対決・どエム騎士団
マスター名:有坂参八
シナリオ形態: ショート
危険
難易度: やや易
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2011/02/07 00:31



■オープニング本文

●変態
「ギャーッ! 変態よー! 変態が出たわー!」
 昼下がりの町に、女性の悲鳴が響き渡る。否、女性だけでは無い。男も女も、老いも若きも入り乱れた無数の悲鳴が、晴れた真冬の空を駆け抜けた。
 皆、口々に叫ぶのは『変態』という言葉。しかしてその理由は、町を練り歩く一つの集団にあった。

「ハァハァ‥‥誰か‥‥誰かこの乾きを、癒してくれぇぇぇ」
 八尺を超えようかという巨躯に、鍛え抜かれた弾けんばかりの筋肉。油が塗られて淫靡に光る浅黒い肌。むんむんと漂ってくる男気。
 阿鼻叫喚の中心を闊歩するのは、そんな男達だった。そう、複数の男達なのである。
 筋肉ムキムキの裸男が(一応ビキニパンツは着用している)、呼吸を荒げながら通りを歩いていれば、誰しもが恐怖を覚えるだろう。
 そしてその男達はあろうことか、目に付く者に片っ端から駆け寄っていくのだ。
「誰でもいい‥‥私たちを、満足させてくれぇ!」
「嫌ぁーっ、来ないでぇぇぇっ!」
 筋肉男に迫られ、必死で逃げる娘。だが、道端の小石につまずいて転んでしまう。
 筋肉男に追いつかれた娘は、涙目で男を見上げる。筋肉男はニンマリと笑うと‥‥懐から取り出した鞭を、娘に差し出した。
「‥‥?」
「遠慮はいらない、ハァハァ‥‥さぁ。さぁ。さぁ!」
 訳がわからず、硬直する娘。男は急かすように、鞭を振れ、と仕草で指示をする。
「叩くんだ! 私を! 強く!」
「え、あの、どうして‥‥」
「早くっ! さあ! サア!」
 涙目で搾り出した質問も、野太い叫びに遮られる。
 娘は、仕方なく、意を決し、しかし恐る恐る、遠慮がちな鞭を男に叩きつける。
 ‥‥ぺち。
「ああっ! 駄目だ! もっと強く! もっと痛く!」
 身を捩らせながら男が、叫ぶ。実に気色悪い。
 娘はやけくそになって、びしびしとおもいっきり鞭を叩きつけた。
「おお! イエス! いいぞ! いいぞ!」
 べちん、べちんと景気のいい音と共に、鞭が男の身体に食い込み、筋肉男は一瞬、歓喜の声を上げた。
 ‥‥しかし男は、すぐにがっかりした表情を見せ、絶望に唸った。
「‥‥だめだ、これでは、足りない‥‥ハァハァ。もっとだ! もっと強く!」
 呆気にとられる娘を差し置いて、筋肉男は別の町民へ狙いを定め、走り去っていった。 同じように、他の男達も、町民たちに見境なく鞭をせがんでいる。
 その日、町は筋肉男達と追い掛け回される町民たちとで、大混乱に陥った。

●成れの果て
 かつて、ジルベリアにとある騎士団が存在した。
 強く、賢く、そして気高き騎士達が集うその集団は、一時はジルベリアでも有数の強兵として名を馳せたほどであった。
 彼らは騎士として、決して日々の研鑽を怠ることは無かった。
 自らの肉体を磨き上げ、騎士の技を研究し、最高の騎士たらんと、鍛錬しつづけた。
 あらゆる痛みに耐える為の、過酷な訓練‥‥その努力はやがて実を結び、彼らは一流の騎士として恥じることのない力を身につけた。
 それは即ち、敵の攻撃を寄せ付けない、鉄壁の防御力。
 彼らは地獄の戦場を生き延びる、不屈の生命力を手に入れたのだ。
 アヤカシの攻撃を直に受けても決して怯むことのない防御力を手に入れ、最初のうち、騎士達は喜びに打ち震えていた。

 だが、その防御力を得る為の訓練は‥‥彼らに思いもよらぬ代償を与えていた。
 そう、彼らは痛みに快楽を覚え、それを求めるようになってしまっていたのである。
 しかも!
 その不屈の防御力故に、並の痛みでは満足できなくなってしまったのである!

