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■オープニング本文 ※このシナリオはパンプキンマジック・シナリオです。オープニングは架空のものであり、DTSの世界観に一切影響を与えません。 ●学園。 神楽学園とは初等部から大学院までの一貫教育が可能な学園である。 一見普通の学生に見える彼等だが――実は、極めて稀有なる素質を持った子たちを集めた学園だったのだ!! 勿論、それは世間に知る人は居ない。学園の正体は巧妙に隠され、学園と彼等は己の力を一般人に口外しない事を条件に『あること』を行なっている。 「この学園に、アヤカシが紛れ込んでいるようだ‥‥直ちにそれを見つけ出し、退治しなくてはいけない」 生徒会室では、生徒会長のユーリィが執行機関の学生たちに向けて解説をしている。 ユーリィは黒い学生服姿で皆の前に立っているのだが‥‥なんか外見年齢が‥‥若い、気が、する。 学生服を着ているせいだろうか。 「アヤカシには早急に対応が必要と考える。 見つけ次第術師が結界を張り、隠蔽するとともに戦闘している姿を消す。一般の人の目には、何もない空間だったとしても、障害物にも見えないし近づいても認知されない。 触ってみようとも思わないだろう。そうして周囲への損害や干渉を和らげ、討伐する流れだ――御神本君、フォローは頼む」 窓辺にいた御神本が頷く。いつも表情は多くないが、今日はメガネをかけていて真面目そうな印象を与えている。 「任せよ。アヤカシなど、この私が兄上の手を煩わせることなく狩ってみせよう‥‥服が、あれば着替えたいが」 何故か体操着姿のクロエが答えた。体操服の裾を伸ばし、ブルマを隠そうとしているのだが‥‥体操着にニーハイというなんか微妙にイケナイ格好だが、クロエに非は無い。 服を変えて欲しいとご所望のようだが、残念ながら服はない。それで戦ってもらう。 話はそれたが、アヤカシは一般人に見えない。しかし、見えないとはいえアヤカシに攻撃されれば大けがもする。 アヤカシも斬られれば不可視の能力は弱まる。結界に閉じ込め、それでいて世間から隠して無駄な混乱や被害を抑えるという方針のようだ。 そうして、他に戦闘にあたっている仲間から通信が入った。直ちにその場所へと向かうクロエたち。 そこには――目を覆いたくなるような光景が広がっていた。 「肉まん食べたい‥‥!」 「いやーん、そこは肉まんじゃないわよぅ!」 女生徒の胸部主兵装めがけて突撃をかけるアヤカ‥‥いや、人間。 「大根んんん! 丸かじり!」 「キャー! おかあさーん!! ‥‥ってダレが大根足だコルアァ!」 襲いかかろうとするアヤカシ‥‥を、コークスクリューで迎え撃つ女生徒。人間かアヤカシのようなものはドバアアァーンと真上に吹き飛んで、顔から地面に落ちると動かなくなった。 それが、あちらこちらにいるのだ。 「‥‥響介よ。これは、アヤカシでは無いように見えるのだが」 「僕もこの現場だけ見ればそう思います。しかし、妙だと思いませんか。何故男女問わず相手が食べ物に見えているのか」 辟易し、自身の肩を抱いて身震いするクロエをよそに、響介はその現場を見つめている。それにユーリィが答えた。 「つまり‥‥幻覚、あるいは操られている‥‥?」 「一概にそうとも言えませんが‥‥そういう可能性もありますね。そして術の対象は一般人‥‥アヤカシの思惑は不明ですが‥‥いえ‥‥クロエさん、最近ジルベリアで大きな行事はありますか?」 急に質問を投げかけられ、クロエは『他の都でやっているのはハロウィンくらいか。ジルベリアでは特に‥‥』といえば、響介は顔を上げて『それです!』と言った。 「ハロウィン、なるほど『お菓子をくれなければイタズラをする』というあれでしたね。天儀でも最近やっているようですが‥‥」 そう言いながら、襲いかかろうとする一般男性に当て身を食らわせ気絶させた。 