敵をくいとめろ
マスター名:えのそら
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: 普通
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2011/11/15 20:11



■オープニング本文

 あなたたち開拓者は依頼のため、武天はある村の村長宅に来ていた。
 目的は村長に荷物を届けること。
 小包を手渡すと、50代半ばの女村長は満面の笑みを浮かべる。
「助かりました、開拓者様」
 ふいに、窓から一羽の白ハトが飛びこんできた。
 ハトの足には、紙がくくりつけられている。
「おや、これは伝書バトですね。森の向こうの隣村との連絡を取るのに、時折これを使っているんです。では、ちょっと失礼」
 ハトの足から紙を取り、村長は読み始めた。
 数秒たたずに、村長の顔色が真っ青になる。紙を持つ手がぶるぶると震えた。
「こ、こ、これは?!」
 手紙によれば、隣村がアヤカシの群れに襲われたらしい。そして、アヤカシは隣村を蹂躙した後、こちらの村に向かいだした、そう書いてあるのだ。
 村長は深呼吸し、冷静さをかろうじて取り戻す。
「――開拓者様、お願いがあります。
 どうか、アヤカシたちを迎えうち、アヤカシが村に入るのを阻止して下さいませんか?」

 村長は地図を取り出した。
「隣村からこの村までは、一本道。道の両側に、木々がびっしりと生えており、馬型のアヤカシなら他の道を通ることはまずないでしょう。
 ですから、村の――この入口で待ち伏せしていれば、必ずアヤカシたちに遭遇できる筈です」
 道幅は比較的広く、五人が並んで戦える程度。
 手紙には、アヤカシについても情報が書かれていた。
 アヤカシの数は六体。
 脚力に優れた馬のアヤカシが二頭。
 この馬アヤカシには、それぞれ、鬼型のアヤカシが乗っている。
 鬼は、一体が弓から毒矢を放つ。もう一体は槍を操る。
 弓鬼は器用で、槍鬼は怪力。侮ることはできないだろう。
 また、イノシシのアヤカシが二体突き従っている。こちらは牙での攻撃や体当たりを得意とする。

 村の位置と敵の移動速度からして、今からおよそ30分後に、アヤカシ達が村の入口に辿りつきそうだ、と村長はいう。
 その30分の間に罠を仕掛けたり、道を閉鎖したり、迎撃態勢を整えるのも一つの手だろう。
 必要なものは、村長が貸してくれる。といっても珍しいものはないが。

「村人たちの避難は、私がやりますので……アヤカシがくる村の入口からはそれなりに遠ざけることが出来る筈です。
 ですから、皆様はアヤカシの撃退、できれば退治に専念して下さい。……どうか、よろしくお願いします」
 村長は、白髪交じりの頭を深々と下げた。


■参加者一覧
風雅 哲心(ia0135
22歳・男・魔
薙塚 冬馬(ia0398
17歳・男・志
ペケ(ia5365
18歳・女・シ
樹咲 未久(ia5571
25歳・男・陰
メグレズ・ファウンテン(ia9696
25歳・女・サ
サーシャ(ia9980
16歳・女・騎
セシリア=L=モルゲン(ib5665
24歳・女・ジ
山奈 康平(ib6047
25歳・男・巫


■リプレイ本文


 村長宅で。
「隣のアヤカシ村が伝書鳩できた‥‥?」
「‥‥」
 頭を下げ依頼する村長を絶句させたのは、ペケ(ia5365)の台詞。壮絶な聞き違え。
 ペケは皆から改めて説明を受ける。
「そうじゃないのですか? なるほど‥‥隣の村を襲ったアヤカシが‥‥。なんだ、そっかー‥‥。‥‥って、緊急事態じゃないですかぁぁー!!」
「だから、そう言ってるじゃないですかああ?!」
 絶叫するペケ。絶叫で返す村長。
 村長ははぁはぁ、呼吸を整えた。「と、とにかくっ、アヤカシの迎撃はお願いしてもよろしいのでしょうか?」と聞いてくる。
 ペケや仲間が頷くと、村長は安心した顔つきになる。村人の避難を指揮するために、家を出ていった。

