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■オープニング本文 ●東房国・霜蓮寺 満開の桜の下、幼い子供を抱える月宵 嘉栄(iz0097)の隣に、かつて彼女と見合いをした相手、能庵寺の鳳冠の姿が在る。 「第四次開拓計画が実行に移される事になったらしい。これでまた新たな儀が発見されるだろう」 「噂では儀弐王にも良い報告がありそうだとか。このまま世界が平和に進み、良い報告だけが続けば良いですね」 微笑む彼女の腕の中で、幼子が空に向かって手を伸ばす。それに気付いた鳳冠が手を伸ばすと、彼は桜の花を1つ取って子に差し出した。 「……開拓者として闘っていた日々が懐かしいかい? 何ならまた神楽の都へ行っても」 「懐かしくはありますが、今の私は東房国と能庵寺の双方を預かる身です。そう易々とこの地を離れる訳にはいきません。それにこの子もいますし」 嘉栄はそう言うと、嬉しそうに桜の花を受け取った子に目を落とした。 子供の名は紫鶴(しづる)。嘉栄と鳳冠の間に生まれた娘で、もう直ぐ2歳の誕生日を迎える。 「紫鶴の面倒は。それに先日文で志摩殿も戻られると報告があった。彼が戻れば政に関しては問題ないのではないか?」 「志摩殿は霜蓮寺に来たとしてもじっとはしていませんよ。あの方は風の様ですから」 それに。と言葉を噤んで紫鶴を抱き直す。 「北面と東房の境に在る陽龍の地。あそこも気にされているようですから」 彼女の言う陽龍の地は、天儀落下の危機を脱して直ぐに数多の力を借りて魔の森の焼き払いを成功させた。そして以前より計画していた龍の保養地としての存在を確立。 天儀一武道会の2年後には上級アヤカシが封印されていると言う祠を守護する名目で、陶 義貞(iz0159)が保養地の管理人に就任した。 「危なっかしい運営方式であるとは聞いているが、志摩殿が其処まで気にする事でもない気が……相変わらず過保護だな」 苦笑を零す能庵に、嘉栄は小さく笑うと桜に背を向けた。 「冷えて来ましたね。夕餉の支度もありますし、そろそろ寺社に戻りましょう」 「ゆ、夕餉……いや、今宵も私が用意しよう。霜徳殿も私の食事は気に入って下さっているしな」 「毎度貴方に任せる訳にはいきません。今宵こそは私が――」 「頼む! 私にさせてくれッ!」 そう言って頭を下げた能庵に、嘉栄は憮然とした表情を。紫鶴は嬉しそうに笑って父と母の顔を見比べた。 ●神楽の都 第四次開拓計画が発令されて5年余り。 各地で色々な出来事が起きた中で、志摩 軍事(iz0129)にとってギルド長の大伴定家が亡くなった事が1番惜しんでいる事かもしれない。 「大往生、って言って良いのかねぇ。やっぱ……なんつーか寂しいな」 久方振りに訪れた開拓者ギルドの受付。其処で変わらず志摩を迎え入れた山本・善治郎は少し笑いながら彼の顔を見た。 「何おっさん臭いこと言ってるんだよ。大伴様が亡くなった事は確かに残念だけど、開拓者ギルドは前に進んでる。お前の周りだって前に進む為に生きてるんだ。だったら寂しがってないで、お前もやるべき事をしろよ」 「そうだな……っと、そう言えば最近紫から文が来ないんだが、如何したんだ?」 紫は志摩が旅に出て以降、山本の保護下で開拓者として修行を積んでいた。最近まで志摩の伝書鳩を使って文の遣り取りをしていたのだが、数日前から音沙汰がないのだ。 「紫ならひと月前から花鳥さんの家に行ってるよ。嫁入り準備が忙しいから手伝って欲しいんだってさ。なーんか嬉しそうに出てったっきり戻って来やしない」 「あー……なんかそんな事書いてあったか」 楠通弐(iz0195)が深く関わった盲目の少女・雪日向花鳥は、父の元を離れて数年後、母と暮らす地で自身の支えとなる男性と出会った。 「しかし結婚の許可を得るのに3年以上って……あのおっさん、相変わらず阿保だな」 「そう言うなって。相手は地位も名誉もない一般市民だぞ。貴族社会の臭いしがらみを考えれば仕方ないって」 そう。花鳥の相手は一般市民で、彼女の父は長いこと交際を認めていなかった。しかし花鳥の母の説得もあって此度漸く婚姻の許可が下りたのだ。 「そうそう、志摩にも招待状が届いてたぞ? 確か征四郎くんや嘉栄さん、義貞にも行ってる筈」 「へぇ。んじゃあ、其処に行けば全員に会えるって訳だな?」 