夢か幻、霞か雲か
マスター名:朝臣 あむ
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: 普通
参加人数: 6人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2011/06/18 00:13



■オープニング本文

 夜遅くまで酒を嗜んだ2人の男。
 彼らは朝日が昇る前にと家路を急いでいた。
 しかしその足は酒に酔って千鳥足。早く歩くことも、真っ直ぐ歩くこともままならない。
 それでも家路に向かっているのは確かだった。
 しかし――
「おい‥‥こんな道、あったか?」
 1人の男が異変に気付いた。
「なんか妙に靄が濃いと思ったんだけどさ‥‥少し、濃すぎやしないか?」
 それに‥‥と男は言葉を切って足を止めた。
 本来なら見慣れた街道がある筈。しかし彼が見詰めた先には何もない。
 白く霞んだ景色が広がり、林らしきものが僅かに見えるだけだ。
「道に迷ったか?」
 酔っていたのだからそれもあるだろう。
 だが酒を飲んだ場所から此処までは一本道。迷うにしても道が無い。
「‥‥おい、なんだか寒くないか?」
 言われてみれば背筋がゾクゾクしている。
 それに霞が僅かに黒みを帯び始めている気もする。もしかすると此れは霞ではなく――
「「この色‥‥まさか――」」
 男たちの思いと声が重なった時、目の前にぼうっと白い物が浮かび上がった。
 ヒラヒラと何か衣を揺らす存在。
 おいでおいでと手招きするように動くそれに、2人は声を失った。
 急ぎ駆け出そうとしたのだが、ここで動いたのは1人の足だけだった。
 足が動いた男は、後ろを振り返ることなく駆けて行く。
 そうして何処まで逃げただろう。
 霞から逃れ視界が晴れる頃、彼は共に酒を飲んだ相手を思い出して振り返った。
「――‥‥え?」
 誰もいない。
 その事実に男は目を見開き元来た道を戻ろうとした。
 だが足が動かない。
 こうして男はその場に立ち尽くし、酒を共にした男を失った。

――大事な友人が消えた。どうしても事の真相を確かめたいのだが、手を貸してくれないだろうか。
 届いた文にはそう書かれていた。
 天元征四郎はその文の文字を見詰め、そして息を吐く。
「‥‥久しく連絡が来たと思えば、こんなことか」
 文に差出人の名前はない。
 だがこれを送った人物は大体わかる。
 征四郎に縁があり、彼に願いを託すのは彼の幼少を知る人物――今は関わりを断った実家にいる友。
 剣を共に嗜み、苦楽を共にした男の頼み。
 本来なら断ることもできる願いだが、征四郎は文を手に立ち上がった。
「山本に頼んで人を集めるか‥‥アヤカシの可能性が高いだろう」
 彼はそう呟くと、開拓者ギルドにその足を進めた。


■参加者一覧
尾鷲 アスマ(ia0892
25歳・男・サ
御凪 祥(ia5285
23歳・男・志
毛利坂 水心(ia8688
16歳・女・陰
リリア・ローラント(ib3628
17歳・女・魔
レラ・ウィノ(ib6079
24歳・女・吟
ナプテラ(ib6613
19歳・女・泰