 開拓者たちは、迎撃準備を始めるべく移動。
 村の入口は、村の最南端にある。隣村への道が南へ延びていた。
 入口から少し南に出たところで
 ガツン!
 サーシャ(ia9980)は鍬の鉄を地面に叩きつけていた。長身の体と鍛えた力を活かし、勢いよく地面を穿っていく。
 重労働にもかかわらず、サーシャは普段通り、目を細めた柔和な笑顔。
「そっちの調子はいかがですか?」
 近辺の仲間達に問いかける。
「順調だ」
 山奈 康平(ib6047)は額にかいた汗を手拭いでふきつつ、返事をかえす。彼も穴を掘っているのだ。掘った穴に落ち葉を混ぜて柔らかくした土を放り込む。
「こちらも、この調子でいけば予定通り、敵の到着までに仕上がりそうです。‥‥守りぬきましょうね」
 メグレズ・ファウンテン(ia9696)は斧を持つ手を動かしながら答えた。刈りとった木を削り、乱杭を作っている。
 信念の感じられるメグレズの口調に、残りの二人も頷いた。

 村入口から、三人よりさらに南に進んだ場所に、開拓者の四人がいた。
 その一人、薙塚 冬馬(ia0398)は木に登り、枝に腰掛けていた。道の両端の木の枝に縄をくくりつけているのだ。
 道を横断させるように縄を張り、縄の右側と左側に布を垂らす。やってきた敵に、道の中央だけが見えるように。
 敵に中央を通らせるための策だ。道の中央には、術者たちが今、多くの罠を仕掛けている。

 やがて迎撃準備が整った。
 村入口から南に進んだ地点に、暖簾。暖簾の手前に、術者らが仕掛けた罠。
 さらに村の入口に近づくと、足を引っ掛ける縄と落とし穴。そして村入口を塞ぐ、乱杭や逆摸木。
 設置し終えた開拓者は、それぞれの場所に潜む。
 冬馬は暖簾を設置した木の影にいた。彼の耳に届く、複数の足音。
 アヤカシが、こちらに近づいてきているのだ。冬馬は目を閉じ、精神を集中する。
「賽は振られた。さぁ、勝負といこうか」
 目を開いた彼の口元が、ゆるりとつり上がる。


 敵は、馬が二匹、馬に騎乗する鬼が二匹。二メートルの槍を持つ鬼と、赤塗りの弓を持つ鬼。そして、イノシシが二頭。
『――ムム?』
 暖簾の手前で、鬼二体が声をあげた。つるされた暖簾を見て、怪しんでいるようだ。
 鬼二匹は馬の速度を緩め、逆にイノシシたちにより速く走らせる。手下を先行させることにしたようだ。
 イノシシ二頭は馬を追い抜き、暖簾を通過。
 イノシシに襲うのは、樹咲 未久(ia5571)とセシリア=L=モルゲン(ib5665)が仕込んでいた地縛霊。
 未久の不定形の黒い式と、セシリアの蛇型の式は出現と同時、イノシシへ飛びかかる。
 二人の地縛霊にイノシシが、ブヒヒヒンッ、不様な悲鳴を上げた。だが、村へと進み続ける。
 ――ゴウ!
 風雅 哲心(ia0135)の術、フロストマインが発動。氷がイノシシの額に突き刺さり、雪がイノシシの体を覆う。イノシシらの動きが止まった。

