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■オープニング本文 ●迷惑な来客 「もふらも干支に加えるもふ!」 開拓者ギルドに現れたもふら様一匹。何を考えたかこのように無茶な要求をしてくる。 「そんなこと言われても‥‥」 困る。なぜ開拓者ギルドにそんなことを言うのか。 「うさぎや鼠がいて、もふらがいないというのはおかしいもふ!」 「知らないわよそんな事」 それにしても干支にもふら様を加えろなどなんという無茶な依頼だろう。 とりあえずこの件に関しては理解も権力もないので、当然ながらお断り。 「やってくれるまでここから動かないもふ!」 「いい加減にしないと怒るわよ?」 そんな所に居座られても邪魔なので、とっととお引取り願いたいのだがこのもふら様はやたら頑固なようで、全く動こうともしない。食べ物にも釣られないあたりに意志の強さが伺える。(満腹なだけなのかもしれない) そして迷惑な客は一匹だけではなかった。 『この私も干支に加えるのだ』 突如脳内に言葉が響く。 「ふざんけんじゃないわよ!!アンタなんてアヤカシじゃない!!」 なんでこんなところにいるのか闇目玉。こいつも図々しくも干支入りを要求してくる。 『龍がいて、闇目玉がいないというのは理屈が通らない』 「通るわよ!!っていうかなんでテレパシーなのよ!!」 『‥‥口が無い』 「あ、そっか‥‥。じゃなくてアンタ達いい加減に帰りなさいよ!!」 「イヤもふ」 『早く干支に加えるのだ』 なんという迷惑な奴らだ。こうなれば実力で排除するしかない。 「誰か!こいつらをなんとかして!!」 |
■参加者一覧
水月(ia2566)
10歳・女・吟
煌夜(ia9065)
24歳・女・志
村雨 紫狼(ia9073)
27歳・男・サ
不破 颯(ib0495)
25歳・男・弓
ウィリアム・ハルゼー(ib4087)
14歳・男・陰
リンスガルト・ギーベリ(ib5184)
10歳・女・泰
白仙(ib5691)
16歳・女・巫
ルシア・エルネスト(ib5729)
20歳・女・弓 |
■リプレイ本文 ●もふる 突如現れた迷惑客二匹をどうするか。 「叩きだしてやるのが早いと思うのじゃが」 リンスガルト・ギーベリ(ib5184)は問答無用で追い出してしまえばよいと思っているようだが、その反面もふら様をもふりたくて仕方ないのか彼女の手はそわそわしている。 「どうしていきなり‥‥干支に入りたい、なんて思ったの?」 普段は余り喋らない水月(ia2566)は優しく問いかける。そもそも干支になりたいと言い出した理由がわからない。干支になるとなんかいいことがあるのかな?って思いはするけれど聞いてみないことには彼らの本心はわからない。 「そうね、何でそんなものになりたいのかしら?」 ルシア・エルネスト(ib5729)もそれは謎だった。具体的な内容はともあれ、もふら様は一応神様の類として扱われているし、闇目玉もある程度有名ではある。 「干支になるとその年は特別扱いになるもふ。うさぎの置物がたくさんあるもふ!!」 「特別扱い‥‥」 たしかに年末年始はそういった物が多く扱われる。それを羨ましく思ったのだろうか。もふら様は既にそういった品物は充分にあると思うのだが。 「‥‥干支に猫がいないのはおかしいから‥‥‥私も参戦したいな」 猫族の白仙(ib5691)が小声で妙な事を口走る。まさかの三つ巴の様相を呈してきたがそこで不破 颯(ib0495)が割って入る。 「干支がそんなに言いか良く考えてみなよぉ?」 「もふ?」 短い首をかしげるもふら様。 「そもそも干支って神様の供物つまり生贄として選ばれた奴等らしいぞ」 「生贄‥」 「‥‥それに、地支というのがあって‥‥」 白仙が言うには、干支というのは物事の順序を表す言葉を動物に当てはめて分かり易くしただけなのだとか。本来は別の意味合いがあるのだが、俗世間的には分かり易い動物の事ばかりが残ってしまったらしい。 「難しくてよくわからないもふ」 「‥そんな‥‥」 白仙が、その地支ともふら様と闇目玉はどうやっても紐づかないという話を丁寧にしたのだが、『難しい』の一言で片付けられてしまう。 