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■オープニング本文 ●おとな? ある寒い日の浪志組屯所。中戸採蔵(なかと さいぞう:iz0233)は、若い隊士たちに囲まれていた。 不思議そうに眺める、司空 亜祈(しくう あき:iz0234)。白虎耳としっぽを揺らし、とことこと近づく。 気配を察したのか、採蔵は振り返った。人の良さそうな笑みを浮かべ、尋ねる。 「なんのご用で?」 採蔵の手には、空っぽのカゴ。周りの浪志組隊士たちは、鳥を手にしている。 「とりさん…」 虎獣人としては、ぜひ食べたかった。亜祈の瞳に涙がにじむ。じいっと、採蔵を見つめた。 「そ、そういえばもう一度鳥打ちにいくつもりだったんですよ」 良くわからないが、採蔵に罪悪感が募る。流れる冷汗、妙な胃痛を感じた。 「また獲ってきますんで、そのときはもらってください」 「ありがとうございます♪」 心からの感謝の言葉、亜祈は頭を下げる。採蔵が擦り切れたはずの良心と戦っていることなど、知らない。 「とりさん…やさいは?」 「野菜?」 思わぬ言葉に、採蔵の動きが止まる。採蔵が携帯しているそろばんに、亜祈の視線は向いていた。 「行きましょう!」 有無を言わせず、亜祈は相手の手を取る。損得勘定を考える前に、採蔵は引っ張られた。 「はくさい、にんじん…ふゆやまたけ(冬山茸)♪」 亜祈の言葉は、意味不明。揃いのだんだら羽織りを着た、二人。浪志組屯所の入り口から外に出る。 「ふ、ふゆやまたけ?」 「きのこ、きのこ♪」 なにやら、えらくご機嫌の亜祈。採蔵はやっと悟る、鍋の材料だ。 「お買いもの、お買いもの♪」 採蔵が振り返ると、入口が遠くなっていた。すぐそばで、白い虎しっぽが舞い踊る。 「…つきあいやすよ」 亜祈の満面の笑みに、採蔵はあらがえない。荷物持ちが決定した瞬間である。 大量の野菜を抱え、浪志組屯所に戻ってきた二人。亜祈は元気が無かった。 「ふゆやまたけ…」 きのこは、売っていなかった。諦めきれない、じわりと涙が浮かぶ。 白い虎耳はふにゃりとしおれ、白い虎尻尾は力なく垂れていた。 「とりさん…」 じいっと。見つめる瞳に、採蔵は思わず身構える。嫌な予感がヒシヒシと、胃の痛みもキリキリと。 「何をするつもりで?」 「やまのぼり…」 採蔵の目の前で、亜祈の荷物に土鍋が増える。足りない食材を、現地調達するつもりだ。 「ギルド、行きましょう!」 採蔵が答える前に、亜祈は引っ張って行く。かくして、採蔵の山入りは、早まったのであった。 |
■参加者一覧
礼野 真夢紀(ia1144)
10歳・女・巫
村雨 紫狼(ia9073)
27歳・男・サ
杉野 九寿重(ib3226)
16歳・女・志
神座真紀(ib6579)
19歳・女・サ
雁久良 霧依(ib9706)
23歳・女・魔
七塚 はふり(ic0500)
12歳・女・泰 |