「そう言う事だね」 山本はそう言って笑うと、持っていた招待状を差し出した。けれどそれに目を落とした瞬間、志摩の眉が寄る。 「おい、何だこの枚数……」 「花鳥さんの希望で色々な人に祝って欲しいんだってさ。と言う訳で、戻って早々の依頼だ。雪日向花鳥の結婚式に出席する人を集めてくれ」 彼女に関わった人、そうでない人、全ての人に幸せな姿を見て貰いたい。だから如何か多くの人に招待状を――志摩はその気持ちを受け取る様に招待状に手を伸ばすと、少しだけ口角を上げて頷いた。 「復帰早々の依頼にしちゃ上出来だ。懐かしい顔にも会えるかも知れねぇしな。少しばかし働いて来るぜ」 |
■参加者一覧 / 北條 黯羽(ia0072) / 羅喉丸(ia0347) / 志藤 久遠(ia0597) / 柚乃(ia0638) / キース・グレイン(ia1248) / 千見寺 葎(ia5851) / からす(ia6525) / 珠樹(ia8689) / 郁磨(ia9365) / 玄間 北斗(ib0342) / リンカ・ティニーブルー(ib0345) / 東鬼 護刃(ib3264) / アルマ・ムリフェイン(ib3629) / ハーヴェイ・ルナシオン(ib5440) / 匂坂 尚哉(ib5766) / ケイウス=アルカーム(ib7387) / 藤田 千歳(ib8121) |
■リプレイ本文 ●天儀歴1021年・春 神楽の都から少し離れた山間の屋敷。桜が屋敷を覆うように咲くその場所は、遭都から都へと移って来た貴族のものだ。 何でも新婚で、盲目の新婦の要望もあってこの地に移動して来たらしい。 今日は見事に咲き誇る桜の下で、新婦の希望の下、一般人も交えた婚礼の儀が行われている。 「花鳥さんが結婚か……時が経つのは早いなあ」 そう言って目尻に浮かびそうになる涙を拭うのは、一見ハロウィンかと見紛う衣装を纏うハーヴェイ・ルナシオン(ib5440)だ。 彼は新婦――花鳥の前に立つと、過ぎし日の事を思い出して目を細めた。 「楠や紅林さんと過ごした日々が昨日の事のように思えるけど、時間はちゃんと進んでいるんだよな」 ハーヴェイと花鳥が出会ったのは彼女がまだ幼い頃。従者の紅林とはぐれてしまった所を志摩 軍事(iz0129)が見付け、ギルドに依頼を出したのだ。 「……二人とも見てるかな」 今は亡き楠通弐と紅林。その姿を思い描いて笑みを浮かべた時だ。彼の後方から聞き慣れた声が響いた。 「きっと彼女達も見ていて、祝福してくれているさ」 振り返った先に居たのは羅喉丸(ia0347)だ。 場に合った黒のスーツを纏う彼は、久しぶりに顔を合わせるハーヴェイに目礼を向け、花鳥の前に進み出た。 「花鳥さん、招待有難う」 言って小さな包みを差出す。それに花鳥の顔が落ちると、新郎が彼女の手にそれを持たせた。 「花鳥さんが覚えてくれていた事に応えなければと探してきたんだ……覚えているだろうか」 開かれた包みの中に在るのは牡丹の形をした赤い菓子だ。花鳥とはぐれる前、紅林が買っていた菓子で全ての始まりでもある。 「まだ、あったのですね」 ポツリ、零される声にハーヴェイも懐かしそうに菓子を覗き込む。 「懐かしいな」 思い返せば色々な事があった。 「辛い事、悲しい事、苦しい事……色々ありました。けれどわたくしがこうして今日と言う日を迎えられたのは、皆さんのお蔭です」 有難う御座います。そう頭を下げた花鳥に羅喉丸とハーヴェイの視線が重なる。そしてハーヴェイが軽く咳払いをすると、彼は持参していた簪を差出した。 「……改めまして、結婚おめでとう花鳥さん。花鳥さんにこれからも幸多からん事を心からお祈りしているぜ」 簪は栗梅色の枝と紅白の梅花をあしらった細工が見事な品だ。その説明を耳にしながら微笑み花鳥に羅喉丸の目元が緩められる。 「様々なものが月日と共に移ろっていく。だが、それでもなお変わらぬ想いがある……それを実感できた事が何よりも嬉しいな」 「そうだな。また困った事があったら何でもいいな。力になるからさ。あと、旦那さんと仲良くな。幸せになるんだぜ……って、やばい、何か泣けてきた」 言って目頭を押さえたハーヴェイの肩を羅喉丸が叩く。 「そう言えばハーヴェイさんは飛行船を買って運び屋も始めたんだったか?」 「あ、ああ。