きょろきょろと周囲を伺い、何か分かったのか、そちらを見つめながら手に神経を集中させて周囲100メートルに結界を張った。 「あれが‥‥怪しいと思います」 響介が指さす先には、黒い三角帽子に黒いマントをつけたカボチャが10匹。フワフワと漂い、身体からピンクの靄を出しては一般人に付与している。 「あの靄で、理性をなくすようですね‥‥食らえば厄介どころか、恐ろしいです」 説明を聞くキリエノワ兄妹も嫌そうな顔をしたが、ともかくアヤカシは倒すしか無い。 「一般人に大きな怪我を与えないようにしつつ、あのカボチャを倒さなくてはいけない‥‥」 ともかく、やるしか無いじゃないの、と仲間のサムライが咆哮を使う。しかし、なにもおこらなかった! 「まさか、スキル無効なのか‥‥?」 ユーリィが戸惑ったような声を出せば、響介が片眉をあげてカボチャの向かう方向を見やる。 その先には――術にハマったらしい女学生が、おへそを見せた悩ましいポーズをとっている。 「‥‥なるほど‥‥『挑発』なら効くようですね。クロエさん、僕らの中では貴女しかできそうにありません」 「なっ‥‥なんと‥‥! 響介、汝は私に破廉恥なことをせよと申すか!」 真っ赤になって拒否するクロエだが、響介は 『どのみちアヤカシは倒さなくてはいけません。貴女がやらないならそれで構いませんが、倒すのが遅れるかもしれないですよ』と言ったではないか。 ユーリィも困ったようにクロエに視線をやるのだが、その視線に耐え切れずクロエは俯いた。 「‥‥わかった、人類のためだ。少しだけだぞ‥‥」 恥じらいながら、ニーソに手をかけると‥‥カボチャがこっちを向いた。 「過敏に反応しますね」 「そうだな‥‥」 嫌々ながら剣を抜くユーリィ。流石にクロエが不憫なのか、響介も呪縛符を取り出した。 「もうすぐ仲間も来てくださるでしょう。それまで何とか持ちこたえましょう」 「一刻も早く誰か変わって欲しい‥‥」 もうやだ、と泣きごとを言いながら、クロエは自分の運命を呪うのだった。 |
■参加者一覧
葛切 カズラ(ia0725)
26歳・女・陰
鈴木 透子(ia5664)
13歳・女・陰
杉野 九寿重(ib3226)
16歳・女・志
ファムニス・ピサレット(ib5896)
10歳・女・巫
灯冥・律(ib6136)
23歳・女・サ
熾弦(ib7860)
17歳・女・巫
嶽御前(ib7951)
16歳・女・巫 |
■リプレイ本文 ●学園を乱すモノ 『新校舎、2階にてアヤカシが発生したようです。負傷中の生徒は速やかに教室へ退避してください。繰り返します‥‥』 放送室から鈴木 透子(ia5664)の声が全館放送で流れてくる。 負傷していた生徒や、(一般人的な意味で)戦えない教師などは最寄りの教室へと入っていく。 放送を終えた透子は勢い良く放送室のドアを開け、メガネをクイッとあげた後、現場へ走る。 透子の髪型は三つ編みおさげ。スカート丈も学校規定のもの。腕には『風紀委員』という腕章が見えるのだが‥‥ 風紀委員が廊下を走るのは非常事態だから良いはずだ。ということにしておく。 しかしながら、左手に鞭。とても気になるところである。 ●イタズラ、します? 「この由緒正しき神楽学園に所属するのは、アヤカシを倒す力を持つ能力者にとり‥‥胸を張れるくらい立派な事なのですが」 剣道部の先輩、クロエの危機にと駆けつけた杉野 九寿重(ib3226)だったが、この羞恥に必死で耐えているのだろう。獣耳がぴくぴくと動く。 しかしクロエの為ならばと彼女と同じく体操着にブルマ、ハイソックスという出で立ち。身体を張ってカボチャたちの前に立っていた。 「ええと、今回のアヤカシは挑発や助平なものに反応する、ということでよろしいでしょうか?」 灯冥・律(ib6136)が自分の側へ群がってくる男子生徒を追っ払いながら、靄も厄介ですね、と嫌そうな顔をする。 彼女の格好はあまりにも‥‥すごく、下着以上‥‥です。