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■オープニング本文 ●風 ───風よ。今こそ吹いてくれ。 少しでいい。あとほんのもう少しだけでいい。 あの布を、もうちょっと上に押し上げてくれ。 その向こうには浪漫が、夢が希望が待っているんだ。─── 男なら、きっとこんな思いをした事は一度ならずあるだろう。 そしてこの願望は『もし風を操ることが出来るのなら‥‥』という考えに変わる。それが出来るのならば、人生はより楽しく、華やかなものになるはずなのに。 だが、それはいつだって適わぬ夢。いくら思ってみても願ってみても、風は操れない。 守りは堅くスカートが希望通りに捲れあがる事は、ない。 男達は夢は夢と諦め、それでも稀に訪れる偶然を期待しながら日々を生きながらえるのだ。 ●風の使い手 男達の見果てぬ夢。 だが、それは諦めたから夢になったのだ。 諦めずに願い続けるのならば、それは夢として完結することはない。 もっとも諦めずに願い続けるのは容易な事ではない。いつ適うかも見果てぬ、どの様にすれば適うかもわからぬという希望の糸口すら見出せぬ状況でも意思を強く持ち続け、正解を手繰り寄せなければならない。それは限られた時間しか持たぬ人の身にあってはあまりに困難だ。 だからこそ、この力が人のものにならずアヤカシのものとなったのは不思議ではない。 そう、このアヤカシはその力を手に入れた。 『風よ、吹き荒れるがいい!!』 不自然な上昇気流が何の前触れもなく吹く。もちろんその風は薄布なんぞふわりと容易に持ち上げる。 「──!!」 慌てて手で押さえてももう遅い。大きな目玉はしっかりとその光景を目に焼き付けていた。 その大きな目玉の持ち主、否、目玉しかないコイツは──闇目玉。 男達が羨望する技術、風の力を身につけた闇目玉。その名も『風の闇目玉』といった。 ‥‥何のひねりもなくそのままである。 ●なんか強いぞ風の闇目玉 「いっぺん死んだほうが良さそうね!!」 遭都の真ん中にアヤカシがどうやって入ってきたかはまあ四月だから置いといて、これだけ人が多いとあれば、被害者も多かったが反撃を試みる者が多かったのも事実。 刀を手に斬りかかるサムライもいたが、相手は闇目玉。ただ単純に斬りかかっても意味はない。その刃は決して闇目玉を傷つけることはない。 『愚か者め!!』 「な、なんだこの風は!う、うわぁぁ!!」 「まさか、『トルネード・キリク』!?」 予想に反して風の闇目玉は強かった。攻守に風を上手く用いた闇目玉に隙は少ない。 その上、魔術師スキルの中でも取得の難しい『トルネード・キリク』に似た技で反撃まで出来る。もちろんそれ以外の細かい攻撃も可能だろう。一応紳士的なのかスカートめくりには、傷をつけぬ様に弱い風を操っている様だし。 「‥‥撤退だ!!一回態勢を整えるぞ!!」 とにかく今この状態では勝機がなさそうに見える。開拓者の一人がそう言うと、皆開拓者ギルドの中へ退避する事となった。 「まあ放置してもスカートめくりしかしないしなあ」 開拓者達が引き上げた後、闇目玉は次々に人を襲うかと思われたが、スカートめくり以外には何もしていない。どうやら攻撃をしなければひたすら趣味に走るつもりらしい。 とすればある意味安全だし、男にとってはいい奴みたいに思えてくる。それにこれからもっと暖かくなって薄着の女性が増えればもっと活躍は期待できるだろう。非常に楽しみだ。 「だなあ、別にいいかなあ」 と別の男が言う。しかし、それはやっぱり許されない。 「そんなのダメに決まってるじゃない!」 「そうよあんな変態を生かしておくわけにはいかない!」 ‥‥まあ仕方がない。 「だけど、普通にやりあうには手強い相手よね‥」 相手は変態アヤカシだが、無策に戦いを挑んでも勝ち目は薄い。よくよく作戦を練る必要があるだろう。手強い敵かもしれないが、きっとどこかに解決の糸口はあるはずだ。 「注意をそらすことが出来れば‥‥」 何かに注意を引き付けられるものがあれば、隙ができるかもしれない。問題はその何かだが。 ※このシナリオはエイプリルフールシナリオです。実際のWTRPGの世界観に一切関係はありません |