 哲心とセシリアは潜んでいた木陰から、道中央へ。敵に姿を見せる。
 哲心の手には、宝珠の嵌めこまれた短剣。切っ先をアヤカシどもへと向け、雄々しく宣告する。
「かかかったな。俺から攻める、吹っ飛ばされるなよ? ‥‥轟け、迅竜の咆哮。吹き荒れろ――トルネード・キリク!!」
 セシリアは深紅の鞭の柄を、舌で舐めた。
「素敵に不様な姿のお礼に、ご褒美をあげるわァ。ンフフ、泣いて喜んでもいいのよォ!?」
 二人は力を発動させる。哲心が発生させた無数のカマイタチが、セシリアが召喚した氷竜が、鬼やイノシシを切り裂く! 凍えさせる!
 冬馬と未久の義兄弟も現れ、哲心たちに並んだ。
「未久。相手を誘導してやろうじゃないか」
「ええ、冬馬。でも無理しないでくださいね。‥‥さて――絡みなさい『呪縛』」
 冬馬が馬上の槍鬼を挑発するようにクナイを投擲し、鬼の頬から瘴気を流させる。未久もおっとりとした表情のまま、式を放つ。式は弓鬼の腕にまとわりついて、不快感を与えた。
『オノレェェ!!!』
 弓鬼が牙をむき出し怒る。弓を放つが――呪縛符の効力で、矢は外れ地面に刺さる。
 迎撃担当の四人は鬼に攻撃しつつ、素早く村の方角へ後退。
 アヤカシどもはそれぞれ荒い鼻息をたてながら、四人を追いかける。
 アヤカシどもの最後尾を走るのは、弓鬼の馬。鬼が再び矢をつがえた。
『シネ!!』
 弓鬼の放つ矢は、今度は外れない。セシリアの足を貫いた。転倒するセシリア。
 槍鬼が、自馬の尻を槍の柄で叩いて加速! 転倒した彼女に迫るが、
 その途中、馬は縄の罠が仕掛けられた場所へと差し掛かる――!
「させません」
 道端に潜んでいたサーシャは呟く。サーシャは機を逃さずに縄を引っ張った。縄が馬の足の高さに。馬は縄に足を取られてつんのめる。上に乗っていた槍鬼は地面に落下し、背をしたたかにぶつけた。
「‥‥大丈夫か? 今毒を抜くからな」
 康平はセシリアに声をかけた。彼女の顔が毒によって青ざめているのを確認すると、掌を向ける。彼女の体を解毒の光で包んだ。
 メグレズは開拓者の中で、もっとも北側、村に近い位置にいた。敵と自分との間に罠がある位置へと移動し、
「さあ、こちらです! ‥‥ぉぉおおおおおおおおおぉぉっ!!!」
 咆哮する。イノシシの一匹と弓鬼の乗る馬が怒りに駆られた。
 メグレズへと突進し、イノシシが落とし穴に落下。弓鬼の馬は柔らかい土に足を取られ、動きを止める。
 ペケは埋伏りで土と同化し潜んでいた。潜伏をやめ、駆ける。
 そして、跳ぶ。馬上の弓鬼、その顎に「龍札」嵌めた拳をめり込ます! ごす、と鈍い音。
「毒矢は厄介ですからねー。何としてもぶっ潰すですっ!」
 弓鬼は体勢をくずしつつも、馬から落ちない。着地したペケを憎々しげに見るのだった。


 がつんっ! 金属音。火花。
 メグレズは、今、落馬し地上で戦う槍鬼と、相対していた。
 技能と翼竜描かれた盾を使い、敵の突きを受け止める。敵は怪力。受け止めた腕にしびれと痛み。
 それでもメグレズは痛みを顔に出さず、無表情のまま戦い続ける。新陰流の技に火炎の力を組み合わせてせめる。
『ナニィ?!』
 怯んだ槍鬼。メグレズは敵をけん制し続けつつ、声を飛ばした。
「サーシャさん、今のうちに、馬をお願いいたします!」
「はい、こちらはおまかせくださいね」
 槍鬼の馬は、今は背に誰も乗せていない。その馬の前にサーシャはいた。
 サーシャは踏みつけてくる馬の攻撃に耐えながら、大量のオーラを腕や足に集中させ――流し斬り!
 大剣「テンペスト」の刀身が、目に見えぬほどの速さで動き、馬の体に致命傷を与える。
 断末魔の悲鳴を上げ、馬は横転した。

 弓鬼は、馬上から毒矢をつがえようとしていたが――
「矢は撃たせませんよ――刻みなさい『斬撃』」
 未久が粘菌の式を半月状の刃へと変え、敵に飛ばす。弓鬼の顔面を切り裂いた。
 弓鬼が体をのけぞらせている隙に、未久は冬馬に視線を移す。
 冬馬は小さく頷いた。
「一気にいかせてもらうぜ!」
 冬馬の刀が輝き、切っ先から、電撃がほとばしる! 弓鬼を感電し、落馬。
 ふらふらと立ち上がる弓鬼に、ペケは正面から近づいた。腰を低くし、両手で鬼の足を掴む。
 弓鬼は矢を握りしめ、ペケの肩に突き刺した。
『コシャクナ!』
 だがペケは動きを止めない。弓鬼を上下逆、頭を下にした体勢で担ぎあげ、跳び上がる。
「どこでも飯綱落としー!」
 着地の直前、弓鬼の脳天を大地に打ちつけた! 弓鬼は完全に沈黙し、地に瘴気の染みが飛び散った。

