人魚伝説？
マスター名：朝臣 あむ
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| ■オープニング本文 ザバーン‥‥。 打ち付ける波と、上がる飛沫。 それを岩の上に座って眺める男がいた。 膝を抱えて遠くを見つめるように腰を据える金髪の男――志摩・軍事。 彼は青い瞳を眇めて息を吐くと、重苦しく視線を落とした。 「‥‥どうしてこうなった‥‥」 呟く声に泣きが含まれている。 よく見れば目尻に薄ら涙が浮かんでいる。彼がこうした表情を浮かべること自体珍しい。 そもそも、事の始まりはギルド職員の山本が持ってきた依頼だ。 ――海に奇妙なアヤカシが出たらしい。悪いんだが、退治に向かってくれないか？ アヤカシ退治に抵抗はない上に、彼に回るという事は厄介な依頼なのだろう。 志摩は山本に快諾して見せると、直ぐに現地に向かったのだが、そこで彼を待ち受けていたアヤカシに、彼は戦意を喪失した。 「‥‥ぅう‥‥山本、早くしてくれ」 膝を抱えて呻く暑苦しいオヤジ。 ここに彼が面倒見ている義貞がいたら、爆笑していそうな絵図らだが今の志摩にはどうでも良いらしい。 彼は山本に急ぎ文を送った。 ――援軍を乞う。 たった此れだけの文字に、山本は至急開拓者を集った。 そして彼らはそろそろ着く筈なのだが、志摩にはこの待っている時間すら異様に長く感じる。 そして恐れていた事態が起きた。 ザババーン‥‥！ 波が岩を叩く音。その音に顔を上げた志摩の目に、彼が一番会いたくないモノが見えた。 波の合間から見えるスラリとした手足。水に透けた白い着物が艶めかしく、浜に上がった姿は美の女神を思わせるほどに美しい。 だが、問題があった。 それは相手がアヤカシだと言うこと。そしてアヤカシ以上の問題が、顔だ。 「――‥‥っ、これさえなければ」 言って目を逸らした彼に、今後どれだけの開拓者が同意するだろうか。 彼の前に姿を現したアヤカシは美しい。 だがそれは顔を除く姿形のみ。 このアヤカシの顔――実は魚だったりする。 ギョッとした目が可愛らしい、巨大な魚の顔が志摩を捉えた。 そしてその目にハートが映り込む。 「ひっ！？」 志摩が悲鳴を呑み込むのとほぼ同時だった。 物凄い勢いでアヤカシが駆けてきたのだ。 その手に握られているのは、２本の長包丁で、アヤカシの目には志摩が極上のご馳走に見えているのだろう。 「ひぃッ‥‥勘弁してくれぇっ！！！」 涎を垂らして駆けてくる敵に、耐え切れず走り出した。 得体の知れない恐怖と戦いながら、志摩は一刻も早い援軍の到着を待ったのだった。 |
■参加者一覧
高倉八十八彦（ia0927）13歳・男・志 
銀雨（ia2691）20歳・女・泰 
ブラッディ・Ｄ（ia6200）20歳・女・泰 
カーター・ヘイウッド（ib0469）27歳・男・サ 
リリア・ローラント（ib3628）17歳・女・魔 
アムルタート（ib6632）16歳・女・ジ |
| ■リプレイ本文 砂浜を駆ける２つの影。 開拓者たちはその姿を遠巻きに眺めていた。 「わーお♪」 額に手を添えて身を乗り出したアムルタート（ib6632）は、瞳を輝かせてそう声を上げた。 「人魚って初めて見たけどとってもシュールなんだね！」 逃げ続ける志摩 軍事（iz0129）。そんな彼を追いかけるアヤカシを見て、彼女は楽しげに仲間を振り返った。 「私、今まで下が魚で上が美女だと思ってたんだけど、違ったんだな♪」 わくわくそわそわ。 