 やがて彼らは、痛みの快楽に渇望してジルベリアを飛び出し、世界中の町をさまよう様になった。
 人々は、力を求めるあまりダアクサイドに落ちた彼らの事を、『どエム騎士団』と呼んだ。

●依頼
 直接的な害が無いとは言え、町を練り歩く筋肉男達は、あまりに不気味で気色悪い。
 怯える町民は、とうとう開拓者ギルドへ助けを求めた。
『町を歩きまわるどエム筋肉マッチョメンがキモいので、どうかどうにかしてください』
 町民の生活に支障が出るならばやむなしと、開拓者ギルドもこれを受諾する。

 どエム騎士団を止める方法はただ一つ。
 彼らが満足するだけの痛みを、彼らに与えてやるしかない。
 全てはそう‥‥来たるべき、どエス開拓者達に委ねられたのである。


■参加者一覧
水鏡 絵梨乃(ia0191
20歳・女・泰
シュラハトリア・M(ia0352
10歳・女・陰
嵩山 薫(ia1747
33歳・女・泰
浅井 灰音(ia7439
20歳・女・志
リンスガルト・ギーベリ(ib5184
10歳・女・泰
高崎・朱音(ib5430
10歳・女・砲
エーファ(ib5499
17歳・女・砲
アナス・ディアズイ(ib5668
16歳・女・騎


■リプレイ本文

●五人のどエムと八人の女王様
「早く‥‥痛みを‥‥モット‥‥イタミヲ‥‥」
 どエム騎士団の男達は未だ大通りを闊歩しながら、すれ違う者達に痛みを求め続け、混乱と恐怖を振り撒いていた。
「痛みを‥‥痛みをブッ!?」
 そんなどエム騎士が突如、横から飛び出した何者かに蹴り飛ばされ、美しく弧を描いて吹っ飛んだ。水鏡 絵梨乃(ia0191)が、出会い頭に騎士の顔面目がけてドロップキックを放ったのだ。
「これはほんの挨拶代わりだよ」
 ころころと笑う絵梨乃の後ろには、同じく事態を収拾しに来た七人の開拓者が続いてくる。いずれも女性で、どこかしら鋭い空気を持つ者ばかりだった。
「おのれ、よくも仲間を‥‥私にもしてくれ!」
 どエム騎士達もその空気を感じ取るや、こぞって開拓者達に詰め寄った。
「‥‥全く嘆かわしい! ジルべリア騎士ともあろう者が何たる有様じゃ!」
 彼らと同じ騎士であるリンスガルト・ギーベリ(ib5184)は怒りに震え、騎士達に対して般若の形相で叫ぶ。
 叫びながら、ビシィーッ! っと、手近な騎士の顔面に鞭を叩きつけた。
「ぐわっ! ありがとうございます!」
 この後に及んで痛みを喜ぶどエム騎士。リンスガルトは更に激昂する。
「貴様等! 鍛え上げた体躯を持ちながら、アヤカシとの戦いに身を投じるでもなく、破廉恥な振る舞いをして守護すべき民草の心胆を寒からしめるとは、それでも栄えあるジルべリア騎士か! 恥を知れ!」
「うっ‥‥破廉恥は百も承知。だがもはや私達は、痛み無しには生きていけないのだ‥‥! 頼む、どうか私達に‥‥口では言えないようなスゴイ痛みを!」
 騎士達は、無駄に自信満々に反論する。
「想像以上に変態じゃが‥‥ふ、痛い目に会いたいということじゃし期待に応えてやるかの」
 高崎・朱音(ib5430)は呆れた口ぶりをしつつも、屈強な男を存分に痛めつけられる状況に、少なからず楽しそうな表情を見せる。
「痛いのが気持ちいい変態さんならぁ、ただの痛みじゃ満足できなさそぉだよねぇ‥‥んふふぅ、じゃぁどぉしよっかぁ♪」
 シュラハトリア・M(ia0352)‥‥シュラハは、幼い顔つきにはおよそ似つかぬ妖艶な笑みを浮かべながら、手元の符を弄んでいた。
「おお‥‥いぢめてくれるのか、私達をッ!?」
 シュラハの言葉に、歓喜するどエム達。微妙に顔を近づけてくるのが暑苦しい。
 一歩後退しつつ頷いたのは、浅井 灰音(ia7439)だ。
「まあ‥‥町の人達にいろんな意味で迷惑だから全力で‥‥この場合なんていえば良いんだろうね?」
「深く考えないっ。とにかく痛くしてやればいいんだよ、灰音」
 と、絵梨乃が灰音の方を軽く叩く。
 その隣の嵩山 薫(ia1747)は、何やら釈然としない表情を見せていた。
「まぁ、私には何だかよく解らないし、個人的に興味を持てる類の人達でもないけれど‥‥往来の邪魔になるのなら早々に御退散願おうかしらね」
 語りながら、指先をならす様にニ度三度動かす。淡白な態度だが、殺る気は十分なようだ。

