇を寄せて、催促している。
「うふふ、可愛いわねあなた達‥‥」
 しなだれかかる娘にキスをして、アナはそのまま鎖骨を舐め上げた。まさぐる手は、だんだん内側に流れていく――‥‥

「‥‥うん、これも中々美味しいわぁ♪」
 ぺろりと唇を舐め、夢魔は膨れてきた腹をさする。
「もうちょい、イケそうねっ♪」
 
 フランヴェル・ギーベリ(ib5897)の夢は、彼女の姪が登場していた。
 しかし、愛するがあまり強引にでも自分のものにせんとした行動は、妖しくもあり酷いものであった。
 地下室では、紅玉のような双眸と、白皙の肌が印象的である幼い少女が鎖で両手を戒められ、天井から吊るされていた。少女が身に纏うのはショーツのみ
 満足そうな顔のフランが、足元の道具(それが何かは本人から聞くといい)を手にして、観念しろと姪の顔に押し当てる。しかし、少女は尊大な口調で罵り、挙句唾を吐きかけて解放せよと命じる。
「‥‥いいだろう。ボクのモノになるまで、時間をかけなくちゃね‥‥!」
 鞭を振り上げ、少女の身体へ赤い筋を無数に刻んでいく。
 しかし、それはあっけなく終わりを告げた。
「このドたわけが! 妾はたとえ妄想の中だろうと貴様の思い通りになぞならぬわ!」
 世紀末覇者よろしく鎖を引き千切り、少女は『然るべき報い』を与えるためフランの首めがけて飛びかかる。
 床に引き倒し、片足だけを曲げて締め上げていく。ああ、これね、首四の地固めっていうのよ。
「ぐええぃ‥‥ああっ、でも太腿の感・触・が♪ 首の後ろに当たってるこれって、お‥‥ハァ、ハァ‥‥」
 別の意味で息遣いが荒くなるフラン。しかし姪も容赦無い。落ちている鼻フックをフランの鼻にかけ、引っ張ったではないか!
「ふははは! 豚が喋るでない!」
「ぶひっ! ぶひいッ!」
「くくっ、よう似合うておるわ! 豚ごときが我を貶めようなどとは十万年早い! さあ、啼くが良い!」
「ぶぅひいぃぃぃーんッッ!!」
 フランの歓喜の嘶きは、地下室中に反響した。

「や、あれはウマでしょ‥‥」
 そう言いながら腹をさする夢魔。沢山の願望を見て、叶えてやった。
 銀の雫は良質かつ大量採れ、腹を満たしてくれたのだ。
 しかし、まだ食べたい。この上質な匂いは、彼女を誘い続けている。
「後一口分くらい、いいわよね‥‥?」
 そうして、ふらりと立ち寄った夢は――

「――あ!! 清楚な感じでも、『その時』はとても妖艶で、私を虜にしてしまうような‥‥
はっ、激しい感じでも私は一向に構わんぞ? というより歓迎だ!」

――まだ、やってやがった。

 げんなりする夢魔をよそに、非モテは頬を紅潮させてまくしたてている。
「一緒に海に行ったりしたい‥‥ジルベリアの水着姿が似合うのだ。
それで私が『似合うじゃないか?』と言ったら、『やん!やだ、もうっ!』とか言って怒ったり…」
「だーっ、もう、うっさい! 欲望たっぷりのアンタにはこれで十分よ!」
 どんっ、と前に出したのは――かなり豊満な女性だった!
「うお‥‥お?」
 ただし、全体的にメガ盛り。呼吸音は牛か馬のようである。
「待ってくれ! 約束と違うぞ!」
「付き合ってらんないわよ!」
 しなだれかかるメガ盛りを必死に押しとどめ、ラグナは抗議の声を上げるが、夢魔は聞き入れない。
 圧迫祭り中のラグナを放置して、腹の具合を確かめる。

