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■オープニング本文 ●最凶の魔女 日増しに寒さもつのり、ジルベリアもそろそろ冬の兆しが見え始める頃。 ジルベリアのとある田舎町。特に栄えているわけでもなく、かといって貧しいわけでもない普通の町だ。 人が住めば治安も関係してくるのだが、特に治安が悪いわけでも‥‥おや、何か今か細い悲鳴がその路地裏から聞こえたぞ。 悲鳴と路地裏は事件と密接に関わっている。気がする。 見れば路地裏には数人の若い男と40代くらいの男性が一人。身なりも小ざっぱりしていることから、特に不自由しているわけではなさそうだ。 「つーわけで、オッサン。金貸してくんねぇかな?」 若い男たちはニヤニヤと下卑た笑顔を張り付かせ、中年男性を取り囲んでいた。彼等の顔を交互に見ながら、中年男性は持っているカバンを胸の中にしっかりと抱く。 「わ、わたしは貸せるような金など持っていないぞ。よしんば貸したって、返すアテもないんだろう?」 「なんだとオッサン‥‥! 勝手な判断してんじゃねーよ」 よせば良いのに余計なことを言い、オッサンは若い男に胸ぐらを掴まれる。オッサンの喉からヒィッ、と情けない声が勝手に漏れた。 やめろ人を呼ぶぞ、乱暴はするな、と上ずった声で注意ばかりする。そんな虚勢を張るオッサンが面白いのか、男たちはヒヒヒと笑っている。 「やめてほしきゃ、金、貸してくれるよな?」 「だからそんな金は――」 「――これだけあれば、よろしくて?」 ジャラジャラ、と、彼等の‥‥若い男達の背後で女の声と、金属の甲高い音が聞こえる。 思わず顔をそちらに向けると――若い女が路上に数枚の小銭をわざと落とした後だった。 突如現れた女は彼等を視界に収めたまま小首を傾げている。暫しあっけに取られていた男たちだったが‥‥女性の出で立ちを見て(なんか常々笑っているが)ニヤリと笑った。 「‥‥よぅ、姉ちゃん。オッサンの代わりに遊んでくれんの?」 「わたくしはお金を貸して差し上げるだけですわ。持ち合わせがないのでしょう?」 それを拾って、とっととお行きなさい。女性は紫色の長髪を後ろに流し、相手を睨むように見つめる。男たちはこれを拾えっていうのか、と、彼女の足元に散った小銭を指す。 しかし、その視線は少々露出の高めな衣装に、ミニスカートからのびる割と良さげな太ももに移って、釘付けになる。女性の視線もそれを辿り、理解するとフンと鼻を鳴らした。 「忠告しておきますけれど、痛い目に遭いたくなければ邪な考えは慎むべきですわよ」 杖を軽く握りしめる女性。冷たい声音だったが、男たちには単なる強がりにしか聞こえなかったようだ。一人の男が、彼女の太ももに『手が滑っ――』と、手を伸ばした。 ――刹那。 ヒュオッ、と風を切る音と共に彼女の持っていた杖が振り下ろされた! ‥‥が、彼女は男にあたる寸前でビタリと止める。 「――いけませんね。振り切ってしまったら、貴方を殺してしまいますし‥‥わたくしも憲兵のお世話になりたくありませんもの」 そう言いながら硬直している男を放って近くのレンガを拾いあげると片手でぐっと握る。ばきん、とレンガは派手に砕けた。 「もう忠告は致しませんわ‥‥貴方の頭で、わたくしのアイアンクロー、受けますか?」 ●酒場にて。 「いや、助かりました。なんとお礼を言えばいいものか‥‥」 そこには、先ほどの男性と、怪力の女性の姿があった。若い男達は一目散に逃げ出してしまったのだ。 「お気になさらず。たまたま通りかかったら、多勢に虚勢を張る間抜けがいただけですわ」 あんまりな言い方だが、まぁ、否定はしない。