■リプレイ本文

「こ、こんなふうに依頼を受けるのは初めてなのですけれど‥‥」
 開拓者ギルドに集まった開拓者たち。その中で、天使の羽を模したハープを抱くレラ・ウィノ(ib6079)は、不安げに声を漏らした。
「でも‥‥少しでもお役にたてるよう頑張らないと‥‥」
「そうだね。なんとなくきな臭い雰囲気がぷんぷん漂ってるし、頑張らないとだね!」
 自らに発したはずの声に返ってきた声にレラの目が上がる。
 そこにいたのは、拳を握って頷く毛利坂 水心(ia8688)だ。
 彼女は快活そうな笑顔を浮かべると、彼女の背を叩いた。
 これにレラの顔にも笑みが乗る。
「みこちゃん、ありがとう。そうだね、せめてご一緒される皆さんには迷惑を掛けないようにしませんと‥‥」
「大丈夫、大丈夫!」
 一見楽天的だが、明るく前向きな様子は不安に負けそうになるレラにはいい刺激になっている様だ。
 先程まで肩に入っていた力が抜けている。
「とりあえず、最初にすることは天元さんの幼馴染さんと会うことだよね!」
 何事も情報がないと始まらないし!
 そう言って水心は天元 征四郎(iz0001)に目を向けた。
 征四郎は皆と僅かに離れた位置で、依頼人が来るのを待っている。そこに尾鷲 アスマ(ia0892)が近付いて来た。
「今回も宜しく頼む」
 アスマは、そう言って目を伏せることで挨拶を託す。
 そうしてふと征四郎の顔を見た。
「良い機会だ。前々から尋ねたかったのだが、てんて‥‥いや、天元。聞いても良いだろうか?」
 言いかけた不穏な名に、一瞬だけ眉が揺れる。
 だがアスマはそれを流すらしい。
 何事も無かったかのように、彼は続く問いを口にした。
「家‥‥いや、故郷は好いているか?」
 突然何を問うのだろう。
 征四郎のそんな想いが、寄せられた眉から見て取れる。
「‥‥素直だな」
 アスマはそう口中で呟くと、僅かに息を吐いた。
「いや、然して意味もない問いだ。では、甘味は好きか?」
「‥‥普通だ」
 ぶっきらぼうで、なんとも味気ない答えだ。
 だがそれも良い。
 アスマはゆるりと笑みを浮かべると、彼の隣で口を噤んだ。
 そこに声が届く。
「てんてんさん‥‥今回は、よろしく、お願いします」
 視界を掠めた赤の髪に征四郎の目が向かう。
 そこにいたのはリリア・ローラント(ib3628)だ。
「今回のご依頼‥‥どうして、救助を依頼しなかったのでしょう‥‥私には、それがわからないです」
 リリアには友人が行方不明になったのに、その救助を要請しなかった依頼人に疑問があるらしい。
「てんてんさんは‥‥どうしてだと、思います?」
 征四郎は時折聞こえてくる自らの呼び名に目を逸らすと、腕を組んで口を開こうとした。
 だがそれをリリアが遮る。
「あ、一言で終わらせないでくださいね?」
 反射的にあがった瞳に、ニコリと笑みが返される。
 それを見て小さく息を吐くと、征四郎は改めて答えを返すために口を開いた。
「さあな‥‥本人に聞くと良い」
 確かに一言ではないが、素っ気なさすぎる。
 しゅんっとうなだれるリリアに、今の遣り取りを見ていた御凪 祥(ia5285)が彼女の頭をポンッと撫でた。
「そう落ち込むこともないだろう。当事者に話を聞く手はずになっている。そこで聞けば良い」
 祥はそう言葉を向けると、ギルド入り口で足を止めた征四郎を見た。
「来たみたいだな」
 そう言って彼が捉えたのは、赤髪の男だ。
 背が高く、武骨な印象を与える男は、征四郎に気付くと気さくに近付いてゆく。
「ふぅん‥‥あれが今回の依頼人ってわけね。随分とタイプが違うみたいだけど」
 ナプテラ(ib6613)は囁き、妖艶な笑みを刻むと、そこに声が掛かった。
「‥‥皆、集まってくれ」
 声の主は征四郎だ。
 彼は開拓者たちを招くと、まずは依頼人の話を聞いて欲しいと言葉を続けたのだった。