と言いたい気持ちになるのだが、安心してくれ、ローライズという服なんだよ!! 特に背中の紐なんか、引っ張ればすぐに解けてしまいそうで、その後のことを考えると辛抱たまらん気持ちになる。 「はじめましてクロエさん。貴方にばかり恥ずかしい思いはさせませんので、ご安心を!」 べち、と男子生徒の手を払いのけながら、律は眩しい笑顔をクロエに向け、イタズラしようとするアヤカシへ迷わず剣気を向けた。 「リツ、コズエ‥‥汝らにばかり辛い思いをさせるのは忍びない。私も共に、戦おう‥‥」 クロエがすまなそうな顔をして九寿重を抱きしめて‥‥いや、ケモミミをモフる。律も抱きしめてあげたかったが、同性でもドキドキする服装なので手が出しにくかったようだ。 「せ、先輩一人では心許ないので私が出てきただけのこと。アヤカシと戦うが我らの務めです」 「そうは言っても、可愛い格好だぞ、コズエ? リツも、すらりとしていて小鹿のようだ」 クロエはフフリと笑う。褒められた九寿重は口ごもるのだが――あれ、なんかアヤカシ寄ってきてるよ。 「女性同士の関わりにも興味が有るようですね」 響介が解説しつつ、一番近くのカボチャを弓で狙う。しかし、アヤカシは気配を察知したのか響介の撃ちにくい方へと即座に逃げて、矢は外れる。 「引きつけていないとダメみたいね。あの程度で反応してくるなら、割と一枚脱ぐだけでも十分効果がありそうだけど‥‥」 右手で左手をなぞりつつ、そっと胸元にその指を置くカズラ。逃げたアヤカシも、ハッと振り向いた。 「何やら面妖な世界に迷いこんでしまったような気もしますが‥‥アヤカシ退治、お手伝いします」 嶽御前(ib7951)が周囲を見渡し、ピンクの霧の犠牲となった人々を見つめる。 彼女の視界に、霧の犠牲になった男と逃げる女性が見えた。 男は何も無い所でつまづき、前を走る女性のスカートの裾をがっちり握る。 「きゃあああー!」 スカートに隠されていた純白の、三角形のアレが露出する。女性は真っ赤になってへたり込み、元凶の男をボカボカと泣きながら殴る。 嶽御前が解術の法で霧を吹き飛ばし、男は正気に戻ったようだが女性の手は殴るのを止めない。 止めなさい、治療も必要になってしまいます、と嶽御前が止めに入った。 「女性にこんな心苦しいことをさせるのは‥‥騎士として情けない‥‥」 ユーリィは胸を痛めているようだが、今は学生だ。安心したまえ。 「おや。『女性』の我も挑発役をやったほうがいいと仰いますか? 恥ずかしい目に遭うなら数倍‥‥いや数十倍返しのお返しつきになるが、それでよければやります。アヤカシどもには後悔する暇を与えてから潰しますが」 いいんですか、と八重歯をむき出して‥‥なんだか獰猛な薄笑いを浮かべる。 「お菓子をあげなきゃイタズラするっていうのは――こういう事じゃないと思うけど」 肩をすくめた葛切 カズラ(ia0725)だったが、仲間の方を振り返ると、 「でも――こういうイタズラの方が好きよ、私はね」 と言いながら、可愛らしく微笑んだ。だが、響介とユーリィは動じない。 「――ユーリィさん。そんな怖い顔をしていたら、アヤカシが来なくなりますよ。折角綺麗な方々が艶姿を見せてくれるのですし」 「君こそどうして愛想笑い一つしないのかな」 お互いそう訊いているが、顔を崩さない理由は簡単だ。この状態でニヤケようものならクロエに叩かれるかも分からない。 そして今まで、うーん、と唸っていた熾弦(ib7860)がこれまでの経緯で何やら思いついたらしい。 「クロエさん、少し我慢していてください。私に考えがあります‥‥」 どこからか机や椅子を幾つか持ってきてはまた何処かへ走っていく。 そうして何セットか並べ、また戻ってきた熾弦の格好は‥‥スーツにタイトスカートという、教師然とした格好。 しかし、教壇まで運んでいる。どかっ、と置いた上に腰をかけ、足組みをした。 「外でやるには少し間抜けだけれど、場所や雰囲気の力も侮れないじゃない?」 学校で色気といえば女教師。