■参加者一覧
時任 一真(ia1316)
41歳・男・サ
ルーティア(ia8760)
16歳・女・陰
琥龍 蒼羅(ib0214)
18歳・男・シ
アクエリア・ルティス(ib0331)
17歳・女・騎
浅葱 恋華(ib3116)
20歳・女・泰
綺咲・桜狐(ib3118)
16歳・女・陰
リィムナ・ピサレット(ib5201)
10歳・女・魔
ショウ・クルーガー(ib5960)
29歳・男・シ |
■リプレイ本文 ●風とスカート この依頼にはスカートが有効。 だがしかし、自分がスカートを履いていいものだろうか。こんな姿を知人に見られれば噂は千里を走り、たちまち社会から抹殺されてしまうのではないか。 それでも、ショウ・クルーガー(ib5960)は攻め続ける事を選んだ。そして攻め過ぎた。誰よりも短いスカートから伸びる男の足、すね毛。どうみても変態だ。 「まーた変態の相手か‥‥やれやれ」 普段は履くことの少ないスカートに足元の違和感を感じつつ、ルーティア(ia8760)は軽く一回転。揺れる裾が風にあおられて持ち上げられる。ちなみに変態とは前述のおっさんのことではない。毎度おなじみの闇目玉だ。 「おっと、危ない危ない」 慌てて手で押さえて事なきを得たが、どうもこのスカートは風に対する耐性があまりない様に見える。ショウのスカートは決して風にあおられて欲しくないが、こちらは色々と期待できそうだ。 「アヤカシにもいろいろいるねー」 とリィムナ・ピサレット(ib5201)もワンピースの丈を短くして準備に余念がない。というかやたらみんなミニとかそういう方向に走ってないか? それにしても大人は辛いのだ。仮にスカートが春風のいたずらでめくれあがるとしても、そこで歓声を上げて喜ぶわけにはいかない。大人には分別も求められるし、世間体や外聞というものがある。見て見ぬ振り、あるいは見たくても目を背けるという事が必要になる。 「だったら俺は大人じゃなくていいです、見たいです!!」 時任 一真(ia1316)はそう言って大人である事の放棄を宣言した。 齢四十にして惑わず。いまだ見ぬ春を求め続けた結果がこれだ。 『下らん‥‥俺には理解できん‥‥』 四月だろうと何だろうとぶれることのない琥龍 蒼羅(ib0214)。たとえ目の前の女のスカートがめくれようが、あられもない姿になろうが全く気にせずアヤカシに向かっていきそうなのが逆に怖い。アヤカシがいなくても表情一つ変えそうにないが。 ●変態現る 「変態退治ならまかせろー、です」 ばりばり。 綺咲・桜狐(ib3118)は変態退治のエキスパートである。今までも数多くの変態達を屠ってきたつわものだ。 「でも闇目玉先生なんですね、変態は‥‥」 はいそうです。闇目玉先生です。 「新手の闇目玉?しかも風を操る、ですって?ふふん♪面白そうじゃないの‥」 浅葱 恋華(ib3116)は桜狐のパートナー。彼女とて変態の始末は慣れたものである。変態アヤカシとして闇目玉を退治した事はあるが、今日の闇目玉は一味違うという。 「ヤミメダマ、ね。なんか祖国でも似たようなアヤカシがいた気もするけど‥‥」 と言うアクアことアクエリア・ルティス(ib0331)は闇目玉初体験。なので、アレがどういったアヤカシかは知る由もなく、まだ闇目玉先生の真の恐ろしさを知らないでいた。 