男性は乾いた笑いを漏らしながら間を取り持つためにエールを口に運ぶ、唇を湿らせると『あのお力を見込んでお願いが』と切り出す。 かくかくしかじか。伝家の宝刀をここで使おうと思う。事情を聞かされた女性は小首を傾げる。 「――農場の近くにアヤカシが出没したのでその退治? ふぅん‥‥妥当なお願いですけれど」 どんなアヤカシかと尋ねると、豚のような顔をしたアヤカシだという。先ほど彼が大事に抱えていたカバンに入っていたのは、依頼金だったようだ。 「豚‥‥オークですの? そう‥‥いいですわよ、他にも開拓者を集めさせていただきますけれど、お受けいたします」 「助かります! 地図はお渡ししますので‥‥! 早速依頼書をお願いしていきます!」 男性は大いに喜び、お嬢さんは武力がありますから、魔術師さんとか集めたほうがいいですねーと言った途端、女性は目を閉じて不機嫌そうに咳払いをした。 「貴方、本ッ‥‥当にお馬鹿さんですのね。格好でわかりませんの? わたくし、魔術師ですけれど」 ううっそ。まじで。 という、男性の心の声が聴こえるような気がした。 |
■参加者一覧
海月弥生(ia5351)
27歳・女・弓
レイシア・ティラミス(ib0127)
23歳・女・騎
フィーナ・ウェンカー(ib0389)
20歳・女・魔
フィリー・N・ヴァラハ(ib0445)
24歳・女・騎
フォルカ(ib4243)
26歳・男・吟
リィムナ・ピサレット(ib5201)
10歳・女・魔
リーゼロッテ・ヴェルト(ib5386)
14歳・女・陰
イーラ(ib7620)
28歳・男・砂 |
■リプレイ本文 ●狩りの時間ダ アヤカシの退治を引き受けた面々は地図を頼りに、アヤカシ‥‥オーク出没地域へと向かっていた。 「人の被害はまだらしいけど‥‥流石に農場をやられるのは生活基盤を脅かして困るし」 ちゃーんと退治しないとね? 先を歩く海月弥生(ia5351)が柔和な笑みを仲間へ向ける。 「そうそう! 被害が出る前にさっさとオークを狩っちゃおう!」 リィムナ・ピサレット(ib5201)の提案に、ティーラも同意して頷いた。 「力は強いけれど頭は悪いようですし、こちらもこの人数。力比べでもしない限りは負けるはずはありませんわ」 「力で勝負、かぁ‥‥それにしても、随分腕っ節の強い魔術師もいたものねぇ?」 彼女としては普通にリィムナに応えたはずなのだが、リーゼロッテ・ヴェルト(ib5386)は先ほど依頼人が言っていた話を思い出し、 上半身を前へ傾けつつ両手の指を後ろで組み、上目遣いでティーラを見上げた。 「ん? 魔術師、さん‥‥?」 イーラ(ib7620)は依頼主の彼女は素手で男を蹴散らした、という熱弁を聞いていたため、やはりこちらも職業の誤解をしているようだ。 「なんですの?」 彼女の紫色の髪が揺れ、尖った長い耳がぴくんと動く。 「レンガを砕くくらい志体持ちなら誰でも出来ますでしょ。それに‥‥魔術師が『ひ弱』だの防御要員だの言わせたくありませんもの」 皆に出来るかどうかはさておき、彼女にひ弱だとか足手まといと言った開拓者が軒並みアイアンクローの餌食となったのは間違い無いだろう。 「ま、気持ちはわかるぜ。俺も前衛に間違われて、吟遊詩人だって分かるとガッカリされたりするからな」 自分が勝手に間違ったんだろうが、って言いたくもなるよ、とフォルカ(ib4243)もギャップ魔術師の肩を持つ。 しかし『レンガを素手で握りつぶしたりは出来ないな』とは思っていても口には出せなかった。その罪悪感か、手にしたヴァイオリンが重く感じる。 魔術師リィムナ曰く『以前剣魚相手に素手で適当にチョップしたら一撃で倒した』という。 「‥‥でもその位普通だよね?」 「ええ。当然ですわ」 魔術師だけに、だろうか。