そんな表現がしっくりくる、好奇心旺盛な瞳に誰もが首を傾げる。 何せ、目の前で志摩を追いかけているのは頭が魚で体がグラマラス美人。彼女の言うようにかなりシュールだ。 それをこんなにも楽しそうに眺める彼女の感覚に少しばかり疑問を持ってしまう。 ブラッディ・Ｄ（ia6200）は、そんなシュールな存在に、そっと目を逸らすと額に手を添えた。 「なんつーか、何あれっていうか、お父さん‥‥」 父と呼んで慕う志摩と海で遊べると聞いてやって来た彼女。 しかし来て実際に目にしたのは、何なのか。 「‥‥俺、逃げちゃ駄目かな」 あまりのアレでソレなアヤカシに自身も生理的拒否を起こしている様子。 血の繋がりはないがやはり親子という事だろうか。 重いため息を吐く彼女の隣では、高倉八十八彦（ia0927）がカクリと首を傾げていた。 「‥‥情けないのぉ」 冷静にそう呟く彼の手には筆記用具が握られている。 そこには聞き込みをした情報が記されている。 彼はそれに視線を落とすと、「ふむ」と目を瞬いた。 「――じんぎょの好みはモロおっさんじゃね」 聞いた話によると、人魚（ここでは『ジンギョ』と読みましょう）は年配の男性を追いかける習性があると言う。 襲われた例が幾つかあるが、襲われた誰もが中年のおじさまらしい。 「わしが好みだったら、我慢しよう思うてたんじゃが‥‥」 呟き見詰めた先。 そこにいるのは必死の形相で走り続ける志摩だ。 八十八彦は彼を見た後、後ろを駆ける人魚を見てフッと視線を逸らした。 「――‥‥実に残念じゃね」 いや、絶対に残念とか思ってない！ とか聞こえてきそうだが、志摩がいないので誰もツッコまない。 代わりにカーター・ヘイウッド（ib0469）が、八十八彦のメモを覗き込んで明るい声を上げた。 「おー‥‥志摩さん、モテモテだねっ！」 爽やか笑顔で繰り出された声に、全員の目が向かう。 「いや、確かにモテてるけど‥‥アレだぞ？」 ブラッディの密かなツッコミに、カーターは笑顔を深めると、グッと親指を立てて見せた。 「大丈夫！ 志摩さんが苦手を克服できるように、俺、シジンとして頑張って応援するよ！」 何かが違う。違うけど、爽やか過ぎてどう違うかツッコみづらい。 そしてワイワイと騒ぐ面々の脇で、リリア・ローラント（ib3628）は、ペタペタと自分の胸に触れていた。 「‥‥志摩さんは、ぐらまーが、お好き」 彼女は事前に聞いていた、志摩好みのアヤカシと言う話を覚えていた。 実際にアヤカシを見て、どの部分が好みなのかわかってしまった。 出る所が出て、括れる所がしっかり括れている、美人体型。 顔が好みと言われたらどうしようもないが‥‥。 「‥‥ぐらまー‥‥」 リリアは自分の胸元を見た後、そっとそこに触れた。 ‥‥クスンッ。 「うお、どうしたんだ？」 リリアの様子に気付いたカーターに、彼女はハッとなって顔を上げた。 その上でギュッと手を握り締める。 「か、悲しくなんて、ないんですから‥‥っ」 言って溢れだした涙に、アルムタートとブラッディが彼女の肩を優しく叩いたのだった。 一方、泳ぐ気満々でやって来た銀雨（ia2691）は、アヤカシに負けない抜群のスタイルで仁王立ちしながら追いかけっこを眺めていた。 「先手必勝、殴るが勝ち」 言って、彼女の全身が赤い光で包まれる。 そして―― 「銀雨トルネードキーック！！」 砂を巻き上げて繰り出された鋭い蹴り。 それが人魚の頭にヒットすると、彼女は満足そうに着地した。 その上でビシッと志摩を指差す。 