小型のだが買ったぜ」 開拓者業をしながら運び屋をする彼の噂は、何となくだが耳にしていた。 やはり皆、何かしらの変化をもって今日を迎えているようだ。そしてその話に興味を持ったのだろうか、紫の髪を2つに結った少女が近付いて来た。 「お兄さん飛空船持ってるんです? 飛空戦って龍より早いですよね? あれって幾らくらいするんです?」 「確かに早いけど、値段は……」 目を輝かせながら次々と質問を繰り出す少女にハーヴェイもタジタジだ。 「あたしも乗ってみたいんですけど、なかなか許可が出なくて」 そう言って溜息を吐きかけた時だ。 「紫ちゃん、あっちの席のお酒が空なのだぁ〜」 突如聞こえた声に紫と呼ばれた少女は勿論、ハーヴェイや羅喉丸まで目を見開く。 「た、たぬきのおじちゃん……夜は使わないで下さいよ」 ビックリした。そう胸を抑える彼女にたれたぬきの着ぐるみを着た玄間 北斗(ib0342)が朗らかに笑う。 「紫ちゃんが隙を見せるのがいけないのだ」 「隙って……あ、花鳥さん、飲み物無くなってる。あたし持ってきます!」 言うや否や、駆け出した彼女に北斗は微笑ましげに着ぐるみの中で目を細めた。 「もうすっかり立派な女性なのだぁ〜。おいらよりもしっかりしているのだ」 「そうでもねぇぞ」 紫を褒める声に突っ込みを入れた志摩は、慌ただしく会場を走る紫を見て苦笑いを浮かべた。 「あの頑張り屋の紫ちゃんが、結婚式を前にした人のお手伝いに奔走する位にまで成長したのが素直に嬉しいのだぁ〜」 「それは俺もだけどな……まあ、言葉遣いが直っただけでも良しとすべきかねぇ」 そう志摩が語った直後、客で塞がれた道を物凄い勢いで飛び越えた紫が見えた。 如何やら見た目や言葉遣いは普通の女性らしくなったが、仕草などはまだまだ改善の余地があるようだ。 「元気なのは良いことなのだ……ん?」 着ぐるみの裾を引っ張る仕草に、北斗の視線が落ちた。 「「たぬきー」」 見下ろした先に居たのは木製の小刀『秋刀魚』握り締める子供2人。見た所双子の様で、良く似た容姿をしている。 「迷子なのだぁ?」 首を傾げて顔を覗き込んだ北斗。だが次の瞬間、志摩は合点言ったように「ああ」と声を零して双子の背後を見た。 「お前さんも相変わらずのようだな」 言って手を上げた志摩の視線の先に居たのは真っ白い猫又だ。 「過ぎし六年の歳月……お久しぶりですね」 柔らかな声と共に猫又が人の姿に変じる。其処に在ったのは23歳を迎えた柚乃(ia0638)だ。 「お久しぶりです、志摩さん……こちらは陽翔(はると)と心桜(さくら)です」 「しま?」 「しま?」 双子の肩に手を置いて微笑む柚乃は20歳で結婚し2人の子を持った。今は石鏡で母方の祖母の手伝いをしながら開拓者業を営んでいる。 「「しましまー」」 「しましまって……斑っぽい呼び方だな。よろしくな、陽翔と心桜」 ニッと笑って2人の頭を撫でる。それを視界に、北斗は子等に見えるよう、もふらのぬいぐるみでお手玉をし始めた。 その様子に子供らの視線が釘付けになる。其処に新たな子供の視線が加わった。 「しゅごっ……!」 瞳を輝かせて飛んでは戻ってくるもふらのぬいぐるみを見詰めるのは、月宵 嘉栄(iz0097)の娘、紫鶴だ。 どうやら遠目にたぬきの着ぐるみを見付けて駆け寄って来たらしい。 「……捕まえた」 何処から追い駆けて来たのだろう。 疲れたように息を吐く珠樹(ia8689)の後ろには、嘉栄と鳳冠の姿がある。 「……何で再会早々、あんた達の子供を追い駆けなきゃいけない訳?」 6年ぶりの再会に積もる話もあった。なのに、開口一番「紫鶴を捕まえて下さい」と言われ、珠樹は話もそこそこに嘉栄の娘を捕まえに走り回ったのだ。 「無事に跡継ぎも生まれている様で何より……なんて思った私が馬鹿だったわ」 「珠樹殿?」 「私、割と子供は好きなのよ? だけど、流石にキツイわ……もう少し子供から目を放さないようにしなさい」 足の速さから察するに志体持ちだろう。 「目を放した隙に何か起きた……なんて、あんた達だって嫌でしょうし」 「有難う御座います。重々肝に銘じて子育てに奮起させて頂きます」 鳳冠はそう言うと、紫鶴を抱き上げた。それを見届けた珠樹が呆れたように息を吐く。 「其処まで重くなれなんて言ってないわよ……でもまあ、遅くなったけど二人とも結婚おめでとう。