●友
「‥‥貴公の名は何と言う」
 アスマはそう問い掛け、目の前の男を見た。
「俺は中条・克己(ちゅうじょう・かつみ)。四の字は幼馴染だ」
 近くで見た克己の顔色は悪かった。
 よく見れば目の下にクマも出来、表情も硬い。
「では中条。貴公が友人と逸れたのは何時で、何処で霧と遭遇したのか‥‥事の顛末を話して貰おう」
 アスマがそう促すと、克己は素直に事の顛末を話し始めた。
 そして――
「――俺が見たのは以上だ」
 聞いた話は、依頼書の物とほぼ同じ。
 祥は思案気に顎に手を添えると、僅かに眉を寄せた。
「つまり、良く覚えていない‥‥そう言うことか」
 情報は限りなく薄い。
 この中で何かを判断するのは難しいだろう。
「亡霊の類だったのか、死を連想させるようなものだったのか‥‥それだけでも、わからないか?」
「わからない。ただ異様な寒気があったのは覚えてる。‥‥背中の底から寒くなるような、嫌な感覚だった」
 言って、克己が自らの腕を掻く。
 その仕草を見ながらリリアはザワつく自身を押さえつけるように目を落とした。
「‥‥はやく、行かないと」
 克己の友人が姿を消して数日。
 助かる可能性は極めて低いだろうと、彼は言った。
 その言葉を聞いて、救助の依頼を出さなかった理由を察したのだが‥‥
「でも、それでも‥‥」
 助かる可能性があるかもしれない。助けられるかもしれない。
 そんな思いが頭を過る。
「そんな顔してたら、気持ちに負けちゃうぞ!」
 水心はそう言ってリリアの背を叩く。その上で彼女は克己の顔を覗き込んだ。
「ねえ、何かヒントになるようなこと掴んでないかな?」
「ヒント‥‥?」
 克己も開拓者ならば、何か他に感じたことがあるかもしれない。
 そう問いかける水心に、克己の目が動いた。
「‥‥道はいつも通りだった。とにかく霧が濃くて‥‥ただ、色がおかしかった気がする」
「色、ですか?」
 レラはリリアの手を握りながら首を傾げた。
 霧と言えば白のはず。
 それに色がついていたと言うことだろうか。
「ああ、夜だったんでハッキリしないが、黒っぽいというか‥‥白ではなかったな」
「その霧‥‥瘴気の気配はなかったか?」
 アスマの問いに克己の目が瞬かれる。
「頭になかったみたいね。まあいいわ、ゴチャゴチャ言ってないで行くわよ」
 ナプテラはそう言ってギルドの入り口に向かった。
 確かに、そろそろ動かなければいけない時刻だ。
 霧が出たのは夜で、今は夕刻だ。
 周辺を調査しながらとなると、そろそろ出発したほうが良いだろう。
 皆がナプテラに続き歩き出した頃、ふとアスマが克己に問いかけた。
「‥‥友人の名は何と言う」
「え‥‥、‥‥源、だ」
 アスマは返ってきた声に「そうか」と、声を返すとギルドを後にした。