「で、どこにいったのかしら?」 アクアは辺りを見回す。街中にアヤカシがいるのだからすぐわかりそうなものだが、ぱっと見それらしい姿は見当たらない。 「多分歩いてれば向こうからくると思います‥」 変態ハンターの勘がそう告げていた。奴はそこにエロスがあるのならどこにでも現れるはずと。ましてやスカート姿の美女集団(一部に変質者風の男性を含む)がいればこちらから探すまでもない。 「うん、向こうから寄って来ると思うよ」 リィムナもそう考える。根拠はない。理屈はいらない。それが真実だ。 「そんなに都合よく出てくる‥‥んですね」 はい、出ます。 アクアの目の前に巨大な目が。怪しく生暖かい風を漂わせて浮かぶ闇目玉が何の前触れもなく現れた。 ●唸る風 「あっ‥‥」 「え?きゃああああ!!?」 今更手でおさえてももう遅い。闇目玉はしっかりとルーティアとアクアのそれを捉えていた。 『水色にピンク、か』 「ちょっとやだあ!!何なのよこのアヤカシ!」 見られた。しかもちゃんと見た事まで報告してくるとはなんといういやらしいアヤカシなのだろう。 「くっ!」 両手でしっかりとスカートを守らなければまた見られてしまう。だが、このままでは戦えない。それならばいっそ『見られてもいい』と開き直るしかない。そんな覚悟に有効なのは『背水心』。覚悟を決めればちょっとやそっと見られたくらいではなんと言うこともない。 「上等だ!このルーティア・バルバロッサに後退は無い!真っ向勝負だこのやろー!」 というわけで全開です。 「若いって良いねえ」 物陰から一真が呟いた。 「ん、変態なら、人だろうと闇目玉先生だろうと容赦はしません‥」 桜狐はスカートを抑えながら動いて、式を放つ。 「そう簡単には見せてはあげられないわねぇ!」 ほろ酔い状態の恋華は酔った風な足取りで、その際どい服からのぞく脚が何ともたまらないのだが、肝心な所は見えそうで、見せない。ずるい。 普通の人ならばここで諦めるところだ。見えないものは見えない、しょうがないんだと。だが闇目玉はこういう時のために力を身につけたのだ。 『私の風から逃げられると思ったのか!』 「「 きゃあああっ」」 悲鳴が重なった先はまるでパラダイス。視覚から得られる背徳の愉悦。 『こ、これは!』 風が語りかけます。やばい、やばすぎる。 桜狐は白。しかし、ローレグ。果てしなく限界に近い領域のみをカバーするその過激さ。 恋華も白。しかし、スケスケで紐。見てる方が恥ずかしくなる位のそのきわどさ。 「若いって、すごいねえ‥‥」 物陰から一真がため息をついた。 「へっへーんだ!これはローライズだもんね!下着じゃないから全っ然恥ずかしくないし!」 『下着でないから恥ずかしくない』、これはある種の魔法の言葉ではないだろうか。見る側からすれば下着というに違いないので幸せ。見られる側からすれば下着ではないので見られても恥ずかしくなくて幸せ。このウィンウィンの関係を魔法と言わずして何と言う。 つまり闇目玉を残念がらせようという点では効果がない。だが、気を反らすという意味ではちゃんと効果があるわけで。 「戦闘中に余所見‥‥、狙ってくれと言っているような物だな」 刀を地面に刺して強風を凌ぎつつ、蒼羅は雷鳴剣を放つ。しかし、効いているのかいないのかそもそも手数が足りない。戦いはまだまだ続きそうに思えた。 ●吼える風 闇目玉に物理的な攻撃は通用しない。そのため、クラスによっては対処が難しい場合がある。そのため、アクアは攻撃に参加するのではなく、盾で仲間を守るという選択をした。 「私が皆を守るわ!来なさいこの変態アヤカシ!」 そう言われて黙っている闇目玉ではない。変態は変態と罵られることでさらにその勢いを増す。