【城】砂漠の進入路開拓
マスター名:馬車猪
シナリオ形態: ショート
危険 :相棒
難易度: 難しい
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2011/11/09 19:42



■オープニング本文

 数百年の間、誰も生きては帰ることの出来なかった砂漠から開拓者が帰還した。
 それは快挙であり、多くの者がより詳しい情報を知りたがった。
 しかし依頼人とその意を受けた担当者は詳しい情報を一切表に出さない。
 少しでも情報拡散を防ぐ意図があるのか、アル=カマル開拓者ギルドではなくわざわざ天儀の開拓者ギルドを使い砂漠の調査を続けるらしい。
 かつて存在した城の大まかな位置と、砂漠の外縁部に存在するアヤカシの種類は、開拓者の手により明らかになった。
 続いて行われるのは戦力を増強しての進入路の確保である。
 前回の調査により、この砂漠が放棄された時点ではデザートゴーレムより強力なアヤカシは存在しなかったことが判明している。
 だがそれから数百年が経過しているため、より強力なアヤカシやサンドワームが未調査領域に潜んでいる可能性も十分にある。
 今回の依頼は前回と同じく、砂漠の中にあると思われる湧き水と城を探し出すこと。
 幸いなことに、砂漠の端から見える範囲にある石壁の目印は無事である。
 アヤカシの数を減らすだけでも成功の扱いとなるが、少しでも目的に近づくことが期待されている。


■参加者一覧
羅喉丸(ia0347
22歳・男・泰
ルオウ(ia2445
14歳・男・サ
朽葉・生(ib2229
19歳・女・魔
鳳珠(ib3369
14歳・女・巫
エラト(ib5623
17歳・女・吟
アムルタート(ib6632
16歳・女・ジ
アルバルク(ib6635
38歳・男・砂
サクル(ib6734
18歳・女・砂