■リプレイ本文 ●注文の多い料理人 「亜祈は、まだ冬の過ごし方に懲りてませんですかね?」 かくりと傾けられる、杉野 九寿重(ib3226)の首。犬耳も、かくりと垂れていた。 亜祈の故郷は一年中、半袖で暮らせる。雪山登りは、生まれて初めてらしい。 「…依頼人、亜祈さん? 雪山の恐ろしさ知らないよね、多分…」 礼野 真夢紀(ia1144)は、依頼書を握りしめた。戦々恐々と、何度も読み直す。 「日程が…食べる所が…夜間に山下るの? なんて恐ろしい事を…泊まれる準備しておこ…」 南国育ちの無知は、恐ろしい。雪山の頂上で、夜に鍋を囲むつもりだ。 天幕に寝袋、毛布、その他もろもろ。真夢紀の荷物は、膨れ上がるばかり。 「幾ら食べたい欲求とは言え、まだこの季節では山中は冷えるのが明らかですし。その辺の防寒対策は、万全にしないとですね」 九寿重から手渡された、ロングコート。五人姉妹弟の筆頭は、他人の面倒を見る方を優先する。 「亜祈さん、思い込んだら一直線やなぁ。まぁ、そういう所嫌いやないしな」 神座家の長女も、面倒見が良い。神座真紀(ib6579)は、悪戦する虎耳にコートを着せてやる。 「はふりであります。ただ飯が食えると聞いて参上しました」 薄紫の髪を揺らす、修羅の子。七塚 はふり(ic0500)は、ジト目のまま主張した。 「本作戦には致命的な欠陥があります。豆腐の不在です」 野趣あふれる鳥の旨みをたっぷり吸った、焼き豆腐。冬山茸の芳香と共に、口の中でほろりとろける、絹豆腐。 それから、出汁のからんだ野菜といただく、木綿豆腐。はふりの主張は、理にかなっている。 「豆腐不在の鍋など味噌の入ってない味噌汁も同然、よって豆腐の参戦を強く希望します。 調理器具や豆腐だって、きっと用意してくれるであります。出汁昆布も」 はふりの心配は尽きない。冬山に備えて外套と、暖を取るための用意もして欲しいと。 「見た目の鮮やかさを添える春菊と、出汁を吸ってふわふわに美味しくなるお麩も良いですね♪」 九寿重は、フードファー「ダブルダウン」に袖を通した。ピコピコ楽しそうな犬耳が、フードの中に消える。 「雪の状態によっては、かんじきがあった方がいいわね。それと採集物を入れる籠を用意ね」 雁久良 霧依(ib9706)のまっとうな意見。かんじきを知らない虎耳に、身ぶり手ぶりで説明する。 「鍋を幾つかと調理器具に調味料。それと食材、必要な野菜類も持っていかな」 真紀も注文を付けた。…虎耳の一声で、準備のため、非番の隊士たちが借りだされるハメに。 お腹を押さえるだんでぃさんを見て、狩猟組と採取組は相談。埋め合わせは、帰還後の鳥鍋と決まった。 「つーかなぁ、お嬢ちゃんたち? 確かに志体持ちは丈夫だし、万が一アヤカシに遭遇しても生存確率は高いよ」 ロングコートの襟を立てる、村雨 紫狼(ia9073)。茶色い瞳は、亜祈に向かっている。 「でもな、大人として男として、女子供だけで春先の雪山に行かせられねえ。 …一般人が同じことすりゃあ、周りから全力で止められるだろ?」 あきれた感情を宿した言葉。開拓者の常識よりも、世間一般の常識を優先しろと解く。 「俺は亜祈ちゃんが好きだし、みんなも放っておけないからな」 「じゃあ、夏に雪山に行けばいいのね♪」 虎耳は天儀の世間知らず。紫狼は、脱力する。認識として、間違ってはいないが。 「…んじゃ、大人の説教はおしまいだ、楽しんでこうぜ!」 ぐっと、紫狼は背伸びした。気持ちを切り替えよう。 ●雪山注意報 「はいーそう言うことでッ! 第一回、チキチキッ! 亜祈たんと行く冬山きのこ狩りツアーッ!!」 雪山で拍手する紫狼、皆の気分が乗ってくる。ボケもツッコミもいける芸人体質は、重宝ものだ。 「きのこ狩りや調理は、女の子たちに任せるよ」 荷物持ちの紫狼の背中から、茣蓙が降ろされた。昼食用の食材も一緒に。 