こうして無事でいるってことは、食事の担当は嘉栄じゃないみたいね。賢明な選択だわ」 「其処はまあ……ひっ!」 慌てて彼女の口を閉じさせようとした鳳冠に嘉栄の手が触れた。そうして振り返った先に在った顔を見て表情を引き攣らせる。 「……冗談よ。旦那さんを叱るのは止めておきなさい」 「珠樹殿……」 半分は冗談。けれど半分は本気なのだが、それは秘密だ。珠樹は少し笑うように息を吐くと、鳳冠を睨む嘉栄を見た。 「……別に嘉栄の結婚式に行けなかったのが悔しくて意地悪を、なんて思ってないから」 「そ、それは……その、申し訳、ありませんでした……」 「もう良いわよ」 それより。と言葉を切って、少しばかり項垂れる嘉栄から、手の中に在る紫鶴へ視線を落とす。 確か、聞いた話だともう直ぐ2歳だったか。何処となく目元が嘉栄に似ている気もする。 「……あんた達みたいなのが親なら、いい子に育つでしょうね。また霜蓮寺にも寄らせてもらうわ。前統括にもよろしくね、現総括さん」 笑みと共に零された声に、嘉栄が嬉しそうに微笑んだのは言うまでもない。 会場内がいっそうの賑やかさを覗かせる中、志藤 久遠(ia0597)は何処となく羨ましげな視線を注いでいた。 「……良いですね」 口から零れた極々小さな声。その声に天元 征四郎(iz0001)が振り返った直後、見知った顔が目に飛び込んで来た。 「よお、やっぱ来てたか。元気そう、か?」 フッと口角を上げて笑んだ北條 黯羽(ia0072)は、征四郎と久遠の双方を見比べると懐かしそうに目を細めて歩みを止めた。 「変わりなく。其方も変わりないようだな」 頷く様に返事を寄越す征四郎に「まあな」と返した黯羽は、ジルベリアの貴族と結婚して子宝にも恵まれた。 変わってないと言うにはあまりにも変化した環境だが、それでも彼女の中で大きく変わった事は無い。 「黯羽殿、御無沙汰しております」 「ああ、久しぶりだな。そっちも元気そうで何よりさね。如何だ、征四郎とは上手くいってるかい?」 少しからかう様に問い掛けて首を傾げる。その仕草に僅かに頬を染め、久遠は微かな頷きを返した。 「はい。夫婦としてはようやく落ち着いてきましたが、やはり妻としてこういう場に出るのはまだ少し落ち着きませんね」 「それだけ堂々としてりゃ大丈夫だぜ」 ニッと笑う黯羽に「有難うございます」と言葉を返す久遠は、征四郎と正式に結婚し天元久遠と名を変えた。 開拓者業もそれを気にすっぱりと引退。今では道場主である夫を献身的に支える妻となっている。 「そう言やぁ、五十鈴は元気――」 「あれぇ? おっ、やっぱり黯羽じゃん!」 話を遮る様に駆け込んできた赤髪に、征四郎は僅かに憮然と、久遠は微笑ましそうに目を細め、黯羽は楽しそうに笑みを浮かべた。 「元気そうじゃねェか、五十鈴」 「ん? 何? あたし話題に出てた? ってか、アンタ変わんないな。子供も出来てもっとこの辺に肉とか付いてそうなのにさ」 言いながら腰の辺りを叩き、近くのテーブルに在るビスケットを摘まみ上げた五十鈴に征四郎の溜息が漏れる。 「……五十鈴、行儀が悪いぞ」 「立食形式なんだろ? 大丈夫だって。つーかさ、黯羽最近遊びに来ないからつまんなかったじゃん。やっぱ忙しいのか?」 「子育ては意外と大変なんだぜ」 「ふぅん……そんなに大変なのか」 パリッとビスケットを齧る五十鈴の目がチラリと征四郎と久遠を捉える。そして直ぐに黯羽へ戻すと名案を思い付いたと言わんばかりに口角を上げた。 「じゃあさ、今度その子も一緒に遊びに来れば良いんだよ! 友情割りで道場も通えるぜ!」 「随分と軽いノリの友情じゃねェか」 小さく笑って小首を傾げる。一応道場主にも確認を、と言う事なんだろう。 「此方は問題ない」 「ふふ。じゃあお言葉に甘えて、また道場の方にも遊びに行かせて貰おうかねェ。勿論、ウチの子と一緒に、ね」 黯羽はそう言い置くと、他の仲間にも挨拶に、と一時この場を離れた。それを見届けて久遠が呟く。 「次にまたこういう席に来る時には、私達も子供を連れてきたいものですね、あなた」 征四郎達の間にはまだ子供がいない。 結婚して数年目までは忙しくて、という理由だったが、実際には征四郎が奥手過ぎるのが原因だ。 「そうだぜ。あたしもそろそろ姪か甥が欲しい!」 「煩い!」 