どうやらこの戦い、長くなりそうである。 ●浪漫 『闇目玉が干支になっちゃったとして、その年生まれの女の子が可哀そう過ぎる気がするわ』 口にこそ出さないが、煌夜(ia9065)は素直にそう思った。それに男の子だって歪んだ性癖の持ち主に育ちそうだと煌夜は胸元に強い視線を感じ取る。 「やっぱり闇目玉年は有り得ないわね」 それに仮に闇目玉を干支に加えようものなら、他のアヤカシまでやってきそうで面倒な事になりそうだ。元より干支に入れる事は出来ないのだが、諦めさせる以外に道は無い。 一方村雨 紫狼(ia9073)は憤っていた。干支入りを要求する闇目玉に激しい怒りを覚えていた。 「お前には、エロパワーで女の子開拓者をエロピンチにするって立派な仕事があんだろ!?」 紫狼には闇目玉が本来のあるべき姿(?)を見失ったとしか思えない。同じ浪漫ニストだと思っていたのに闇目玉の行為は横道に逸れている。 これは裏切りだ。何の約束の覚えも無いが裏切りとしか思えないのだ。 浪漫ニストたれば、何時如何なる時とて本能が導くままに、至高たる欲望を追求せねばならぬ。そこに脚があれば白き神秘と秘められし謎に煩悶し、そこに胸があればその大小を問わず半球の造形美を吟味せねばならぬ。 と、いう訳である一点の造形美について注目してみる事にする。それはウィリアム・ハルゼー(ib4087)の巨大な胸だ。しかし彼はこう見えて男である。だが、女だと思っていたのに『実はボクは男です〜』と落とされるのは精神的なダメージが大きいが最初から『男の娘』として見ていれば、アリだ。 で、ウィリアムは男なのでその巨大な胸は偽胸という凶悪な装備である。彼はその偽胸をもってより『男の娘』としての完成度を高めているのである。 そしてその偽胸は大きいわけだが、どれくらい大きいかというと具体的にはウィリアムが着ている千早「如月」では20cm以上足りない。それはもう眼福というよりも苦しくないのか、爆発したりしないのかと不安になる程だ。 「闇目玉様が干支なんて勿体ないです!折角のステージ衣装なので闇目玉様のために歌っちゃいます♪」 ウィリアム曰くその苦しい千早はステージ衣装との事。 どうやらこの戦い、カオスになりそうである。 ●もふもふ責め 「干支に入るなら屈辱に耐えねばならぬぞ?」 リンスガルトがもふら様に言う。干支となった獣はことごとくが従順な家畜とされるか害獣か食料となる定めと。 「確かに干支になったら神様じゃないしなあ」 「もふ?」 颯がもふら様を見下ろしながら言う。今でも家畜の様な労働をしていないこともないが、もふら様はこれでも神様だ。それが干支になると言う事は神様ではなくなるという事。 「ぶっちゃけそうなると、ただの家畜だよなぁ?」 「そうよ、神様なんだから今の方が立場が上なのよ」 ルシアも言うとおり、もふら様は神様の立場を知ってか知らずか捨てようとしているのだ。もし神様でなければもふら様など様をつける必要もない。『もふら』だ。 「干支にお参りする人はいないでしょう?ほら、モフテラスのお守りとかあるけど他はないし」 まあそのお守りに効能があるかどうかはおいといて。 「‥‥もふら様は‥‥縁の下の力持ちなとても偉い神様なんだから‥干支にならなくても‥充分だよ‥‥」 結局は白仙のこの一言に尽きるわけだが、この純粋な気持ちにすら応じず、頑なに意見を変える事がない。 「神様で干支になればいいもふ」 このもふら様、相当我侭である。 「そうまでして干支に入りたいなら、屈辱に耐えられるかどうか妾が試してやろう」 そう言ってリンスガルドはブーツを脱ぎ、ソックスまで脱いで素足となった。 「仰向けになれ。そうじゃ‥動くでないぞ」 「こうもふ?」 干支以外の事は素直に言う事を聞くもふら様はころんと腹を出して寝転がる。そして、その腹へリンスガルトの足が乗せられる。 「も、もふっ!?」 『幼女が素足で‥』 「闇目玉様も踏んで欲しいんだったら、ボクが‥」 「俺も混ぜろぉぉ!」 と外野はさておいて、もふら様の腹をリンスガルトの足が攻める。指先で肉を挟んだりしながらその反応を楽しんでいる。ふわふわした触感がややくすぐったくもあるが。 