山の頂上は、見晴らしが良い。見渡すと、真っ白な景色に、虎耳がはしゃいでいる姿が見えた。 「危険に踏み込まない様に注意…」 紫狼の言葉が途切れた。どこで仕入れた知識か、やまびこを試そうとする虎耳。 隣にいた真夢紀。とっさに亜祈の服を、思いっきり引っ張る。 「絶対に大声出しちゃ駄目です! 春先はちょっとした事で、雪崩が起きるんですから」 勉強を兼ね図書館に行く事も多い、真夢紀。青ざめながら、すっころんだ亜祈を見下ろした。 「攻撃スキルは厳禁、大声だって切欠になったりするんですからね!」 雪に埋まると、死んでしまうと驚かす。雪崩の怖さを切々と語った。 「足元に雪が残っていたら、出来るだけしっかりと踏みしめる様にすると良いですね」 雪の中から、起き上がれない虎耳。涙を浮かべる相手に、九寿重は助けの手を伸ばす。 「下手に滑って、力加減を誤って転ばない様に気をつけるですね」 言う側から、起き上がりかけ、転ぶ亜祈。雪の中に、虎拓ができる。 巻き込まれかけた九寿重は、たまらず虚心で避けた。犬拓は勘弁して欲しい。 「…こういう事は、亜祈にも倣ってもらいたいものですが」 九寿重は踏みとどまることに成功した。立て直しを図る。 ため息をつく紫狼は、凍えて動けない虎耳を九寿重とひっぱりあげる。 「…俺は焚火の側で、留守番してるぜ」 真夢紀が頼んでくれた、薪と炭の傍らで、虎耳もお留守番決定。 「きのこ狩りの女、雁久良霧依ッ! ここに参上! …沢山集めましょうね♪」 「おー! であります」 はふりも便乗。二人して流し目と、カッコいいポーズが印象的だ。 「生えている場所、地元の人は教えてくれるかしら? ちょっと、聞いてくるわね」 霧依は、山麓で住人を見つけた。後に採蔵が平謝りする、顔役さんだったりする。 「冬山茸は松林に生えるでありますか」 「雪に隠れて見えないかも知れないし、踏み潰さない様に注意して」 「それぞれの根元を掘り返して、見つけ出しますね」 はふりに向かって、野草図鑑を見せる霧依。九寿重は、松林の担当を区分けする。 「頑張って、亜祈さんに喜んでもらおかな♪」 防寒装備は欠かせない。真紀はマフラー「オーロラウェーブ」を巻き直す。 「野草図鑑持ってきたから、見た事無い人はそれでどんなんか見てや」 「まゆ、冬山茸は見た事ないんだけど……」 真紀も図鑑を広げた。真夢紀が冬山茸の絵を、興味深く眺める。 「本来冬の初めに出る茸なら、結構育っていると思うし。それから山菜まだ早いかな…」 真夢紀、別の事も考える。食いしん坊さんは、真剣だった。 「夕方までしっかり探すで」 「ちょっと待って下さい」 真紀の言葉に、空を見上げ、眼を閉じる真夢紀。山の天気は変わりやすい。 「どうかしら?」 「早めに切り上げて下山、屯所で食事しましょ」 霧依の質問に、真夢紀は黒髪を揺らす。あまよみ警報は、夕方から吹雪と告げていた。 ●昼は山頂食事会 狩猟組から、鳥の一部を預かった。すべては、料理人達に託される。 「さて料理ね♪ 水が足らないなら、雪を溶かすわよ」 霧依のキュアウォーターの出番だ。泥水からでも、真水をつくりだせる魔術。 「先ずは鳥を捌いて、鳥がらで出汁をとるで。灰汁もしっかりな」 包丁片手に、やる気満々の真紀。手伝ってくれる紫狼に、お願いをする。 「白菜、チンゲン菜入れてな。後で酒、みりんで味を調えるねん。 少し火を落とさな、あかんよ。