間髪入れずに一掃した征四郎に五十鈴の口が下がる。それを見止めた久遠が慌てて間に入るのだが、その顔が若干赤い。 「義姉さん、顔……何想像したの?」 「うん?」と嫌な笑みを浮かべて顔を覗き込む五十鈴に久遠の顔が更に赤くなる。 「あ、いえその、深い意味はないですっ!」 大丈夫です。そう両手を左右に振る姿に征四郎の目が泳ぐ。 「あ、そ、そうです。あれ、ですね……特に疎遠になったつもりはありませんでしたが、日々の事に追われていると時間が経つものですね。こうしてみなさんの顔を見るのは随分久しい気がしますし、変わっていく皆様を見るのも、案外良いものですね!」 咄嗟に紡ぎ出した声だが、偽りの言葉ではない。何処を見ても時の流れを感じる姿が在り、これはこれで良いものだと思ってしまう。 「確かになぁ……そもそもあの恭兄が結婚するなんて思いもしなかったしな……」 再びビスケットを口に運んで呟く五十鈴の視線の先には天元 恭一郎(iz0229)の姿が在る。 「……はあ、残念だ」 そう溜息交じりに言って様子を窺う視線を送る。そんな彼に目を伏せ、腕を組んで会場の雰囲気を楽しんでいたキース・グレイン(ia1248)の眉が上がった。 「……いい加減、諦めたら如何だ」 同じく溜息を零して上げられた視線に恭一郎の目元が緩まる。そうして何処となく嬉しげな表情を浮かべると「いえね」と言葉を続けた。 「貴女を俺色に染めようなんて思ってないけど、祝言くらいは挙げたかったな、と。白無垢くらいは着ても良いんじゃない?」 恭一郎が人前で堂々と求婚して、どれだけの時が過ぎた後だったか。 キースは彼に承諾の旨を伝えると、同時に先程の言葉と似たような言葉を言っていた。そしてそれを恭一郎も承諾していたのだが、全面的に諦める気は無いらしい。 「まあもし白無垢が嫌なら紋付き袴でも良いけど、その場合は俺が白無垢を着るよ?」 「はあ?」 「知ってるかもしれないけど、目的の為に手段は選ばないから」 「ね?」と微笑み掛ける彼に、キースの眉間に皺が刻まれる。だが彼女が何か言う前に、別の場所から「否」を唱える声が響いた。 「恭さん、流石にそれは参列する側が嫌だから……」 今まで静かにグラスを傾けて聞いていた郁磨(ia9365)の声に、同じようにグラスを傾けていた藤田 千歳(ib8121)も頷く。 「郁磨殿の言う通りだ。局長の心労が増えるので是非止めて頂きたい」 「……何で一致団結するのかな。そもそも千歳君は真面目過ぎだよ。もう少し肩の力を抜くべきだって、真田も言ってるよ?」 20代半ばを過ぎた今も浪志組で日々精進を続ける千歳は、真田からも一目置かれる隊士となっている。 日々、浪志組の大義に恥じぬようにと、政を学び、修行を欠かさない。勿論、後進の指導にも積極的に手を貸している。 「俺は俺の大義の為にこれからも精進を続けるつもりです。それ以上でもそれ以下でも無い」 「……それが真面目なんだけどな」 やれやれ。そう恭一郎が肩を竦めた瞬間、会場内に「わあ!」という歓声が上がった。 目を向けると、アルマ・ムリフェイン(ib3629)が華彩歌を歌い終えた所だ。 「恭一郎夫婦はもちろん、千歳ちゃん……いや、千歳くんや郁ちゃんにも、ご両親方にも、赤ちゃんにも、これからも、幸せがたくさん訪れるように!」 未だ咲ききっていなかった桜を満開にさせ、風に花弁を舞わせながら笑う彼の様子に誰もが幸せそうな笑顔を零す。 アルマは千歳同様に今でも浪志組の察方で働いている。その影響か、技にも磨きが掛かっているようだ。 「アルくんは変わらないね〜」 技は豪快に華やかに変じ、見た目も大人びたが、やはり言動の端々に昔の面影が見えた。 そしてそう語る郁磨自身は、八丈島の一件以降浪志組を脱退して開拓者として彼等と関わっている。今は主に孤児院の経営補佐や子供達の養育など多岐に渡る活動を行っているのだが、やはり根本的な部分は変わっていない。 「なんつーか……アルマの奴、妙に嬉しそうだな」 ぽつり、キースが零した声に郁磨と千歳が顔を見合わせる。そして何事かを言おうとした直後、アルマが物凄い勢いで駆け込んできた。 「キーちゃん、呼んだ?」 尻尾を振りながら近付いた彼は、演奏の前からこんな感じでキースの傍を行ったり来たりしている。 その様子に若干だが恭一郎の機嫌が悪くなっているのだが、其処は気付かぬが華だろう。 