「もっふもっふもふふふ!!」 一方もふら様は気持ち悪い声を上げているが、喜んでいるのか苦しんでいるのかちょっとよくわかりません。 「だめですよ、そんな事したら」 神様なんだから、と水月がリンスガルトの足をどけてもふら様を抱きしめて頬擦りをする。白仙も手を置いて水月に負けず、もふら様のもふもふ具合を堪能する。 「こんなにもふもふしているのに干支になる必要なんてないです」 「‥‥うん、すごくもふもふしていて素敵‥‥」 「そうよね、可愛いし」 ルシアはつんつんともふら様の頬をつついた後、軽く摘む。若干イラッとする表情を見せることがあるものの、基本的にもふら様は可愛い。そして今度こそ間違いなく満足気な顔つきのもふら様を見てリンスガルトも結局飛びついた。 「ずるいぞ、わしにももふらせるのじゃ!」 四人にもふられているもふら様を見て颯が言う。 「干支になる必要なんて、ないだろぉ?」 「これで干支になればもっと扱いが良くなるもふ」 「駄目だなこりゃ」 颯は肩をすくめる。本当に厄介なもふら様である。 ●浪漫勝負 『勝負‥‥?』 「そうだ、それもただの勝負じゃねえ。浪漫二スト流の勝負だ!!」 正月から血みどろの死闘など似合わないと紫狼が提案するその勝負。勿論ただの勝負であるはずはない。 だが、紫狼はさも当たり前ともいわんばかりに拳を握り締めそのルールを発表する。 「ここにいる女の子全員の3サイズと今日の下着の色を言い当てる!!」 『‥‥!!いいだろうこの勝負、負けるわけにはいかぬ‥‥』 「あのっその女の子の中に男の娘も入りますか!?」 妙に乗り気なウィリアムがハイッと手をあげる。そもそも彼のスリーサイズは一部偽装だがその辺はどういう扱いとなるのだろうか。 「可愛いからOKだっ!」 「そんな可愛いなんてっ。でもボクは闇目玉様が‥」 あ、OKなんですね。可愛いという言葉に照れるウィリアム。だが、勝負に巻き込まれた女性陣の反応は当然ながら悪い。かなり悪い。いや、最悪だ。 『イヤ』とふるふる首を横に振る水月。言葉こそ発しないもののその瞳には強い固辞が感じられる。それと、なんでこの人達はこうなんだろうという疑念の思いも感じられる。 「妾を何だと思っておるのじゃ!!」 リンスガルトは激高し、鞭を唸らせる。そんな様子を見て颯はふと口を滑らす。 「いや、子供は流石に対象外だろ?」 「子供とはなんじゃ!」 「幼女のすばらしさがわからないのか!?そうだ俺がロリコンだ!!」 『このロリコンめ!!』 混沌具合が増してきた。『‥‥どうしよう。行ったら最後‥‥抜け出せなくなる』とひたすら距離を置く白仙。彼女はただ闇目玉を見つめる事しか出来ない。っていうか見つめてていいのかアレを。 とりあえずどうなっているか良く分からないので微笑んでみる。 それはそうとして、勝負の対象にリンスガルトや水月までを対象にすると色んな意味で危うい。障子を突き破るまでもなく不味い感じだ。 「小さい子は不味いわ。彼女達が犠牲になるくらいなら私が‥‥」 煌夜は崇高なる自己犠牲の精神の持ち主だ。そして実にすばらしい体型の持ち主だ。勝負の対象とするに申し分のない逸材である。 「で、どうやって正解を?」 それにしてもこの男の娘、ノリノリである。 「闇目玉様に見つめられたからって興奮したりしてませんからねっ!えっちとか言わないでくださいませっ!」 とやましい視線を感じ取ってはおおはしゃぎだ。 「それはだな、俺と闇目玉で公正に見て、量って確認するぜ!!」 「(紫狼さんはどうでもいいけど)闇目玉様がボクの体を‥‥、そんな、想像するだけでっ!」 大変な事になった。 このままではこれから後が全て『お花畑』とか『ナイスな船』のイメージ差し替えで終わってしまう。煌夜もあんな事言わなければ良かったと思いつつもおかしなことに気付く。 そういえばこの勝負ってやる必要あったっけ‥‥? 「なんでこんな事する必要があるのよ!!」 良く考えたら両者ともに勝っても負けても、結果として浪漫ニスト達は大勝利である。この勝負は巧妙なトリックが張り巡らされた卑劣な罠だったのだ。 