お待ちかね冬山茸を入れるっと」 真紀は言葉を紡ぐ。いたって男前な性格だが、家事全般をこなす淑やかさを持っていた。 大根おろしをたっぷり入れた。さらに水菜、豆腐、別茹でした人参をいれて、一煮立ち。 「食べるのは得意であります、おまかせください。完食してご覧に入れましょう」 大根おろしを作ってくれた、はふり。やる気だ。ジト目のまま、腕まくりをし、力たすきを。 「浪志組の皆さんと、大食い比べをしてみるのも一興です」 「それはちょっと、胃に響くので」 採蔵は、遠慮する。お腹を押さえたまま、遠慮する。心の底から、遠慮する。 「中戸様、野外で食べる鍋も美味しいものですね」 気分悪げな採蔵。微笑を浮かべ、九寿重は箸と小皿を差しだす。 採蔵は、愛想笑いが苦手だ。極限状態では、何度も頭を下げて、断るしかない。 「大根は、胃もたれや胸焼けに効くんやで」 大根おろしの入った、雪見鍋。発案者の真紀は、おたまを振りながら説明する。 「葱、白滝、冬山茸、鳥肉、それに採集した茸や山菜をたっぷりとね♪」 「大丈夫、春の七草入りです」 霧依は、コート「ベールィミンク」の裾を揺らす。真夢紀が太鼓判を押す鍋の中には、せり・すずしろが入っていた。 「一緒に食べようぜ!」 紫狼は笑いながら、肩を叩く。促されるまま、採蔵は鍋に手を伸ばした。 ●それゆけ料理人 主役の鳥肉を前に、あれこれ相談。真夢紀は悩む。 「肝はどうしようかな…腐り易いから早期調理しないと。…塩で焼いてみましょうか。鳥の臭み消しに、お酒もたっぷりね」 「私は鳥すき焼きを作るわ♪ 砂糖に醤油、みりんと水を合わせた割下でね♪」 「あ…醤油とみりんと出し汁で、すき焼風味もいいかも」 霧依の提案に、卵を手にした。 「味付けは濃い口の方が良いでしょうから、昆布出汁を基本に醤油・砂糖で甘辛くですね」 九寿重も、まず肉を放り込む。煮えにくい白菜の茎やら、色鮮やかな春菊やら。最後はお麩を投下するつもり。 「まゆは、ぶつ切りにして水炊き風にしよ。最後にお米や、饂飩♪」 昆布に鳥さん。良い出汁が出た所で、真夢紀は干ししいたけを鍋に入れる。 「砂糖、誰か持ってるかしら?」 霧依の問いかけに、二人が手を上げた。真紀と亜祈? 「確か亜祈さん、砂糖と塩間違う事あるって何時か…」 どっかで見た光景、真夢紀は首を傾げる。血の気が引いた。 「…まだ水炊き状態なら、カレー味にも、味噌味にも変更可能です!」 他国の料理にも関心が高い真夢紀の決意。問答無用で、亜祈の水炊きを取り上げる。 …無事にアル=カマル風味に変更した。 「恥ずかしながら、自分は料理が未熟であります。鍋を吹きこぼさぬよう、火の番をして貢献したい所存です」 遠巻きに、土鍋を見守るはふり。小鬼にも、苦手な物はある。 「七塚さん、こっちや。リクエストの生姜とくわい、荒みじん切りにしたで」 真紀は手招きした。鳥つみれに興味を示した、はふりを呼ぶ。 「今から粘り気が出るまで、混ぜるねん」 はふりは、物珍しげに材料を覗きこむ。真紀は混ぜ方を教えた。 「…とりあえず、殴るであります」 おっかなびっくり、鳥つみれの作成に挑戦。出来栄えが楽しみである。 ●合言葉は鳥鍋! 「天麩羅大好き♪」 きのこ狩りついでに、山菜を探した真夢紀。手にした成果は、キクラゲとセリだ。 「美味しく出来上がった処で…さあ、召し上がれですね♪」 「こっちも大根おろしの雪見鍋完成やで♪ さて、食事や!」 