熾弦は胸を強調するように体を反らし、なんとも魅惑的な声音で囁く。 「先生との特別な課外講習‥‥してみない?」 途端。空気が変わった。どっと男子生徒が駆け寄ってきたのだ。ホラ来て、なんて言う間もない。 「先生! 僕、先生とならッ‥‥!」 「オレも!」 「おいどん、先生を見ながらご飯三杯いけます!」 鼻息荒く、押しかける生徒。 ちょっと待って。と内心焦る熾弦は、落ち着いた風を装いながらぴらりと何かの用紙を見せた。 「ああん‥‥急がないの。先生、そんなに体がもたないわ‥‥今からテストを配るから、私と濃厚な個人授業がしたい子は、良い点を取って、ね?」 そう言って持ってきた机に座らせ、超難問テストをふっかける。ちなみに地理だとか計算問題だとか、天儀の歴史だとかも混ざっている。 そんな中ファムニス・ピサレット(ib5896)が腕組みをしたまま登場。しかし、いつもと明らかに胸の質量が違う。 格段にレベルアップした胸をたゆんたゆんと揺らしながら歩いてくる。不思議なものでも見たような顔をする男性陣。 気づいてビクッと震えた拍子に、ファムニスのイモジャ‥‥いや、あずき色ジャージの裾から、紙を丸めたものがコロリと落ちた。慌ててそれを拾うファムニス。胸盛ってるんだね。 「‥‥見てくださーい! 初々しい、きょにゅー学生のセクシーポーズですよ!」 男性の視線も気になるのか、ファムニスはヤケクソ気味に叫びながら胸を両腕で寄せあげする。 こんな恥ずかしい思いまでして、なぜアヤカシを引き寄せねばならないのか‥‥。 それはここに集まった全ての女性が思ったことだろう。特にファムニス。 アヤカシは駆けつけるようにして此方に向かってくる! こうかは ばつぐんだ! だんっ、という怒りを乗せた足音。ユーリィが振り向けば、そこには――透子。 「学園の風紀を乱すものには、容赦はしませんよ!」 ねっ、生徒会長! と話を振られたが、ユーリィは風紀よりも敵襲のほうが一大事だと言う。いや、どっちも大変な状態なのだが。 この状況を打開するのが先ですよ、と響介に窘められて、透子とユーリィはフワフワと飛んでいるカボチャ達に意識を向けた。 しかし、透子の視線はすぐにカボチャ以外のものへ向けられる。そう、律や熾弦にまとわりつく男子生徒だった。嶽御前の解術も間に合わない大盛況ぶりなのである。 「校内での不純行為! 反省室行きっ!」 鞭を一振り、声を張り上げた透子は呪符に『校則違反』と上書きされたものをズラっと取り出し、すれ違いざま男子生徒たちの額に手馴れた手つきで貼り付けていく。 正気を失っても風紀委員の恐ろしさは分かるようだ。しかし、逆に風紀委員萌えも極僅かにいたらしく彼女に掴みかからんと襲いかかってくる‥‥! 「カボチャじゃなくても‥‥ええ、いろんな意味でアウトだと思います‥‥!」 手加減して鳩尾に拳を突き込み、吐かれた靄の色を確認して反省室行きの札を貼る。やばい、彼らは大変な人を敵に回したようだ。 「見事だトーコ! 努力を無駄にはせぬ! ゆくぞコズエ!」 「はい、先輩!」 剣を構え、一番手前に居るカボチャに斬りかかる二人。ト『ウ』コです、と透子より指摘が入るが、クロエには聞こえないようだ。 「ココから先は‥‥見たい? それとも触りたい? どうしたい――あら?」 衣服を脱いで、下着姿になろうとしたカズラに、響介の札がぺり、と飛んでくる。効果はないが、ただ中断させるべく飛ばしたようだ。 それを飛ばした男は困ったような顔で『僕らにはそれがピンクの靄のようなものなので』と視線をそらす。 可愛らしい事を言うわね、と言いながらカズラは笑い、近寄ったカボチャのマントをめくって呪縛符を入れる。すると、式の触手がカボチャを絡めとって、地に落ちて転がる。 「胸だけじゃ足りません!? じゃあ、ハイレグ‥‥っ!?」 ファムニスが顔を茹で蛸のようにしながらも、ブルマを掴んで思い切り上にくいっと引っ張った! だが、不運というべきか。