「もうお腹いっぱいで、食べられないのに‥‥! なんでなの?!」
 彼女の意志に反して雫は体内に吸収されていく。


「んもぉ〜、極上は美味しいけど、こんなに飲めないわよぅ〜」
 海月弥生(ia5351)は、ほぼ下着‥‥いや、それ以下の面積しか隠れていない扇情的な衣装で、何故か酒を浴びるように飲んでいる。目の前にはカラスミやら、筍の酢味噌和えまでずらりと並んでおり、酒好きにはたまらん品揃えだ
 女性たちから大盃にどんどん酒を注がれ、ごっごっ、と喉を鳴らして飲み干しては大喝采を受けている。
「もう季節問わず、山海の珍味が揃ってて、味も良くって‥‥うふ、うふふっ、笑っちゃうくらい、楽しいわぁ〜」
 そんな彼女に、女性たちはスキンシップという名目であれこれといたずらし始める。
「え、お酒がこぼれてる? ‥‥ひゃっ、撫で回さないでっ‥‥!」
 太もも、胸の谷間などを拭いてくれているのだが、手つきが変だ。
「そこは、ちがっ‥‥あんっ!」
 そことはどこだ。室内が暗くてよく見えない。
「も、もう‥‥何か、変だわ‥‥んッ‥‥」
 分かっていることは、弥生の口には太めに切った野菜スティックが押し付けられていたり、足の間には謎の海苔が張り付いていて、太ももやヘソ、腋も舐められているようだ。
 くすぐったいようだが、弥生の妙に官能的な声が上がっている。

――もう少しよく見ようと近づいたところで、

 悲しいお知らせだが場面がいきなり切り替わった。

「これは夢魔の被害がこれ以上増えないために、必要なだけなんです!
やましい気持ちなんてないです、えぇ、もうこれっぽっちも!」
 いきなり御調 昴(ib5479)は断固否定していた。
 しかし心寂しい昴の前には女性の姿。ちょっと肖像権の問題で、昴が目下修正中だ。
 そうして出てきたお姉さんは、銀の長髪をひとつにまとめ、ぱっちりした赤い瞳。黒く染めた巫女服に、身長も昴より頭一つ分程度高い。
「心が‥‥痛むのですか?」
 想い人にどこか似ていた女性は、心配そうに昴へ声を掛ける。喋り方は違うようだ。
「私で癒せることがあれば仰ってください」
 と、女性は昴の手を掴んで豊満な胸に押し当てている。
「あ゛ぁ、手を胸になんて!? 僕は、ただ‥‥穏やかな時間を過ごせれば、それでいいんですよぉ!?」
 昴の心と体は揺れ、黒い昴と白い昴が飛び出してきた。
『本人じゃないし、夢だし。やっちゃえ、な?』
「何言ってるんですか! 夢だからこそ、穢しちゃ駄目なんですよぅ!?」
 白昴が頑に拒否し、黒昴を糾弾する。しかし、黒昴は痛いところを付いて来る。
『いい子ぶってるから進展しないんだろ? 情けないな、うじうじしてさ』
「う、じうじ‥‥違います! 慎みですっ」
 白黒の昴が暴れると、本物の昴からうめき声が上がる
『だったらなんで最初からこんな似通った相手にしたのさ』
 黒昴が指すのは、この慈愛の表情を浮かべる女性だ。
「それは、その‥‥とにかく駄目ですっ!」
 必死に清くあろうとする白昴だったが『恋人だと思って、甘えていいんですよ‥‥』という女性の前に、儚く姿を消していった。
 女性の体に手を回し、ぎゅぅと抱き寄せた。なんだか女性っていい匂いがする。
「葛藤も欲求も、全て包み込んで甘えさせてくれるって‥‥いいよね‥‥」
「頑張っているご褒美ですよね」
 そうだね、と、心地よさに包まれながら――昴は女性の胸に手を伸ばす。

 それは覗き見ていた夢魔の胸を揉みしだく形にリンクしているのだが、
 夢魔は背をのけぞらせて、満たされ過ぎて、消滅の時を迎えているのだ
「ダメ、あたしもう‥‥ああ〜ん!」
 どこか官能的な響きの断末魔を残し、夢魔は満ち足りた顔で消滅した。
 目が覚めてから、彼らは己の真実の姿に頭を抱えたり、もっと味わいたかったと残念がったり、ニヤニヤ喜んだり。

 だが――ラグナは違った。
「まだ語りは十分の一にも満たないぞ! 私の夢は叶えてもらってなかったじゃないかっ‥‥!!」
 しかも相手がメガ盛りだなんてあんまりだ――と、滝のような涙を流し、空へ叫んでいた。