■リプレイ本文

●崩れる不可侵
 開拓者が使用する龍は、比較的速度が遅いものでも時速30キロメートルを出すことができる。
 無論これは最高速度であり、長時間出し続けられる速度ではない。
 しかしその短時間で足りてしまうことも多いのである。
「ありました。地平線から複数の尖塔が突き出ています」
 バダドサイト発動中のサクル(ib6734)は、10キロメートル以上先にある建造物に意識を集中していた。
 突然横向きの風が吹くが、騎龍であるシュムースは鱗の間に入り込む砂に辟易しながらも器用に風を受け流し、安定した飛行を続ける。
「そのちょい右だな。何も生えてないが湿気ている。あれが水場だろ」
 アルバルク(ib6635)は早々にバダドサイトを解除すると、10秒程の時間をかけて視覚を通常の物に戻し手元の地図に記入する。
「よし。依頼完了だ。宿に戻って酒でも飲もうぜ!」
 宣言するアルバルクだが、冗談を言っている気配は全く無かった。
「こらー」
 鷲獅鳥が激しく翼を動かし、その背に乗せた小さな主人をアルバルクに近づける。
「あまり早く帰ったら美味しいご飯を食べられないじゃない」
 鷲獅鳥のイウサールも首を上下に振っている。
「龍達の食事も無料でしたからね」
 バダドサイトを解除したサクルは遠い目をする。
 普段食べている物より数段グレードが高い食事をした龍達の機嫌は良いようで、強い日差しと不安定な風の流れに負けずに頑張っている。
「何か見えませんでしたか?」
 日差し避けに被った市女笠をさらにきつく固定しながら、鳳珠(ib3369)が風に負けないよう大きな声を出す。
 ルオウ(ia2445)と羅喉丸(ia0347)は一瞬だけ視線を交わして意思疎通を終えると、徐々に速度を上げ進路を斜め上に変更していく。
「私が」
 サクルが言うとアルバルクはいつでも銃を撃てる状態を保ちつつ、どこから襲撃を受けても良いよう緩やかに旋回を開始する。
 再度バダドサイトを発動させたサクルは、鳳珠が示した方向を探る。
 見えるのは、水量が豊かなのに苔一つ生えていない無人の水場。
 5キロメートル以上離れているので細部までは分からないものの、水面が大きく波打っているようにも見える。
 目の焦点を後方にずらしていくと、怪鳥に見えなくもない影が一瞬視界に入る。
 しかし距離が近づきすぎたのか、詳細な部分まで確認はできなかった。
「高速。2体です!」
 距離が離れつつあるルオウ達に届くよう叫ぶ。
「りょーか‥‥凶光鳥かよっ?」
 近づいてきたのは怪鳥と同じく鳥型ではあるものの、怪鳥と比較して数倍の大きさと速度を持ち、戦闘能力に至ってはそれ以上に大きな差があるアヤカシだった。
 滑空艇を急加速させたルオウは仲間の前に移動して壁になろうとする。
 が、敵との距離が100メートルを切ったところで後方から銃声が響いた。
「おい待て、怪鳥は鳥並みの頭しか持ってないはずだろうが」
 銃口から煙をあげる火打ち式小銃からダマスクスブレードに持ち替えつつ、アルバルクが急降下を開始する。
 向かう先にいるのは、砂の中から姿を現し急上昇を開始した怪鳥が数十羽。
 アルバルクが機先を制して頭らしき一体を始末したので勢いは弱まっているが、敵の数はあまりに多すぎた。
 俊龍のサザーが火炎で牽制し、アルバルクが美しい刃紋の件を振るう度に怪鳥が分解されつつ吹き飛んでいくが、そのほとんどが上方に抜けて行ってしまう。
「だめだめ〜。こっちだよ♪」
 紅の鞭が大きく振るわれ、大空に炎が渦巻くような軌跡を描く。
 アムルタート(ib6632)の鞭の射程圏内にいた怪鳥達は、胴を、翼を、頭を変形するほど打ち据えられ、動きを止めて砂漠へ落下していく。
 砂と衝突する前に瘴気に戻っていくのだが、それを確認する余裕のある者はいない。
「こぉぉぉいっ!」
 自らと怪鳥集団の間に仲間がいる形になっていることに気付いたルオウは、前進することで怪鳥を効果範囲から外し、その上で咆哮を発動する。
 凶光鳥は下級アヤカシとしては上位の存在とはいえ、とてつもない体力を誇るルオウの呪縛を跳ね返せるほどの抵抗力は持っていない。
 さらに加速した凶光鳥の勢いは、並みの龍なら一撃で倒しかねない凄まじいものだ。
 しかしルオウにとっては、自ら首を差し出しに来たのに等しい。
 衝突の直前、先手をとったルオウは一呼吸のうちに3つの突きと1つの斬撃を放つ。
 突きで頭部と翼の付け根に穴を開け、最後の振り下ろしで凶光鳥の首を飛ばす。
 それで凶光鳥は全ての活動を停止したのだが、瘴気に戻りかけの体は勢いを減じつつもルオウに直撃しようとする。
「なっ?」
 首のない凶光鳥は軽々と回避するが、シュバルツドンナーにどこからか飛んできた怪光線が直撃する。
「2羽います!」
 後方で瘴索結界「念」を発動させていた鳳珠が叫ぶ。
 ルオウが改めて首無しに目を向けると、その腹に張り付くようにして、凶光鳥としてはかなり小柄なアヤカシが移動しつつ怪光線を放っていた。
「私は耐えられますが長期戦は不利ですよ」
 一同の生命線である鳳珠を背にかばい、怪鳥を打ち払いながらサクルが叫ぶ。
 サクル自身は怪光線の直撃を受けても耐えられる。
 が、その騎龍であるシュムースはそうはいかない。
 経験を積み重ねた龍達が参加しているとはいえ、飛行能力を除いた戦闘能力は主人に比べるとかなり劣る。
 特に抵抗が低めなのが問題だ。凶光鳥が撃ってくる怪光線は、術に近い知覚攻撃で、通常攻撃とは比較にならないほど射程が長く、離れていても当てられかねない。
「行くぞ頑鉄」
 羅喉丸は騎龍と共に生き残った凶光鳥の進路に割り込む。
 背後からは怪鳥が襲いかかってくるが、羅喉丸は持ち前の防御の堅さで、頑鉄は練力で龍鱗と鎧を強化することで耐える。
 凶光鳥は1羽目が変じた瘴気を突っ切り金のくちばしで羅喉丸の顔面を貫こうとする。
 距離的に回避しようがない一撃だったが、羅喉丸はくちばしの速度が最高速に達するより前にそっと横に押し出し、外から見れば軽々と、実際には恐ろしく高度な技術を使って敵の攻撃を無力化する。
 最初の一撃で羅喉丸にかすり傷しか負わせられなかったアヤカシが狙いを変え、見るからに頑丈そうな甲龍に対して怪光線とかぎ爪を直撃させる。
 どちらも直撃だったが、甲龍は耐えた。
 空中にいるとは思えないほど安定した動きを保ち、主に攻撃のための足場を提供し続ける。
 主である羅喉丸は、まとわりつく怪鳥を裏拳や肘打ちで瘴気に戻していくが、もとの数が多いのでそれほど減ったようには見えない。
 敵味方が入り乱れて混沌としてきた戦場に、場違いなほどゆったりとした旋律が響き始める。
 サクルやアルバルクが確保した安全な空間で、エラト(ib5623)がリュートをの演奏を開始したのだ。
 傷つきながら開拓者達に迫ってきた凶光鳥も、数の優位を活かして小さなダメージを積み重ねてきた怪鳥も、全てが眠りの魔力に囚われる。
 一応飛行に向いた形状なので、アヤカシ達も意識を失って即落下とはいかない。
 しかし即座に意識を取り戻す手段が無い以上、緩やかな降下から急角度の降下へ、急角度の降下から大地に引かれた高速の落下へと変わっていく。
「イウサール、ぺっとしなさい!」
 アムルタートが鞭で拘束していた怪鳥を離し、その朋友である鷲獅鳥も啄んでいた怪鳥を解放する。
 アヤカシが地面との衝突で止めが刺されるのは、それから十数秒後のことであった。

