【AP】いきなり最終決戦
マスター名:馬車猪
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: 普通
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2013/04/10 00:52



■オープニング本文

※このシナリオはエイプリルフール・シナリオです。
オープニングは架空のものであり、ゲームの世界観に一切影響を与えません。

 開拓者ギルドは消滅した。
 天儀の都、ジルベリアの帝都、アル=カマルの王都の地下から現れた超級アヤカシ達。
 彼等は各国の開拓者ギルドを物理的に消滅させ、上級アヤカシを率いて人類絶滅のため動き出した。
 残存する儀は開拓者に最後の武器を託す。
 避難民を護衛してきた開拓者や、壊滅した儀で必死の防戦を行う開拓者のもとに、人類が有する全ての宝珠を使った武具が届けられた。

●悍馬
「なんてじゃじゃ馬だ。私じゃ扱いきれませんよ」
 一体成形の総宝珠製長銃を差し出された中戸採蔵(iz0233)は、真っ青な顔で拒否をする。
 志体が強烈に刺激されたらしく、心臓が普段の倍は速い速度で動き、全身から冷たい汗が流れ出している。
「そうか。アーマーは?」
「つ、使えませんって」
 技術者の背後にはジルベリア帝国の各種アーマーが並んでいる。
 未起動状態のはずなのに、超大型の宝珠を組み込まれたアーマーは上級アヤカシ以上の威圧感を放っている。
「最終攻撃は本日の正午だ。それを過ぎれば」
 技術者が凍てついた目で生き残りの開拓者を見渡す。
「天儀が崩壊する。おそらく現在無事な儀も崩壊に巻き込まれる。…武運を祈る」
 決戦まで残り数時間。
 この戦いが全てを決める。

※このシナリオはエイプリルフール・シナリオです。
オープニングは架空のものであり、ゲームの世界観に一切影響を与えません。
大事なことなので2度書きました。


■参加者一覧
三笠 三四郎(ia0163
20歳・男・サ
からす(ia6525
13歳・女・弓
リューリャ・ドラッケン(ia8037
22歳・男・騎
サーシャ(ia9980
16歳・女・騎
御形 なずな(ib0371
16歳・女・吟
アリエル・プレスコット(ib9825
12歳・女・魔
暁 久遠(ic0484
22歳・男・武
島原 左近(ic0671
25歳・男・サ