「呼んではいないが……まあ……あれだな。人ってもんは変わる時は変わるが、かと言ってそうころころ変わるもんでもないんだろうな」 俺も変わるつもりないしな。と言葉を添えるキースに郁磨の目が動く。 多分キースが言っているのは彼女の趣向の事だ。今も色も濃く無く落ち着いた色の和装を纏う彼女は、煌びやかな女性用の着物を好まない。 つまりそれは恭一郎の望む白無垢姿は見れない可能性があるのだ。 「仕方ないなぁ」 郁磨は腰まで伸びて1つに結っていた髪をいま一度結び直すと、テーブルで只管に菓子を貪っていた羽妖精を抱き上げた。 「うん、なんじゃ?」 「ヤッパリ結婚式って華やかで良いよね〜……俺もちゃんと友人としてお呼ばれしたいなぁ。悠ちゃんだって見たいよね〜、恭さん達の晴れ姿」 「おお、そうじゃな! きょーいちろーのしろむく見たいのじゃ!」 「えっ、恭一郎さん、白無垢着るの!?」 「……凄い勢いで話題が戻って来たな」 ピコンッと耳を立てて反応したアルマに千歳が呟く。 「アルくん、恭さんは着ないよ。この場合着るなら……ね?」 「ああ、うん。そう言う事……でも、それは」 そう言って何かを言おうとした時。アルマの体が飛び上がった。 「あはは、元気そうだね、アルマ!」 そう笑顔で皆の輪に入って来たのはケイウス=アルカーム(ib7387)だ。 彼は屈託ない表情で皆に近付くと、驚いた様子で固まっていたアルマに笑い掛けた。 「驚いた? 前にもこうして悪戯した事があったよね」 「ケイパパ……僕より悪戯っけが増してない?」 驚いたのは当然だ。 何せ耳元で突然声がしたのだから。 「『貴女の声の届く距離』か……それにしても久しいな。いつ都へ?」 「ついさっきだよ。ギルドへ行ったら招待状を貰ってさ。皆も居るって言うから急いで来たんだ」 ケイウスは6年前と変わらず開拓者を続けている。今も旅から戻ったばかりで、急いで義娘に礼服を見繕って貰って来たらしい。 「あ、そうそう」 ケイウスは恭一郎に近付くと、ニコニコ笑いながらキースと2人の顔を見比べた。 「恭一郎とキース、仲良くやってるみたいでなにより。恭一郎もなかなかやる……な、なんでもない!」 鋭い視線が飛ぶこと一瞬。 瞬間的に言葉を消したケイウスに郁磨が笑う。 「相変わらず賑やかだね〜」 零しながら全体を見回して恭一郎に近付く。そうして彼の耳へそっと零した。 「……俺、恭さんが臆病だなんて思った事一度もないよ。でも、時間って長い様で短いからさ……もう良い歳なんだし、式にしろ子供にしろ、後悔しない様にね〜」 彼の言う様に時間はあっと言う間に過ぎて行く。それこそ川の流れの様にあっさりと。 「……そうだね」 恭一郎はそう呟くと、今では友と呼ぶ間柄になった郁磨に笑みを零した。 「んー、それにしても結婚式はいいな! ここに居る人達の笑顔がすっごく良い。なんかこの人達の笑顔を見てると、俺がまだ開拓者を続けているのは、こういうものを守りたいからなのかもしれないな」 なーんて。そう舌を出す彼に、千歳の口角が僅かに上がる。 「確かに……この笑顔を護る為に俺達は闘い続けている。大きな合戦は無いが、小競り合いはある。それこそ、人の業だろう……だからこそ、諦めずに戦い続けるんだ。そしてそれこそが俺達の義」 賑やかな会場の一角で響いた静かな声に、アルマが嬉しそうに尻尾を揺らす。そしてケイウスの竪琴を指で弾くと「一緒に歌おう」と促して歌い出した。 「良い宴だ」 からす(ia6525)は会場の隅で湯呑を傾けると、響く音色に目を細めた。其処に声が届く。 「あれ、皆の輪に入らないのか?」 「義貞殿か……いや、目立たないのが弓術師だからね」 言って茶を口にするからすは陶 義貞(iz0159)から招待状を受け取った。そして久しく見れる顔もあるだろうと足を運んだのだ。 「ふぅん……リンカなんかは普通に目立ってるぞ」 「弓術師にも色々ある」 フッと笑んで義貞の後ろに立つリンカ・ティニーブルー(ib0345)に目を向ける。その上で僅かに礼を向けると、彼女は何気ない話でもするようにある話題を振って来た。 「そうそう、少し前に大伴殿が亡くなられたね。各地の王達も既に歳故に、これからが世代交代の時期かな」 「大伴のじっちゃんは残念だったなぁ。