●氷のごとく
「一般人を守る騎士が往来で一般人に迷惑をかけないで下さいね。貴方がたのお望みは叶えますから大人しく連行されて下さい」
「見られてると、ちょっと気後れして手加減してしまうかしれないから、ね‥‥?」
 慇懃な態度の騎士アナス・ディアズイ(ib5668)と、白銀の麗人エーファ(ib5499)が先導し、どエム騎士達は路地裏の空き地へと誘導された。
 人気のない場所へ来るなり、女王様達‥‥もとい開拓者達は、各々変態共の『処置』にかかる。
 アナスは獲物のフレイルを取り出しながら、仲間達と顔を見合わせた。
「さて、五体満足であれば問題ないですね?」
「ハアァハァ、さあ、遠慮は無用だぞ‥‥存分に来たまへ」
 鞭を差し出しながら、呼吸を荒げるどエム騎士。
「あら、ありがとう」
 エーファが無表情のままでその鞭を受け取り、これみよがしにニ、三度素振りをして‥‥騎士の『男の急所』を、ハイヒールで思い切り蹴り上げた。
「うぉんっ」
 妙な唸り声をあげながら、騎士はくずおれ四つん這いの姿勢になった。エーファはその肩をヒールで踏みつけ、ぐりぐりと先端をめり込ませた。
「あの‥‥鞭、は‥‥ぉぉぉ」
「そもそも苛めてくださいっていうのに頭が高いのが気にいらないわ。苛められたきゃ、そうやって惨めに這いつくばってないとね‥‥?」
 嗜虐的な笑みを浮かべながら、冷淡な言葉を浴びせるエーファ。どエム騎士もまんざらではないようだが、逆に彼女にはそれが面白くないらしく‥‥眉をしかめて軽く息をつくと、後ろのアナスに目で合図を送った。
「イケメンマッチョな外見も頭の中身も存在も残念な貴方への、同じ騎士としてせめてもの慈悲です。お望みの苦痛で昇天して下さい」
 アナスはフレイルを、四つん這いの騎士の背中目がけて、腰骨ごと叩き折るかのような勢いで振り下ろした。
 ぐしゃ、という不穏な音と共に、どエム騎士の身体がびくんと跳ねるが、アナスがその顔を覗き込むと‥‥ハァハァと息を荒げて、恍惚の笑みを浮かべていた。
「いいぞっ‥‥もっと、もっとだ!」
 やはり並の痛みでは満足し得ない、筋金入りのどエムのようだ‥‥エーファとアナスは小さく鼻を鳴らすと、瞳を細めて騎士をにらみつけた。

 一方こちらは薫と灰音。
「さあ! 君達は私に! どんな責めを! してくれるんだい!?」
 どエム騎士の一人が、一言叫ぶごとにこちらへ歩み寄ってくる。
「思っていたよりもなかなか強烈な絵面だね、これは‥‥」
「どエム騎士‥‥ねえ」
 ビキニパンツ一丁の筋肉達磨に詰め寄られて多少たじろいでいる灰音に対し、薫は眉一つ動かさず前に出て、騎士の脇腹の辺りを、人差し指でとん、とつついた。
 すると騎士が態勢を崩し、ふらふらとよろめき始める。
「何を‥‥おぉ!?」
「痛みというのは身体の異常を知らせる信号のようなものなのよ。逆に言えば、痛みそのものが異常ではない事もあるの。これはそういう技ね」
 体を内部から破壊する技、即ち極神点穴‥‥と、薫は付け足す。騎士は身体をぐらつかせながら、薫に反論した。
「しかし、それでは駄目だ‥‥痛みを与えてくれなければ‥‥満足できない!」
「あら、どうして私がわざわざそんな事してあげなくっちゃいけないの?」
「!」
 菩薩の様に穏やかな笑顔を浮かべながら、薫はそう言い放った。
 ショックを受けて涙目になった騎士は、今度は灰音に哀願するような視線を送る。目が合った灰音は、
「‥‥どうしようかな。そんなに痛めつけてほしいの?」
等と、これ見よがしに興味無さげな振りをしてみせた。
 どエム騎士は灰音に追いすがり、ぶんぶんと首を縦に振る。気分が乗ってきたらしい灰音は、剣を騎士の首筋に当て、氷のように冷たい笑みを浮かべた。
「‥‥それじゃあ、泣いて懇願してよ? そうすれば考えてあげても良いよ」
「この卑しい従僕めに、どうか御慈悲を!」
 灰音の言葉に従い、五体投地で痛みを請う騎士。
 くす――と口元を歪めた灰音は、次の瞬間、騎士の身体に立て続けに斬撃を放った。
 流石どエムというかべきなのか分からないが、騎士は嬉しいのか苦しいのかわからない涙を浮かべた。
「うご、おお、あおおーッ!」
 言葉にならない悲鳴を上げるどエムを見下ろしながら、灰音はその頭に短銃を突き付けた。
「さあ、もっと泣きなよ? その涙が枯れてしまうくらいにさ」
「おぉあ、そ、ソレは流石に‥‥」
 妖艶な笑みを浮かべ、引き金を引く灰音。騎士は歓喜と恐怖の入り混じった、野太い絶叫をあげた。