引っ掛けた指がブルマのみにかかっていたため、白無地のいわゆる『子供ぱんつ』が露出。いや、はみパン‥‥どう書いても弁解できるそれではない。 ちなみに、ぱんつは素朴なフリルのついた女児用。可愛らしい猫さんの小さなイラストが幾つもプリントしてあるのだが、 洗いざらしのため履きやすい‥‥いや、ちょっとプリントとか、まあ、そういうのが薄くなりつつある。 先程触手に絡みつかれて落ちたカボチャは、そのファムニスの猫さんショーツとくい込むブルマをじっと見つめていた。 ちなみに九寿重もこっそりブルマをくいっと直していたのだが、男子生徒がカメラを構えたので速攻叩き割る。無論弁償はしない。 「‥‥イヤーーーー!! 来ないでくださーい!」 こんな薄着の何処に隠してあったのか。ファムニスはホーリーメイスを取り出すと、何度も振り下ろしボコボコにしはじめた。 カボチャの頭が割れようとも、彼女はその手を止めない。その恐ろしい仕打ちにブルっちまったカボチャだが、時既に遅し。 漸く自由になった律。掛け声と共にパイプ椅子が違うカボチャの頭めがけて振り下ろされた。 「学級崩壊ね〜‥‥ごめんね、先生との個人授業は、今度‥‥太陽が昇らない日があったらね?」 つまり永遠にない。熾弦は教卓から降りると、出席簿を放り投げ、力の歪みを使用。震えるカボチャに向かっていく。 「くっ!?」 ボコボコにされながらも『けぷ』と可愛らしい音と共にカボチャの靄が嶽御前へと吐き出され、彼女は思わず後ろに下がって口元を押さえた。 じわじわ頭が真っ白になっていく。残された理性で解術の法を使用し、正気に戻ると‥‥獰猛な笑みを浮かべる。 彼女もまた、力の歪みを使用してアヤカシを捩りまくる。 「挑発以外は効かないかと思ったが、そうでもなかったな」 「はい。大した事ありませんね」 ユーリィがグレイヴソードを放ち、炎魂縛武で九寿重が止めを刺す。 多く居たカボチャももう残すところ1匹。カズラの錆壊符で丸裸にされたところをピシパシと鞭で打たれ(注:カボチャである) 挙句式の触手で絡み取られている。それを見るカズラの顔には加虐と恍惚があり、猫が獲物を遊び殺すようなものを錯覚させる。 「これで最後ですね‥‥!」 律が金剛刀をチラつかせ、カボチャを睨む。速やかに屠りましょう、と殺し足りないような顔をして嶽御前は答えた。 抵抗できないアヤカシは、哀れ二人がかりで襲われ――その生命を散らしたのであった。 「今までこんなに恥をかいたことはない気がする‥‥」 戦い終わり、なんだか倦み疲れた顔のクロエ。ご苦労だったと頭をポンポンと叩くユーリィ。 「兄上たちは何もしておらぬではないか」 「剣は振るっていたよ? 挑発はできないからね」 苦笑いするユーリィと、魅了の技は持っていませんと言う響介。それでも、本当にこれは女性陣のお陰で退治できたようなものだ。 「楽しめたけど、絡みつく視線がねちっこかったわねぇ‥‥」 髪をかきあげながら、カズラが瘴気を発して消えかかっているカボチャを一瞥。響介のおかげと言うか、あいつのせいというか、楽しみだった謎の海苔は飛んで来なかった。 カボチャ自体の能力は大したこともないようだが、視線は中年のようないやらしさを持っていたようだ。死してなお、視線を感じるような気さえする。 「またこれを片付けるのは、難儀ねぇ‥‥」 自分が持ってきた机や椅子を見つめながら、熾弦は肩をすくめる。が、それは片付けておくから良いとユーリィが言ってくれた。 それに礼を言うと、クロエの体操着の袖を握りしめている九寿重を見た。 「先輩、戦闘して汗をかいたので、シャワーを一緒にどうですか?」 「む? そうだな、構わないぞ。私もそう思っていたところだ」 九寿重が嬉しそうな顔をしたのを熾弦は見届け、くすりと笑う。 「浴室にもカボチャがいたりして?」 そう言えば、二人の表情は強張り‥‥クロエは律とファムニスの手を取り、大真面目で『皆、一緒に風呂へ行かないか』と誘っていた。 |