俺、もう少しあの人と喋って見たかった」 とは言え、実際の所は面識すらも殆どない。それでも親近感を覚えるのは志摩から色々な話を聞いていたからだ。故に彼にしてみれば身近で偉大なお爺ちゃんが亡くなった、そんな感じなのだろう。 「新たな風が吹く。しっかり見届けようか」 「そうだな! あ、そうそう。今度陽龍の地で陽気の祭事をするんだ。その時には手を貸してくれよ」 からすは今でも開拓者を続けている。故に今でも義貞と交流があったのだが、実は彼女、こうして多方面から頼られる事が多い。 「義貞さん、ちょっと待って。確かからすさんは何処かの里の長になったって――」 「あれは断ったよ」 しれっと言ってリンカに頷く姿に、彼女の頬が微かに染まる。 「リンカ。からすさんはそう言う誘いを何度も断ってる。この間は新米のふりをして浪志組に混じって稽古をして真田さんに怒られたりもしてたんだぞ」 「あれは酷かった……虐めは良くないと言われてしまったよ」 やれやれと首を横に振る彼女にリンカが苦笑を零す。そもそもからすの容姿は6年前と殆ど変わっていない。 ただ力は年々強くなっているらしく、一説には数多の相棒を率いて未開の地へ旅に出た、などと言う噂もあるくらいだ。 「相変わらず訳わかんねぇな!」 カラリと笑う義貞に、からすが湯呑を動かしながら静かに笑う。 「さて、俺はもう少し他の人にも会って挨拶を――ってぇ、退け尚哉!」 「あれ、何でわかったんだ?」 「わかるに決まってるだろ! お前、ほぼ毎回俺に身長自慢しようとして乗っかってくるじゃねえか!」 歩き出そうとした義貞の背から覆い被さる様にして体重を掛けてきた匂坂 尚哉(ib5766)に鋭い視線が飛ぶ。 「別に自慢してる訳じゃないって。ただでっかくなっただけで」 へらっと笑う彼に義貞の米神が微かに揺れる。 この2人、6年経っても親友のまま。変わったのは2人の年齢と身長、そして周りに在る環境だ。 「尚哉さん、本当に大きくなったね。また大きくなったんじゃないかい?」 「いや、流石にこの年で大きくは……あ、そう言えば、義貞の爺ちゃんに会った時も同じこと言われたような気が」 そう言って自身の頭上を見上げる尚哉は、180を優に越える身長を手に入れた。そして背を確認する尚哉を恨めしそうに見る義貞は、170半ばくらい。 隣同士で立つと差が際立つ感じだ。 「お前、ぜーったいに俺の隣に立つなよ! 良いか、絶対だからなっ!!」 「いや、それ普段の生活から考えて無理だろ。俺、陽龍の地でお前と仕事してるし」 「くそおおおお! 何でこんな奴と一緒に仕事してるんだ、俺っ!!」 片手を振って拒否する尚哉に義貞が頭を抱える。それをリンカが傍で「まあまあ」と窘めるのは大体いつもの光景だ。 「義貞さん。ほら折角の式なんだし、ね?」 「あ、ああ、そうだな。まあ、アレだ……来てくれて有難うな」 「いや、俺も誘ってくれてありが――ッ!」 他人様の晴れの日に鬱に入るなどあるまじき行為。急いで髪を整えた義貞へ、尚哉が感謝の言葉を述べようとした瞬間、それを遮る影が迫った。 「おぉー、二人とも元気にしておったか?」 「この声……」 「護刃の姉ちゃんか!」 だらーんっと2つの背に跨って圧し掛かる人物に尚哉と義貞が同時に振り返る。そして案の定な顔を見付けると、2人はほぼ同時に抱き寄せる腕を外した。 「お? おお?」 予想外に大人な対応を見せた2人に東鬼 護刃(ib3264)の目が瞬かれる。 「まだまだ子供と思っておったが、随分と成長したのぅ、ちと見違えたぞ」 カラリと笑って見比べる。6年前の面影は勿論あるが、やはり2人も大きく成長したものだ。 「懐かしいのう。どうじゃ、何か面白い話はないかの? 子持ちともなれば今は旅も出来ん身、何か聞かせてはくれんか?」 「え……姉ちゃん結婚してたのか? しかも子供って……」 思案気に視線を落とした尚哉を微笑ましげに見付ける護刃は、彼女の言ったように今では二児の母だ。 何でも故郷の里の里長代行をしているらしいのだが、だらけ癖は相変わらずらしい。けれど子育てだけは真面目にしているらしく、子供の様子を語る時の彼女はしっかりと母の顔をしていた。 「姉ちゃん、式の後、街に行かないか? 