「おい、おっさん！」 「ぇ‥‥ぎ、銀雨？」 助かったのは事実だが、何か雲行きがオカシイか？ 口元を引き攣らせた志摩に、銀雨は指を突きつけたまま言い放つ。 「なにやってんだ‥‥二日酔いか？」 「へ？」 何とも場違いな質問に、志摩がガックリ肩を落としたのは言うまでもないだろう。 ●どういうこと‥‥ 砂に顔だけを出して埋められた志摩。 彼は押し寄せる波を見ながら、遠くを見つめていた。 「‥‥どうしてこうなった」 脳裏に浮かぶのは、こうなった経緯だ。 確か、援軍が到着した直後、作戦が提案され‥‥。 「やっほー、おっさーん」 明るく元気な声、それを耳にして志摩の口から安堵の息が漏れる。 「八十八彦‥‥やっと来たか」 ホッと胸を撫で下ろす志摩。 そんな彼に、八十八彦の首が傾げられる。 「助っ人じゃけど、助けに来たんじゃないよ？」 「助けに来たんじゃ、ない？」 どういう事だ。 そう首を傾げた彼の耳に、明るく元気な声が響いてきた。 「軍事には、囮になって貰うんだよ♪」 言って、志摩の顔を除き込んだのはアルムタートだ。 彼女は海から沖へと、指を動かした。 「人魚を連れて、味方のいる方へダッシュ！」 彼女の言う作戦とは、志摩を囮にして味方の元に人魚を誘き寄せる。 確かに作戦としては悪くない。 だが、腑に落ちないところは色々とあるわけで、不満が顔に出る。 しかしそれを目にしても、アルムタートの顔から笑顔が消えることはなかった。 「軍事さんの！ ちょっと良いトコ見てみたい♪ てことで頑張れ軍事！」 ファイト！ そんな風に可愛く小首を傾げられても、頷けるはずがない。 当然、志摩は猛反対しようとしたのだが、その時、アルムタートのテンションとは明らかに正反対の、暗い声が聞こえてきた。 「‥‥志摩さんは、ああいうのが、良いんですね」 「へ‥‥ぅお！？ り、リリア‥‥？」 ずーんっと落ちた様子で呟くリリアを見て、志摩の口元が引き攣った。 「ぐらまーさん。そうですよね。むちむちで、ああいう、色っぽいのが、いいんですよ、ね‥‥」 「まあ、そりゃぁ、男としては出るとこ出て、引っ込むところが引っ込んでる方が色々と――ぐあっ！？」 身振り手振りで懇切丁寧に説明を始めた志摩の後頭部を、猛烈な打撃が襲った。 「何しやが、る‥‥？」 砂にめり込んだ頭を振るい起こし、勢いよく振り返った志摩の目が見開かれる。 そして徐々に血の気が引いてゆく彼に、ズイッと影が差した。 「お父さん、デリカシーが無い男は嫌われるんだからな！」 腰に手を当てて、指を突きつける義理の娘、ブラッディ。彼女に怒られては志摩も素直に謝るしかない。 「‥‥すみません」 ぼそっと謝罪を口にしたところで、改めて作戦が説明された。 しかし―― 「却下だ、却下！」 「でも、一番無難な作戦だと思うよ？」 カーターはそう言うと、カクリと首を傾げた。 「志摩さんを囮にしてのタコ殴り‥‥うん、イケルイケル！ 志摩さん、頑張って！」 グッと拳を作って言われても、自分が囮と言うのは納得いかない。 どうも彼は首を縦に振る気が無いようだ。 そんな志摩にブラッディが言う。 「でも、相手は魚だし‥‥海に逃げられても厄介だし、囮で引き寄せて囲んじゃおうって作戦なんだよ？」 「いや、それはわかる。わかるが、何で俺が囮なんだ。この場の誰がなったっていいだろ！」 かなり大人げない物言いだが、わからなくもない。 だが八十八彦は、この発言をバッサリ斬った。 「ジンギョの好みは、おっさんみたいな男の人みたいじゃけえ‥‥諦めるんじゃな」 ぽんっと叩かれた肩に、志摩の目が見開かれる。 