●壊れた道しるべ
「ここも一部壊されていますね」
 朽葉・生(ib2229)は前回設置した石壁を確認しながら小さく眉を寄せた。
 前回目印として設置した石壁の半分ほどが破壊されている。
 砂漠の中心に近い場所は特に酷く、ほぼ全滅だった。
 上空で警戒を続けていた迅鷹ヤタが、鳴き声で鋭く警告する。
 素早く周囲に目を向けると、いつの間にか不自然な砂の盛り上がりがいくつもできていた。
「決め手に欠けますね」
 騎龍を連れて来ていれば空から一方的に術を浴びせることもできただろうが、今回連れてきたのは小回りが効くかわりに開拓者を背に乗せる力だけのはない迅鷹だ。
 ここは戦うよりも迅鷹によって得られた時間的余裕を活かし、一度下がるべきだろう。
 生が駆け出すと、上空のサクル達が発砲し、あるいは龍に炎を吐かせて撤退を援護してくれる。
 とどめにアムルタートが狼煙銃をサンドゴーレムの群れの中にぶち込んだことで、中途半端に頭がよいアヤカシ達は開拓者の意図を読めず混乱してしまう。
「今回はここまでですか」
 サンドゴーレムが数体突っ込んでくる。
 生け捕りにして他の開拓者を地上に誘き寄せるつもりか、手を大きく広げ数体がかりで生に抱きつこうとしていた。
 しかしアヤカシの意図は露骨すぎた。
 生はサンドゴーレムの群れの意図を悟ると全速で後退を開始し、後方を塞ごうとしていた巨体と巨体の合間をすり抜けるようにして宿がある村を目指す。
 砂から上半身だけを出した形状のアヤカシは、その大きな腕を振り回して生を追う。
 だが上から降ってきた柔らかな旋律に思考を冒され、まるで項垂れているかのような姿勢で意識を失い動きを止める。
 生がアヤカシの群れを抜けると、危険を承知で低空にとどまっていた開拓者達は高度を上げていく。
 動きを止めていたアヤカシが無事だったアヤカシに目覚めさせられる頃には、生は空を飛べでもしない限り追いつけないほど遠くへ逃げ去っていたのだった。