折角だし子供達にお土産持って帰んなよ」 「ほう、尚哉が大人になっておる」 「どう云う意味だよ、それ……俺だって手土産持たせるくらいの気遣いは出来るって」 「ふふ、そう怒るでない」 不貞腐れる尚哉に笑い、ふと彼女は幸せそうに数多の祝福を受け取る新郎新婦を見た。 「祝言か……ときに二人には良い相手は居らんのか? 特に義貞。お主はかねてからの相手もいよう?」 チラリと見た視線の先にはリンカがいる。その視線に少し頬を染めると、リンカは僅かに目を伏せて義貞の言葉を待った。 「それなら結婚したぞ。今は里と陽龍の地を行ったり来たりって感じだな」 「ほほう!」 「……義貞さんが二十歳の時に式を挙げさせて貰いました」 一歩下がった妻を意識して遠慮気味に言葉を添えるリンカの姿に義貞の頬が綻ぶ。それを見止め、護刃が嬉しそうに笑う。 「ならば次は待望の……かのぅ?」 「そうなれば里も陽龍の地も安泰なんだけどな!」 義貞はそう返すが、リンカはまた違った思いで義貞との子供を夢見ていた。 (若葉……早くあなたに会いたい……) 何時だっただろう。若葉の墓参りに行った際、リンカは恋敵であった彼女に「自身の子として生まれ変わっておいで」と想いを伝えている。 (若葉は多くの事を気付かせてくれて、諭してもくれた恩人だもの……感謝の気持ちも込めて、もう一度あなたに……) 「リンカ、そろそろおっちゃんにも挨拶に行くぞ」 「あ、はい」 物思いに耽っていた所に掛けられた声。それに慌てて我に返ると、既に先に歩き出した義貞の姿が見える。 だが次の瞬間、彼と共に歩いていた尚哉の足が止まった。 「あー……後にするか」 「あれって葎さん、か? 確か里に帰ったんじゃ……」 尚哉の声に義貞が首を捻る。だが直ぐにその根っこを掴まれると、半ば引き摺られる様にしてこの場を去って行った。 「紫さん、紫紺さん。お久しぶりです」 すっかり成人の女性と成った千見寺 葎(ia5851)に紫は僅かに頬を赤くして頷いた。隣にいる紫紺も、戸惑い気味に頭を下げている。 「突然消えたり出たりして申し訳ないですが……直に逢えてホッとしました。お元気、ですか?」 そう言って微笑む彼女に縁の視線が落ちる。 「元気は元気です。でも志摩が居なくなって、葎さんも居なくなって……正直寂しかったけど、頑張ってたんですよね?」 視線を上げて真っ直ぐに見詰める視線に葎の目が微かに見開かれる。そして次の瞬間に笑みを覗かせると、彼女は穏やかに頷いた。 「自分に出来る精一杯の事をしてきました」 「なら良かったです」 ニコッと笑う紫に再び安堵の息が漏れる。そして紫と紫紺が会場に消え行くと、葎は少し躊躇う様にして志摩の隣に立った。 「嘉栄さんも、お幸せそうですね」 愛娘と旦那さんと笑い合う姿を見て志摩を見る。 6年の月日は決して短くない。その証拠に志摩の髪には少しだけ白髪も伺える。 それに自身とて腰上まで髪が伸びたし、雰囲気だって大人っぽくなった。昔の様に男装も出来るが隠すべき所を隠すのも難しくなっている。 「……軍事さんは、彼等の父君の様に渋らなかったのですか?」 「俺か? 俺は渋らねえ……つーか、人が旅に出てる間に結納交わして結婚しちまったからな。知ったのは大分後だ」 酷いだろ? そう肩を竦める姿に思わず笑い声が漏れる。それでも「そうですね」と返すと、葎は少しだけ考えるようにして口を噤んだ。 「如何した?」 伺う様に向けた視線。それを受けて葎の顔が上がる。そして―― 「――軍事さん。お慕いしています」 告げた途端に見開かれる目に唇を引き結ぶ。それでも次を告げねばと、葎は横一字に伸ばされた唇を動かした。 「旅に出る時には、僕も連れて行ってもらえませんか? 結局何も放り捨てられなかった僕なりの、良い子を辞めた我儘です」 お願いします。そう下がる頭に志摩の手が動いた。 「軍事さん?」 背を抱く様に動く腕に視線と頭が上がる。 「ったく。本当なら6年前に聞きたかった言葉だぞ」 「ごめん、なさい……」 「いや、俺も色々思う所があって踏み止まった部分はあるんだ……有難うな」 腕に納めて頭を撫でる仕草に頬が緩む。葎は零れんばかりの笑顔を零すと、彼の胸に頭を預けて囁いた。 「幸せですよ……言える時が来ると、今この時まで思っていなかったから。それだけで」 「馬鹿言え。言って終いってのは無しだ。次は一緒に旅に出るからな、楽しみにしておけ」 志摩はそう言うと、彼女の体をきつく抱き締めた。 |