言いたいことはたくさんある。 たくさんあるのだが、ブラッディが発言を許可しなかった。 「それに、お父さんは最初に餌判定されてるじゃないか‥‥ねえ、お父さん？」 ニコリ笑って顔を除き込んだ可愛い愛娘。 その笑顔が怖いと思ったのは、これが初めてかもしれない。 「娘の前で逃げるなんてしないよ、ね？」 がっしりと掴まれた肩に、嫌な汗が頬を伝う。 「ちょ‥‥ブラッディ、この手は、何だ？」 身動き取れない程に力を籠められた手と、彼に迫る複数の手。 数秒後に響いた野太い悲鳴が、彼の運命を物語っていた。 そして―― 砂に志摩を埋める際、カーターは言った。 『こういう時は頭だけを残して身体を埋めるって先生に聞いたことあるよ！』 この言葉通りのことが実行された今、その進言者と残る仲間たちは、志摩が見える離れた位置で人魚の訪れを待っていた。 「大丈夫だよ、志摩さんが耐えられなくなったら、スプラッタノイズでアヤカシの姿形も判断できないようにできるはずだよっ！」 グッと親指を立てて爽やかに笑うカーター。 そんな彼の言葉に、砂に埋められたままの志摩は、その様子を想像してぶるりと首を横に振った。 「‥‥一生、魚が食えなくなる」 ぼそっと呟いた声がカーターに聞こえることはなく、彼はやる気満々にトランペットを握り締めている。 そしてその横では、アルムタートが「かかるといいね〜♪」とわくわく人魚を待っている。 その様子を、志摩の隣にしゃがみ込みながら見ていたブラッディは、遠くを見つめる父を見て呟いた。 「逃げようとするからいけないんだよ？」 「まあ、そうなんだな‥‥―――ハッ、来た‥‥」 押し寄せる波に打ち上げられた人魚。 それを見た瞬間、ブラッディの表情が引き攣る。 「俺も、餌になりきらないと‥‥」 呟き、警戒させないように怯えようとしたのだが‥‥ 「いや、素で怖いっ！ て言うか受け付けない！ お父さん、行くよ！！」 「ぇ、行くって‥‥ちょぉ！？」 言って、突如駆け出したブラッディに、志摩の目が点になる。 確かに囮になって敵を味方のいる所に誘導するなら逃げなければ駄目だ。 だが砂に埋められた状態で置いて行かれたら逃げるも何もあったものではない。 目の前には一目散に志摩目掛けて走ってくる人魚。手足は動かせず、逃げる事も出来ない。 「‥‥マジか」 万事休す。 そんな気分に陥っていた彼の目に、赤い光が射した。 「娘に心配かけんじゃねーよ」 全身を強化し、拳を叩き込んだ銀雨は、そう言うと彼の前に立った。 そして人魚に拳を向けながら言う。 「いいかおっさん、これは逆境だ！ ここで踏ん張りゃ一回り強くなれる！ ここで逃げたら負け犬に逆戻りだぞ！」 銀雨はそう言うと、真顔で志摩を振り返った。 その言葉に、志摩はきょとんと目を瞬く。 「‥‥お前、どんな誤解を――って、後ろ！」 ムキーッと、包丁を両手に持って人魚が迫る。 勢いよく飛び掛かってきた敵に、銀雨が戦闘態勢を取る。しかし彼女の拳が揺れる前に、氷の風がそれを遮った。 「おっさーん、大丈夫かのお？」 霊刀を手に駆け寄ってきたのは八十八彦だ。 敵は今の一撃で態勢を崩したが倒れる様子はない。 人魚は豊満な肉体を揺らして立ち上がると、２本の包丁を振り上げた。 そこにアルムタートが舞い降りる。 「そんな物騒な物振り回したら嫌だよ♪」 軽やかなステップで近付いた彼女は、炎のようにうねる鞭を振るうと、人魚の手を払って１つの包丁を攫った。 