●炎のごとく
「よーし、いくぞー! 準備はいい!?」
 広場の端っこから、甘刀「正飴」を持った絵梨乃が叫んでいる。その視線の先では、どエム騎士の一人が、尻を突き出した不自然なポーズで立っていた。
 絵梨乃は一歩踏み出すと瞬脚で加速し、一気に騎士(の尻)に近づく。彼女が手にした甘刀も、騎士(の尻)に向けられており‥‥
「せいっ!」
「アッー!」
 ぶすり。と、鈍い音が聞こえた‥‥気がした。
「‥‥もうこの正飴は食べられないな。それだけは分かる」
 微妙にやわらかな手ごたえを感じつつ、甘刀を抜き払う絵梨乃。
 食べ物を粗末にしてはいけません。

 その横では、怒り心頭のリンスガルトが、どエム騎士の一人を相手に叫びを上げていた。
「愚昧の徒を正道に導くも我等貴族の義務。その体に思い知らせてくれる!」
 リンスガルトは、期待と興奮で鼻息を荒くしている騎士の脛を蹴り飛ばし、地面に倒れこませた。
「ぐぉっ!?」
 仰向けになった騎士の胸板にどっかと腰を下ろして、騎士の顔を見下ろす。
 成程、鍛え抜かれた筋肉の座り心地は悪くない‥‥等と内心は感心しつつも、リンスガルトの表情はあくまで冷徹な女王のそれを保っている。
「今から貴様は豚じゃ! じわじわと屠ってくれる故、覚悟致せ!」
「はい女王様、お望みのままにグェェェェェ」
 リンスガルトは素足になって、両足の裏で騎士の首を締め上げ始めた。さすがの騎士といえども呼吸を止められれば(多分)死ぬだろうが、リンスガルトは絶妙に緩急を付けながら、生かさず殺さずのギリギリの加減で、気道を締める。
「ほれ、どうじゃ豚。苦しいか? ん?」
「〜〜〜〜っ!」
 騎士の表情を見るに相当苦しいようではある、が‥‥
『我々の業界ではコレご褒美です』
 そんな言葉にならない声が、聞こえた気がした。

 そこから少し離れた場所ではシュラハと朱音が、一人のどエム騎士を挟んでいた。
「我の相手はこやつかの。まずは‥‥挨拶代わりじゃ!」
 言うや否や、朱音は手にした銃で騎士の両足を撃ちぬき、地に膝をつかせた。
「アオゥ!」
「ふん! もっと我の下に跪くがよいのじゃ。頭が高いわ!」
「んふふぅ、今からいっぱい気持ち良くさせたげるからねぇ♪」
 シュラハの方は、符から白濁色の粘液を召還し、騎士に対してぶっかけた‥‥一応、れっきとした錆壊符である。
「ちょ、これはっ‥‥熱、いや、溶ける‥‥!」
「『溶ける痛み』っていうのはぁ、初体験でしょぉ? その次はぁ‥‥」
 妖艶な笑みを浮かべたシュラハは、吸心符を騎士の股間目がけて放った。
「無駄に溢れる情熱も、吸い上げちゃお〜ってねぇ」
「オウ! イエス! 未知の衝撃!」
 白濁塗れで身悶えする騎士を前に、シュラハは満足げに微笑していた。
 一方で朱音は、既に大変な事になっている騎士の股間を容赦なく踏みにじって責め立てる。騎士にまとわりついた粘液が飛び散り、朱音の服まで溶かして際どい絵面を演出しているが、朱音は全く気にしていない。
「これで喜ぶとは流石変態じゃの? ん、どうして欲しいのじゃ? 人に者を頼むならそれなりの態度というものがあるじゃろう?」
「お‥‥お願いします! この犬めに、どうかお情けを!」
 朱音はにやりと笑うと、どこからともなく用意した紐付き首輪を騎士にはめ、更に激しく騎士を嬲った。
「そら汝は犬じゃ! 犬なら犬らしく鳴かぬか!」
「わん! わん! わおぉぉん!」
 ‥‥もはや男としての尊厳もへったくれもない。女王様はそのまま、犬への躾の手を緩めることは無かった。