■リプレイ本文

 天儀は滅んだ。
 緑は枯れ、海は干上がり、空は高密度の瘴気で覆われていた。

●先行部隊
 2体の甲龍から人影が滑り落ちる。
 かつて豊かな海があった荒野に着地した暁 久遠(ic0484)は即座に詠唱を開始し、島原 左近(ic0671)は刃渡りだけで身の丈を越える大刀を手に周囲を警戒する。
 地平線にアヤカシを見つけ、左近は苦笑して刀を構え直す。
 敵の数は万を超えた軍団規模だ。
 得物で殴って退けるには少々多すぎた。
「おっと」
 空の彼方から飛来する光弾に気付きいて目を細める。
 人類に残った最後の陸戦アーマーによる砲撃が始まったらしい。
 地平線の近くに眩く巨大な球が生じ、いくつものキノコ雲が生まれてアヤカシの軍団を消し飛ばしていく。
 だが、アヤカシから感じられる威圧感はほとんど減っていない。
「さすがに超アヤカシを倒すのは無理か」
 久遠に目を向けると、詠唱が完成に近づきつつあるようだった。
「大地を統べる王、猛る炎の王。吹き荒ぶ風の王、母なる水の王よ。我が身、我が魂を捧げ奉らん。ここに偉大なる御身顕し給え!」
 時間の流れが不規則になり、巨大すぎる精霊力が顕現し空間を蝕んでいく。
 地霊王が視界を妨げる濃厚な瘴気を祓い。
 火霊王が武具の力を限界以上に引き出し。
 風霊王が体の反応速度を異次元の領域まで引き上げ。
 水霊王が命の火の消えかけら肉体を支えて最期の戦いのための力を与える。
「ふむん」
 一歩で音の壁を破り、水平線の向こう側から飛来した黒い影に一太刀を見舞う。
 灼熱の刃は鋼鉄以上の強度と粘りを持つ肌を切り裂き、だが骨は絶てずに逃げられてしまう。
 人類史上有数の結界が悲鳴をあげている。まず間違いなく、アヤカシの頂点である超アヤカシだろう。
「火霊王よ、その灼熱の腕もて、我が敵を焼き尽くし給え!」
 久遠の口から鮮やかな赤が零れると同時に、左近が辛うじて防いだ何かが炎に包まれる。
 大きさは裕福な町人の家程度。
 猫科の肉食獣の獰猛さだけを誇張したように見える形であり、大地を切り裂く爪牙も筋肉も艶めかしく黒くぬらついている。炎で焼かれ表面が削れても、削れた分まで再生して元に戻っていく。
「ところで青年や。さっきっから超高位精霊の大判振る舞いだが、体に影響はないんかい?」
 空間が悲鳴をあげる殺意を真正面から受け止めながら、左近は敢えて気楽な口調で問いかける。
「隠せませんか」
 炎を維持しながら目前の超アヤカシの逃げ道を封じるための術を編みつつ、久遠は淡く微笑む。
「痛覚遮断の符があるので動けていますが、この息苦しさから察するに片肺は潰れていますね」
 口から言葉を発せられないので術を使って伝達している。
「召喚を維持できるのは四半刻が限度でしょう。それまでに片付けてくださいね?」
 その笑みに曇りは無かった。
「これ以上逆縁を重ねるのは御免被りたいやね。おっさんより先に死んでくれるなよ?」
 弟を重ねて見てしまった彼は、久遠のために命を捨てるつもりだった。
「努力はしましょう」
 左近の背に懐かしいものを感じはしたが、久遠の決心は揺るがない。
 天儀の大地を支配する超アヤカシをこの場につなぎ止める結界を維持しながら、己の魂まで注ぎ込んで左近の強化に当てる。
 目の前の2人が自身にとっての死に神であることを悟り、陸上型超アヤカシが一瞬にも満たない時間で音速を突破し久遠を狙う。
「てめぇの相手はこっちだ!」
 久遠を背で庇い、全身全霊を込めた咆哮で超アヤカシを呪縛する。
 久遠の魂を燃料に燃える刃が、超アヤカシの喉元から口腔、脳へと貫通する。
 しかし超アヤカシの勢いは止まらず、1本1本が名刀並みの切れ味を誇る爪が久遠に向かって伸びる。
「にいさん!」
 左近は、己の分厚い胸板で爪を受け止めていた。
 うち1本は、確実に心の臓を貫いている。
「いい加減…くたばりやがれってんだよ!!」
 燃え上がる刃が超アヤカシの脳を蒸発させ、振り下ろす刃が超巨大肉食アヤカシを縦に両断する。
「ったく…無茶するなって言ったのによ」
「そっちこそ」
 男達は穏やかに言葉をかわし、全ての力を失い乾いた大地に倒れ伏した。

●終わりのはじまり
 滑空艇がアル=カマルに向かっていた。
 甲虫を悪意で以て戯画化した外見。
 その禍々しいものを駆るのがアリエル・プレスコット(ib9825)。
 わずかに生き残ったジルベリア騎士の1人である。
 彼女が向かう大地には、サンドウォームに見える何かが蠢いている。
 大皿の上でゆっくりと動く蛆のようにも見えるそれは、実際には巨大という表現では到底足りない上級のアヤカシだった。
 もとは他の儀からの飛空船を向かえる玄関口であり、今は中戸採蔵(iz0233)とその相棒を含んだ守備隊が立てこもる港湾要塞の上空で、滑空艇が無数の部品に分解される。
 部品はアリエルの小柄な体を薄く覆い、透き通る両眼と頭頂部を隠す形に変じ、そして、自らと操者を繋ぐために触手を伸ばす。
「っ」
 極細の金属糸が可変アーマーとアリエルの脳を直結する。
 小さな口から声にならない悲鳴が零れ、幼くはあっても奇妙な色香を感じさせる肢体が小刻みに震えていた。
 背中からずるりと翼が生え、超アヤカシに匹敵する力が、明らかに瘴気の混じった強圧的な力がアリエルから翼に供給され灰色の光を放つ。
 一瞬遅れて異形のアーマーを中心とする衝撃波が生まれ、人も、大地も、アヤカシも全てまとめてなぎ払った。