「イヤジョウダンデスヨダカラブキヲシマッテクダサイ‥‥」 こうして青空の様に顔を青ざめた残念な爽やか好青年、神楽の都在在住の開拓者村雨紫狼(27)は懸命な弁明を繰り返すのだった。なお、共犯の闇目玉(住所不定、アヤカシ、年齢不詳)は 『知らない。話をしていただけ』 と容疑を否認しており、引き続き干支入りの要求を続けていく方針とのこと。本当に厄介な闇目玉である。 ●もふしん 結局もふら様も闇目玉も引き下がらず、話し合いはまとまらなかった。 「もふら様と闇目玉さんで、勝った方が干支に相応しいとすれば?」 なんて煌夜は言ったりもしたが、 「その手にはのらないもふ」 と小賢しいもふら様に却下されていたりした。もし戦うのだったら、もふら様を応援しようとしていたのに。 「早く帰りなさい!」 いつまでも居座るこいつらに苛立つ彩の怒声に、迷惑客二匹は顔を見合わせると意外な行動に走り出す。 「『合体!!』」 もふら様と闇目玉は跳躍すると、空中で重なり合う。すると突如空間が歪み、二体は解ける様にその歪みへと吸い込まれていく。眩い光が辺りを包んだかと思えば、そこには異形のものが一体鎮座してた。 三つ目になったもふら様に黒い触手の様なものがウネウネしていて、もふもふ感が失われてその代わりに艶のある微妙にいやらしい気配のある毛並みに変わっている。 「これはまさか、『もふしん』!?」 彩が驚きの声を上げる。なんと、もふら様+闇目玉の二神(?)合体で『もふしん』に。 「そんな、こんな変なものに‥‥」 水月がさも残念そうに言う。さっきまで撫でていたそれはもはやもふら様ではない。ただのアヤカシだ。 「闇目玉様ぁ‥‥」 ウィリアムの愛した闇目玉もいない。 「‥‥それ以上、いけない‥」 何かを悟ったかのように白仙は身構える。もう、交渉は終わりだ。 「決裂したんだからしょうがないよなぁ〜」 と躊躇無く弓を放つ颯。その表情には残念といったものは微塵もなくむしろ清清しい爽やかさすら感じられる。 「さっさと消えなって〜」 即射、六節、朧月とスキルの限りを尽くして撃ちまくる颯の手は止まらない。白仙が神楽舞でサポートしているのだ。 「‥‥もうこんなんじゃ、干支は無理‥‥」 白仙は舞い続ける。こうなってしまえばもうやるしかない。 「そうね、仕方ないわね」 藍色の弓を引き矢を放つルシアもどうしようもないとどこか醒めた表情だ。もう後は倒すだけとその矢は容赦が無い。先程まで愛でていたもふら様とは全くの別物と、矢は次々に放たれる。 「早く帰った方が身のためよ?」 「こうなれば出て行ってもらうしかないのう‥‥」 リンスガルトの鞭が床を打つ。まさに『おしおき』と言う言葉が似つかわしいその姿。そして鞭は空を舞い、蛇の如くもふしんに肉薄する。が、 「ぐえええぇ!!」 その鞭はもふしんに届く事無く、直前で紫狼の尻を強打する。 空気が裂ける音なのか、紫狼の尻が四つに割れる音なのか、この手の武器に独特な音が強く高く響く。 「長鞭は不慣れなのでな、まあ許せ」 「痛えぇ!でもなんか幸せだあぁ!!」 しかしさすが紫狼はロリコンである。幼女に鞭で打たれるとはかなりマニアックで痛そうなのだが、それでも悦んで転げまわっているので大丈夫だろう。 『真の干支の力‥‥‥思い知るが良い』 とでも言わんばかりに何故かやたらとダンディズムで男前なうさぎ型の式が飛ぶ。その耳は鋭く触れたものを切裂くだけの力がある。 水月がそんな斬撃符をもふしんに一通り飛ばし終わると煌夜がもふしんの前に出る。 「しつこい男は嫌われるから!!」 煌夜はありったけの力を込めて、木刀を振るう。 文字通り叩きだされたもふしんはホームランよろしく豪快な軌道を描いて飛んで行く。 「また来年〜」 星になりつつも捨て台詞を残すもふしん。 「もう来なくていいわよ!!」 彩はそう言い返すのを忘れなかった。 ‥‥そして、目が覚めた。 目を開ければ見慣れた天井、見慣れた部屋。そこにはもふしんも開拓者もいない。彩一人だけだ。 状況を把握して一寸考えをまとめると彩は手で目を覆うと呟いた。 「まさか、これが初夢ってわけ‥‥?」 一もふら様、二闇目玉、三もふしん。はたしてこれは縁起がいいものか。兎角、彩の新年はこうして幕を明けるのだった。 |