火に油を注ぐようなものだ。 『私をあまり怒らせないほうがいい』 「きゃあああ!!」 風が舞う。その風は刃となってアクアの服を切り刻む。もちろん、上昇風もついてくる。フリルが、紐が、隠されていた構造が白日の下に明らかになる。 「良い下着だった。感動した!」 男としての気遣いが必要と考えたショウの優しい言葉がさらに傷をえぐる。 「見るなぁ!見ちゃだめぇ!」 そんなショウも闇目玉に対して有効な攻撃手段がなかった。なれば物は試しと考えて、水の入った桶を手に持って闇目玉にぶちまける。 『愚か者め!!』 しかし強風に煽られその水は逆流、自分たちの方へと戻ってくる。 「ちょっと冷たいんだけどー‥」 水をかぶったリィムナの服は透けて、ない。 『それを試すのはまだ早い!!』 暖かくなり始めたとはいえ、それほど薄着ではない今の季節ではまだ透けて云々な事になるには時期尚早だ。水も大した量じゃないし。 「なんてこった!」 頭を抱えるショウ。 まあさっきリィムナは自分でおへそが見えるくらいまで上げ下げしてたから、透けなくても日焼けの後を確認することはできたのだが。 「風には風だよね!」 『この私に風で対抗しようとは!!』 こちらも風を起こせば相殺できるのでないかと考えたリィムナのウインドカッター。だが風を極めた闇目玉の前では無力。刃は簡単にかき消されてしまう。 『真の風とはこういうものだ!』 逆に闇目玉が放つ風は凶悪な竜巻となって開拓者達を襲う。 「うわああ」 巻き込まれたショウの服がボロボロになっていく。スカートから紐としか形容できない褌が露出する。誰得だ。何と勝負してるんだ、もうやめてくれ。 「桜狐!って、きゃああああっ」 仲間を庇おうとした恋華も竜巻に巻き込まれる。今度は服が捲れるくらいでは済まない。 また風が語りかけます。エロイ、エロ過ぎる。 重要な所こそ隠れているものの、それ以外は網目状でうっすら透けて見えるのは下着としてどうなのか。その重量感のある丸みを支えきれるのか。 「恋華!あ、しま、きゃああっ!」 風は勢いを弱めるどころかますます強まって、開拓者達を襲う。 「あわわわっ」 背水心といえどその効果は有限であり、時間が立てば解消されてしまう。やはり堂々としていられるよりも恥ずかしがっている方が何倍も素晴らしい。それにしてもルーティアが必死にスカートを抑えて恥ずかしがるという光景は珍しいのではないだろうか。 ●凪 闇目玉の煩悩が服を裂き、スカートを巻き上げたとしても開拓者達は諦めない。 「なぁに、これなら逆に動き易くなったわ‥‥!」 割と裸に近い状態な気がしないでもないが、古酒を呑みすぎたのだろうか。しかし、恋華の気功掌に酔いは見られない。 「頭でも冷やせば?」 頭がどこにあるとか、そもそも頭を冷やしたところで闇目玉先生は闇目玉先生なので所業が改まるわけはないがリィムナの放った冷気が闇目玉を包む。 そして仲間がピンチとなれば何時までも後ろにいるわけにはいかない。 「俺はお前を倒す!」 二天一流、二刀流の型。武器をそれぞれの手に持って戦う型である。そして一真もサムライとしてその型での戦い方を身に着けているし、無双という技も会得している。 だから一真が両手にそれぞれの武器を手にする事は珍しいことではない。しかし‥‥。 右手に褌(まだ温もりをそこに残している)。 左手に足袋(不思議な香りを醸し出している)。 いまだかつてない史上最低最悪の二天。たとえ物理攻撃が通じない闇目玉とはいえこの武器ならばという事なのだろうが、あまりにひどすぎる選択だろう。 「さあめくれるものならやってみろ!!」 「うわぁ‥‥」 「なんか匂って来た」 「最低ー」 「寒気が‥」 「へ、変態は‥」 「こじらせると大変なのね」 味方からもあがる非難の声。