●そして涅槃状態
 路地裏に響きわたる、嬌声と怒号。野次馬達が眼を覆う程の苛烈な責めを経て、流石のどエム騎士たちの表情も、疲弊の色をみせ始めた。
「ああ、騎士様がこんな無様な格好をさらして喜ぶなんて、恥を知れば?」
 エーファが四つん這いの騎士をヒールで捻り踏みしつつ、言葉責めでじわじわと精神を攻撃する。
「フゥフゥ‥‥く、屈辱! だが、たまらんとです‥‥!」
 苦悶しつつも嬉しそうに見える辺り、この騎士達もやはり真性である。
「我らをこれほどまで唸らせるとは‥‥だが、まだだ、私達の地獄はこれからハオゥッ!」
「‥‥失礼、まだ満足して頂けないようでしたので」
 強がって見せる騎士の股間に、渾身の力でフレイルを振り下ろすアナス。それでも恍惚の表情を浮かべている騎士を見ると、憐れむ気も失せてくる気がした。
「そろそろ飽きてきたし、終わりにさせてもらうよ」
 灰音は近くの塀の上からムーンサルトの軌道で飛翔し、そのまま円月を騎士の脳天めがけて繰り出した。
「グォゥ! ‥‥まだ、だ‥‥もっと‥‥もっと‥‥痛くしてください!」
 並の開拓者やアヤカシならば、間違いなく昇天しているところなのだが‥‥どエム騎士はくわっと目を見開き、なお立ち上がってくる。
 それを見て灰音は無言で首を横に振り、後ろを振り返った。
 視線の先には、絵梨乃と薫が立っている。
「おーけー、じゃ、とっておきの奴をやろうか」
「このままじゃ終わりが見えないし、仕様が無いわね」
 二人はそれぞれ同時に跳躍し、どエム騎士の集団を挟む対極の位置に目がけ、着地と同時に崩震脚を放った。
『破ァァァッ!』
 アヤカシすら粉微塵に破壊する、二人の連携奥義。大地が震撼し、ともすれば地面をひっくり返すのではないかと思わせる衝撃が、二方向から騎士達全員を襲う。
「――――ア」
 どエム騎士は一瞬、視界に走馬燈が見えた気がしたが‥‥気持ちがいいならまあいいかと、甘んじてその衝撃を受け入れた。
 共振した大地の震動が、轟音を響かせる‥‥。

 ‥‥。

 ‥‥青空の下に横たわった、五つの死体‥‥もとい肢体。
「思い知ったか、変態! ‥‥まあ、妾も少しは楽しめたがのう」
 リンスガルトが、胸を張ってふんぞり返りながら、どエム騎士たちを見下ろす。
「ああ‥‥思い知った。目の覚めるような、ステキな痛みだった‥‥」
 しかし、起き上った騎士達の表情は、存外に穏やかなものだった。
「君達の責めを経て‥‥飽くなき渇望が収まった。不思議なほど、穏やかな気分だ‥‥有難う。もう強引に他者に痛みを求めたりはしないよ」
 これが俗にいう、賢者時間であろうか。そこにはかつての残念な暑苦しさは微塵もなく、彼らは正真正銘のイケメンマッチョになっていた。
 その様子を見たアナスが前に出て、騎士達に提案した。
「これからは、アヤカシ達との戦場の最前線巡りをして、各地で壁役を引き受けては如何でしょう? アヤカシ達の攻撃は人間より種類が豊富ですから‥‥」
「ああ。それが良いだろうな。私たちは、本来の任務に戻るのだ‥‥どんな痛みにも屈せず悦びを見出し盾となる、真のどエム騎士として‥‥」
 さわやかな笑顔を残し、どエム騎士団は去っていった。彼らはこれから、対アヤカシ戦線の心強い戦力となる事だろう‥‥その人間性はまぁ、別として。

 開拓者達もまた、やれやれという顔でそれぞれの帰路につく。
「ふむ、汝はなかなかいい性格しておるの? どうじゃ、これから我と一緒に‥‥先ほど術を当ててくれたお礼もしたいしの?」
「あらぁ、楽しみかもぉ♪」
 こちらも何やら新たな境地を開拓したようで‥‥
 シュラハと朱音は、二人連れ添って街の何処かへと消えていったのだった。