●霧
 克己は友人を振り返った場所まで案内すると、足を止めて首を緩く横に振った。
「こっからがイマイチわかんねえ」
 そう口にした克己を見て、水心が周囲を見回す。
「林と布。それに、道が切れた場所‥‥この先じゃないかな?」
 与えられた情報を元に推測した先。それはほんの少し進んだ先だ。
「少し歩いてみよう」
 行ってみないことには何もわからない。
 アスマのそうした促す声に皆が歩き出したのだが、不意に征四郎の背が押された。
「?」
 振り返った先に居たのはアスマだ。
 彼は並んで歩く祥と征四郎を見ると、「ふむ」と声を零して頷いた。
 その様子に征四郎の首が傾げられる。
「いや、単に御凪と並ばせてみたいだけではない」
「?」
 何が何やら。
 キョトンと目を瞬く彼に、アスマはもう一度頷きを返すと、何事も無かったかのように歩いて行った。
 それを見て祥を見上げるのだが、彼も肩を竦め返して歩いて行ってしまう。
「?」
 残された征四郎は訳が分からない。
 そこにリリアの声が届いてきた。
「いなくなった人‥‥3人も、いるんですね‥‥」
 彼女が口にしたのは道中、通行人から得た情報だ。
 いなくなったのは源を含めて3人。そのいずれも夜に姿を消している。
 リリアは再び押し寄せる不安に視線を落とした――と、その時だ。
 ヒヤッとした感覚が首筋を撫でた。
「霧‥‥?」
 水心が陰陽符を手に呟く。
 徐々に表れる霧。次第に視界を遮るそれを目に止めながら、ナプテラが空を見上げた。
「日は落ちたわね‥‥タイミング的にはちょうどかしら」
 言って霊糸で織られた衣の袖を捲る。
 そうして腕を振るうと、別の方向から柔らかな音色が届いた。
「祥さん、それにみこちゃん、お願いします」
 レラの指が弦を弾き精霊の祝福を招く。それを受け、祥の瞳が眇められた。
「‥‥毛利坂さん、街道沿いの林を探ってみてくれるか?」
「がってんだよ!」
 声と共に放たれた人魂は、すぐさま霧の中に消えた。
 霧の中は想像以上に視界が悪い。
 だが、この状況下だからこそ得れるモノがある。
「あ」
 霧の中を探る途中で、水心の視界が弾けた。
「人魂が消えた。何かいるよ!」
 人魂は攻撃を加えられることでその身を消滅させる。
 つまり、霧の中で人魂が消えたのなら、そこで何かの攻撃を受けたと言うことだ。
「消える瞬間、白い物が見えたよ」
「白い物‥‥尾鷲さん。咆哮、お願いしてもだいじょぶです?」
 白い布は克己の証言と合っている。
 リリアはアスマに咆哮を頼むと、彼は快諾して頷きを返した。
 そうして息を吸い込んだのだが、ふとその動きが止まった。
 そして彼の目がリリアに向かう。
「‥‥何か?」
「あ、いえ‥‥どんなのか、気になって」
 自分が騒ぐよりも効果のある咆哮に興味があるようだ。
 だが邪魔してはいけない、と目を逸らす。
 その様子に息を吐くと、アスマは再び前を見た。
「私に覇気のある咆哮は期待しないでくれ」
 そう口にして抜刀の構えを取る。
「アヤカシは霧そのものか操者か、別者か‥‥楽しみだ」
 口端に刻んだ笑み。
 彼は刀に添えた手に力を籠めると、一気にそれを抜き放った。
「霧の主、或いは源殿は出て来られよ!」
 刃と共に放たれた咆哮。それに霧の向こうがざわめく。
「皆さん、これを‥‥精神的に操られる事がなければ良いのですけれど、念のため、です」
 ざわめきは明らかに人のものではない。
 レラは皆にハープの音色を放つと各々の周辺が一瞬だけ輝いた。
 これにナプテラのテンションが上がる。
「シュッシュッシュッ! 準備運動終わり!うふふ♪」
 彼女はそう言って軽やかな足取りで身を翻した。
 そこに水心の声が聞こえる。
「霧は気体だから、風と熱に弱いはず。霧が本体でも攻撃手段でも、邪魔なものは吹き飛ばさないとね!」
 言って振り返った先に居たのはリリアだ。
「――という訳で、先生方お願いします!」
「せ、せんせい‥‥です?」
 リリアは目を瞬いて驚いたが、直ぐに表情を引き締めると、波打つ美しい色合いの杖を構えた。
「わかりました‥‥少し、払ってみましょう」
 言葉と同時に、杖から風の刃が放たれる。
 それが霧の中に消えると、一瞬だけそれが揺れた。
 だが視界は直ぐに戻ってしまう。
「なら、次は‥‥これです‥‥毛利坂さん、消しちゃヤですよっ!」
 続いて放たれた炎の球に辺りが明るくなった。
「黒い霧です!」
 開けた視界に叫んだレナ。
 その声を聞いてナプテラが飛び出した。
 その目にあるのは白い物体だ。
「そう簡単には、負けないわよ!」
 彼女は拳を引いて力を溜めると一気に拳を突き入れた。
 だがその攻撃は容易に避けられてしまう。
「ウ ウソでしょ‥‥!?」
 あまりの手応えの無さに驚く。
 だが白い物体はそんな彼女を嘲笑うかのように揺れて見せた。
 その瞬間、再び霧が濃くなる。
「御凪、行けるか‥‥?」
「ああ。まずは、攻撃の有無を見極める」
 ナプテラの攻撃は容易に避けられた。
 まずはその理由を探る必要がある。
 祥はアスマにそう言葉を返すと、2人の足が同時に地を蹴った。
 白い物体は相変わらず霧を濃くしようと動いている。それをナプテラは抑えようとするのだが、どうにも攻撃が効かない。
「ナプテラさん、退いてください!」
 後ろに退くよう飛んで来た指示に、ナプテラが後方に飛ぶ。
 そこに飛んで来た炎に白い物体が明らかになった。
 布を幾重にも巻いたような人型の生き物だが、陽炎のように揺らぐ姿は明らかに人間ではない。
「霧だって水の一種。火消しの獲物で私に挑むなんていい度胸ね! 水心の名前は伊達じゃないのよっ!」
 水心はそう言って、呪縛の術を放った。
 これに敵の動きが一瞬止まったのだが、僅かに力が及ばなかったらしい。
「もう一度だ」
 間合いに到達したアスマが霧の濃度を上げる敵を切り裂く。
 これも効き目は殆ど無いようだが、敵を怯ませることは出来たようだ。
 水心は再びアスマの声に再び呪縛の術を放った。
 これに今度こそ動きが止まる。
「やれば出来るではないか」
「鷲尾さん、ありがとう!」
 元気に告げられた感謝の声に、アスマの口角が微かに上がる。
 そしてその目には、敵に到達した祥の姿が捉えられていた。
「天元さん、楽させてくれよ」
 祥が正面、そして征四郎は敵の後ろにいる。
 祥は今まで物理的攻撃が効いていなかったことを思い出し、燃えるように紅い槍に電流を纏わせた。
「これならば如何だ」
 勢い良く踏み込んだ足。
 それを軸に斬り込んだ電流の刃が敵の身に深く沈んでゆく。
「天元さん!」
 後ろに揺らいだ敵に征四郎の刃が加算される。
 敵は与えられた攻撃に逃げようとその身を悶えさせる。
 だが誰がそれを許すだろう。
「逃がさん」
 祥の静かな声と共に放たれた攻撃。
 これが止めとなり、敵は瘴気の霧となってその姿を消したのだった。