さておきそんな女性たちの会話を聞きつつ、フォルカは苦笑し、イーラは地図に視線を移した。 道中ティーラとリィムナの素手話を聞きつつ移動していた彼ら。目撃談をもとにするなら、ここは現場近くだ。出現地域もだいたいこのあたり。 やや先を見つめながら歩いていたイーラは目を凝らし、バダドサイトを活性化させて仲間に声をかける。 「どうやら、目的のオークってのがもう居るみたいだ。気をつけろよ」 そのオークは、まだこちらに気づいていない。風向きも向い風であるから匂いも感じにくいのだろう。 この好機を逃すまいと、開拓者たちは互いの顔を見つめ合い、瞬時に無言の疎通を交わす。 挟撃もアリだが、村に近づけさせぬなら回り込み、村を背にする必要があるだろう。 リィムナとフォルカを連れ、イーラはオークへとギリギリまで近づく。 「さ〜って。さっそく退治といっくよ〜! 楽しくなってきたなぁ〜!」 フィリー・N・ヴァラハ(ib0445)がこれからどうオークを料理してやろうかと(勿論ボコるという点で)想像しているのだろう。いい笑顔を浮かべていた。 「ブ‥‥?」 何事かと思ったのか、オークが空気の匂いを嗅ぎ始める。ブゴッ、ブブッ、となんとも言えぬ『音』が木霊し、フィーナ・ウェンカー(ib0389)があからさまに嫌な顔をする。 「変な豚には猛爆の制裁だっ!」 突如フィリーが木の陰より飛びだすように姿を現し、オークとの距離を一気に縮める。イーラもやや遅れて飛び出た。 襲撃、しかも奇襲に驚き戸惑ったオークは、つぶらな眼をできるだけ見開いてフィリーを凝視し、ブヒブヒと鼻を鳴らした。 「‥‥うるせえな。まずはこれで夢でも見とけ」 耳障りなんだよ、とフォルカが一番手前に居るオークを狙い、スプラッタノイズを奏でる。 強烈な雑音により混乱したオーク。頭を抑えて悶え苦しむが、ブラインドアタックで飛び込んできたフィリーの拳が脇腹にめり込――? ‥‥騎士だよね。 ともかく、拳の強打を食らったオークが数歩よろめく。踏みとどまり、丸太のような腕でフィリーを狙った。 「ふふーん、図体がでかい分、隙だらけっ!」 しかしそこには既にフィリーの姿はない。再び死角より攻撃を繰り出した。 「まだまだいくよ〜! 倒れないでよねッ!」 素早く離れるフィリー。しかし流れるような猛撃は止まらない。 魔槍砲を構えていたイーラも真正面で別のオークを捉えていた。 「手に入れたばっかのシロモノだが‥‥これでも喰らいな!!」 トリガーを引けば、魔槍砲の轟音と、銃の比ではない火力がオークめがけて襲いかかる。 悲鳴のような、雄叫びのような声を上げながら、怒りに充血したオークの眼はイーラを捉えていた。 ●三匹をKILL 「マイン、設置完了だよ!」 リィムナのやや前方に設置されたフロストマイン。走ってくるイーラや皆へソレを踏まぬよう声をかけ、彼女は自身の外見特徴である『少女』を利用して悲鳴を上げた。 「――きゃぁぁっ! アヤカシがいるぅ! 助けてぇ‥‥!」 へたりと腰を抜かし、いやいやをしながら涙を零すリィムナの演技力たるや、女優顔負けである。 そのすぐ近くで、レイシア・ティラミス(ib0127)も適当にオークの相手をしている。本気でないのは、彼女は作戦が成功するまで劣勢を演じているからに他無い。 イーラが槍でオークを突き刺す。しかし、防御力が高く‥‥深々と突き刺さらない。 「瘴気の塊のくせに‥‥」 分厚い脂肪のようなものまでついて防御を高めているのかと思うと、なんだか悔しい。 「はぁい、地雷埋め込みサービスでーす♪」 別方向のオークを誘引させるためもう一つフロストマインを設置するリーゼロッテ。あとは引っかかるのを待つだけである。 