●瘴気の渦へ
 十の宝珠機関を内蔵する駆鎧「機械皇」。
 清浄な光を放つ剣を振るい、光り輝く巨人の翼を切り裂いた。
 巨人が怒りをあらわにすると、空間がその意思に従い駆鎧を砕こうとする。
 だが、空間が動いたときには機械皇の姿は消えていた。
 背中に取り付けられた、小型化されているとはいえもとは飛空船用の推進器を全開にして落下する巨人を追い抜き、地表すれすれで逆噴射して無理矢理に速度を0にする。
 右腕の魔槍砲型砲門を展開。
 最高純度の宝珠から削り出すという暴挙により作り出された精霊砲が、かつてジルベリアと呼ばれた大地の精気を集め、凝縮し、解き放つ。
 強すぎる力は空間ごと超アヤカシを削り取り、大空に満ちる瘴気に大穴を開け虚空への窓を開いた。
「機械皇、聞こえるか」
「聞こえている」
 竜哉(ia8037)は機械皇の中で意識を取り戻す。
 ジルベリア上空で超アヤカシを下したところで記憶が途切れている。
 隣の儀まで感じられるほど知覚が鋭くなっているのに、感情は薄れ、人間性が欠けてきている気がする。
 体は絶好調を越えた最高の状態だ。
 機体に内蔵された10の宝珠機関と同調して気味が悪いほど快調だ。
 宝珠機関はさらに出力を増し、音速を越えているのに機体は素晴らしく安定している。
「超アヤカシ…新手か」
 アル=カマルの地表部分が吹き飛んでいる。
 サンドウォームに見えるものが岩盤を耕し、無人の大地の上で1つの人型が佇んでいる。
「これより砲撃支援を行う。雑魚は気にせず直進しろ」
 一方的に告げて通信が切られる。
 それから数分後。音の速度をはるかに上回る速度で精霊が固められたものが飛来し、アル=カマルの大地で炸裂した。
 生き物かアヤカシかよく分からない巨大生物が砕け、人型の周囲の固体状瘴気が半分以上吹き飛び細部が見えるようになる。
 無人の大地は衝撃に耐えきれず、端からゆっくりと崩壊して虚空へと消えていく。
「アヤカシ…たおしたよ…」
 人型から、覚えのある声が聞こえる。
 腕を振るうだけで灰色の光が広がり、大地と空を大気を消していく。
「我々の間違いとは」
 機械皇の総宝珠製大剣が光を発する。
 人型から押し寄せる瘴気の暴風が消え、機械皇の各部も淡く光を放ちながら塩になって消えていく。
「もしかしたら」
 人型が人知を越えた速度で大剣を回避する。
 人型の被害は、頭部の上半分をを覆っていた装甲のみ。
「あ」
 聖なる剣が真実を映し出す。
 悪意が凝り固まった第三の紅眼を持つ、少女の形をした破滅。
 それは、長くアリエルを苛んでいた、破滅の光景そのものであった。
「あアァァぁっ」
 辛うじて残っていた少女の部分が、限界を超えて狂気に陥る。
 ようやく完全体になった破滅は灰色一色に染めようと、大きく手を広げて周囲に漂う瘴気を集めようとした。
「そういう、ことか」
 竜哉は基本に忠実に、聖なる剣を振り下ろす。
 灰色の光ごと少女が塩に変わり、機械皇の腕からコクピット、最後には竜哉自身も塩と化していく。
「我々は」
 アヤカシが破滅させた自然が牙を剥き、文明を破壊するに足る突風が全てを吹き飛ばした。