●夜の宿(宴会場)にて
「どこかに拠点を作るに良いところが無いか?」
 アルコール度の高い酒の瓶をハイペースで空にしながら、アルバルクは酒臭い息と共に意見を口にする。
 砂漠に入って暑さと砂と水不足に毎回苦しめられるのは、耐えられはするがやっていて楽しいことではない。
 ここはひとつ、スポンサーの財布を利用して一気に楽をしたかった。
「砂漠にはサンドゴーレムがいます。作っても壊されたり罠を仕掛けられる可能性がありますから」
 今回壊された石壁の補充を行ってきた生が答える。
「どうしたもんかねー」
「もんかねー」
 新鮮な果物を搾った果汁を一息に飲み干してから、アムルタートは細い腕を組んでうんうん唸っていた。
 砂漠の中に拠点が欲しいのは彼女も同じだ。
 出かけるときは元気いっぱいだったイウサールも今ではすっかり疲れ果て、今では風通しが良い天幕の下で熟睡している。
「魔の森とまではいきませんが、全体的に瘴気の濃度が高いです。一度アヤカシを討ち果たした場所でも短期間で別のアヤカシが現れるかもしれません」
 鳳珠の言葉に、皆から落胆に近い吐息が漏れる。
「幸い天候は安定しています」
 あまよみでは2日後までの天気の変化しか分からないが、複数箇所を2回調査しても荒れた天気は見えなかった。
 悪天候に対する備えを怠ることはできないとはいえ、アヤカシさえなんとかできれば物資の運び込みや建築そのものにはあまり苦労しないと思われた。
「そのことなのだが」
 羅喉丸が難しい顔で口を開く。
 戦場でも平常心を貫く彼らしくない表情に、皆の注目が集まる。
「この砂漠周辺の部族の力を借りるのは難しいらしい」
 スポンサーは控えめに表現しても敬遠されている。
 政治力と金である程度の無理は通せるが限界はあり、砂漠という過酷な環境で重量物の運搬や大規模な建築を行える貴重な人材を確保するのは不可能に近いらしい。
 羅喉丸が砂漠に入る前に教えを請うた砂漠の案内人も、所属する部族の上の方からの指示があるため一定以上の協力を行えないと言っていた。
 その一言を引き出すためにかかった必要経費、というか鼻薬は、羅喉丸が今回の受け取るはずの報酬より多かった。
「全て我々の手で行う必要があるということですね」
 エラトがまとめると、開拓者達はそれぞれのやり方で肯定の返事をする。
 最初から大きな仕事になるのが分かっていたせいか、嫌がっている雰囲気は無い。
 宴会や情報交換が行われている客室から離れ、寝室に入ってから誰もいないことを確認し鍵をかける。
 自分自身が書いた地図と仲間から預かった地図を備え付けの机に広げ、全てを確認しながら無地の羊皮紙に新たな地図を描いていく。
 最初に描くのは砂漠の形だ。
 これはスポンサーが手段を選ばず入手した軍事目的の地図に基づいているため情報は正確だ。
 続いて、砂漠の端から緩やかに曲がっている線が中央に向かって伸びる。
 これは開拓者が2回往復した場所だ。
 各人の地図はそれぞれ少しずつ異なっているため、一致している部分のみを記入するとこうなった。
 次は少し窪んだ地形にある水場。
 動物も、草木も、苔すら見あたらなかったということだから、不用意に近づくと毒か何かにやられる可能性もある。
 最後に地図の中央に3つの尖塔を描き入れる。
 これが、現在最も詳しく正確なこの地域の地図である。
 エラトはインクが乾いたのを確認すると、分厚い革製の封筒に入れてから厳重に封をするのだった。