「見れば見るほど、醜いアヤカシですこと‥‥」 アクセラレートを付与し終え、まじまじとオークを見つめるティーラに、フィーナがため息混じりに応えた。 「実際の豚はああ見えて賢いんですが、オークの場合はただの愚鈍な瘴気の塊ですね」 ――そんな豚は速やかにぶっ殺してしまうとしましょう。 ここにティーセットがあれば、フィーナがそれを置いてゆっくり立ち上がった彼女が見られたのだろうが、 生憎ソレはなく、腕組みしながらつまらなそうな顔をしている魔女二人組が見られるだけである。 弱そうな者から狙うのは自然界の常。すっかり戦意を喪失しているように見えるリィムナへ、一匹のオークがふらふらと近づいて来る。 他に目移りしそうなところを、弥生がリィムナの後方より射掛けて気を向けた。 「ひっ、来ないで! 来るなー!」 這いずってでも逃げようとするリィムナ。しかし、そんな彼女は背を向けたまま、ぺろりと舌を出していた。恐ろしい子‥‥! 捕まえようとオークが踏み出した刹那、猛烈な吹雪が発生‥‥マインが作動する。 「かかったね〜♪ 手早くちゃっちゃっと倒させてもらうよっ!」 足は凍り、巻き添えを食らったもう一匹も含め、身動きの取れなくなったオークに、ララド=メ・デリタで大ダメージを与えたリィムナ。 しかし、オークもそれなりに頑丈にできていたようだ。ダメージは大きかったようだが、動けぬほど弱ったわけではない。 「ん〜、どう倒そうかな〜?」 「さっきもらった一撃は倍以上にして返すわよ〜」 動きの鈍ったオークを見つつニヤリと笑うレイシアとフィリー。 『エルファイヤーッ!!』 彼女たちより早く、ティーラとリーゼロッテのエルファイヤーがオークを包む。 相乗効果で火柱が立ち上り、オークの身体を焼いていく。 「ねぇティーラ、焼き豚上手に焼けたかしら?」 「骨の髄までこんがりですわよ‥‥御覧なさい! 歓喜の悲鳴をあげていましてよ!」 ただの悲鳴である。しかし、二人は何故か嬉しそうに笑っていた。 「こんな豚はせいぜい消し炭になるのが、お似合いというものですが――お二人とも。そんなものをぶっぱなす前に回りに声をお掛けなさい」 フィーナの忠告はごもっともである。 肉の焦げる嫌な匂いが鼻腔に侵入する。瘴気の塊の割には痛いのだろう。甲高い悲鳴が響いて、腕を四方に動かした。 「汚ねえ声で吠えてるんじゃねえ!」 フォルカが嫌悪の表情のまま吐き捨てるように言葉と奴隷戦士の葛藤をぶつける。 「本当ね。豚は黙って這い蹲るのが似合っていますわ」 フィーナの蔑む瞳。流石にオークは被虐の気もないようだが、その気があれば、彼女の冷たい視線はさぞ楽しかっただろう。 「豚、豚と言うと、豚が不憫でしてよ。この場合、豚野郎、が正しいのではないかしらね」 何も変わってないぞ。 しかし、フィリーはいたく気に入ったのか、豚野郎、豚野郎と連呼してオークを殴る。そんな笑顔で殴らないでほしい。 「さっさとくたばっちまえよ! レクイエムのリクエストならいくらでも受け付けるぜ?」 なんだか戦闘中はガラの良くないフォルカ。やられっぱなしのオークも、ついに火事場の力でも出したのか。 太い腕をがむしゃらに振り回す。フォルカは楽器をとっさにかばうようにして避けたが、腕は接近戦を引き受けていたレイシアを払いのけ、バランスを崩した彼女へ拳を振り上げる。 「レイっ!」 ハッと振り返ったフィリーに、ティーラはアクセラレートをかける。フィリーが助けに向かうも、既に他のメンバーが行動を起こしていた。 「はーい、ダメダメ。女の子は叩かないでね?」 弥生の朔月で射られた数本の矢がオークの腕に突き刺さっていた他、フィーナがそのオークを対象にしてサンダーを唱えていた。 すかさず合流したフィリーの掌底も豚の顎にヒット。立て続けに食らって後ろに倒れそうになるオーク。 