●最期の舞台へ
「E羅A餌U砲RI悦。第二射実行不可能」
 獣型アーマー喰火に外付けされていた超巨大砲が地面に落ち、鈍い音を立ててめり込む。
 円形の包囲陣で機会をうかがった数百のアヤカシが一斉に飛びかかり、その外側の数万のアヤカシが文字通り鉄壁の布陣で距離を詰めてくる。
「アヤカシにも指揮官無しか」
 主がその小さな手で喰火に触れると、体格と装甲を考えると信じられないほど軽やかに獣型が地を走り出す。
 進路と顔の向きでフェイントをかけるとアヤカシの陣がわずかに乱れ、そこを足音をほとんどたてずにアーマーが駆け抜ける。
 総勢数十万の軍団が展開していたけれども、歴戦の開拓者が駆る駆鎧の前には足止めにすらならなかった。
 小さな丘に駆け上がると同時に精霊に呼びかけ、何も無い場所から膨大な量の火砲と弾薬を呼び出して周囲に積み上げる。
 陣を組み替えることもできずに右往左往するアヤカシに対し、避けようのない砲弾の雨が降り注いだ。
「さて。人が生きる環境が残るかどうか」
 からす(ia6525)は、遠くの空から近づいてくる飛空船に、感情のこもらぬ瞳を向けていた。

●星の龍
 瘴気濃度が急激に低下していく。
 呼吸困難に陥っていた空夫達が慌ただしく深呼吸しながら、酷使により不具合多発中の人類最後の飛空船をなんとか空に浮かせ続ける。
「残る妖は1つのみ。まさか怖じ気づいた訳ではなかろう?」
 三笠 三四郎(ia0163)の胸元から念波が飛んでくる。
 清く強く美しい波に混じる毒舌は強烈ではあったが、三四郎は穏やかに受け流す。
「機械皇に似ていますね」
 三四郎は術も技も使わずに天儀の上空100キロメートルをみつめている。
 あらゆるものの侵入を拒む、超高密度の瘴気の壁。
 壁が発する異様な光に照らされ、数時間前に散ったアーマーに酷似したものが浮かんでいる。
 全体の印象は龍。
 けれど細部は人型に近く、瘴気、あるいはそれ以外の力を扱うのに最も適した形に見えた。
「分かっているだろう?」
 皮肉が込められた念波が届く。
「ええ、これで終わらせることができます」
 三四郎は全てを承知の上で一歩を踏み出す。
 胸元のペンダントから圧力が消えるのと同時に、飛空船の側方数里の場所に白い輝きが現れる。
 悠久の時を越えても白銀の鱗は色あせず、星そのものである精霊力は飛空船に数倍する巨体を完璧に支えるだけでなく、汚染された大気と大地を急速に癒していく。
「行きますよ」
 星龍出現の余波で激しく揺れる甲板から高く高く跳躍する。
「よかろう」
 龍は物質から霊的なものに変じて三四郎と一体となり、衝撃波をまき散らしながら超高空へ駆け上がる。
 瘴気の天蓋を背負った暗黒の龍が、全てを終わらせる渦を大地に向かって注ぐ。
 対する三四郎は星龍のブレスを我が身に纏い、巨大な滝のごとき瘴気の奔流を相殺する。
「これは」
「千日手か」
 三四郎の背中から膨大な光が吹きだし彼を天に押し上げようとするけれども、天蓋から注がれる勢いが強く、下がりはしないが上にも行けない。
『I羅TA徒NA魔SI頭GA癒SI無』
『4神よ。最後に残った力を…』
『死ぬんじゃないぞ』
 誰かの声が聞こえた気がした。
 足下に小さく見える天儀の一点が光り、極限まで細く絞り込まれた力が三四郎の側を通り、瘴気の濁流を貫き、暗黒の龍に食らいつく。
 上位精霊達の力が込められた一撃は、一瞬にも満たない間ではあるが、闇の頂点の動きを鈍らせることに成功する。
「三四郎!」
 人と龍は滅びの奔流を粉砕し、闇の龍の鼻先で抜刀する。
 流星飛刃・一閃。
 束縛を振り切った龍が再び繰り出した闇の渦を、無数の刃が切り裂く無力化する。
 しかしこれは余波に過ぎない。
 本命は、人と龍の合一が生み出す真の刃。
「これで終わりです」
 刃は肉を切らず骨も断たず、闇の中心だけを切り裂き消滅させる。
 闇の龍が崩壊を始め、それだけは普通のアヤカシのようにただの瘴気に戻って薄く薄く広がっていく。
 天蓋が崩れ、太陽が滅びかけの世界を照らし、暖め、瘴気の活動を抑え込んでいく。
 三四郎は刃を鞘に納め、荒廃した、しかしアヤカシの存在しない世界へ戻っていくのであった。