辛辣な言葉がざくざくと一真の心に刺さる。 『気でもふれたか?』 蒼羅の冷たい視線が一真を貫く。 『変態め』 あろうことか闇目玉先生からも暖かい励ましの言葉を頂く始末。 「‥‥ごめん、やってる俺が泣きたい」 一真は両手に布を握りしめながら、静かに涙を流すしかなかった。 「せめて幸せな幻に包まれて死ぬがいい‥‥‥」 幻を見せるその式は、程度は術者の力量にかかる部分も大きいが、阿鼻叫喚の地獄絵図も酒池肉林の極楽図も思いのまま。 つまり、あんな事も出来るしこんな事もできる。ただ、いくら足掻いても幻に過ぎぬのでいくら幸せな幻想を構築しようと全てが終わった時にはスーパー賢者タイムとなる事は請け合いである。 『おお‥』 だが、そんな事はおかまいなしに闇目玉はルーティアが見せる幻に酔いしれている。その様な痴態を見せる闇目玉に殺意を消して近づく影があった。黙して語らず、女の色香に惑うことなくただアヤカシの殲滅のみを狙っていた蒼羅はこの機会を待っていた。 「邪なる者を断ち斬れ‥‥、斬竜刀」 長大な刀身に季節外れの梅の香乗せて、振り降ろされた刀は闇目玉を深々と切り裂いた。 『この私がやられるとは‥‥信じられ‥‥ん‥ウボァー!!』 闇目玉の断末魔とともに激しく風が吹き荒れる。その風は吹き出す瘴気を霧散させ、瘴気が消え去るのと時を同じくして風は止んだ。 「‥‥風が止んだな‥‥」 思えば久しぶりの無風状態かもしれなかった。 ●戦いの後 所変わって闇の中。暗い室内の中で複数の声がする。 『風がやられたようだな』 『だが奴は四天王の中でも最弱』 『開拓者にやられるようでは四天王の面汚しよ』 『いざとなれば私が直接手を下せばいい。‥‥目しかないが』 『‥‥』 ‥‥まだ同じようなのが他にもいるらしい。それになんか四天王とか言っているわりに数が会わない気もするぞ。 「うっ‥‥ちょっとお腹冷えたかも‥?」 そりゃあ、ヘソ出して水までかけられてフローズともなればいくらなんでも冷えもするかも。リィムナのお腹の調子は気になるがとりあえず戦いは終わった。 「はぁはぁ‥‥やっと終わりました?」 桜狐の息も荒い。漸く闇目玉を仕留めたものの‥‥。 「きゃぁ!?」 服を着ているはずなのに、脱ぐよりもエロス。というかもう服という機能はすでに失われた状態の布を身につけているだけの状態と気づいた桜狐は両手で体を隠しながらその場に座り込む。 「ほら、桜狐〜着替えは用意してあるから♪」 こちらもボロボロになっているが、桜狐程気にしていない恋華が救いの手を差し伸べる。もうちょっとこのままの格好が望ましいが仕方がない。 「俺もこの有様なんだが‥」 上半身は裸、下半身は極ミニのスカートで、破れた部分から邪悪な褌のオーラを匂わせるショウ。 「‥知らん‥‥」 これは流石に蒼羅でなくても冷たい態度をとらざるを得ない。一言でいえば、『寄るな変態』。 「このまま長屋に帰れば(社会的な意味で)命はない」 「俺には関係ない‥‥」 どうやらショウには救いの手は差し伸べられないらしい。しかし、長屋の住人に見つからずに帰らねばならないのだ。 「シノビってのは隠密行動が得意じゃねえの?」 いろんな意味で人生が終焉に近づいているサムライからの言葉。褌握ってた手で肩を叩くのはやめて欲しいが、確かにシノビの力を最大限使えばあるいは‥と思わないでもない。 「うん、そうだないけるかもしれない」 「ま、がんばれよ」 「早く行け‥‥」 この二人と同類みたいに扱われるのは勘弁して欲しいと言う事なのだろう、蒼羅は早くこの場を離れたいのかショウを急かす。そしてその言葉に背中を押されるようにショウは走り去った。 そして暫く後、長屋の前でこんな大きな叫び声がしたという。 「人生終わったあぁ!!」 |