●別れ
 敵の消滅後に霧は晴れ、開拓者たちは良好の視界の元、行方不明者の捜索を行っていた。
「‥‥生きていてくれれば良いのですけど」
 そう言って半分垂れた獣耳を下げるのはレラだ。
 そこにナプテラの声が響く。
「これ、源とかって人の?」
 彼女が手にするのは擦り切れた衣類だ。
 それを目にした克己の眉が寄る。
「‥‥生存の可能性は低いと思っていたが」
 彼の表情を見れば一目瞭然。
 祥はそう口にすると、衣類を発見した周辺に目を向けた。
 そこにあったのは数枚の衣類と、真新しい刀だ。
「これも、源さんのかな?」
 水心は見つけた刀を手にすると首を傾げた。
「ああ、奴の刀だ‥‥抜かずに、死んだのか」
 源は開拓者になったばかりで刀は新しいものだったと言う。
「彼が帰るべき場所に、送り届けましょう」
 リリアは皆に、源を含めた行方不明者の弔いを申し出た。
 これに異論は出ない。
 彼らは遺留品発見現場に石を置くと、その前で手を合わせた。
 その前に置かれた野花はレラが供えた物だ。
 皆が手を合わせるその姿を遠目に眺めていたアスマに、征四郎の目が向かう。
「‥‥如何かしたか」
「いや、何‥‥お優しい心の持ち主、いつかそれに縛られなければ良いが、とな」
 彼はそう呟くと、捜索をしたいと言いだしたリリアを見、そして亡くなった者に黙祷を捧げたのだった。