匂いにつられ、非番の隊士たちが寄ってくる。九寿重と真紀は、さわやかな笑顔を向けた。 「味、どないかな?」 頭に結んだ、大きな白いリボンが揺れる。真紀は猫舌の虎耳を、心配していた。 亜祈は虎しっぽを揺らす。お気に召したらしい。 「あたしも他の人の作った鍋いただいて、味付けやら何やら参考にせな」 「私も、皆さんが作った鍋も頂くわ♪ うう〜〜〜ん幸せ♪」 真紀は、霧依のにお箸を。霧依は、真紀の鍋にお箸を。 「どうかしら、葱の甘くまろやかな味が口の中で広がるでしょう?」 郷土愛を持つ霧依、実家は農家だ。郷土の名産品のこんにゃくと葱を、大量に提供してくれた。 「郷里の極太葱は、旨味が他の長葱の三倍なのよ♪」 「霜谷ねぎ、やったかな?」 「シモニタネギよ、どんどん食べてね♪」 博愛主義者の霧依、隊士たちに手招きする。鍋の側に、人だかりが出来た。 雉肉は、貴重な肉。大勢で囲むと、一人一切れしか当たらない。 生の雉肉を食べるのが、雉刺し。薄く焼いた雉肉に、熱燗を入れるのが雉酒。 未成年は迷わず、雉刺しを。年長者は、霧依の持ってきてくれた天儀酒の前で唸る。 「おきじさまよ。荷物持ちお疲れ様♪」 霧依は雉酒の別名を告げながら、唸る相手に酒を渡した。根は真面目で素直な紫狼、大喜び。 「肩でも揉んであげようかしらね?」 「これで十分さ」 「飲み過ぎはダメよ♪」 ちびちび味わう紫狼に、霧依は声をかける。と、笑みが返ってきた。 「荷物持ち志願がおって助かったわ。あたしらか弱い女子やからなぁ」 一段落したのか、真紀も寄ってきた。虎耳を連れている。 「そういや亜祈さんも、中戸さんも、隊長さんなんやな。六番隊の隊長さんも知っとるけど、浪志組もなかなか個性的やな♪」 ほろよい加減の真紀。頬を薄紅染めながら、饒舌だ。聞いていた隊士たちの隊長自慢が始まる。 「俺個人は浪志組は大嫌いだし、成立からして反乱絡みでキナ臭かった連中だ」 酒の入った紫狼は、ぼそりと本音をぶちまける。大神の変は、神楽の都を揺るがした。 「本当は亜祈ちゃんに深入りして欲しくは、なかったけどな…」 大事にしていた雉酒を、一気に飲みほす紫狼。なぜか、荷物をあさり始めた。 「隊長の就任祝いにプレゼントするぜ。非売品なんだ」 取りだしたのは、エンジェルハートのぬいぐるみ。ジルベリア帝国最北のある村の精霊を模した一品。 「まぁ、ありがとうございます♪」 亜祈は、お礼を告げる。嬉しそうに、虎しっぽを振った。 「何かあったら必ず俺を呼ぶんだ、俺はキミを助けるぜ、亜祈ちゃん!」 握る拳、決意の瞳。浪漫ニストは、きらりと歯を輝かせた。 「満腹になったので、素直に降りるであります」 はふりは隅っこで正座し、紫狼のくれた緑茶を飲む。無理してつめこむのは、食材となった命に失礼だ。 「居候先の家主が腹をすかせておりますので、お先に失礼するであります」 ご厄介になっている、ふせさんちに帰ろう。狩猟組の一人に呼びとめられた、果物を貰う。 「味薄いときは、かるく塩入れるんやで」 真紀は、はふりが手作りした、鳥つみれも持たす。はふりの目が、真ん丸になった。 ぎゅっとお土産を抱きしめる。アメジストのネックレスが、嬉しげに揺れた。 掴んだら離さない。そんな強い気持ちが籠もっている、ネックレス。 はふりは、ちょこんと頭を下げる。家主は、お土産を喜んでくれるだろう。 |