これに続いてブラッディも白く輝く刃を振るう。 素早い動きで払われた剣が、アヤカシの腕を裂く。すると、残る包丁も砂の上に落ちた。 そこにカーターが叫ぶ。 「志摩さん、これを使うと良いんだよっ！」 砂の中から志摩を掘り起こした彼は、とっても良い笑顔であるものを取り出した。 それは―― 「やばんばぼーちょー！」 キラリと輝く肉厚な包丁、それが志摩の手に渡る。 「これでちょちょいと料理しちゃえば良いんだよっ！」 物凄い期待の籠った瞳と笑顔に、志摩の顔が引き攣った。 だが躊躇っている暇はない。 この間にも敵は、何とか武器を拾おうと動いている。 それを目にした志摩が包丁を手に向かおうとするのだが、不意にその目がアヤカシと合った。 「ひぃッ！」 「あ、お父さん！」 「何処行くの志摩！！」 ブラッディとアルムタートの声を聞きながら、あろうことか志摩は逃げた。 それを人魚が追いかけてくる。 その姿を僅かに離れた位置で見ていたリリアは、ギュッと杖を握り締めた。 「‥‥私に無いものを持っている、魚が、目をハートにして、志摩さんを追いかけて‥‥」 ぶつぶつ呟く声。その声はとても低い。 「志摩さんは、その魚と、アハハウフフ‥‥きれいな、海で、追いかけっこ‥‥」 ぷるぷると小刻みに震えだす肩。 そして彼女の瞳にじわりと何かが浮かんだ瞬間―― 「ぅ、うわー―っん！」 物凄い勢いで炎が放たれた。 その火力は凄まじいもので、志摩を含めた仲間の足が止まる。 そして炎は人魚を包み込み白い衣が燃えた。 これに誰ともなく「あっ」と声が上がったのだが、ここは銀雨の動きの方が早かった。 「チェーストッ！！！」 人魚のいけない姿が晒されるよりも早く、彼女の足が敵を砂の上に突っ伏した。 舞い上がる砂と、動かなくなる人魚。 敵は程なくして、瘴気となって海から消えたのだった。 ●苦手克服 「来る途中で料理屋を見たな。寄って行こうぜ」 銀雨はそう言うと、傍で穴を掘っているリリアに目を向けた。 一心不乱に穴を掘り続ける彼女に、志摩の首が傾げられる。 「何してんだ？」 「‥‥ふうっ☆」 いつかは、いつかは、と掘り続けた穴に志摩を埋める筈だったが、実際に埋めたのはアヤカシが残した燃え残った衣。 彼女はふと空を見上げると志摩を仰ぎ見た。 「もう、こんな時間‥‥私、おなか空いちゃいました」 ケロリと言われた言葉に、苦笑が浮かぶ。 「へいへい、んじゃあ皆で飯食いに行くか」 「えー、海はー？」 「飯食ったらな。まずは腹ごしらえだ」 言って頭を撫でる手に、ブラッディは気持ち良さそうに目を細めた。 それを見ていたアルムタートがふと首を傾げる。 「人魚って、やっぱりシュールだったね〜」 「あれはじんぎょで、人魚ではないけえ」 「え？」 「人魚は、頭が人で、足から先が魚なんじゃ」 八十八彦はそう言うと、本当の人魚の話を彼女に聞かせた。 そして料理屋に着いたのだが―― 「さあ、克服するんだ！」 銀雨はそう言うと、活け造りの刺身を指差した。 これに志摩の顔がヒクつく。 「‥‥いや、コレはちょっと‥‥」 アレを見た後すぐにコレはキツイ。 目を逸らした志摩。だが彼の前に、箸が伸びた。 「お父さん、あーん！」 「んぐっ！？」 無理矢理突っ込まれた刺身に、否応なしに口が動く。 これを見ていたカーターは、盛大にラッパを吹くと、志摩に飛びついた。 「志摩さん、苦手克服おめでとー！」 ドシンッ☆ 今日は厄日か何かだろうか‥‥そんなことを思いながら、志摩は怖すぎる程の愛情を受け止めたのだった。 |