「この――調子にのるんじゃないわよっ!」 体勢を整えたレイシアが近づき、よろめくオーク‥‥もう豚でいいや。豚の顔めがけて利き手を突き出し、顔面をがっちりホールド。 メキメキと指先を食い込ませていく。ん? 利き手? レイシアも騎士だよね。どうなってるの。 「アイアンクローっていうのは‥‥こうやるのよっ!!」 そのまま、気合の声と共に――自分の身長よりも大きい豚を、ぶん投げる!! リィムナがとっさに地面に伏せ、頭上すれすれをオークが通過。おお、ただの豚ではない。 ずしゃりと顔から地面に落ちて滑った豚。その頭をティーラのか細く見える指が掴む。 「レイシアさん。なかなか素晴らしい爪でしたわ。そんなものを魅せつけられては、私のクローにも熱がこもるというものでしてよ!」 ひねり潰すのは同じですし、素手か魔法かの違いですわよね。とか言うのだが、導いた結果はどうかと思う。 というか、そっちに熱は込めなくていい。『女は怖いな』と呟くフォルカの顔にもそう書いてある。 「だらだら生きてないで、とっととくたばりなさい!」 手袋を着用しているとはいえ、顔面に食い込む指は痛い。しかも、そのまま再び地面に叩きつけられた豚。 「もういい加減その雑な悲鳴も聞き飽きましたし、死んで貰います」 フィーナが声をかけ、周囲から人払いをしてエルファイヤーで止めを刺す。 もう一度火柱が上がり、三匹目の焼豚が出来たのであった。 ●強い女性は好きですか? 「此の状を速やかに治し給い癒し給い‥‥痛いの痛いの飛んでけ〜ってね!」 リーゼロッテが閃癒をかけて皆の傷を癒し、リィムナがふぅと一息ついて、服についた埃を払った。 「おつかれさーんっ! 楽しかったね!」 フィリーが本当に楽しそうに労いの言葉をかければ、レイシアも『アイアンクローも決めたしね』と頷いた。 もうちょっと殴りたかったな、なんてあっさり怖いことを言うフィリーは、伸びをしながら豊かな胸を大きく反らす。 「‥‥ま、経過はどうあれ。村の被害もこれで減るだろ」 イーラが満足そうに魔槍砲を見つめながら軽く叩いた。この武器の使い方も少し解ってきたようだ。 「うーん‥‥この死体は埋めて処理、かな」 瘴気となって徐々に消えていくであろう豚三匹の姿を眺め、弥生はどうしようかと考えている。 放っておいても消えるでしょうが、道端でも寄せておきましょうかと言ったのはフィーナだ。 「適当な魔術師かと思ってたけど‥‥なかなかアイアンクローのフォームは良かったわよ」 「あら。褒められているのかしら。閃光魔術で仕留めようかとも思いましたけど、折角同志がいたんですもの。クローにさせて頂きましたわ」 なんか妙に気があっているレイシアとティーラ。二人で技の掛け方だの何だのと嬉しそうに話し始めた。 ギルドに報告するため、村に戻ってきた一同。 (あ‥‥) 道の脇に積んであるレンガを眼にし、興味半分にひとつ取ってみたリィムナ。 試しに握ってみると、バコンと大きな音を立てて粉砕した。 背中に皆の視線を感じたリィムナは、ちょっと含羞みながらこう説明した。 「実はあたし、素手で石壁も割と簡単に割れるんだよね‥‥だから素手でレンガ砕けるかどうか試してみようかなー、って思ったんだけど‥‥」 結構やれるねー、と言った側で、見なかったフリをする弥生。 「あ、楽しそう〜! じゃああたしもやってみようかな! ‥‥あはっ、これ面白っ!」 フィリーもウキウキとレンガを掴んで砕いてしまった。 こうして職業と行動の相違が目立つ開拓者が誕生していくのかと思うとなんとも言えぬ気持ちになるが、本人は楽しそうだからいい、と、思う。 キャッキャと楽しそうにレンガを砕く女性を尻目に、もう一度『女は怖いねぇ‥‥』と嘆くフォルカの姿があった。 |