 開拓者たちは主に攻撃を鬼と馬へ、集中させていた。
 落とし穴に落ちていないほうのイノシシは、その隙に突進する。
 その標的は康平。
 体当たりを受け、吹き飛ばされて木に叩きつけられる康平。
「‥‥大した威力だが、しかし倒れてやる訳にはいかない」
 康平は痛みをこらえながら、腕を振る。巫女装束、千早の袖が揺れた。神風恩寵を自分に施し、持ちこたえる。
「セシリア、頼む」
 康平の声に、セシリアが動く。康平に気を取られたイノシシの側面に回り込んだ。
「元気がいい子は好きよォ‥‥苛めがいがあるからねェン、ンフフ」
 昂ぶった声で言うと――氷竜!
 これまでの戦闘で傷ついていたイノシシは耐えられない。寒さにのたうちながら、やがて動かなくなる。戦場に響くセシリアの嘲笑。

 ほどなくして、弓鬼が乗っていた馬と落とし穴にはまったイノシシの退治にも、成功。敵はあと一人――槍鬼のみ。
 槍鬼は力と技で粘り続けるが――。
「こいつで終わらせる。‥‥猛ろ、冥竜の咆哮。喰らい尽くせ――ララド=メ・デリタ!」
 詠唱したのは、哲心。唱え終わると同時に、灰色の光球が出現。光が槍鬼の体をのみ込み――そして灰に変えた。

 静かになった戦場で、未久は周囲を確認する。敵の残党がいないことを確かめ、皆をねぎらう。
「お疲れ様でした。‥‥怪我を負った方は手当てをするので言って下さいね?」


 幸い大きな負傷をした者もなく、開拓者らは、避難していた村人たちに報告にいく。今は村長と共に村長宅に戻ってきていた。
「ありがとうございます、開拓者様!」
 何度も頭を下げる女村長。
 彼女の前で、康平は首を左右する。
「礼は受け取ろう。だが、『様』はいらない。お偉いさん扱いされる身でもない。村長と俺たち、それぞれ出来ることをやっているだけだからな」
 それでも、村長は頭を下げ続けるのだった。
 会話がひと段落したところで、開拓者たちは席を立つ。
「ちょっと片付けてくるぜ。落とし穴がそのままは、まずいからな」
「お借りした斧や道具は、それが終わってからお返しいたしますね」
 冬馬とメグレズは仲間達と共に、村出口へと向かっていった。

 後片付けを終えて再び村長宅に戻ってきた開拓者を、村長だけでなく、数人の村人が出迎えた。
 村長宅の居間には、酒や料理が並べられている。
「まあ、これは‥‥?」
 サーシャが目を細めたまま、小首をかしげた。
 村長は答える。開拓者たちを労う為に用意したのだと。
「こんなものしかございませんが‥‥今晩はゆっくりしていただけると幸いです」
「ンフフ、ありがと」
 セシリアは、座蒲団に豊満な腰を落とす。胸がぶるるんっ、と豪快に揺れた。
 他の者たちも席につき、それぞれ酒や肴に手を伸ばす。
 肴といっても、野菜の甘辛くたいたものや、川魚を味噌で煮たものなど、簡単なもの。けれど、村人たちの感謝の気持ちがこもっていた。
 村長は、ペケに語りかけた。
「そうそう――ペケさん、貴方が最初にボケてくれたおかげで、落ち着いて避難活動をする事が出来ました。今思えば、あれは私の緊張を抜くため演技だったんですよね」
 ‥‥。
 ‥。
「わかってくれてうれしいですよー」
 微妙な沈黙ののち、ペケは棒読み口調で返事した。
 彼女の最初のボケは天然か、演技か‥‥ともかく、村長は感謝のまなざしでペケを見ていた。
 哲心は徳利を杯に傾けていた。酒で満ちた杯を口に。
 次々杯を干していくが、哲心は顔色一つ変えない。
「お強いですねぇ」
 哲心をみて、笑顔を浮かべる村人たち。
 彼らも酒や料理をつまみつつ、愉しそう。そして、こうして愉しい時間が過ごせるのは開拓者らのおかげだと、口にする。
 開拓者と村人の時はゆっくりすぎていくのだった‥‥。